罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】   作:千野 伊織

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◆◆今回(12)の登場人物は、ゼツ(黒)、うちはオビト(=トビ=マダラ)、うちはイタチ、大筒木カグヤ(o.c)。※主人公の六花=芙蓉。

遂に始まってしまった、うちは一族の抹殺・・・
六花は全てを諦めていたかのように見えましたが、イタチの前に現れてある提案をします。
イタチの答えは・・・?
うちは一族の未来は・・・?
※原作の場面を引用している部分があります。

※関連話:『罪の向こう、愛の絆(完)~罪の向こう、愛の絆』
『罪の向こう、愛の絆~それぞれの新章』
『罪の向こう、愛の絆~マダラとの出会い』
など



続・六花の森(12)~うちはイタチの裁断と大罪

 

 

暗闇の中に、月明りに照らされ見覚えのある建物が浮かび上がっている。

 

ギィィィ…

六花は階段を上ると扉に手を掛け、ゆっくりと開けた。

 

「遅かったな。十分も遅刻だぞ」

「遅刻常習犯だったお前になんて言われたかないね」

二人を迎えたオビト(トビ)の言葉に、ゼツがすかさず言葉を返した。

神社の社の中にはオビト一人で、イタチは居なかった。

六花は神棚の下に立って居るオビトの前に立つ。

「それで、今回の任務と言うのは何?」

「フン。そこの番犬にもう聞いているんじゃないのか?」

「・・・・」

六花はオビトを見据えつつも、思わず息を飲み、瞬きをしてしまった。

「今日、イタチは木ノ葉の闇、『根』のリーダー・志村ダンゾウの命令でうちは一族を討ち滅ぼす。たった一人、自分の弟だけは助けるという条件でな。で、俺とお前で抹殺を手伝ってやるのが今回の任務だ・・・一人でも多く、殺せ」

六花は真顔でオビトに問う。

「・・・嫌だ、と言ったら?」

「別に拒否するのは自由だ。ただ、これ以上うちはマダラの下僕であるお前が、暁の正式なメンバーにもならず、マダラが命じた先の夢…そう、“月の眼計画”への行動から外れて生きることなど許さん…」

オビトは六花の顔を指さしながらそう言った。

しかし、六花は顔色一つ変えずにオビトを見据えている。

そしてオビトは言葉を続ける。

「任務を拒否するなら、お前には死んでもらう。但し死に方だけは選ばせてやろう…

うちはマダラである俺に殺されるか、可愛がっている九尾のガキの為に命を捨てるか。

…だが任務を遂行するなら、お前の命も九尾のガキの命も助けてやる。さあどうする?」

六花は不意に、床に眼を落とした。

 

あの時とは違い、床は塵とホコリでくすんでいる。

もう何年も人の出入りは無かったようで、既にここは、うちは一族にとって忘却の場所となっていた。

そう、うちはマダラという人物同様…。

 

顔を上げ、もう一度目の前のトビを見据える。

「その任務、拒否するわ。」

「フン!最後まで我儘で卑怯な奴だな。…最後だから教えてやろう。うちは一族をここまで追い込んだ元凶は、二代目火影・千手扉間だ。お前の夫だろ?」

「・・・なぜ、そのことを知ってるの?」

「俺がこれまで木ノ葉の里に出入りしていなかったとでも思うのか?里を調べれば橘芙蓉という人物とお前が同一人物だという事くらい直ぐに分った。それに芙蓉はマダラをはじめ、うちは一族とお前は和気藹々たる関係だったようだしな」

六花は思わず悲しい顔になってしまい、目を伏せる。

そして、自然と言葉を洩らしてしまう。

「・・・なんとか、うちは一族抹殺を、やめさせることは出来ないの?・・・」

「六花!そんなことは出来ないよ。余計なこと言うな!」

六花の左肩に載るゼツが、その様子を見て叫んだ。

「おお。番犬、珍しく気が合うな。いや、合って当然だよなぁ!お前はマダラの意思なんだからなぁ!!」

「六花、さすがに君がここまでマダラの意思に反すると思わなかったよ。ホント役立たずだね。だけど最後くらいはしっかり役に立ってもらうよ。オビト、六花はこの八年、人柱力の傍に居て九尾封印の鍵穴の一つを見つけている。六花に鍵を開けさせ封印が弱まった所で九尾を抜くんだ。それまで僕が南賀乃神社で六花を待機させておく」

「ゼツ、やっとお前も正気に戻ったか…解った。ではこれから共に南賀乃神社に向かう。そこでイタチと合流し、俺はうちは一族の居住地へと向かい抹殺を実行する。その間、六花、お前は神社で大人しくしていろ。変なまねをしたらお前を殺してから里を九尾で破壊してやるぞ。解ったな?」

「・・・分ったわ」

六花は俯きながらゼツとオビトの話を聞いていた。

しかし、六花の心は既にここに在らずであった。

 

 

午後十一時半を過ぎた頃。

六花、ゼツ、オビトは、うちは一族居住地の一角に在る南賀乃神社に到着した。

三人は黙って立ち尽くし、イタチが来るのを待った。

「…来たな」

オビトがそう言うと、三十秒ほどして扉が開き、イタチが入って来た。

そして三人の前に立った。

その顔は、先日うちは居住地で会ったイタチの弟に少し似ているが、十三歳とは思えない凄然たるものだった。六花には、その様子はまるですべての感情を失くしているようにも見えた。

「マダラ…隣の女は誰だ?」

イタチはオビト(マダラ)に向かって静かに訊いた。

「暁の協力者の一人だ。うちは抹殺を手伝わせようと思って連れて来たんだが、ここに来て報酬が少ないと言って拒否されてな。仕方が無いから留守番をさせる。気にしなくていい…さあ行くか」

「ああ」

イタチが先に神社を出て行き、その後をトビが続く。

しかしトビは出口で立ち止まり、六花に振り向いて言う。

「お前はそこで、うちは一族の断末魔を聞きながら転生術の復習でもして居ろ。フッ」

そして六花とゼツを残し、二人は出て行ってしまった。

 

 

六花は、小さな窓から差し込む月明りを眺めていた。

今夜は満月である。

「僕が耳栓しててあげよっか?」

「…うん」

六花はゆっくりとその場に座るとゼツは身体を広げ、いつものかたちになり、六花を後ろから抱き締める。

そしてその手で優しく、六花の両頬と両耳を覆った。

「…ありがとう。ゼツ…」

「…オビトに情けはかけるんじゃないよ。確実に殺すんだ。アイツだって六花とナルトを殺すことが目的なんだから。オビトはもう要らない。僕が白ゼツと魔像を使ってなんとかマダラを復活させる。尾獣はマダラ自身に回収して貰おう。その時は六花もちゃんと手伝うんだよ?」

「…でも私にオビトを殺せるか不安よ。怖い…怖いの…」

六花は両手で顔を覆い、うな垂れた。

「…何も怖くなんて無いよ。僕が付いてる…愛してるよ。六花」

「…ありがとう。ゼツ。私も、愛してる…」

そう言うと、六花は顔を覆った手をゆっくりと除けた。

 

「さあ、行きなさい。ゼツのことは出来る限り止めるから」

「ありがとう!ヒミコさん!」

 

目の前にヒミコの姿が現れた瞬間、六花は立ち上がり、神社を飛び出して行った。

ヒミコはそれを見届けるとその場にしゃがみ、球状に戻って床に転がるゼツに両手をかざした。

「チャクラの無い私にはゼツをいつもより五分程度長く眠らせることしか出来ない…芙蓉、頑張るのよ…」

 

 

ザシュッ!「ぐぁっああ!」ドス!「きゃああぁ!」・・・

 

イタチは刀の血を振り払い、顔に着いた生温かい返り血を腕で拭いながら、また前に歩き出す。

その目の前に、月光を背にした人影が現れた。

イタチは黙って再び刀を構える。

 

「あなたは一族と一緒に、自分自身のことも殺している」

「?・・・お前は、さっきの・・・退け。邪魔をするな」

 

六花は静かにイタチに歩み寄る。

「時間が無い。邪魔するならお前も殺す」

「あなたを助けたいの!…うちは一族のことも、そしてこの木ノ葉の里も!」

「何も知らぬ部外者が口を出すな」

「万華鏡写輪眼…あなたももっているんでしょう?私ももっているの」

そう言うと、六花はイタチに万華鏡写輪眼を見せた。

「・・・だったらなんだ。俺と戦うつもりか?」

「違う。一族に幻術をかけて、クーデター計画や里への反発思考を書き換えましょう。そしてあなたに命令している、志村ダンゾウの思考も!私たち二人でならやれるわ!!」

その言葉に、イタチは目を見開き、ごくりと唾を飲む。

 

【挿絵表示】

 

頭に、先日死亡した親友・うちはシスイが試みようとしていた事が浮かぶ。

だがそれは失敗に終わった。

しかし、いま二人の万華鏡写輪眼をもつ者が力を合わせれば…

 

イタチは構えた刀を下ろし、六花に歩み寄ろうとした。

 

ビュン!!・・・ズガッ!

 

空から飛んできたクナイを、六花がかわし、クナイは斜め後ろの壁に深く突き刺さった。

 

「お前は役立たずというより害虫だな…イタチ、この女に耳を貸すな。こいつは二代目火影・千手扉間の妻だ。お前を騙してお前の弟を含め、うちは一族を殲滅させ里を牛耳る気だ!」

電柱の上に居るオビトが、イタチに向かって言った。

「!!?」

イタチは急いで後ろに飛び退き、再び六花に向かって刀を構える。

今度は殺意を込めた厳しい眼で六花を睨みつけている。

「…私は確かに千手扉間の妻です。でも私は、私に出来る精一杯の贖いをするつもりです!」

「・・・。一族の枠に拘り、自ら破滅の道を選ぶ愚かな奴らなど消えればいい。今の俺にはもう、一族という概念はない。」

そう言うとイタチは姿を消してしまった。

 

そして、トビは電柱から六花の前に飛び降り六花に歩み寄る。

「お前、死を前にして保身に走ったか。とことんクズだな…あとでたっぷり甚振って殺してやる。逃げても無駄だぞ」

「逃げたりしなんてしないわ。檜枝岐神社で待ってる…あの場所は私の思い出の場所だから…」

「フン」

トビはその場から消えた。

 

六花は踵を返し、歩き出す。

すると目の前の地面からゼツが飛び出して来た。

「六花!馬鹿じゃないの!いや馬鹿だろ!バーカバーカ!!馬鹿六花!!」

「・・・ごめん」

「ごめんで済んだらマダラは要らないんだよっ!」

「フッ。何それ・・・」

「あれだけうちは抹殺を止めようとするなって言ったのに!どんだけ馬鹿なの⁉オビトがイタチと組んで攻撃してきてたら死んでたかもしんないんだよ⁉」

球状のゼツは目を吊り上げ、六花の顔の高さまで何度もぴょんぴょん飛び跳ねながら抗議した。

「・・・ごめんったら」

六花は少しだけ苦笑して掌を揃えて差し出した。するとゼツはその上にちょこんと載った。そのゼツに向かって六花は目に涙を滲ませながら言う。

「イタチをあんな行動にまで追い込んだのは、もとはと言えば、扉間さま…扉間さまを追い詰めたのは、この私。だからイタチの罪は私の罪よ。彼の罪は私が持って行くわ」

「どんだけ自虐的なのさ。ホント、君は馬鹿みたいに優しすぎるんだよ…いいから直ぐ気持ちを切り替えて!オビトとの対決に備えるよ!」

「…うん」

六花は顔を上げ、正面の闇を睨みつけた。

 

・・・どうせすべてが許されないのなら、もう逃げ場は要らない・・・

 

 

辺りは真っ黒な血の海が広がり、その上に満月が浮かんでいる。

その隣でトビとイタチが落ち合っていた。

 

「あとはお前の両親か…一人でやれるか?」

「父も万華鏡写輪眼を開眼している。壮絶な戦いになるかもしれないが、実力は俺のほうが上だ。決して負けはしない」

「俺はこれからあの裏切り者の女を片づける。お前よりは時間はかからんだろう。南賀乃神社で待っているぞ」

「いや、すべてが終わればダンゾウと火影に念を押しに行く。先に行っていてくれ」

「分った」

 

 

 

イタチは音一つ立てることなく自宅の屋敷に入った。

庭を通り、一つだけ灯りのついている部屋の前に立つ。

僅かに障子戸を開け、中を覗いた。

「こっちだ」

「!」

「罠など無い。入って来い」

隣りの部屋から父の声がした。

イタチはゆっくりとその部屋の前に移動し、慎重にドアを押し開ける。

・・・キィィ・・・

「・・・!」

ドアを開けると、部屋の中には父と母がこちらに背を向け、二人で並んで正座していた。

「俺の子と、殺し合いはしたくない…そうか、お前は向こうについたか」

イタチは右手に持つ刀を握り締め、何とか口を開く。

「父さん・・・母さん・・・俺は・・・」

「解っているわ・・・イタチ」

母は正面を向いたまま、気丈な声で言った。

「イタチ。最後に約束しろ。サスケのこと、頼んだぞ」

イタチは刀を二人の背中に向け、数歩、歩み寄る。

「・・・解ってる」

そして両手で刀を構えた。

しかしその手はぶるぶると震え、写輪眼の瞳には涙が浮かんでいる。

「怖れるな。それがお前の決めた道だろ。お前の痛みに比べれば、我らの痛みは一瞬で終わる…考え方は違っても、お前を誇りに思う…」

遂にイタチの眼から大粒の涙が滝のように流れ、刀を握りしめた両手の上に滴り落ちていた。

「お前は本当に優しい子だ…」「ええ、本当に…」

その言葉が、父と母の最後の言葉になった。

 

 

つづく

 

 

 

 

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