罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】   作:千野 伊織

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◆◆今回(13)の登場人物は、ゼツ(黒)、うちはオビト、六花(芙蓉)。

うちは一族抹殺を止められなかった六花。
しかし、これ以上オビト自身のやり方を許すわけにはいかない。
六花はオビトを殺すことを決意し、オビトと闘いを始めます。
二人の闘いの結末は・・・?




続・六花の森(13)~オビトvs六花の闘い。そして、六花の夢

 

 

「選べと言われたけれど、選ぶことは出来ないわ」

 

そう言うと、六花はゆっくり振り返った。

その眼には真っ赤な写輪眼が浮かんでいる。

急に強まった風は六花の後ろで束ねた髪を真横に揺らし、朽ち果てた檜枝岐神社の屋根がピュゥゥーと音を立てている。

同じく、オビトの伸びた髪も強風で真横に揺れていた。

 

「それは、俺を倒すという意味か?」

「その通りよ」

「フン・・・そうか。だがお前が負ければ九尾のガキも死ぬということだぞ」

「あなたはどうせ最初からそう言うつもりでしょう?私にナルトくんを救わせた後、殺す」

「…解ってるじゃないか。お前はマダラの夢の実現を口にするくせに、自分の手を汚すことを嫌い、行動を選り好みする。いや何もしない…お前は邪魔だ。いい加減俺の前から消えろ」

「許せないんでしょう?私とマダラさまが夢の世界ではなく、この世界で幸せになる事が…本当は解っているんじゃないの?夢の世界で幸せになれても、この世界で幸せにならなければ意味は無いってことを」

その言葉を聞き、オビトは六花に向かって一歩近づき、言う。

「本当の愛も、希望も、夢も、この世界には最初から存在などしないのだ!そして、その世界を終わらせるのはこの俺だ!」

六花は目を伏せ、静かに言う。

「あなたをそんな風にしてしまったのは私にも責任がある・・・そんな私があなたを殺すなんてこれ以上の自分勝手は無い。でもこれが私の・・・“夢“の叶え方よ!」

そう言い終わると刀を抜き、オビトに向かって走り出す。

オビトは両手に繋いでいる鎖を掴み、一直線にして身体の前に構えた。

 

ガシィン!!

六花の刀が勢いよくオビトの鎖に交わった。

交わった刀と鎖越しに、六花の眼とオビトの右目が合う。

すると六花はニヤリとして見せた。

「雷遁・鎖雷!」

パチッバチィ!チュイィィィン!!

六花の刀の淵に電流の鎖が現れ、淵に沿って高速で回転し始めた。

…バチンッ!! 

「!!」

するとオビトの鎖はあっという間に切れてしまった。

鎖を切った刀はその勢いでそのままオビトの身体も真っ二つに切り裂いたが、それはただオビトの身体をすり抜けただけだった。

「…フン。 火遁・爆風乱舞!」

ゴオォォォォォ・・・!!

オビトは右目から異空間より呼び寄せた竜巻に火遁で火をつけた火炎風を六花に向けて繰り出した。

六花は瞬時に後ろに飛び退く。しかし火炎風は直ぐに六花を飲み込んでしまった。

この距離で喰らえば丸焦げだ…とオビトはほくそ笑んだ。しかし。

 

「くそっ!こいつ須佐能乎が使えるのか⁉」

 

爆風が消えると、そこには、青色の半透明のチャクラを纏った骸骨の肋骨に守られている六花の姿があった。その両眼には万華鏡写輪眼が浮かんでいる。

そして六花が地面に着地すると、六花を守った骸骨の骨が増え、肉付きがしっかりとした巨人の姿になった。

巨人の眼は冷たくも眩しく光っている。しかし、六花の瞳はそれ以上に冷たかった。

オビトは初めて見る六花の表情に一瞬息を飲んだ。

・・・本気の殺気だ・・・

「神威・魔風手裏剣!」

オビトの右目から大型手裏剣がいくつも飛び出し、六花本体に飛んで行った。

巨人はその大型手裏剣を左手で払い除けようとしたが、その瞬間に手裏剣は回転を速めた。

ザシュッ!・・・

巨人の左手が切れ、切り落とされた手先はその場で消えた。しかし直ぐに再び剣を握った左手が現れる。そして同時に、巨人のもう片方の手には、先端が半円形をした鉄鎚が出現していた。

 

【挿絵表示】

 

「須佐能乎・智慧の鉄鎚!」

巨人はその鉄鎚をオビトに向かって放り投げた。

 

ビュン・・・!

 

オビトの身長の倍はあろうかというその鉄鎚はオビトの身体をすり抜けた。

「無駄だ!!たとえ須佐能乎の攻撃だろうと俺には当たらん!!」

オビトをすり抜けた鉄鎚は空中で円を描いて再びオビトの背中めがけて飛んでゆく。

オビトは振り返り、その鉄鎚を睨んだ。

「神威!!」

しかし、その鉄鎚に変化は無い。異空間へ吸い込み飛ばすことが出来なかった。

「…なんだと⁉」

「智慧の鉄鎚はあなたに命中するまで決して止まらない…私とあなたに真理を知らせ、迷いを破るまでは、決して!!」

そう言うと六花は須佐能乎を纏ったままオビトに向かって走り出す。

巨人の左手は元通りになっており、その手には剣が握られている。

 

「土遁・土竜隠れの術!」

オビトは地中に潜り込んだ。

しかし、鉄鎚はオビトという標的を確実に追う。

ドスゥウン!!

オビトが居る場所に鉄鎚が喰い込んだ。と同時に…

グサァァッ!!

その場所を六花が巨人の剣で突き刺した。

しかし、その剣も地中に居るオビトをすり抜けた。

オビトは素早く地中を移動していく。

しかし鉄鎚はひとりでに地面から抜けると、地中のオビトに引き寄せられるようにオビトを追い始める。

そしてまた地中に居るオビトの頭上に鉄鎚が喰い込む…そこを巨人の剣が突き刺す…その繰り返しが三回ほど続いた。

 

そしてとうとう、オビトは地中から飛び出して空中に舞う。

「まるで、現実から逃げているあなた、そのものね・・・でも現実はあなたを逃がさない」

そう言って、六花は美しい顔で微笑んだ。

空中から地面に着地し、オビトは落ちて来る鉄鎚に向かって両手を顔の前で組んで防ぐ仕草をした。

鉄鎚はなおもオビトの身体をすり抜け地面に突き刺さる。

・・・まずい。もうすぐ五分が経ってしまう・・・

 

オビトはその場を飛び退き、数メートル先の地上に立つと印を結ぶ。

「うちは火炎陣!!」

するとオビトを囲うように炎の防壁が空へと延びてゆく。

しかし、鉄鎚はその防壁の中に居るオビトめがけて飛んでいった。

そして、それと同時に…

「須佐能乎・火遁・豪火滅失!!」

六花が印を組むと、巨人は口から業火を噴出し、鉄鎚とまったく同時にオビトを囲う防壁にぶち当てた。

ズオォォォォッゴオォォォォォ・・・!!

鉄鎚と炎はオビトの防壁を破り、オビトに襲いかる。

「ぐぁぁぁっ!!」

炎の海の中からオビトの叫び声が聞こえ、鉄鎚はその場から姿を消した。

 

六花は炎を収めると、その場で仰向けに倒れているオビトに歩み寄って行った。

そして、尚も冷たい瞳でオビトを見下ろす。

面は割れ、オビトの素顔が露になっていた。

左目は閉じており、開いたままの右目の写輪眼はすでに消えていた。

六花は左の手袋を外しながらその場にしゃがむと、人差し指と中指二本でオビトの首の脈を診た。

「・・・死んでる。」

そう言うと立ち上がった。

すると、どこからともなくゼツが現れ、六花の左肩に載る。

「やったね六花!僕の力無しでオビトを倒すなんて!惚れ直…」

 

ドスッ!

 

「死ぬのは、お前だ」

 

六花は、地面を見た。

しかし、そこにオビトの死体は無い。

オビトは木遁・挿木の術で出した鋭い木棒で六花の背後から心臓を貫いていた。

六花の眼に、身体を貫通して血の付いた木棒の先端が写る。

 

「あなたに…真理は分らなかった様ね…」

「!!?」

 

オビトが刺した筈の六花の姿は消え、目の前に、自分と向かい合って六花が立って居る。その左肩にはゼツも居る。

「影分身か!」

「あなたのは・・・イザナギ・・・でしょう?あなたのうちは抹殺の目的はマダラさまになりきる事だけじゃない。写輪眼の収集の為。なら、その眼を使ってイザナギを使う事くらい想定内よ」

「お前らっ・・・!」

「二対一・・・まだやる?」

「僕はお前の味方なんて一言も言ってない。むしろもうお前は用済みだ。六花、さっさと殺しな」

しかし、六花は動かない。

真っ直ぐ、未だ殺気を宿した瞳でオビトを見据えている。

「六花!早くしろ!」

「待ってゼツ・・・。ねぇオビト、私の話を聞いてくれる?」

「…俺の負けだ。いまの俺にお前は倒せないようだ…フン。話を聞いてやる」

「ありがとう…。あのね、私の夢はマダラさまと同じ。世界を救い真の平和を築くこと。だけどそれは“うちはマダラ”だけでは実現できないと思ってるの」

「どういう意味だ?」

「あなたはうちはマダラの代役、つまりマダラさまの協力者。それに、役立たずだけど下僕の私、そしてこのゼツ・・・それだけでもマダラさまは一人じゃないってことじゃない?」

「・・・・。」

「それに、私たち以外の、今は対立している誰かとも、きっとこの先手を取り合ってくれると信じてる。それまで私も、あなたと一緒に『月の眼計画』を手伝う。そしてようやく、私もその正義に従う覚悟が出来たの。あなたのお陰でね・・・」

「フッ・・・馬鹿げた事を考えているんだな・・・本当に甘い」

「もっと笑われると思うんだけど、その誰かの一人は、ナルトくんだと私は思ってる」

「フフッ。お前、頭大丈夫か?」

「へへっ。だよね・・・。でも二人が手を取り合う為に、ナルトくんの中に居る九尾がどうしても必要なら、あなたが九尾を抜いて。だけど、今はその時じゃないんでしょう?」

「お前、知っていたのか⁉」

「うん。ゼツから聞いてる。一尾から九尾まで居るうちの九尾をいきなり最初に入れちゃうと魔像の中のチャクラのバランスが崩れるのよね?」

「・・・ああ、そうだ」

「その時が来たら、私が輪廻転生の術でナルトくんを助ける…。でもね、それは必要無い気がするの。ナルトくんはきっと、どの火影をも越える強い忍びになってくれる。そして最強の忍であるマダラさまと手を取り合ってくれるはず!絶対にね!ウフフフ!」

「フフッ、あははは!・・・お前、意外と面白い女なんだな・・・。まぁでも、俺は俺のやり方でこれからもやる。それは変わらない。それを邪魔するというなら、次こそ負けない」

「こっちこそ。私が許せないやり方をするなら、あなたを止める」

「…はぁ。まったくもう。なんでこうなるのさ…」

ゼツは六花の左肩で溜息を吐いた。

月は随分と西に傾き、高い山の頂に届きそうになっていた。

 

 

今夜、秘密裏に惨憺たる結末に追い込まれたうちは一族とは対照的に、うちは一族居住地区以外の里の風景は、いつもと変わらず秋冷と月明りに照らされ静まり返っている。

「良かった…ナルトくん…」

六花は、カーテンが僅かに開いているベランダの窓から、ナルトの穏やかな寝顔を確認すると静かにその場から姿を消した。

 

「もう今日は寝かせてよ…」

「駄目だよ!」

六花は自宅の玄関を入ると、ドスンと床に座って靴を脱ぎ始めるが、その左肩でゼツは先ほどからずっと同じことを言い続けている。

「六花のその甘い性格、八方美人な性格でこれまでどんだけ痛い目に遭ってきたか忘れたの⁉周りにも大迷惑かけてきた事も!オビトは絶対今回の仕返しをしてくるよ。イザナギを使えば暫くは全力で戦えない。明日オビトを改めて殺しに行くよ!」

「もう、今日は本当に疲れているの。その話は明日にさせてってば」

「忍になって何年経つのさ!こんな事で疲れた言うな!反省は今日中にしとくの!」

「あ、一緒にお風呂に入る?」

「はぁ⁉…話を、逸らすなよ」

「だって今日は本当に辛かったし、ゼツにも悪い事したし…ゼツと一緒に居たいなって。それにお風呂に入りながらなら少しは話せるでしょ」

「し、仕方ないなっ」

 

 

狭い湯船の中、六花は足を折り曲げ、膝を立てて浸かっている。

湯から出ているその膝の間にゼツが載っている。

「…あのね、オビトを殺さなかったのには理由があるの」

「何?」

「三日前、私がマダラさまを蘇らせるって言ったけど・・・本当は今、マダラさまに復活してほしくないの」

「なんで?あんなにマダラに会いたがってたのに。それに僕だって…」

六花は僅かに唇を噛み、俯いた。

マダラには早く会いたい。しかし、今は…

「今はまだナルトくんは幼すぎる。忍としてもまだまだだし。今のナルトくんとマダラさまが会ってもナルトくんが殺されて終わりだわ」

「なるほど。だからオビトには代役を続けて貰わないと困るって思ったわけね」

「うん…。私はいつでも輪廻転生の術を使う覚悟は出来てる。でもそれは今じゃない。ナルトくんが強く成長するまでは…」

「ナルトが強くなるかなんてどうしてわかるのさ!父親がデキる忍だったからって遺伝するとは限らないよ」

「心の痛み、本当の孤独を知っているひとは、人を深く理解できるものよ…だから、きっとナルトくん自身も誰かに理解して貰える日が来る。沢山の仲間に支えられる日が来る。だからよ」

「“芙蓉”がそうだったように?」

ゼツのその言葉に、六花はゼツごと膝を抱えた。ゼツの身体が六花の柔らかい頬に吸い付き、ゼツは心地よさそうに目を細める。

「…私は強く居続けることなんて出来なかったけど、ナルトくんは強くなる…絶対に」

「なーんだ。ぜんぶ六花の希望的観測じゃん。ま、なんにせよ六花に輪廻転生の術は絶対に使わせないけどね!」

そう言うとゼツは六花の頬に軽く口づけをした。

「うん…私も出来れば使いたくない…だってマダラさまと会いたいし、ナルトくんと手を取り合うところ見たいし…」

「はぁ…まったく相変わらず頑なだね…ていうかここまで来たら信念を曲げないってやつ?」

「そんな立派な物じゃないわ…私の…我儘だから…」

 

 

 

つづく

 

 

 

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