罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】 作:千野 伊織
暁に新たなメンバー二人が加わります。
そしてイタチと六花は改めて対峙することに。
イタチは六花を敵とみなすのか・・・?
六花が暁のメンバーになって五年・・・
六花にも、ナルトにも、変化が起きていました。
※原作を引用している箇所があります。
「新しくこの暁のメンバーになった者を紹介する」
ペインが宣言する前から、小南を加えて円陣になっている他の暁のメンバーたちの眼は既にその二人に注がれていた。
「元・木ノ葉隠れの忍、うちはイタチ。それから、六花だ。十蔵、お前はイタチと組め。ゼツは六花とだ」
「おい、俺はどうするんだ?」
角都が間髪入れずに質問をした。すると大蛇丸も口を開く。
「私も以前から言っている様に、いい加減六花と組ませて欲しいわ。それかイタチ君でもいい」
「角都は暫く一人でやれ。新しいメンバーと組ませる。大蛇丸、お前には六花もイタチも組ませることは出来ない。同じ木ノ葉出身同士を組ませれば反逆を企てないとも限らないからな」
「そんなの有り得ないわ!木ノ葉に未練たっぷりな六花ならまだしも、イタチ君は違うでしょう。私と同じく木ノ葉の里を全否定しているじゃない。むしろ気が合うわ」
「黙れ。企むのはむしろ、お前のほうではないのか?疑われたくなければ言う事を聞け」
「フン。そう。分ったわ・・・」
「…では、それぞれ任務に当たってくれ。解散だ」
他のメンバーがアジトの出口へ向かおうと足を動かし始めるなか、六花は先ほどから感じている視線に縛られ、動けない。
右隣りに居るイタチは写輪眼を浮かべて六花を横目で睨んでいる。
六花は思い切ってイタチのほうを見て、言う。
「…オレも、目的はお前と同じだ。」
そう言ってイタチから目を逸らすと、六花は出口に向かって歩いて行った。
「お前ら知り合いなのか?」
イタチの右隣りに居る、イタチとツーマンセルを組むことに決まった十蔵がイタチに訊ねた。
「いや…さっき初めて会った」
イタチは振り返り、写輪眼の消えた眼で六花の後ろ姿を見た。
――オビトが六花に敗北した次の日。山岳の墓場のアジト――
「・・・俺にトドメを刺しに来たのか?」
面で顔を隠しているオビトは、魔像があったはずの場所の近くに座って居る。
魔像はいま暁のアジトに在り、ここには柱間の細胞を培養した巨大な植物だけが残っている。
『そう』「じゃないわ。」
ゼツと六花が同時に言葉を発した。
「俺はお前にも木ノ葉の里にも、そして九尾にも、もう手を出すつもりは無い…」
「んなわけないだろ。暁の組織が強固になって、他の尾獣が揃えばまた里を潰す気だろ」
「ゼツ!・・・。オビト、私も今はあなたと戦う気は無いわ。その代わり、私の言う事を聞いて頂戴」
「言う事を…聞けだと?…昨日も言った通り俺は俺のやり方を変えるつもりは無いぞ」
六花は俯いたまま小さく深呼吸をすると、思い切り顔を上げ、強い眼でオビトを見て言う。
「私を・・・暁の正式なメンバーにして。そして白黒ゼツと組ませて」
「・・・なるほど。内部から俺のことを監視するつもりか」
六花は尚も真っ直ぐオビトを見て言う。
「昨夜のあなたとの戦いで、やっぱり私も直接マダラさまの『月の眼計画』をこの手で進めたいって思った…。でも私には貴方と同じやり方は出来ない。私なりにこの暁を強固にする役目を負うわ。その為には…非情になる!」
六花の言葉にゼツが付け加える。
「オビト。以前も言ったけどお前に六花は殺せはしないし殺させない。絶対にな。お前の仕事がマダラ復活までなら、六花の仕事はマダラ復活の後が本番だ。それまではお前が裏切らないか見張ることが役目さ」
「私はあなたの月の眼計画の進め方については口出しはしない。だけど、あなたが少しでも計画から逸脱している事、そして計画を放棄する事は許さないわ」
その言葉にオビトは胸の前で固く組んでいた腕を解き、今度は膝を組くむとその上に軽く手を置いた。そして考える。
・・・これまで非協力的だったのに俺に勝ったら急にこの態度…気に食わないが仕方が無い。
六花は厄介だ。俺がもっと力を付け、尾獣がある程度揃うまで近くに置くほうが俺にとってもコイツの動きを把握ができる。互いに見張り合う均衡状態が今はベストだな・・・
「解った。ようやく利害の一致というわけだな…月の眼計画に向けて」
「そうね。改めて、これからよろしく」
「解っているとは思うが、暁の支配者は俺だ。それを忘れるな」
「ええ。解ってるわ」
・・・・・・・・・
◆
紺碧の海には白波が立っており、砂浜では哀切な声で鳴きながら親鳥を探す一羽の千鳥がちょこちょこと歩いている。
六花はその紺碧の海と千鳥の姿それぞれに、愛する二人の姿を重ねていた。
『よく飽きないな』
『飽きませんよ。だってこんなに綺麗なんだもん。それに…』
しかし、隣にマダラは居ない。ずっと、ずっと前から…もう。
今年も残り数日となっていた。毎年この時期になると必ず思い出す、あの日。
初めて胸に抱いたナルトの体重と、体温、そして母を求める、あの瞳…。
その瞳は海の様に深く無限大の可能性を秘めていた。そして堪らなく愛おしかった…。
その想い出に、いつも六花の胸は強く締め付けられるのだった。
すると突然大きな風が吹き、六花の纏う装束の裾を翻した。
左肩に載るゼツがその様子を見て言う。
「この装束六花に似合ってるよね。前より良いよ」
「…えっ?あぁ、そう?正直私は好きにはなれないけど…まぁ覚悟の証だからね」
「だって前の格好(戦闘服)は胸の谷間が丸見えだったもん。これくらい全身隠れてる方が安心だよ」
「でも私はマダラさまが選んでくれた服だから、あっちのほうが好きだし安心よ」
「あーあ。でもまた六花の作ったケーキが食べたいなぁ」
「…うん。でももう二度と木ノ葉の里には住めないからね…(山岳の墓場の町に在る)一軒家のアジトも随分片付いてきたし、また作ってあげるわよ」
「わーい。大福も作ってね」
「ハイハイ・・・・・って、ちゃんと、来てくれたみたいだわ」
六花がそう言うと、ゼツは六花の襟の内側に入り身を隠した。
一分ほどすると、後ろの松林の中からその人物が歩いて現れた。
「来てくれて、ありがとう。イタチ・・・」
「俺もアンタに聞きたいことがあるからな」
先日イタチはツーマンセルを組まされた十蔵との任務中、十蔵が水の国で死亡した。その為、今日は暁のリーダーであるペインが選んだ新メンバーに会うことになり、イタチは暁のアジトに呼ばれていた。
そしてイタチがペインに会った後、その新しいメンバーと合流する前、六花は話があると言ってイタチをこの場所へ呼び出したのだった。
「そうよね・・・どうぞ、何でも訊いて」
「まずは、今日ここに呼び出した理由だ」
「あの日…私があなたに言ったことは本心よ。私は木ノ葉の里を、木ノ葉に生きる仲間を守りたいって思ってる。夫・扉間がうちは一族にしたことへの償いの気持ちもあるけれど、あの時は純粋にあなたのことを救いたかった。信じて貰えない事を承知の上で更に言うと、だから、私が暁に入った目的はあなたと同じだと伝えたかったの」
「なぜ暁に入った理由が俺と同じだと言える?何を知っている?」
「夫の政策を受継いだ志村ダンゾウの行き過ぎたうちは迫害について調べていたの。それであなたが暗部に入ってからの経緯も知った。…二重スパイ。辛かったでしょうね。心に血を流しながら働いていたあなたが、たかが一族に失望しただけで、あんなことをするとは思えない。うちは一族を犠牲に木ノ葉の里を守った…だから今度は、犯罪組織である暁を内部から監視する為に加入したんじゃないの?」
「・・・。俺はアンタのことを木ノ葉の里で何度も見た事がある。ナルトの養育係を辞めた後もずっと。ナルトに九尾が封印されていることも知っているのか?」
「ええ。知っているわ。でもそんな事関係無くあの子を育てたかった…養育係になったことも、辞めた後もあの子の傍に居たのも全ては私のエゴよ…」
「・・・。だが、千手扉間の妻・芙蓉は随分前に死んでいる。アンタは一体何者で目的はなんだ?」
「・・・。私は確かに一度死にかけたわ。でも、うちはマダラに助けられたの。うちは一族のあなたなら知っているかもしれないけれど、私は扉間と結婚する前、マダラとも結婚していた…」
「要するに、アンタはマダラの仲間というわけだな」
「ええ・・・。だけど」
イタチは一度目をつぶると、再びゆっくりと目を開けた。
次の瞬間。
六花とイタチは真っ白な空間に居た。
・・・なんだここは!何も無いなんてあり得ない!・・・
イタチは向かい合っている六花に動揺は見せず、心の中で動揺した。
一方、六花は燃える写輪眼でイタチを睨んだ。
「私の心の中に勝手に入って来ないで!…ここに入って良いのは…私の愛するひとだけよ!」
気付けば、二人は再び元の場所に戻っていた。
背後では変わらず波の音と千鳥の声がしている。いや、千鳥の声は増えていた。親鳥がやってきたようだ。
イタチも写輪眼を浮かべ、ごくりと息を飲むと口を開いた。
「・・・本当に、何者なんだ?」
六花は悲しそうに眼を細めて答える。
「私にも・・・もう解らない・・・だけど、私は木ノ葉の里を、そしてナルトくんを守りたい。それだけなの。もうそれだけの存在で良い…。
私を信じてくれなくてもいいわ。でも、私の力が必要な時は言って。これは二人だけの秘密。表向きは私も暁のメンバーとして世界征服が目的だから…」
六花はそう言って静かに目を閉じると、左目から一筋の涙が頬へと流れた。
そして、そのままその場から姿を消してしまった。
「・・・・。取敢えず、敵では無いという事か・・・」
イタチは写輪眼を収めると、千鳥が飛び去った砂浜を静かに眺めた。
◆
「私…ハゴロモお兄さまのことも、ハムラお兄さまのことも、大好きです。でも…今は…誰とも結婚したいと思えないんです!」
・・・これはあの時、私が扉間さまに言った言葉…でもハゴロモ?ハムラ?…誰、だっけ。あれ、でもあの時の気持ちと、違う。私、本当は・・・
「うむ…お前の感覚のほうがこの世界の価値観に近く、正しいのかもしれない。母の因果を断ち切る為にも、その気持ちを優先させることが最善だろう…」
ハゴロモは優しい顔でそう言うが、隣のハムラは身を乗り出し大きな声で言う。
「ヒミコ!兄と妹だろうと、元々この地のヒトではない我らに、そんな事は懸る事では無い。仕方が無かったとはいえ母を封印した俺たちのことを考えたくない気持ちも解る。だが俺と二人で居れば気持ちも変わる。頼む、一緒に月に来てくれ!」
・・・そうだ、これはヒミコさんの記憶。でも本当はヒミコさんは・・・
目の前のハゴロモとハムラの姿が消え、気づけば床に座りうな垂れて、顔を覆って泣いていた。
「…ヒミコ…」
「嫌っ!!触らないで!!・・・こんな身体の私はもう、もう月に行くしか・・・」
「そんな事は無い!ハムラは一人で行かせる。お前は自由に生きればいいのだ。時が経てば体の傷も、心の傷も必ず癒える。それに、お前には母の魂の欠片が封印されているのだ。その魂を封印する為にもお前のチャクラすべてを封印しなければならない。お前はこれからこの地のひとりの女性となり、幸せに生きるのだ…」
・・・なぜ?どうして?私がこんなに傷ついても、あなたは『一緒に居よう』と言ってくれないの!・・・
「!!!・・・ハァハァハァ・・・」
六花は飛び起きた。
息が上がり、寝汗をびっしょりとかいている。
「六花大丈夫?どうしたの!」
ゼツも焦って六花の左肩に載り、心配そうに六花の顔を覗き込んだ。
「・・・うん・・・ちょっと怖い夢、見ちゃっただけ・・・」
「最近多いね。暁に入ってから五年近く、六花が嫌なこと沢山してきてるもんね…ストレスがずっと溜り続けてるんだよ。そろそろ暁を抜けたら?最初から君が暁なんかに入る必要は無かったわけだし。もうこれ以上無理することない」
そう言ってゼツは六花の頬に擦り寄った。
「ありがとう…私は大丈夫よ。暁は辞めない。尾獣狩りもいよいよ本格的に始まるし…オビトの行動をしっかり監視しなきゃ…」
「気持ちは解らなくもないけどさ、ストレスはお肌に悪いよ?マダラが復活して六花が老けてたらガッカリするんじゃない?」
「フフッ。それは困るね…」
六花は苦笑しつつ、ゼツを優しく撫でた。
確かにこの五年間、潜入捜査が主だったとはいえ、六花は暁の正式なメンバーとして汚い事にも手を染めてきた。
そのストレスは計り知れないもので、自分を見失いそうになることが何度もあった。
自己嫌悪と罪悪感で、いつしか自らナルトを遠ざけてしまっていた。
六花はナルトの八歳の誕生日を祝ったあの夜以来五年間、ナルトに会っていない。
六花はいまの自分にはもう、ナルトの前に笑顔で現れて抱き締める資格など無いと思っている。
幸い、六花に敗れたオビトには、九尾の捕獲は最後にするよう約束させている。
また、木ノ葉の里と弟を守るという六花の同志ともいえるイタチの存在のお陰で少しだけだがナルトに対する心配の気持ちは深まらずに済んでいた。
それでも、ゼツの言う理由の通りで悪夢にうなされることも増えていた。
だが今し方見ていた夢は悪夢ではなく、ヒミコに初めてあった日から定期的に見る、ヒミコ自身の記憶であった。
翌朝。
六花は久しぶりに普段着に身を包み、山岳の墓場の港町を歩いていた。
昨夜はうなされて飛び起きて以降なかなか寝付けず、仕方が無いので日の出前にベッドから出た。怠さはあるが折角早起きをしたので、漁港で毎朝行われている朝市に行ってみる事にした。
それから新鮮な鰆とハマグリ、菜の花や蕪などの野菜を買い、今は一軒家のアジトに帰る途中である。
五月に入ってから雨や曇りの天気が続いていたが、この日ようやく晴れ、太陽の光に踊るような涼やかな風が六花の頬をかすめていった。
ふと足を止め、目の前の木を見上げる。
それは、緑の葉と白い花のコントラストが美しい、ハナミズキだった。
遠い昔、扉間が弟子である猿飛ヒルゼン、志村ダンゾウ、水戸門ホムラ、うたたねコハル、そして“芙蓉”の教え子でその日から扉間の弟子に加わったうちはカガミを自宅に招いて、芙蓉が料理を振る舞い、皆で楽しい時間を過ごしたことを想い出した。
あの日、弟子たちが帰って静かになった縁側で、扉間と二人肩を寄せ合い、扉間が芙蓉のためにと植えてくれたハナミズキの花を眺めた…。
・・・だけど私はもう、自分が何者か、いよいよ分らなくなってきてしまった・・・
そう心の中で呟くと、視線を足元に落してゆっくりと歩き始めた。すると。
「・・・!」「うん、ペインからの通信だね」
ゼツが六花の胸の谷間から出て左肩に載り、六花は再び立ち止まって斜めに視線を落として耳を澄ませる。
「…木ノ葉隠れの里で事件が起きた。大蛇丸が音隠れと砂隠れの忍を使い、木ノ葉崩しと謳って戦争をしかけた…」
「・・・!!」
六花の心臓がドクンと大きく音を立てた。
・・・ナルトくん!・・・
「…しかし木ノ葉崩しには失敗したようだ。この戦争で三代目火影が死んだ。引いた大蛇丸だが行方は分からない。誰かに調査に言って貰う…」
・・・ヒルゼンくんが、大蛇丸に・・・
六花は大きく目を見開き、少し開いた口に手を当て俯いた。その時。
「…俺が行こう…」
うちはイタチが真っ先に調査に名乗り出た。
「…ではお前たちに任せる。九尾の人柱力の件もな…」
「ほら僕が言った通りになった。三代目火影はやっぱりあの時のつけを払わされたよ。あはは」
「ゼツ!笑わないの!…私たちも木ノ葉の里に向かうわよ!」
「行く必要無いって。僕が白黒ゼツにナルトの無事を確認させるから。それに九尾捕獲も今はその時じゃないんだから大丈夫だって」
・・・六花がいま壊滅的な被害を受けた直後の里と、中忍昇格試験中に怪我を負ったナルトの様子を見たら、また感情的になって余計な事をし始めたら厄介だ・・・
「解ってる。でも・・・」
「今行ってイタチの相棒の鬼鮫に、ペインの指令も無い六花が見つかったら怪しまれて面倒な事になる。白黒ゼツにはイタチたちの様子も合せて見に行かせるから、六花は取敢えず待ってなって。それにいま買った鰆とかの生モノどうすんのさ?勿体ないし」
「そ、そうね・・・解った」
六花は少し戸惑いつつもそう返事をし、再びゆっくりと家に向かって歩き出した。
ゼツは、眉を寄せ俯き気味に歩く六花の顔を見ながら思った。
・・・流石に六花も冷静に考えられるようになったね。暁での汚い仕事も、六花にとって己の感情に流される甘い性格を見つめ直す良い経験になったのかも・・・
・・・って、やっぱこうなるよね~。ハァ・・・
六花の左肩で大きな溜め息を吐くゼツを横目に、六花は建物の屋根の上で、離れた場所に広がる悲しい光景に涙を流していた。
ペインの通信の翌日。白黒ゼツからの報告があった。
ゼツにとっては全て既知の事実だったが、そこで初めて里とナルトの状況を知った六花はゼツの反対を押し切り、こうして木ノ葉の里へやって来たのだった。
そして今、木ノ葉の里に到着した六花の眼の前には、三代目火影の遺影と、怪我を負っているものの元気な様子のナルトがある。
そこは三代目火影と、火影と共に犠牲になった殉職者たちの葬儀の場面だった。
「ナルトくん、良かった無事で・・・」
六花はそう洩らすと、しゃがんで屋根に指を当てて目を閉じた。
そして感知を始める。
すると、ナルトの声が聞こえてきた。
『イルカ先生、なんで人は、人のために命をかけたりすんのかな』
「・・・ナルト…くん・・・」
六花は目を閉じたまま、眉を寄せた。
するとナルトの問いに居るイルカという教師の声が、静かにそれに答える。
『人間が一人亡くなる…過去や今の生活、そしてその未来と一緒にな…。沢山の人が任務や戦争で死んでゆく。それも驚くほどあっさりと、簡単にな…死にゆく人にも夢や目指すものがある。しかし、誰しもそれと同じくらい大切な物があるんだ。家族、両親、兄弟、友達や恋人、自分にとって大切な人達…互いに信頼し合い助け合う、生れ落ちて来た時からずっと大切に思ってきた人たちとの繋がり…そしてその繋がった糸は、時を経るごとに太く強くなってゆく。理屈じゃないのさ。その意図を持ちまった奴は、そうしちまうんだ…大切だから』
その答えを聞き、六花はハッと大きく目を開くと、眼の前の小さな二人の姿を見つめた。
イルカの答えは六花の、いや、芙蓉のもっている答えと全く同じだった。
・・・絆…貰って、紡いでゆくもの・・・
六花の二つの眼から大粒の涙が静かに滴った。
そして再びナルトの声がする。
『うん。なんとなくは俺にも解るってばよ。でも、死ぬのは辛いよ…』
その言葉に、ナルトの後ろに居る別の忍が静かに答える。
『三代目だってただ死んだわけじゃないよ。ちゃんと俺たちに大切な物を残してくれてる。ま、いずれお前にも解るようになるさ』
『…うん。それもなんとなく解るってばよ』
「良かった・・・ナルトくんにも、沢山の絆が出来ているのね・・・ヒルゼンくんありがとう・・・あなたは扉間さまの光を受継いでくれた。その光で木ノ葉の里とひとを照らしていたのね・・・」
六花はそう呟くと再び静かに立ち上がった。
先ほどまでの雨は止み、鈍色の空の隙間からは青空がのぞいている。そこから午後の明るい光が差し始める。
六花は被っていた笠を取ると、三代目火影・猿飛ヒルゼンの遺影に向かって深く頭をさげた。
そして頭を挙げ、数秒そのまま真っ直ぐ前を見据えた後、再び笠を被るとその場から姿を消した。
しかし・・・
「今の女・・・確かナルトの・・・」
六花が姿を消す直前、建物の下の狭い街路から、大柄の白い長髪の中年男が六花を見上げていた
つづく