罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】   作:千野 伊織

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今回(15)の登場人物は、うちはイタチ、うちはオビト(=トビ=マダラ)、ゼツ(黒&白黒)、六花(芙蓉)、うずまきナルト、うちはサスケ、自来也、干柿鬼鮫、ペイン、デイダラ。

ナルトの前に突如現れたイタチと鬼鮫。
ナルトを助けに戻って来た自来也は二人を見て、先日見かけた六花と同じ装束だという事に気が付きます。

それから二年半が経過した頃、
イタチはこれまでの役目を終えることになります。
そしてついに尾獣狩りも残すところ八尾と九尾のみになり、オビトはゼツにある提案をし、仲間に引き入れたサスケにもあることを告げます。

※原作を引用している箇所があります。



続・六花の森(15)~流されながらも舵を取る

 

 

コンコンコン・・・・。

 

「?・・・なんだ、もう帰って来たのかってばよ」

ガチャッ。

「・・・!」

・・・誰だ⁉サスケの写輪眼とおんなじ・・・

「しかし、こんなお子さんに九尾がねぇ」

・・・なんでこいつら、九尾のこと知ってんだってばよ・・・

「ナルト君。一緒に来てもらおう。外へ出ようか」

・・・こいつら、タダもんじゃねぇ・・・

「イタチさん、チョロチョロされても面倒ですし、足の一本でも切っておきましょうか」

「⁉・・・」

「・・・久しぶりだな・・・サスケ・・・」

「・・・うちは・・・イタチ!!」

 

この日、ナルトは〝木ノ葉の三忍〟のひとりである自来也と共に、同じく三忍のひとり綱手を探しに宿場町に来ていた。

しかし自来也は道端で目の合った呑屋の女に誘われ出かけてゆき、宿屋の部屋に一人残されていたナルトの前に突然、うちはイタチと干柿鬼鮫が現れた。そしてそこに、イタチの弟である、うちはサスケも駆けてきたのだった。

しかしナルトは突然現れた強者と、サスケとイタチの関係に、ただ驚き固まるしかない。

一方のサスケは写輪眼を発動し、イタチを睨みつけている。

 

「アンタを憎み、アンタを殺すためだけに俺は・・・生きてきた!!・・・・アンタを殺す!!!」

サスケは千鳥という術を左手に発動すると、イタチに向かって一直線に走り出した。

…ガシッ!

しかし、イタチはサスケのその左手を掴むと簡単に術を抑え込んでしまった。

・・・オレがなんとかしないと!!・・・

ナルトは印を結ぶが、鬼鮫の大刀・サメハダによってチャクラは吸い取られてしまった。鬼鮫はその大刀をナルトに振り下ろす。

 

ガチィィンッ!!

 

すると、ナルトの目の前に口寄せ蛙が現れ、鬼鮫の攻撃を防いだ。

「…お前ら、ワシのことを知らなすぎだのう…男・自来也、女の誘いに乗るよりゃ口説き落とすがめっぽう得意ってな!女の色香にホイホイ着いて行く様には出来とらんのう!」

そして、ナルトの背後に白い長髪の大柄な中年男が現れた。

しかし、その場の全員が自来也のセリフにシラケて居る。

自来也は顔を引きつらせながらも、目の前のイタチと鬼鮫の装束を見て驚いていた。

・・・この装束。葬儀の日に見たあの女と同じ!…だがなぜナルトの養育係だった女が、ナルトを狙うこやつらと同じ装束を…まさかあの女がこやつらを手引きしたのか⁉・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「キャッ!・・・ああ~びっくりした」

「いい加減慣れろ…いちおう相棒だ…」

 

六花は三代目火影の葬儀を見届けた後、一通り木ノ葉の里の状況調査をした。そして木ノ葉の里に向かっているイタチと鬼鮫に鉢合わせないよう、早めに里を後にして山岳の墓場へ向けて出発した。

そして今、小川のほとりの木陰で休憩を取っていた所、木の幹から白黒ゼツが現れ六花は驚いた。

六花の左肩に載るゼツが、白黒ゼツへと尋ねる。

「イタチたちの様子はどうだった?」

「ナルトを襲っていた…」

「なんですって⁉」

「落ち着いて。それは見せかけだから。で、どうなった?」

「ナルトは全く相手にならなかった。自来也が来なければ大怪我だったかもな…だがナルトの仲間でイタチの弟のサスケは重症だ。自来也はこれからナルトを強くするために修行をつけるらしい。少しはナルトも強くなるだろう…」

「だってさ。良かったね、六花。ナルトに師匠がつけば強くなれるね」

・・・まぁ無駄な努力だけど・・・

ゼツはそう思いながら、明るい声で六花に言った。

「うん!あの三忍の自来也様はナルトのお父さん・ミナトさんのお師匠様だったらしいし、安心だわ。きっとナルトも三忍を越える強い忍になるに決まってるわ!」

「浮かれてる場合じゃない。その自来也に六花が暁のメンバーだとバレている…」

「えっ、どういうこと・・・?」

「どうやら葬儀の時に六花の姿を目撃していたようだ。そしてイタチたちと同じ装束を着ていたことで仲間と気付いた…」

「あーあ。これじゃもう二度と木ノ葉の里には行けないね。それにこれからの行動はもっと気をつけなきゃね~」

「軽いわね・・・まさか・・・気づいてたの?」

「さぁね~でも六花はもう二度と木ノ葉の里にもナルトにも近づいちゃダメだからね」

「・・・・。」

六花は悲しい顔をして小川に目を遣った。

ゼツの仕業でなくとも、暁のメンバーになった時から、遅かれ早かれ木ノ葉の忍から危険人物としてマークされ、そして付け狙われる日が来ることは覚悟していた。

・・・きっとナルトくんにも直ぐに知られるんだろうな。そうしたら私のこと・・・

しかしそれが現実になった今、それは想像以上に悲しい事に感じられた。

同時に、六花はイタチの生き方に身につまされた。

イタチは自ら木ノ葉の里の敵、そして弟にとっての仇になってまで両者を守っている。

六花はイタチと二人で会った日、“あなたと同じ”と口にしたことが今になって軽々しい言葉だったと感じられ、胸が痛む。

しかし、イタチも六花も、もう二度と船の様に川の流れを逆らって過去へ戻ることは出来ない。

出来ることは、下流へ流されながらもなんとか舵を取ることだけだった。

 

 

ナルトが約二年半の自来也との修行を終え、木ノ葉の里に戻って来てから暫く経ったある日。

暁のアジトにメンバーたちはリーダーであるペインに緊急招集され、全員が分身としてアジトに集まっていた。

しかし、イタチと鬼鮫だけが遅れている。

 

六花は、九尾を捕獲するのは最後だと解っていても、こうして緊急の招集がある度に、九尾の人柱力であるナルトの身に何かあったのではないかと動揺してしまう。

しかし、ナルトは自来也に二年半のあいだ師事し、十六歳になった今、かなりの実力をつけている。そして暁の動きや友であるうちはサスケの捜索に注力している。

何より、もうナルトには心強い仲間、友達、師が揃っている…。

六花は気を取り直し、イタチと鬼鮫を待とうとした所、二人の分身が目の前に現れた。

そしてペインが話し始める。

 

「緊急に伝えたいことがある…大蛇丸が殺された」

その言葉に誰も周章する様子は無いが、鬼鮫が苦笑交じりに口を開く。

「あの大蛇丸をやったとは大した手練れですね。誰です?」

「うちはサスケだ」

ペインの答えに、六花は横目でそっとイタチの横顔を見た。表情一つ変えていない。

しかし感情を出す者が居た。

「大蛇丸はオイラがぶっ倒すって決めてたのによ!うん」

デイダラはサスケに大蛇丸を殺されたことが気に食わない。

「フン。やりますねぇ。流石、イタチさんの弟だ」

イタチに向かって鬼鮫が言ったが、それでもイタチは無言、無表情のままである。

白黒ゼツが六花の左隣りで口を開く。

「今サスケは仲間を集めまわってる。それも厄介な忍ばかりだ…」

そしてペインがそれに付け加える。

「鬼鮫。お前も良く知っているだろう。霧隠れの鬼灯兄弟。あの片割れだ」

「…水月かぁ。懐かしいですね」

「それに天秤の重吾も居る。せいぜい気をつけろ。イタチ、鬼鮫。おそらくお前たちを狙っている…他の者も一応うちはサスケのことを頭に入れておけ。イタチや鬼鮫の情報を得ようと暁を標的にするかも知れん…兎に角、イタチと鬼鮫は四尾を早く連れて来い。三尾と一緒に封印するぞ」

「解った」

ペインの言葉に返事をすると、イタチは真っ先に消えてしまった。

 

 

 

「ほーんと尾獣の封印ってしんどいですよね。こんなんがあと何回かあるんでしょう?考えただけでウンザリ!」

魔像への三尾と四尾の封印が終わり、トビ(オビト)が大袈裟に言った。

その場には暁のメンバー全員が揃っており、実体なのは四尾を連れてきたイタチと鬼鮫、そして実体として駆けつけてきた六花だった。

「…さて、どっちにいくかな。うん」

デイダラが不敵な笑みを浮かべて言うと、それに対してトビが問う。

「あのセンパイ?どっちに行くかなって、どっちとどっちのことを言ってるんすか?」

「そんなん決まってんだろ!カカシ率いる九尾の人柱力。それか、うちはサスケかだ!」

そう言うデイダラをイタチが横目で見た。そしてそのイタチを六花が見ている。

「いやいやいや!もうどっちもやめましょうよぉ~だいたい僕らのノルマは終わってるし、そもそもサスケは尾獣でも何でも無いしぃ」

「冗談じゃねぇ!九尾の人柱力には殴られた借りがある。カカシには右腕やられたしな。うん…それにオイラが殺すはずだった大蛇丸をやりやがったうちはサスケも許さねぇ!」

「ああ・・・もう・・・この人ったら言い出したらホント聞かないんだから・・・」

「何か言ったか?フン!」

「いいえーっ!」

「行くぞトビ!」

デイダラとトビは揃って消えてしまった。それを見届けると他のメンバーの分身も次々と消えてゆく。

その場には、実体の六花、イタチ、鬼鮫だけが残った。

「デイダラの奴、直ぐにでも私たちのノルマか弟さんの所へ向かう勢いでしたが、いいんですかぁ?イタチさん…」

「・・・・・。鬼鮫、俺は六花と話がある。悪いが先に木ノ葉へ向かっていてくれないか。直ぐに追いつく」

「九尾のほうへ向かうんですね。解りました。まぁお二人ともお時間の限られている同士ですからねぇ…どうぞ、ごゆっくり」

 

イタチと二人きりになった六花は少し不安そうにイタチの顔を見ると、数歩歩み寄ってイタチと向き合った。

「俺はこれから木ノ葉に向かうが、ナルトには手を出さない…確認したいことがあるだけだ」

「確認…したいこと?」

「ナルトとサスケ。今は正反対に在るが、いつか二人が手を取り合う日が来るかもしれないな。そう、あって欲しい…。その為にも俺は、サスケと闘い倒されなければならない」

「ナルトくんとサスケ君が手を取り合う…ええ、私もそう思うわ。あなたが命を懸けて守り抜いたサスケ君にも、最後にあなたの気持ちがちゃんと伝わるよう、私も祈ってる…」

六花の言葉に、イタチはそっと目を伏せた。

そしてまた六花を見据えて、言う。

「サスケが俺を倒したあと、マダラはサスケを利用しようと俺の真実を教えるかもしれない…アンタは自分が俺と同じだと言ったな。ならば、サスケのことも見守ってやってくれ」

六花は悲しい顔で頷くと、そのまま俯いた。

すると遠いあの夜の悲惨な光景が目に浮かんでしまい、思わずぐっと目をつむる。

イタチは六花に背を向け、出口に向かって歩き出した。

「…ちゃんと!あなたにとってサスケ君はかけがえのない存在なんだってこと…伝えてあげてね」

「…ああ」

イタチはそう返事をすると、その場から消えてしまった。

六花は消えてしまったイタチの背中を見つめ、思う。

 

何が正義で、何が平和なのか?

それは人それぞれ、守りたいもの、愛する人によって異なるのではないかと。

きっとこの世には“誰にとっても正しく幸せしかない世界”など無いのかもしれない。

しかしそうだとしても、太陽に向かって咲く向日葵の様に、永久不変の光に向かって皆が同じ方向を向く必要がある。

それが“世界を救う”という事なのかもしれない。

 

【挿絵表示】

 

 

 

「イタチが死に、ようやく目の上のたんこぶが無くなった。木ノ葉の里に手を出さないという約束も白紙だ…だがイタチはやはりサスケに保険を掛けていた…天照だ。イタチの奴。俺がサスケを仲間に引き入れることを危惧していたんだろう」

 

数日前、イタチはサスケとの戦いの末、死んだ。

その戦いで負傷したサスケを収容したオビトは、自らをうちはマダラと名乗り、イタチがうちは一族を抹殺した真実をサスケに話して聞かせた。

しかし、サスケがオビトの右目の写輪眼を見たとたん、イタチがサスケの左目に仕込んでおいた瞳術・天照によって攻撃され、危機一髪それを逃れたのだった。

 

「しかしここまで来るのにこれほど暁のメンバーがやられるとはな…」

寂れた石橋の上、オビトの隣りに立って居る白黒ゼツが言った。

「どこかしら問題はあったが皆、暁に貢献してくれた。お陰で俺の計画通りに進んでいる…何より、サスケを手懐けた…」

そう言ってオビトは面の下で不敵に笑った。

「サスケは今どこに居る?…」

「暁と手を組む利益として尾獣を分けてやると言った。もちろん嘘だがな…それで今、サスケには八尾を取りに行かせている。それに、ペインのほうもそろそろ木ノ葉の里に入った頃だろう」

「六花にペインのことを言っていないだろうな…」

「その六花のことなんだが…勿論ペインに九尾を狩らせることは言っていない。だが勘の良い女だ。特に木ノ葉と九尾に対しては…。だから念の為、ペインが九尾を狩り終えるまで、六花を俺の作った時空間に隔離しておいてはどうだ?」

オビトは白黒ゼツのほうへ身体を向けてそう言い終わると、ある筈のない白黒ゼツの表情を窺った。

「そうだな…ゼツに訊いておいてやる…」

「あっちのゼツに言えば六花に知られるんじゃないのか?六花は知れば拒むだろ」

「報告しないわけにはいかない…ゼツの返事を待て…」

「・・・。そうか、分った」

 

 

 

ボウッ・・・

その人影がアジトに現れたと同時に、部屋の松明の炎が大きく揺れた。

「俺一人で来いとはどういう用件だ?」

サスケは不満そうに目の椅子に腰かけているオビトに向かって言った。

「お前の仲間に教えても良いが、ややこしくなっても面倒だからな。それにこれは、俺たちうちは一族の問題だ」

「うちは一族の問題だと?何だ?早く言え!」

サスケはオビトの言葉を聞き一歩前に出ると、鋭い視線で答えを催促した。

「イタチを追い込んだ元凶…それは現在の木ノ葉の上層部…だけじゃない」

「それは一体どういう事だ!」

サスケはこれから抹殺しようとしている者達がイタチを追い込んだ元凶では無いと言うマダラ(オビト)の言葉に興奮し、瞳には写輪眼が浮かんだ。

「二代目火影・・・千手扉間だ」

「・・・!」

「扉間は、俺(マダラ)と柱間が手を取り木ノ葉の里を設立した後もうちは一族のことを危険因子として敵視していた。扉間は戦争の最後まで、うちは一族を殲滅させて戦争を終わらせようとしていたからな」

「…それで自分が火影になったことを良い事に、迫害政策を始めたってわけか」

「その通りだ。そしてその思想と意思、政策を受継ぎ更に強固にしたのが志村ダンゾウだ」

サスケは顔を斜めに逸らし、歯を食いしばる。

「くそっ!…うちは一族を追い込んだのは火影の意思だったのか…やはり木ノ葉は上層部だけではなく、うちは一族を無視してのうのうと平和に暮らしている里の奴ら全てが許せねぇ!」

「実はその意思を受継いでいる者が・・・この暁にも居るのだ」

「⁉」

「今は六花と名乗っているが、本名は橘芙蓉…いや千手芙蓉か」

「扉間の妻が生きているってのか?・・・だがなぜ暁に居る!」

オビトは椅子から立ち上がり数歩出ると後ろを向き、巨大な植物を見上げた。そして笑い交じりに言う。

「芙蓉を六花という忍に育て暁のメンバーにしたのは、俺の扉間への復讐だ。芙蓉はもともと俺の妻だった。それをあいつが奪ったのだ。だが俺を捨てて扉間と結婚した芙蓉のことも許せない。そんな女を忍にして、俺たちうちは一族が味わってきた痛みを身をもって教えてやろうと思ってな」

「それは俺には関係無い。色恋などつまらぬことは一人で勝手にやれ」

サスケはそう言うと直ぐに後ろを向いて出口へ歩き始めた。するとその背中にオビトが落ち着いた声で言う。

「たとえあのイタチでも、たった一人でうちは一族全員を殺せたと思うか?」

「!!?」

サスケは思わず足を止め、急いでオビトに振り返った。

「最後までうちは抹殺に迷っていたイタチの背中を押し、抹殺に手を貸したのは六花だ。六花が背中を押さなければ、イタチもうちは一族も三代目火影の言う事を聞き入れ和解に向けて歩んでいたかもしれんな」

「・・・・・」

「六花は今でも木ノ葉を愛している。その点ではイタチと気が合っていたようだがな…だがこれからの俺とお前の計画にとって六花は邪魔だ。俺一人でやってもいいんだが、“芙蓉”を殺せば少しはお前の気晴らしになるかと思ってな…どうだ?」

サスケの瞳には写輪眼が浮かび、そしてそれは、万華鏡写輪眼へと変化していった。

 

 

つづく

 

 

 


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