罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】   作:千野 伊織

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◆◆今回(18)の登場人物は、うちはマダラ、千手柱間、ゼツ、六花(芙蓉)、大筒木ヒミコ(o.c)。

「私は・・・負けない為に強くなったんじゃない。守るために強くなった!」

「フン。負けないことと守ること、それは同じことだ」

マダラは六花の闘いに何を見るのか?
六花はマダラに勝てるのか?
ひたすらに、マダラVS六花の闘い・・・!

※原作を引用した場面があります。
※関連話:「六花の森(1)お前の名は・・・」、「罪の向こう、愛の絆~帰り道を失くして」、「続・六花の森(13)~オビトvs六花の闘い。そして、六花の夢」



続・六花の森(18)~信じる心を守る為に。マダラとの対決!!

 

 

「あなたを復活させ、計画を成功させるわけにはいかない」

「俺を裏切るのか?」

 

秋冷の夜風に吹かれ、マダラの長い髪が僅かに靡く。

その髪の毛の先端が、青白い月夜を受けて僅かに光っている。

今夜は、もう、満月である。

 

「いいえ・・・私は、永遠にあなたの味方です」

 

・・・バシィ!!

 

「お前も結局、女だな。言ってる事とやってる事が違い過ぎる」

マダラは刀で襲い掛かって来た六花の両手を右手だけで握って止めた。

ググググッ・・・

何とかマダラの手を振り離そうと六花は両手に力を入れるが全く敵わない。しかしそれでも六花は力を込める。

フッ…一瞬、マダラが握る力が弱まった。

六花はその隙に更に両手に力を入れると、思いきり左にひねった。しかし。

ドシィッ!

「っっっ!!」

再びマダラの手に力がこもったかと思うと、マダラは六花の力と体重をを左側に集中させ、隙ができた六花の右わき腹を左膝で強く蹴った。

六花は両手を拘束されたまま逃げることもできず、その蹴りを喰らってしまった。だがなんとか膝に力を入れて立って居る。

そして痛みを堪えて顔を上げると、写輪眼の眼で刀越しにマダラの顔を見た。

「隙だらけだぞ。何の為の写輪眼だ。先読みしろ」

マダラが言ったと同時に、六花は両足で右膝に飛び載り、そこからジャンプする勢いでマダ両腕を拘束しているマダラの右手を振りほどいた。

ズシャ!

六花は地面に着地して構えると、マダラの首めがけて足刀を繰り出した。

ドシッ!…

 

【挿絵表示】

 

「!・・・」

「蹴りに重さが足りんぞ。ちゃんと飯は食っているのか」

マダラは首に六花の蹴りを受け、六花の手を離した手でその足を掴んでいる。

マダラの眼には、遠い昔、まだ痩せっぽちで刀すらまともに握れなかった少女の六花が浮かんでいた。

六花の渾身の蹴りを喰らっても微動だにしないマダラに一瞬動揺したが、六花は直ぐに気を取り直し、自由になった刀をマダラの左わき腹に打ち付けようとした。

しかしマダラは、掴んでいる六花の右足ごと六花を放り投げた。

ドン!・・・・ゴロンッ・・・バッ!

六花は地面に打ち付けられたが、受け身を取って身体を翻して起き上がった。

 

【挿絵表示】

 

チャッ。

そして立ち上がり、身体の前に刀を構え直して考える。

・・・焦るな。いま須佐能乎を出してもマダラさまとの闘いじゃチャクラが持たない。マダラさまは私を殺さない。一分でも長く闘い続けるんだ・・・

「良い眼だ。だが俺を本気で殺す気概は無いな。そんなことでは俺は止められんぞ」

ダッ!

六花はマダラに向かって走り出す。

ガシッ!

「いいぞ・・・」

六花は直立しているマダラの懐に入ると両肩に手をかけ、抱き着いた。

それだけではなく、六花の影分身二体がマダラを両側から挟んで腕を抱き締めている。

そして正面の六花はマダラを見つめる。

その眼は、その先に誘っている…

 

…チュッ…

 

「火遁・豪火大滅却!」

ゴォオオオオオ!ゴォオオオオオ!ゴォオオオオオ!

マダラの唇に六花の唇が触れた瞬間。

背後に居る六花本体と、マダラを挟んでいる二体の影分身がマダラに向かって口から業火を繰り出した。

炎に包まれたマダラと六花の影分身三体が燃え上がり、あっという間に塵になってしまった。

六花は炎を収めると、目の前に眼を凝らす。

マダラの姿は無くなっていた。

「マダラさまを…倒せた⁉」

すると、地面に散らばった塵がパラパラと音を立てて集まってゆく。

それはみるみるうちに人のかたちを成し、元のマダラの姿がそこに現れた。

「相変わらず、お前にしか出来ない良い技だ。これでこれまで何人の男を倒してきた?」

「…⁉」

「穢土転生とはこういう術だ。だが苦痛も快感も無いのはつまらん」

「・・・・」

六花は唇を噛み、何度も瞬きしながら肩で息をしている。しかし瞳は鋭くマダラを睨んでいる。

 

「六花。俺がなぜ、か弱い女のお前をここまで育てたか分かるか?下僕として役に立つようにする為だけじゃない」

「?・・・・」

「俺以外の誰にも負けない強い女にする為だ。だがすなわち、お前は俺という唯一無二の存在にだけは勝てないのだ」

六花は悲しそうに顔を歪めて斜めに目を伏せる。

そしてもう一度、ゆっくりとマダラを見て言う。

「私は・・・負けない為に強くなったんじゃない。守るために強くなった!」

「フン。負けないことと守ること、それは同じことだ。お前が何かを守れば、何かを守れない者が生じる。いい加減理解したらどうだ。俺はそんな道理が無い世界を作る。それこそが真の平和だ」

「私が負けたくなかった相手は私自身・・・弱くて甘くて卑怯な私にです!そして、守りたかったのは…守りたかったのは…信じる心です。すべての人が自分自身に勝てたなら、他の誰かと争う必要なんて無くなるのに…」

「話が噛み合わんな…お前が信じる心とやらを守りたいなら、俺がやることも信じたらどうなんだ?それとも俺のことは信じられないと言うのか?」

「信じています。私はマダラさまが仲間と手を取り合える強さに再び気づいてくれるよう、そしてまた誰かと・・・ナルトくんと手を取り合ってくれることを信じています!だから、今は闘わなければならないのです!!」

・・・穢土転生は不死身の術…ならば仕方が無い・・・

六花は須佐能乎を発動させた。

須佐能乎は半身から全身へと変わり、最後に女神の顔が現れた。

その右手には鉄鎚が握られている。

「美しい・・・」

マダラは小さく呟くと、自分も須佐能乎を出した。

六花は須佐能乎を纏ったまま、マダラに一直線に走ってゆく。

 

ドシィィィンンンン・・・

 

鈍い音を立てて二人の須佐能乎がぶつかる。

しかしマダラは腕を組んだまま、須佐能乎の中から目の前の六花を静観している。

ズズッ・・・ズッ・・・

六花は足を踏ん張り、己の須佐能乎ごとマダラの須佐能乎の中に入ろうとしているが、僅かに入っただけでそれ以上は進めない。

「智慧の鉄鎚!」

六花の須佐能乎が右手の鉄鎚を振り下ろした。

ドシィィィン!!

ズズズズズ・・・

マダラの須佐能乎に亀裂が走り、その亀裂を開くように六花は更に前に進み、ついに六花の須佐能乎の半分以上がマダラの須佐能乎の中に入った。

「ほう…お前の須佐能乎も強くなったな。さて、ここからどうする?」

マダラは必死の形相の六花を見ると、口角を上げて見せた。

 

…ズボッ!グサァァッ!!!

 

「うむ。須佐能乎を侵入させ俺の足元の地中から攻撃とは、良い手だな」

マダラは地中から突き出した六花の須佐能乎の剣に串刺しにされ、宙に浮いている。

「だが、お前は俺に対してだけ気を抜くのが速すぎる」

「さっきから写輪眼をもっと使えと言っているだろう」

二人のマダラの声が重なる。

六花が振り返った途端、背後からマダラに羽交い締めにされた。

 

ハァハァハァハァ・・・

羽交い締めされて突き出した六花の胸が大きく上下している。

六花は大きく目を見開き、なんとか振り返りマダラの顔を見た。

「降参するか?」

懐かしい場面だった。

修行の時、いつも最後はこうして羽交い締めにされて終わっていた。

最後まで、マダラに勝てたことは無かった…

 

「木遁・木龍の術!」

「⁉」

 

バキバキッ・・・ギシィィ・・・

柱間の攻撃を、マダラは纏っている須佐能乎の剣でなんとか受け止めた。

「ナイスタイミングだった芙蓉!マダラここからはワシが相手ぞ!」

「はぁ・・・お前とはもう飽きた。てか、まだ居たのか分身柱間め」

「芙蓉、良い闘いだったのう!さてここからは共に闘うとしようぞ」

「まさかお前ら・・・フフッ、ハハハ!・・・」

マダラは六花を締め上げる力を強めて笑った。そして六花を見て言う。

「使えるものは敵でも使う…いいぞ。褒めてやる六花!」

ズズズズズ・・・ズズズズズ・・・・

するとマダラの須佐能乎には、二本の手に加えて更にその上に二本の腕が現れた。四本すべての手には青白く燃える剣が握られている。

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

そして四本の手は持っている剣を、柱間の放った巨大な木龍と柱間、それぞれに向かって投げたつけた。

バキィィィッ!!バキキキッ!!

二本の剣は木龍の頭と尾を地面に釘付けに刺した。

そしてもう二本は、逃げる柱間を追尾する。

「!」

ついに剣は柱間に追いついた。

二本の剣が同時に柱間めがけて落ちてゆき、柱間に触れそうになったその瞬間、柱間の姿は消えた。

 

ズボォッ!!バキバキバキ・・・

「⁉」

六花はそれに驚いて正面を向くと、目の前に地中に這わせていた木の根の中を移動して来た柱間が、その木の根と共に勢いよく地面から飛び出して来た。

六花と、未だに六花を羽交い締めにしているマダラはそれを見上げる。

柱間が術を発動しようと両手を合わせて印を結んだ瞬間。

バキィィィィ!!

「まったく…分身に攻撃を特化させ過ぎたせいでチャクラ切れか。情けないぞ柱間」

マダラは木龍に刺さった剣の一本を須佐能乎に引き抜かせており、その剣で柱間の身体の側面から突き刺した。

「…芙蓉…無事で…いてく…」

そして、柱間の分身は木に戻ってしまった。

 

「・・・・っ」

六花が苦しそうに俯くと、六花の須佐能乎は徐々に薄くなって消えてしまった。

「安心しろ。お前のスタミナ不足じゃない。俺の須佐能乎がお前の須佐能乎からチャクラを吸い取っただけだ」

マダラはそう言うとようやく羽交い締めしている手を緩め、六花をゆっくりと地面に座らせた。

しかし六花は直ぐに立ち上がり、ゆらゆらと身体を揺らしながらも、なんとか腰に携えた刀を抜いてマダラに向ける。

瞳だけは、揺らいではいない。

その瞳を見て、マダラはいつかの六花の瞳を思い出した。

そう、あの時と同じ。

六花は今の自分を強く信じている。

「気丈夫になったな・・・」

マダラはそう言うと六花に歩み寄り、抱き寄せると刀を奪い取った。

そしてそれを六花の首元に突きつける。

「あの時と同じだ。お前の優しさは万人の正義とは成りえない。お前自身がまた苦しむだけだぞ」

しかし、六花の瞳に宿る光は鋭いままである。マダラの腕の中で刀を首に突きつけられたまま、ジッとマダラの眼を見つめ、言う。

「万人の正義など無くて当然なのです。それでも、皆が平和と言う太陽の方に向いていなければならないのです。支配者は太陽にはなり得ない!」

すると、いつかのように、マダラの握る刀はギラリと光って刃を翻した。

六花は反射的にその光の先、空に視線を向けてしまった。

空には大きな満月が輝いている。

 

・・・そうよ。マダラさまに出会った時から、私に帰り道なんてもう無いんだから・・・

 

そう思った瞬間、六花は左手で首元に突きつけられている刀を握った。

六花の掌から青白い刃を伝って黒い筋が出来てゆく。

「あなたは…マダラさまは誰より痛みを知っていて、そして誰より優しいひと…お願い、もう一度、世界を信じて…みて…」

「もういい。お前はもう眠って居ろ」

マダラは再び、六花を瞳術で眠らせようとした。

しかし六花は万華鏡写輪眼の目を見開き、マダラに隙が出来ていた一瞬に腕の中をすり抜けて姿を消した。

 

「いい加減に諦めろ!」

マダラは姿が見えなくなった六花に向かって叫んだ。

だが返事は無い。

 

キラッ。

マダラはその光に空を見上げる。

満月が先ほどより何倍も眩しく光っているように見えた。

すると、もう一度須佐能乎を纏った六花がそれに重なり、マダラの前に立ちはだかった。

 

「真経津鏡(まふつのかがみ)…!!」

 

六花の須佐能乎の額には丸い銀鏡が現れており、そこに集まった月光はマダラに向かって一直線に照射されている。

穢土転生の身体であるマダラには光を眩しく感じる機能も無いはずなのに、マダラはあまりの眩しさに目を細め腕で光を遮った。

「フフッ…六花の奴め、遂に血を使って真経津鏡を口寄せ出来るようになったのか…それでこそ俺の下僕だ!!」

パラッ…パラパラ…パラッ…

すると、マダラの身体は表面から少しずつ塵になり次第に薄れ始めた。

六花はその様子を見ながら、額でマダラを強く睨んでごくりと唾を飲み下した。

・・・マダラさま…あなたを信じてる。だけど今は消えて貰います!・・・

マダラは顔を隠していた腕を除けると、優しく目を細めて六花を見上げ、言う。

「まさに天照大御神のようだな・・・素晴らしい。良いモノが見られた。礼を言うぞ」

「マダラさま・・・」

「できればお前とも生身の身体でやりたかった・・・」

「…⁉」

六花がその気配に気づいて後ろに振り返った時、それはもう六花の眼と鼻の先だった。

なんとか須佐能乎が持っている鉄鎚で、マダラの分身が纏った須佐能乎の剣を防ごうとしたが間に合わない。六花にはもうチャクラが無かった。

ザシュッッ!・・・・ドタッ。

六花の須佐能乎は切り裂かれ、その姿を消し始める。同時に六花は地面に落ちて倒れてしまった。

 

「良い闘いをするようになったな…六花」

その声に、うつ伏せに倒れている六花は何とか顔を上げた。

マダラは六花の頭の前にしゃがむと、六花の左の掌を握って傷を癒し始める。

「…っ…」

「馬鹿だな…要らぬ怪我をしおって」

六花はマダラに握られた左掌に感覚が蘇ってくると、そっとマダラの掌を握り返した。そして朦朧としながらも何とか言葉を発しようとしたその時だった。

「!・・・アレは・・・」

マダラは後ろに振り返って遠くに目を凝らした。

 

ズオオオオォォッ・・・ドサッ!

「ぐっあああ・・・」

マダラの見つめる遠い先の空間が歪み、怪我を負い瀕死のオビトが飛び出して落下した。

落下した場所、それは十尾の頭の上だった。

「アレはもう使いものにならんか・・・」

「・・・?」

六花は霞む眼でなんとかマダラを見た。アレとは何なのか…

「六花、お前は計画が完了するまでオビトの作った時空間に居ろ。出てくるなら殺す。いいな」

「…まさか…オビト…?」

マダラは右手を宙にかざし、オビトの作った時空間への入り口が閉じる前にその入り口をここへ引き寄せた。そして六花に思考する暇を与えることなく、マダラは六花の身体を抱えてその空間へと入れると、入り口は直ぐに消えてしまった。

 

 

・・・ドサッ!

 

「おかえり芙蓉。やっと帰って来たわね…って、あらあら。傷だらけじゃない。チャクラももう殆ど残っていないし」

ヒミコは、目の前に現れて仰向けに倒れた六花に歩み寄ると、ニコニコしながらその顔を覗き込んだ。

「…ヒミコ…さん」

「大丈夫よ。いまキレイに治してあげるから。あなたはゆっくり眠って、しっかり休みなさい」

「で…も…」

「マダラなら大丈夫よ。きっとうまくやってくれるから。ゼツだってついているんだし…さ、いい子だから眼を閉じて。まずは回復しないと何もできないわよ?ね?」

「…はい…」

六花はそう言うと眼を閉じた。六花の体力は限界に達しており、その瞬間に意識を失ってしまった。

「まったく。大切な身体をこんなに傷だらけにして。どう足掻いたって無駄だって言うのに…まぁでも、最後くらいこの子の意思を尊重してあげなきゃね。フフッ、この子が男に…マダラに絶望する顔を見るのが楽しみだわぁ…」

 

 

つづく

 

 


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