罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】   作:千野 伊織

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◆◆今回(19)の登場人物は、うちはオビト、春野サクラ、うずまきナルト、うちはマダラ、六花(芙蓉)、大筒木ヒミコ(o.c)。

これまで、マダラのやり方に疑問を抱くことも、納得できない事も多かった・・・
それでもマダラのことを信じ続けてきた六花。
しかし、マダラの口からオビトへ語られた真実を聞き、六花の信頼も遂に・・・

マダラと六花・・・決別の時。

※原作を引用した場面があります。
※関連話:「続・六花の森(2)~うちはオビトの開眼」、「続・六花の森(4)~新たなる救世主の誕生」、
「罪の向こう、愛の絆(5)~マダラとの恋。千手とうちはの決戦」




続・六花の森(19)~失意~マダラの語る計画の裏側

 

 

 

「私の可愛い芙蓉…こんなに安らかな顔で眠って、どんな夢を見ているのしから」

オビトの時空間。

六花の傷を治癒し、チャクラを回復させたヒミコは、地面に座って六花に膝枕をしてやりながら、六花の頭から頬へと優しく撫でている。

「私の転生者はどれも美しかったけれど、芙蓉、あなたは本当に特別ね…アシュラとインドラの転生者両方の心を奪って結ばれ、そしてチャクラまで使えるようになった。そのお陰で私はようやく復活できるのだけれど…」

今のヒミコにとってこの立方体が転がる無機質な空間は、待ちわびた主演舞台の本番を待つ楽屋のように、緊張感と高揚感が漂う温かいものになっていた。

「…愛することに理由なんて要らないわ」

「⁉」

ヒミコは六花の明瞭な寝言に驚き、思わず身体を逸らしてしまった。

しかし、六花は何事も無かったように安らかな顔で眠り続けている。

ヒミコは胸を撫で下ろし、再び六花の顔に眼を落とした。

その時だった。

サアァァ――――・・・・

その音にヒミコは顔を上げた。

立方体の壁の隙間から、砂の塊に載っている女の後ろ姿が見えた。服装からして、どうやら忍のようだ。

ヒミコは眉間を寄せ、眼を細めて女の後ろ姿を睨みつける。

すると砂の塊は崩れ、女が地面に着地した瞬間、その砂の塊に隠れて見えなかったもう一人の姿が見え、ヒミコは思わず驚く。

「…ハァハァハァ…ここはどこだろう?…ナルト⁉…とにかくナルトの蘇生を続けないと!」

・・・あれはナルト?…死にかけてるじゃない。九尾を抜かれたのね。ということは、もう直ぐね。フフフ・・・

六花は二人の姿を見てニヤリと口角を上げた。

しかし、なぜナルトがこの空間に来たかは分からない。だが九尾を抜かれた人柱力はもう助からない。

ヒミコは六花の代わりにナルトの最後を見届けてやろうと、ナルトの死の瞬間を楽しみに待つことにした。

 

「オビト!」

目の前に現れたオビトを見て女が声を上げると同時に、ヒミコは目を大きく見開き、わくわくとした。

・・・あのオビトの身体はもう十尾が抜けた身体。しかも左半身にはゼツまでくっついてる。死ぬ前にナルトを殺すためにこの空間に連れて来たって訳ね・・・

「大丈夫だ。俺がナルトを助けてやる」

・・・なんですって⁉なぜお前がナルトを助けるのよ!・・・

オビトの想定外の言葉を聞き、ヒミコは大きく目を見開いたまま強張った顔になる。

「信用できるの!!?」

女もオビトの言葉に驚き、声を上ずらせた。

「俺は昔から真っ直ぐ素直に歩けなくてね…だが、やっと辿り着いた」

オビトはそう言うとナルトの腹に手を当てた。

・・・その身体じゃもう輪廻転生の術も使えないくせに、どうやって助けるって言うのよ・・・

ヒミコは強張った笑顔でオビトを強く見つめた。

ズオォォ…!!

オビトの掌から、目に見えるほどの強いチャクラがナルトの体内へ流し込まれてゆき、ナルトの体内のチャクラが蘇ってゆくではないか。

・・・あれは!九尾のチャクラ…いや、それだけじゃない。

あれは…ハゴロモ!!・・・

ついにヒミコは顔を歪め、その顔は悔しさで熱を帯びてゆく。

ナルトが生きようが死のうが、つまりはヒミコにとってどうでもいい事なのだが、ナルトの中にハゴロモのチャクラを察知しまった以上、安易に出てゆくわけにもいかない。いまここでハゴロモに己の存在が気付かれればこの先の計画が…

・・・ハゴロモのやつ…まさかナルトを使ってお母様の邪魔をする気じゃ。無駄よ…この私が居るもの!・・・

ヒミコは焦りの色を現わしながらも、ほくそ笑んでナルトを見つめた。

 

 

「ナルト・・・」

「・・・・・・」

 

ナルトは目を覚ますと、ゆっくり立ち上がった。

「サクラちゃん…ありがとうってばよ。もう大丈夫だ」

「う、うん…オビトが…ナルトに九尾を入れて助けてくれたのよ」

「そうか…ありがと、オビト」

「いや…俺こそお前のお陰で、やっと辿り着けたよ」

「へへっ…そりゃ良かったってばよ。で、ここはどこだ?」

「俺の時空間だ。向こうでカカシと四代目がマダラと戦っている。お前は先に行け」

「ああ!」

ナルトはそう返事をするとオビトが開けた時空間の出口に飛び込み、姿を消した。

 

サクラは急いで安堵の涙を指で拭うとサッと立ち上がり、僅かに戸惑いつつ、地面に膝を突いてしゃがんでいるオビトを見据え、言う。

「アナタは敵…仲間をいっぱい傷つけ殺した…だから本当はこんなこと言いたくないけど、この一回だけは特別…ナルトを助けてくれてありがとう」

サクラは目を閉じて、不本意な気持を押し殺しながら強く念を押すような声でオビトに礼を言った。

そしてオビトは苦しそうに息を切らしながら、サクラを見上げて言う。

「・・・・。最後に頼みたいことがある。味方でなくていい…敵としてだ」

「・・・?」

「俺はもう動くことすらできない…少しでも気を抜けば…黒ゼツにこの輪廻眼ごと身体を奪われてしまう。そうなれば黒ゼツは俺の右目を使い外へ…そのまま輪廻眼がマダラに渡ってしまう…マダラの両目に輪廻眼が揃ってしまえば恐ろしいことになる…」

「恐ろしいこと⁉これ以上どうなるって言うのよ!もう嫌ってほど…」

「俺も輪廻眼を両目に移植することは出来なかった…この左目ひとつでさえ…強すぎるチャクラと瞳力で己を失いかけた。本来の主に輪廻眼の両目が揃えば、恐らく誰も太刀打ちできなくなる…」

「そんな…」

「瞳力とは二つ揃って初めてその力を発揮する…さあ!早い方が良い。一刻も早くこの左目を潰してくれ!」

「わ、分った!」

 

・・・オビトの奴…マダラを裏切ったのね。どいつもこいつも、男は使えない奴ばかり・・・

ヒミコは怒りを湛えた冷たい顔をすると、膝枕で安らかに眠る六花の顔に両手をかざした。

 

「…早くしろ!輪廻眼を潰すんだ!」

「分かってる!」

「…させるか!」

 

ヒュン!・・・

 

『!!』

 

ガンッ!!

 

オビトの時空間に現れたマダラの上半身がサクラに向かって黒い棒を投げたが、その瞬間、サクラはオビトの神威によって外の空間へ瞬間移動させられ姿を消した。

そして、黒い棒が突き刺さった音に、眠っていた六花は驚き上半身を起こした。そして辺りを見回し、すっかり変わり果てた二人の姿を見つけると息を飲む。

「…あれは⁉マダラさま…なの?」

それを確かめようと立ち上がると声がした。

『そうよ芙蓉。あれは十尾の人柱力となったマダラ…』

「⁉・・・頭の中・・・ヒミコさん?」

六花はその声に頭を抱えて少し戸惑った。

『ついさっきまでオビトの左目に入っているマダラの輪廻眼が潰されそうで危なかったのよ。それを止めようとこうしてあなたの中に入って目を覚ましたけど、マダラ自らそれに気づいて取り戻しに来たみたいね…』

「輪廻眼が⁉・・・・・!!?」

グサァッ!

突然、マダラは右手でオビトの胸を突き刺し、そのままオビトの身体を宙に持ち上げた。そしてオビトに問う。

「心臓に仕込んでいた禁固呪の札が消えているな…どうやって取った?己を自分で傷つけることは出来なかった筈だ」

「…カカシに貫かせ…排除した…俺自身が十尾の人柱力になるにはあれが邪魔だったからな…死ぬかもしれない賭けだったが…俺は…アンタの思い通りにはならないのさ」

六花は握った両手を口に当て、悲しそうにオビトを見つめる。しかし、オビトがマダラの単なる操り人形では無かったことに僅かに嬉しさも感じてしまった。その気持ちを直ぐに振り払い、二人の目の前に出て行こうと立ち上がったが、マダラの言葉に足を止める。

「ククク…いや、お前は俺の思い通りに動いてくれた。いや、期待以上か…フッ」

マダラはオビトにそう言い笑って見せた。

「…⁉…何が…可笑しい…⁉」

「操り人形にする禁固呪の札…知っていたようだなオビト。“お前達”に仕込んでおいたこの札…無論、自害することも出来なかった筈だ。俺にとって大切な駒だったからな」

「・・・お前・・・達・・・⁉」

オビトと同時に、六花もマダラの言葉に反応した。禁固呪の札を仕込まれていたのはオビトだけでは無かったというのか。だとしたら、マダラは他には誰に…?六花は地面に眼を泳がせて考える。

「何の因果か…“二人とも”まったく同じやり方で排除するとは面白い」

・・・!・・・

「リン・・・」

六花とオビト、同時に気が付いた。二人の頭にリンの最後が蘇る。

「そうだ。あの小娘を三尾の人柱力にし木ノ葉で暴れさせる計画は俺が仕込んだ事だ…霧隠れではない。小娘はそれを、カカシが敵に向けた技を利用して命がけで阻止したが…あれも計画の内…お前を闇へ堕とし俺の駒にする為のな」

 

「嘘でしょ・・・」

 

六花はその場に膝から崩れ落ちた。

地面についた膝から身体全体へと冷たくなり、まるで凍り付くように感じる。余りの冷たさに、頭までズキンズキンと痛んでくる。

 

「貴様!…俺をわざと、あの場に…!!」

良き絶え絶えのオビトの瞳に怒りで火が灯る。その瞳でマダラを睨んだ。

「ミナトが別の任務に出ていた時を狙い、カカシ一人を残してリンを連れ出させ、霧隠れの忍を操り追わせたのも全て計画。お前の力を開放させ、その程を見る為でもあった。白ゼツ共がお前を煽り地下からタイミング良く出られたのも全て偶然だと思うか?」

「ぐっ・・・・」

オビトの脳裏にあの日の絶望が鮮明に蘇り、再びオビトを激しく絶望させる。

「カカシの手で小娘が死んだのは出来過ぎだったがな。どちらにせよ傀儡の忍で殺すつもりだったんだが…」

 

・・・そんなっ!あれは偶然じゃなくマダラさまが全て仕組んだ事だったというの⁉私は、何も知らずに・・・

六花はついに地面にうつ伏せ、両手の掌を骨が折れるほどの力で握り締め、身体を震わせた。

絶望という一言では表せない苦しみが喉まで上がり、息も出来ない。

音を立てるまでもなく、瞼の裏にあるマダラの笑顔は消え失せた。

 

「人を操るには心の闇を利用しろと教えたな、オビトよ。闇が無ければ作ればよい…自分だけが違うと思うのはおこがましくないか?」

 

・・・自分だけが違うのは…おこがましい…

なら、私もなの?・・・

 

「ぐっ…なぜ…なぜ俺だったんだ⁉」

「お前は心の底から人に優しく愛情深かった。老人介護は得意だっただろう?リンへの、仲間への、火影への、忍への深い愛情…いったん闇に落ちてしまえばそれは、逆にこの世界への深い憎しみへと変わるからだ。そういう奴ほど」

 

「もう止めてぇーっ!!!」

 

六花は堪らず声を上げた。両目からは大量の涙が流れている。

しかし、マダラは構わず続ける。

「オビト、お前のような奴ほどなぁ!」

「うっ!ぐっ!」

マダラはオビトの心臓を掴む力を強め、オビトの身体を引き寄せた。そしてオビトの左目を、カカシから奪って来た万華鏡写輪眼の眼で強く見つめた。

 

・・・マダラさまに輪廻眼を揃えさせるわけにはいかない!!・・・

 

六花は右足に力を込めると立ち上がって走り出そうとした。

しかし、身体が動かない。

『大丈夫よ芙蓉、あなただけは違うから…』

「私のことはどうだっていいの!マダラさまに世界を救う資格なんて、無い!」

『あらそうかしら?マダラは自らが経験したことをオビトにも経験させただけでしょう?それが一番強くなれる方法だと知っているから。それで世界が救われるのだから別にいいじゃない』

「…うるさい!!黙れっっ!!」

六花は全身に力を込めると、ヒミコの見えない呪縛を振り祓い、震えながら立ち上がった。そして万華鏡写輪眼の両目でマダラを見据え、立方体の隙間を一直線に向かって走ってゆく。

『そんな!私が中に入っているのに何故⁉』

 

ドスン!!

 

マダラは左手を振り上げ、向かって来た六花を撥ね飛ばし、六花は激しく左腕から地面に倒れた。しかし六花は直ぐに立ち上がりマダラに向かって構える。

六花に背を向けていたマダラは、ゆっくりと六花へ振り返った。

「!・・・」

マダラの両眼には、既に輪廻眼が揃っていた。

六花は瞬きすらできずに大きく目を見開き、マダラを見つめる。すると、瞳の奥で待っていたかのように、熱くも冷たくも無い涙が既に泣き濡れた頬にこぼれ落ちてゆく。

「六花…酷い顔だな。お前はまだ暫くここに居ろ。なに、時間はかからん」

「…闇に墜ちているのは、あなたも同じよ」

「お前と話している暇は無い」

六花は一度目を閉じると、両目から最後の涙が頬を伝っていった。そしてゆっくりと眼を開ける。六花の万華鏡写輪眼の瞳は、変わらず怒りの炎で真っ赤に燃えている。

「行かせないわ」

「⁉・・・う、動けぬだと!・・・万華鏡写輪眼ごときがこの輪廻眼に敵う筈が・・・」

…バタンッ! オビトの胸からマダラの右腕が抜け、オビトは地面に落ちた。

マダラの両手はだらんと脱力し、下半身の無いマダラの身体が地に足をつけた。

六花はマダラの元へと歩み寄ると、上半身だけのマダラの首に飛び付き、足が地面に着くと顔を上げてマダラの顔をジッと見た。

「・・・何をする気だ!・・・」

六花は黙って、今はもう何も見て取れることの出来ないマダラの輪廻眼の奥を見つめる。

その顔は落ち着きはらい、すべてを諦め、そしてすべてを悟った無表情だった。

「これが私の写輪眼の能力。最初で最後の・・・」

「・・・!!!」

マダラはついに言葉すら出なくなり、六花の瞳から目を逸すこともできない。

六花はそっと、マダラの唇に口づけし、目を閉じた。

 

・・・今すぐ月の眼計画を止め、降伏せよ・・・

 

そう心の中で強く呟くと、六花の瞳は沸くように熱くなり激痛が走った。

それでも口づけを続ける。

マダラは身動きできず、ただ六花に唇を吸われている。

 

「うっ!!」

 

最初に唇を離したのは、六花の方だった。

六花はもう殆ど視界の無い眼を細め、衝撃が走った箇所を見た。

 

「危なかったな…マダラ…」

「黒ゼツ・・・遅いぞ」

オビトの左半身に張り付いている黒ゼツの手が伸び、マダラの背中を貫通して六花の腹に突き刺さっていた。

ズボッ…!

「ぐあっ!」

黒ゼツが刺している手を引き抜くと、六花の腹からボタボタと血が地面に滴り落ち、脱力して後ろに倒れそうになった。その肩をマダラが支える。

「ハァハァハァ・・・マダラ・・・さま・・・」

虚ろな表情でマダラを見る六花の眼にはもう、マダラの顔は映ってはいなかった。すると後ろから黒ゼツがマダラに言う。

「六花の写輪眼の本当の能力…失明と引換えに相手の命の半分を体内に取り込み意のままに操る…知らなかったのか?…」

「そうか。真経津鏡(まふつのかがみ)だけでは無かったか…俺に隠していたとはな」

そう言うと、マダラは六花を地面に仰向けに横たえた。

「六花、俺の計画が完結すればこの世には光しかなくなると言ったな。その光のひとつは、お前だと思っていた」

「・・・私にとって・・・あなたは・・・光でした。」

マダラはもう何も言わず六花に背を向けると、先ほど輪廻眼と交換したオビトの左目に写輪眼の能力を使い、黒ゼツと共に時空間から消えてしまった。

 

六花は、目の前の真っ暗な視界が今の現実そのものだと思い、そっと瞼を閉じた。

脈打つ激しい痛みも次第に遠のいてゆく。

すると、目の前が明るくなり、夕陽に照らされ赤く染まったマダラの顔が目の前に現れた。

マダラに抱き上げられた“芙蓉”は手を伸ばす。

マダラの頭頂部に着いている真っ赤なモミジに手が届くと、そっとそれを取り除き、マダラの顔の前に差し出した。

 

【挿絵表示】

 

そして、モミジ越しに目が合うと、芙蓉とマダラは目を細めて微笑み合った。

 

・・・あの日に戻れて、良かった・・・

 

 

 

つづく

 

 

 

 

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