罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】   作:千野 伊織

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◆今回(7)の登場人物は、ゼツ(黒)、うちはオビト、波風ミナト(四代目火影)、うずまきクシナ。

六花の眼の前に現れたもの・・・
それは木ノ葉の里を襲う九尾でした。

六花は急いでオビトの元へ向かいますが、そこはオビトとミナトの戦闘場面で・・・
しかし二人を止めることが出来ず、ただ見ているしかない六花。

再び里へ九尾を止める為に向かう六花の前にオビトが現れ、六花にある命令をします。
六花はどうするのか・・・?

※原作の場面を引用しています。
※関連話:罪の向こう、愛の絆~契り。マダラとの新たな生活



続・六花の森(7)~九尾の出現!

 

 

 

遠くに、見覚えのある姿が、見えた。

 

『…これは尾獣という九匹いる怪物の一匹で、九尾というんだ。尾が九本ある狐のバケモノみたいなもんだ。邪悪なチャクラを持ち人間を襲う。並の忍が束になっても敵わない強さだ…』

 

「六花、オビトが九尾を回収に来たみたいだ!ここに居たら巻き込まれる。早く逃げよう」

「オビト君が⁉でも、なぜ九尾が里を壊しているのよ⁉」

「操るのに失敗したか、もしくは里を潰す気なんじゃない?」

「そんな!止めないとっ!!!」

「まずは九尾の眼を確認して。写輪眼が浮かんでいるなら、昔マダラがやったようにオビトは九尾を術にかけて操ってるはずだから、術者のオビトを先に止めたほうが良い…尾獣回収はマダラが命令した事の一つだけど、里を潰せとまでは言って無いからね。それに、六花のお店が壊れたらケーキ食べられなくなるし」

「ゼツ…ありがと!」

六花は急いで戦闘服に着替え、刀を腰に差すと、左肩にゼツを載せて二階の窓から飛び出して行った。

 

ガルルルル・・・

ぎゃああー! ぐわぁー! きゃぁぁ!

 

六花は荒ぶる巨大な九尾の足元に来た。

以前、マダラが見せてくれた縮小された九尾の何倍もある大きで、何とか九尾を止めようと飛びかかる木ノ葉の忍たちは哀れに空中で散ってゆく。

そして、九尾の瞳には写輪眼がくっきりと浮かんでいた。

「…オビト君!どうしてこんな事を!!?…」

六花は奥歯を噛みしめ、鋭い目つきで九尾を睨みながら走り出した。

 

 

 

あちこちに移動するオビトのチャクラを追うのに苦労し、ようやく見つけた。

「…ミナトさん!…」

しかしそこは、面をつけたオビトと四代目火影の服を着たミナトが森の中で戦闘している場面だった。

「…六花、いま出て行くのは危険だよ。二人とも時空間忍術を駆使して戦ってる。巻き添えになるだけだ…」

「…でも早く九尾を止めさせないと!…」

「…いいから。じっとしてろ…」

「…。」

確かにゼツの言うことは正しく、二人のレベルの時空間忍術を使うことが出来ない六花はミナトに加勢することも、オビトを止めることも出来ず、今はただ苦しい顔で二人の戦いを眺めているしかなかった。

 

すると突然、オビトとミナトの動きが止まった。

・・・今だわ!・・・

六花が二人の前に飛び出そうとした瞬間。

 

「うちはマダラなのか?」

 

・・・!?・・・

ミナトの言葉に六花の足が、いや身体全体が固まる。

六花は息を飲み、再びうずくまった。

オビトは、おもむろに被っていたマントのフードを下ろす。

六花はその動きを見て、再び身体に力を入れると構え直した。

 

「いや・・・そんな筈は無い・・・彼は死んだ」

「・・・さぁ・・・どうだろうなあ・・・」

「・・・この際アナタが何者かなのかはいい・・・なぜ木ノ葉を狙う?」

 

茂みの中で、六花はごくりと唾を呑みオビトを睨みつける。

・・・そうよ!なぜ木ノ葉の里を襲う必要があるのよ⁉それにあなたの先生であるミナトさんのことも!!・・・

 

「言うなら・・・気まぐれであり・・・計画であり・・・戦争の為でもあり・・・平和の為でもある・・・」

オビトはそう言うと、袖口から長い鎖を取り出し、その両端を両手首に繋げた。そしてミナトに向かって走り出す。

「すでに希望などお前らにはない!」

オビトはミナトに突込み、オビトの身体はそのままミナトをすり抜けた。しかしミナトはオビトの後からついてきた鎖の輪に縛られてしまった。

「!!?」

しかしミナトは瞬身の術でその場から直ぐに姿を消し、数メートル先に姿を現した。そして直ぐに振り返り再びオビトへと向かって走ってゆく。その右手にはチャクラを乱回転ながら球状に圧縮した螺旋玉がある。

オビトもそれを迎え撃つかのように走り出した。

シュッ!・・・ズッ。

ミナトが放ったクナイはオビトの身体をすり抜けてしまった。

そして遂に二人が近づき、オビトの右手がミナトの左肩に触れた瞬間。

「螺旋玉!!」「ぐはっ!!」

ズゴゴゴゴ!!

ミナトは先ほど投げたクナイへと飛び、オビトの背後から螺旋玉を放った。

オビトは螺旋玉の勢いで強く地面へと打ち付けられ、その衝撃で地面は激しく割れて隆起した。

 

「…オビト君!!…」

六花は思わず立ち上がった。

「…こりゃオビトのほうがヤバイかもね…」

「…どうしよう。オビト君のことも助けなきゃ…」

マダラの代役であるオビトが死ぬことだけは絶対に避けなければならない。

しかし六花はどうやって二人の間に割って入れば良いかますます判らなくなる。

「…焦るなって。オビトは死なない。今のオビトのチャクラじゃ九尾を操ってられる時間にも限界があるし自分から退散するはずだよ。もう少し様子を見よう…」

「…でも…⁉…」

 

ザッ!

オビトは地面から時空間忍術で脱出すると、岩の上に現れた。

しかし、その左腕からは血が滴り、よく見ると手首が千切れかけている。

ミナトとオビトの右目が合った瞬間。

 

ドッ!!

「!!?・・・ぐっ!」

 

オビトの一息が終わる頃、ミナトがその目の前に現れクナイでオビトの腹を刺した。

そしてミナトが右手で触れたオビトの左肩に、みるみるうちに封印の術式が広がってゆく。

「!!契約封印!!俺から九尾を引き離す気か⁉」

「…これで九尾はおまえのものではなくなった!」

 

「六花!ミナトが九尾を解放した!今すぐ里に戻って九尾に術をかけて捕獲するんだ。やり方は僕が教える」

「うん!!!」

六花とゼツはその場から姿を消した。

 

 

ダダダダダッ・・・

六花はこれまでにないスピードで地を蹴り走った。

 

・・・柱間さま、扉間さま、木ノ葉の里と人は、私が絶対に守るから…お願い力を貸して!!・・・

 

ズザザッ!

「⁉」

 

「六花・・・だっけか?何をそんなに急いでる?」

「お、オビト君⁉…話は後よ……っ⁉」

オビトは横をすり抜けて行こうとした六花の右手首を掴んで制止した。そしてもう片方の手首も掴む。

「離して!!」

「おい、お前。俺の手助けをすると言ったな」

「…?」

「なら、九尾を俺の所へ持って来い」

「!!?」

「六花…コイツの命令だからじゃなく、九尾を捕獲したらコイツの所へ持って行って」

「ゼツ!あなたまで何を言ってるの⁉」

「さっきも言ったけど、尾獣回収はマダラの命令なんだ。マダラの復活の為、そしてマダラの“先の夢”を実現させる為には九匹全ての尾獣を揃える必要があるんだよ」

六花は愕然とし、オビトとゼツの顔を交互に見る。

尾獣はいま、各里に分配されており、その全てが人柱力によって封印されている。

その全てを回収するという事は…

「ゼツ!どうしてそのこと教えてくれなかったのよ⁉」

「お前、俺の手助けを命令されているのにそんな事も知らされてなかったのか?…フッ!…まぁそんな事はいい。お前も夢を実現させたいなら、九尾を俺の所へ持って来い」

六花は顔を歪め、唇を噛んで俯いたまま返事をしない。

「尾獣回収…優しすぎる六花にはできないでしょ?それを解っているからマダラは何も言わなかったんだ。でも里を守る為にも、今は九尾を止めて捕獲しないと。そうでしょ?」

六花の左肩のゼツは、落ち着いた優しい口調で言った。

しかしその言葉を聞き、オビトは態度を変えた。

「・・・やはり九尾はいい。後からどうにでもなるしな。その代わり、お前には一緒に来てもらうぞ」

そう言うとオビトは六花の手を離し、自分の両手についた鎖を交差させて六花を縛ろうとした。

バッ! グググッ・・・

六花はオビトに背を向けると両手で鎖を掴み、オビトと睨み合う。

「なぜ…なぜ木ノ葉の里を潰そうとするの⁉あなたにはもう関係無いはずよ⁉」

「夢を、希望を、未来を、奴らから奪ってやりたいんだよ・・・里の奴らにこの先の夢なんて必要ない!」

オビトの面の奥の右目には、憎しみの炎で染まった万華鏡写輪眼が真っ赤に光っている。

そして、六花の両目に浮かぶ万華鏡写輪眼も激しい怒りで震えている。

 

【挿絵表示】

 

「時間稼ぎのつもりだろうけど、六花が本気を出せば今のお前なんて簡単に倒せる。千手一族の力をもっているのはお前だけじゃないんた。マダラの命令を遂行出来れば手段は問わないけど、六花の大事なものを奪うことは僕が許さない」

ゼツはそう言うと身体を広げ、オビトの胸に張り付き、更にその身体を広げてゆく。

「マダラの意思の切れ端の分際で出しゃばりやがって・・・・ぐっ!」

ゼツがオビトの首を締めると、オビトは六花を縛ろうとしていた鎖から手を離し、首を掻きむしり始めた。六花はその隙に、急いでオビトから離れる。

「愛する人間を守る力も無かったガキに言われたか無いね」

「ぐっ・・・うっ」

「ゼツ!止めて!もういいから!!」

ゼツは六花の言葉を聞くとオビトの首を絞めるのを止め、身体を球状に戻し、六花の左肩に戻った。

「かはっ!・・・ハァハァ・・・」

オビトは首元を抑えて息を上げ、少し前屈みになりながら六花を睨んでいる。その視線を無視して六花は里へと向かおうとした。

「無駄だぁ!・・・例え今助かったとしても、また俺が里を潰してやる!」

オビトの言葉を更に無視して六花はその場から姿を消した。

 

 

「何?これ・・・結界?・・・」

木ノ葉の忍の奮闘により、九尾はなんとか里の外の森へ追い出されていた。

そして何者かによって九尾は強力な結界の中へ閉じ込められている。

「九尾がさっきより小さくなってる!…ねぇ、あの九尾を縛っている鎖は何かしら?」

「あれは、うずまき一族がもつ尾獣を捕らえられるチャクラの鎖だね」

「うずまき一族・・・じゃあクシナさんも一緒に戦っているのね。でも、彼女はお腹に赤ちゃんが!」

タタタタタッ・・・タッタッタッ。

 

「・・・!!?」

 

茂みを抜け、ようやく結界の足元が見える場所まで移動すると、信じられない光景が目に飛び込んできた。

 

封印石の上に寝かされた嬰児の前には、九尾の長い爪に二人一緒に串刺しにされているミナトとクシナの姿がある。

 

「ナルト…これから辛い事…苦しい事もたくさんある…自分を…ちゃんと持って…!…そして夢をもって…夢を叶えようとする…自信をもって!!」

 

クシナは最後の力を振り絞り、子供へと言葉をかけた。

六花はそれを見て、両手で口を押えると両目から大量に涙を流し始めた。

「…クシナ…さん…そんなっ…こんなことって…」

震える六花の身体に揺られながら、ゼツは冷静に心の中で呟く。

・・・凄いな。九尾を抜かれても直ぐに死なない上にここまで出来るなんて…この様子だとあの子供にこれから九尾を封印する気か。これじゃもう六花が九尾を奪うなんて不可能だ。というか、きっとこれからあの子を守ろうとするだろうし…

つくづく六花は見なくて良いモノばかりを見てくれるよ。まさか、これも母さんの思念か?・・・

 

そして、ミナトはナルトに九尾を封印し、クシナと共に倒れた。

二人の命が潰えると同時に結界が消え、近くに居た三代目火影と暗部の忍が数人、九尾が体内へと封印された嬰児と、ミナトとクシナのものとへ駆け寄って行った。

当然、六花には何もできる筈も無く、涙を流しながらただ茫然とその様子を眺めている。

「六花!」

その声にゼツの方を見る。

「一応聞くけど、どうする?九尾を回収する?言っとくけど、遅かれ早かれ九尾は必ず回収するよ。マダラ復活と先の夢の実現の為にね」

六花は俯き、涙を飲みながらゼツに問う。

「・・・ねぇ、尾獣を抜かれても死なないで居る方法は・・・無いの?・・・」

「無いね」

「・・・・・・・」

六花は思い切って顔を上げると、心を決める。

強い眼差しで、三代目火影の腕に抱かれる嬰児を見た。

 

 

コツコツコツ・・・コツ。

ポチャン。

懐かしい足音と懐かしい水の音。

しかし、目の前に居るのはマダラではない。

 

「九尾を持って来た・・・・んじゃないみたいだな。失敗したのか」

六花を待っていたかのように、面を付けたオビトが魔像の前に立って居る。

「あなたの夢と言うのは何?」

六花は無表情でオビトに問うた。

「うちはマダラの、描く夢だ」

「・・・・」

「まさか、それすら知らないのかお前?」

「マダラ様の夢は真の平和よ。無差別殺人でも無秩序な破壊でもない」

「はははは!」

オビトは六花の言葉を笑い飛ばすと、数歩、六花に近づいて言う。

「俺こそが、うちはマダラだ!真の平和が在る夢の世界を作る計画は、この俺が実行していく。その過程には平和も秩序も必要無い・・・!お前はうちはマダラの下僕だろ。じゃあ俺のやる事に口出しするな」

六花は目をつぶって小さく首を横に振ると小さく溜息を吐き、目を開け、オビトを厳しい眼で睨みつける。

「あなたはマダラ様のただの代役であって、私の主じゃない。あなたのやり方にも賛成できない」

「フッ。まぁそう言うな・・・お前もその“主”の復活を待っているんだろ?先の夢を、叶えたいんだろ?ここは協力しようじゃないか・・・なぁ?」

オビトはそう言いながら、距離を取って六花の右隣りに来た。

六花は疑うような表情でオビトを見る。

しかし、確かにオビトに反発してばかりも居られないのが現実だ。だとしても、オビトのやり方に同調する事など出来ない。

「輪廻眼を預けている人物・・・長門という男のことだが」

「⁉」

六花は焦って身体をオビトのほうへ向ける。

「あいつは今、俺が作った組織に居る・・・お前も、その組織のメンバーにならないか?」

「なんの・・・何をする為の組織なの?」

「六花、君はそんな組織に入る必要は無いよ。コイツは君を捨て駒にする気だ。それに六花はもう何もしなくていい。ただマダラの復活を待ってればいいんだ」

ゼツはそう言うと、六花の鞄から這い出て左肩に載る。

「・・・ゼツ?」

「ほら、オビトに言うことがあるでしょ?早く言って」

「うん・・・・・九尾はミナトさんとクシナさんの子に封印されたわ。今後、その子は私に任せて。そして、もう二度と里に手を出さないで」

「ミナトは自分の子に九尾を封印したのか…ウケるな。いいだろう。九尾の回収は最後にしてやる・・・それにしてもお前は甘いな。本当にマダラの下僕なのか?ただの情婦だろ?フッ」

六花は何度か瞬きをした後、ゆっくりと魔像を見上げた。

巨大な植物に囲まれた魔像は何も変わらない…以前のままである。

そしてもう一度、オビトを見て言う。

「愛する人が居ない世界は、只の荒野にしか見えないわよね…でも、その荒野は誰かにとっては愛在る場所だという事を忘れてはいけないわ…今のあなたに何を言っても無駄だろうけど」

そう言うと、オビトに背を向け歩き出す。

「何を訳の分からなこと事を・・・さっさと消えろ」

六花は振り返ることなく、黙ってアジトを出て行った。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

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