罪の向こう、愛の絆シリーズ 【続・六花の森】   作:千野 伊織

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◆今回(9)の登場人物は、ゼツ(黒)、うずまきナルト、うちはオビト、大蛇丸、ペイン、小南。

成長したナルトの隣りには、今も六花の姿がありました。
しかし・・・
六花にはナルトの傍に居ることが出来ない理由があって・・・




続・六花の森(9)~『暁』のメンバーに・・・

 

二人が歩いている大通りには逃げ水が見られ、季節は春から夏へと変わったことを知らせている。街路樹の緑も随分濃くなり、二人の足元に濃い陰を作っている。

 

「今夜は何が食べたい?」

「うーん・・・」

六花の問いに、ナルトは隣の六花を一度見上げると、再び正面を向いて歩きながら考える。

するとその時、ナルトの眼には、数多くの冷たい瞳が次々と入ってきた。

それは、物心ついた時から見慣れた瞳であるが、決して慣れることなど無い。

ナルトは俯き気味に答える。

「・・・ラーメンでいいってばよ」

「え?ラーメンならいつも食べてるでしょ?いいの?たまには…」

「いいんだってばよ!」

ナルトは目をつぶり、下を向いて叫ぶように言った。

「…うーん、じゃあ野菜たっぷりの野菜ラーメンにしよっか?うふふっ」

「…や、やっぱりカレー!」

「うん。カレーにしよう!お肉も沢山入れてあげるね。野菜と同じくらい。ふふふっ」

六花はそう言うと、ナルトの左手を握り、手を繋いだ。

ナルトは少し驚いて、パッと六花の顔を見上げる。

「もう七歳なのに、手を繋ぐのは恥ずかしい?」

その言葉に、ナルトはプイっと顔を背けて言う。

「六花ねぇちゃんが繋ぎてぇんなら仕方ねぇってばよ…繋いでやるってばよ…」

「フフッ。ありがとう、ナルトくん」

「その代わり、野菜は少なくしてくれってばよぉ」

「ダーメ!」

野菜に対して文句を言い続けるナルトを見ながら六花は笑っているが、ナルトが俯いた瞬間も、その理由も見逃してはいなかった。

 

【挿絵表示】

 

六花はナルトの養育係を当初、一年の契約で務めたが、ヒルゼンの頼みでもう一年延長し、二年間務めた。(ゼツもなんだかんだ言いつつ付き合ってくれた)

それ以降も、ヒルゼンからはナルトの里親が見つかるまで、または自立できるまでは養育係として働いてほしいと何度も頼まれた。

しかし、六花はそれを断り続けてきた。

 

理由は二つある。

一つは、里ではもう死んだことになっている自分が今の世代に深く関わる事は避けたいという思いからだ。

ナルトのことは預かった次の日から、まるで我が子同然の情が湧き、可愛くて堪らなかった。手放したくない…そう思った。

それに、この子がもし本当に“予言の子・碧眼の少年”ならば、自分が世界を救う人物を育てられるなど、これほど嬉しいことは無い。

しかし、六花は自分にその資格が無いことをしっかり自覚していた。

だから影ながら見守り、時々こうしてナルトを励ますことが出来ればそれでいい…そう思った。

 

二つ目の理由は、オビトからの強迫だった。

オビトが作った、というよりも乗っ取った組織“暁”は世界征服をもくろみ、まずはその為に力をつけようとメンバーを増やし、資金集めの為に各国や里、大名などから秘密裏の仕事を請け負うようになっていた。

しかも、その最終目的は九匹すべての尾獣を集めること…つまり、オビトはマダラの“先の夢”の為に暁を利用しているのだ。

ナルトが四歳になった頃、オビトが六花の前に現れ、その時、暁の行動について聞かされた。

ゼツは全て知っていたようだが、敢えて六花には言ってはいなかった。

・・・・・・・・・

「…というわけで、九尾も近いうちに奪いに来る。覚悟しておけ。今度邪魔をしたら容赦はしない。ただし、お前が暁のメンバーになり、俺に協力するなら話は別だ」

「六花、協力なんてする必要は無いよ」

「ゼツ・・・でも・・・うん・・・オビト君、あなたに協力は出来ないわ」

「お前のことは白ゼツの記憶を読んで調べたぞ。マダラが動けなくなってからも命令されて色々していたようだな。義賊気取りで悪人を情け容赦無く退治していた割に、随分弱腰なんだな。マダラの命令が無いと何もできないのか?」

「六花。こいつは君を煽って利用しようとしてるだけだ」

「私はマダラ様の下僕よ。命令された事はするし、されていない事は、しない・・・」

「フンッ。俺の手助けをするように言われてたんじゃなかったか?」

「オビト、お前はマダラを演じてるだけだ。僕はマダラの意思から生まれたいわばマダラの分身。六花はその僕の命令に従ってる。お前の命令は聞かない」

「“輪廻転生の術”・・・って、知ってるか?」

「・・・死者を生き返らせる術・・・?」

「六花!聞くな!!」

「あれは術者の命と引き換えに死者を蘇らせる術だ。お前がマダラから言い聞かされていた尾獣の力を借りて行う術というのは嘘だ!」

「!!?じゃ、じゃあ、長門君は・・・命と引き換えにマダラ様を・・・⁉」

「そうだ!その通りだ!!」

「止めろオビト!!」

「いいのゼツ!!・・・・・解ったわ。あなたに協力します。その代わり、ナルトくんの九尾の回収は一番最後にして頂戴!じゃないと協力はしない!」

・・・・・・・・

六花はゼツの力と言葉もあり、暁のメンバーにはなりはしないものの、協力することになった。

それゆえ、木ノ葉の里を不在にすることが多くなってしまったのだ。

何より、犯罪組織ともいえる危険な集団に協力しながらナルトの養育係をするなど、そんなことは六花に出来る筈は無かったのである。

 

 

「六花ねぇちゃん・・・あのさ、あのさ、月に一回とかじゃなくて、もっといっぱい来てくんないの?てかさ、てかさ、またいつか、オレと一緒に住めないの?」

その言葉に六花はカレーを食べるスプーンを止め、申し訳なさそうに、そして心から悲しい笑顔をして言う。

同じ質問はもう、何度も聞いてきた…。

「ごめんね…。どうしてもやらなきゃいけない仕事があるの。その仕事が終わるにはまだまだ長―い時間がかかってね…きっと、その仕事が終わる頃には、ナルトくんは結婚してお嫁さんや子供が居るかもしれないわ」

「もぉ、いっつもそればっかだってばよ!・・・それに、オレはケッコンなんてしねーし・・・」

唇を噛み、悲しそうにも悔しそうにも見える表情で俯くナルトを見て、六花は優しく言う。

「うん。確かに結婚だけが家族を作る方法ではないわね。友達とか、仲間とか、恋人とか、先生、生徒…他にもいっぱい。人との繋がりが出来れば、それは家族も同然なのかもしれない」

「何言ってんのか分かんねぇーよ!・・・」

「ごめん…でもね、繋がりというのは作るものなの。その為には自分の殻に閉じこもっていては駄目。人と関わらないとね…だけどその関わりの中ではどうしても嫌われたり、否定されることもある。だって人は一人一人みんな違うんだもん。でもね、ナルトくんの良さに気付いてくれる人は必ず居る。私が保証する!ね?だから明日から忍者アカデミーでも頑張って!」

「なんか難しいことは良く分かんねぇーけど、オレってば、頑張るってばよ!それで、それで、ぜってぇ火影になってやるんだってばよ!」

「うん!!ナルトくんならきっと、なれるってばよ!」

二人は笑顔でカレーをスプーンですくうと、それを口に運んで笑い合った。

 

 

翌朝。

六花はナルトを忍者アカデミーの近くまで送って行った。

「じゃあ、いってらっしゃい。頑張ってね!みんなと仲良くね」

「おう!六花ねぇちゃんも仕事頑張ってね!早くまた会いに来てくれってばよ!そしたらここでの武勇伝をたっくさん教えてやっからよ。へへっ!」

「うん。ありがとう。楽しみにしてるね」

笑顔で手を振りながら校門へと走ってゆくナルトの姿が校舎の奥へ消えるまで、六花はその後ろ姿に手を振り続けた。

そして、真顔になってキッと道の向こうを睨むと、足早に歩いて行った。

 

 

「…六花。アナタが本部にまで来るなんて珍しいじゃない」

暁のアジトの入り口を入ると、正面から大蛇丸が現れ声を掛けてきた。

大蛇丸は木ノ葉の里を抜けた後、この暁のメンバーになっており、六花は思いもよらず大蛇丸と再会したのだった。しかし大蛇丸は六花と戦った際、六花の写輪眼により六花の記憶を消されている。

「直ぐに帰る。そこを退け」

「ねぇ、あのトビって愚図な子と一緒に居ても退屈じゃない?リーダーに言って私と組みましょうよ?」

「オレは暁のメンバーではない。只の協力者だ」

六花はそう言うと、大蛇丸の肩をわざとかすめて横を通り抜けて行った。

その背中に大蛇丸が投げかける。

「まだ木ノ葉の里に住んで居るんでしょう?まさか、弱みでも握られているとか」

その言葉に六花は立ち止まり、首だけを後ろに向けるが大蛇丸のことは見ずに答える。

「もしそうだとしても、お前にはオレの弱みは握れはしない…」

六花はまた前を向き、通路を歩いて行った。

 

 

「六花、トビ、今回の任務は非戦闘行為だが、かなりの金になる仕事だ。しくじるなよ」

「分かってますってリーダー!僕も早く暁の正式なメンバーになれるように日々頑張ってるんですからっ!ねぇ六花さん?僕の活躍、リーダーにも説明してあげて下さいよぉ~」

六花は話を振られたが、トビ、いやオビトの相変わらずわざとらしい芝居に眼を閉じフンッと顔を背けた。

「オレはこの任務が終わり次第すぐに木ノ葉に戻る。報告はトビにさせる」

「六花、次回の任務では木ノ葉の里でお前にして貰いたいことがある。一度ここに戻って来い」

「木ノ葉の里で…?何だ?」

「今は言えない。ここへ戻って来てからだ。いいな」

暁のリーダーであるペインは六花に向かって無表情で念を押すと、その場から姿を消してしまった。

六花は焦ってペインの隣に立って居た暁の創設メンバーの一人、小南に向かって言う。

「おい。オレはいいとは言ってないぞ」

「でも、あなただって大切な木ノ葉の里に無断で暁の誰かが入るのも嫌でしょう?ならここに戻って来て話を聞くほうがあなたにもとっても良いと思うけれど」

小南はそう言うと、ペインを追うように消えてしまった。

六花は肩を落として、いぶかしそうな顔をした。

確かに小南の言う通り、六花の知らぬところで暁のメンバーが里に入って何かをするのは気に食わない。

しかし、なぜ今ここで任務の内容を言えないのか…

六花の頭に一瞬、嫌な予感が過ぎり、隣に居るトビを思い切り睨んだ。

「六花さ~ん、顔、怖いっすよ~あはは!大丈夫ですって~」

面をつけていてもトビのヘラヘラしている表情が見てとれるようで、六花は更に腹が立つ。更に強くトビを睨みつけた。

「九尾は最後だからな・・・」

「!」

「まぁその約束を守るかは、お前の働き次第だが・・・行くぞ」

そう言って先にアジトの出口に向かってゆくトビの背中を見て、六花はごくりと唾を飲んだ。そしてゆっくりとその後ろをついて出て行った。

 

 

つづく

 

 

 

 

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