問題児たちと元殺し屋が異世界からやってくるそうですよ? 作:unworld
次からは早くしたいです。(フラグ
そして今回は長めかな…
百合人の拳が男爵に迫る頃、
火龍誕生祭では
「魔王が来たぞぉぉぉぉ!!!」
黒い【契約書類】ギアスロールがばらまかれ、混乱が始まっていた。
その状況に、ノーネーム一同はそれぞれ動きだした。
白夜叉は闘技場で捕まっており、歯噛みをしていた。
…もっと早く気づいて、百合人に連絡を入れていれば…
だが、今更悔やんでどうにかなるわけではない。
自分がリタイヤというだけの話である。
「ふぅ…お茶が飲みたいのぉ…」
飛鳥はグリムグリモワールハーメルン側に捕まってしまったが、
しかし、彼女はそう簡単にやられるわけはない。
何か反撃の一手を講じるはずである。
それに、白夜叉は確信していた。
百合人はこの近くにいると。
…正直なところをいうと、白夜叉は
…「彼が百合人が私のそばを離れて何処かにいって私を危険にさらすということはない」と思っていただけだ。
だが、確信は持てた。
根拠はないが。
白夜叉は寝転び街の上空に浮かぶ展示物を見上げる。
その大きさは、闘技場に匹敵する直径。
それは、火龍誕生祭の展示品の中の一つであり、
題名は【魅了の音を鳴らす鈴】
製作者は【男爵】
今頃、グリムグリモワールハーメルンとノーネーム達と会談が行われているだろう。
争点としてはどこまで期間を短く出来るか。
そこに絞られる。
【黒死病】ペストはネズミやノミなどを媒介として、ヨーロッパに莫大に広がり、ヨーロッパ人口の実に3分の1を殺したとされている。
恐ろしい想定だが、ペストが会場全体にばらまかれ感染が広がったとしたら、大変なことになる。
当然、サウザンドアイズや他のコミュニティのメンバーもただではすまない。
ペスト側としては、最低一週間。
ノーネーム側としては、すぐにでもゲームを再開したい。
白夜叉はひとつため息をつく。
「百合人や…はやく来てくれ。」
そう思っていると。
「あらご機嫌斜めねぇ…」
白い服の魔導師 ラッテンが現れる。
この女は、その笛の音で人々を操り、この街を襲撃した悪魔だ。
その悪魔がここにいる。
ということはだ。
つまり、プレイヤー側とグリムグリモワールハーメルン側との協議が終わったということだ。
白夜叉は考える。
ラッテンのこの余裕ぶりから考えると、ゲームの再開は少なくとも
一週間以上は取れたということだ。
一週間というのは、ペストが感染し、発症する日時は二日であるが、
様々な想定をし、この会場の力を持つものも感染するような長い日時だ。
それが取られたということは、もうすでに会場全体にペストは広がっていると考えていいだろう。
「それで、ラッテンとやら再開の日取りはどうなったのじゃ?」
「十日後よ」
「十日…じゃ…と」
白夜叉は戦慄した。
長い長すぎる。
一週間どころではなかったのだ。
感染していないものも十日もあったら感染が凄まじく広がる。
白夜叉の顔は余裕を醸し出しているが、背中は冷や汗で濡れていた。
…ジンよっ!何に!何に失敗したというのだ!
十日後という日時になったのは、明らかにジンの失敗である。
白夜叉はため息をついた。
彼女はあまりため息などを見せない。常に余裕をもち過ごしていたからだ。
しかし、グリムグリモワールハーメルンの策略にまんまと乗ってしまった。
白夜叉は心から願った。
彼が、【達皆上百合人】がはやく来てくれることを
…sideout
「うぉぉぉぉぉぁぁぁぁ!!!」
不条理の力を込めた百合人の拳が男爵に振り下ろされる。
その力はあらゆるものを砕き、破壊し、塵に返す。
男爵は本能的に悟った
…この攻撃に当たれば自分は死ぬ!!…
男爵のとった行動は、ギフトカードから盾を取り出し、後退した。
しかし、そんな行動は彼の拳の前には関係なかったのだ。
「吹き飛べェェェェ!!!」
百合人の拳が盾に触れた瞬間。
その盾はその一撃で木っ端微塵に吹き飛んだ。
しかも、吹き飛んだ欠片は風に飛ばされ、塵へ還った。
「なっ…」
予想を遥かに超えてきた攻撃は、男爵の体を一瞬固まらせた。
しかし、その一瞬だった。
そのおかげで彼は、空中に殴り飛ばされた。
男爵の体を凄まじい衝撃が襲った。
「がっ…」
そして、男爵は自分の霊格がおちているのに気付いた。
…これが霊格を削る力!!
その一撃は彼の霊格を著しく削り落とし、ダメージを当たえた。
男爵は重力に逆らわず、地面に落下した。
「ふぅー…」
彼は拳を構えたまま、深く息を吐いた。
そして、男爵が動かなくなったのを確認すると男爵に近づいた。
「おい、男爵。お前の負けだ。もうやめようぜ。」
「そうですね…私は負けました。」
「随分あっさりしてんなぁ。おい」
「ええ、なぜなら…私は…
貴方を近づかせることが目的だったんですから!」
男爵の行動は早かった。彼は百合人に向かって手を突き出した。
しかし、彼の手から放たれたのは砲撃ではなかった。
放たれたのは紛れもなく斬撃、
百合人の反応は数秒、コンマ何秒か遅れた。
そのコンマ数秒の遅れが彼に死を招いたのだった。
「ぐっぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
百合人の体を無数の斬撃が切り裂いた。
腕、足、手、額、頭。体中を斬撃が切り裂いた。
そこからは血が吹き出し、彼は倒れた。
男爵はふらふらと立ち上がり、深呼吸をした。
危なかった…本当に
男爵はそう心底思った。
彼が油断してくれなければ死んでいたのは私の方だった…
実は彼は、百合人を近づけるために倒れたのではない。
実際は、本当に倒れたのだ。
彼の方が実力は上だ。圧倒的に。
だが、運がよかったのは、男爵の方であったようだ。
彼が斬撃を思いつき、放ったのは、偶然であった。
しかし、ここまで彼を追い詰めることができるなんて男爵自体思ってはなかった。
そして、男爵は倒れた百合人に向かっていく。
それは、彼が百合人に近づいた目的を果たすためだった。
男爵が百合人に近づいた理由は単純だ。
その理由というのは、
彼の右腕にある。
百合人の右腕は【絶対悪】アジ=ダ=カーハの右腕。
男爵はとあるコミュニティに属しているのだが、そのコミュニティの目的の一つに
アジ=ダ=カーハの復活
というものがある。
つまり、男爵はアジ=ダ=カーハを復活させるために彼の右腕を入手しようとしていたのだ。
そして、その目的を果たす瞬間が来たのだ。
彼は自慢の剣を百合人の右腕に振るった。
その瞬間。
百合人の体は跳ねた。
右腕から鮮血が飛び散り、百合人の視界を染めた。
男爵は転がった右腕を拾いあげ、布に包んだ。
そして、くるりと踵を返した。
コツコツ
男爵の足音が聞こえるなか、百合人は痛みに声も上げられなかった。
死にたくない
死にたくない。
彼はそう思った。
死ぬ覚悟はして来たつもりであった。
しかし、それでも。
死にたくなかった。
そのときだった。
彼の視界の隅に、靴が見えた。
誰かいる。
百合人はそう思い、重たい首をあげ、その人物を見上げた。
その人物は彼がこの世の中で最も愛した女性。
長い黒髪を揺らし、百合人に話しかけてくる。
おーい…百合人ぉ…なに寝てるの?
「リ…ン…お前」
んーなにその傷、珍しいねぇ、百合人が傷負うなんてさぁ…
リンと呼ばれた女性は膝をおり、プニプニと彼の頬をつついた。
「やめろ…よ…やめてくれ」
なによ、もぅ…あ、そうそう。
これ百合人に手紙だよ…読んでみてね。それじゃあ!
「まてよ…リン!リン!」
リンはそう百合人に黒い手紙を手渡すと、足早に去っていった。
百合人は震える手でその手紙を開いた。
そこには
『異才を持ちし君に告ぐ。
覚悟をもって前へすすめ、
強くなりたければ、守りたいものがあるのなら、
覚悟をもって、魔王の領域に来られたし。』
その時、目の前には黒百合の花が咲いていた。
そこだけはまるで別世界で何物にも、束縛されず、一輪の黒百合は風になびいていた。
あと、数メートル。
百合人は力を振り絞った。
匍匐前進の要領で左手だけで地を這った。
もう限界なはずなのに、
彼は自分の全てをかけて、その花を目指して進んだ。
しかし…
あと数センチ。指を伸ばせば届きそうなはずなのに、彼はその花に触れられない。
あぁ、目の前が霞む。
その時、彼の脳裏には、リンの死に際が映った。
背中から切られ、血が彼の頬を濡らした。
黒髪は血で赤黒く汚れていた。
そして、彼は箱庭への復讐を決めたのだ。
あぁ、憎い。
リンを殺した奴らが憎い。
そうだ。
俺は
「復讐のためにここに来たんだ!」
彼は最後の力を振り絞り、黒百合の花の花弁に触れた。
そして、それは【人間】達皆上百合人の最後の行動であった。
…ようこそ、魔王の領域へ。
百合人は薄れゆく意識の中、その言葉を聞いた、
……
男爵side
男爵は百合人の死を確認した。
先ほどまで、動いていたようだが、もう、彼はピクリとも動かない。
息もしていなかった。
ただただ、静寂だけが男爵を包んだ。
「さて帰りますか。」
彼は踵を再度返した。
帽子を捨て、髪を書き上げた。
大きくため息を吐いた。
多大な疲労感がどっと彼を襲った。
だが…つかの間
箱庭に異変が訪れた。
ゴゴゴゴゴ
大きな音が上から聞こえた。
それもこのギフトから放たれたものではない。
このギフトの下では、ハーメルン達が暴れているはずだった。
しかし、そんなことではないだろう。
彼は外に出て、上を見上げた。
「…天幕が……開いた…だと?」
そう。
箱庭世界のなかで天幕が開かれることはざらにはない。
なぜなら。
「こんなバカなことがありえるのか…大天幕の太陽の主権…黄道12宮か、赤道十二辰の一つは必要なはずだ…なんで…」
彼の体は冷や汗で濡れた。
急に寒気が襲った。
自分のことを追ってだれかが開けたのか?
いや、それとも…
だが、大天幕はガシャンと音を立てて全解放された。
男爵が大天幕の方を見つめると、そこは…なにもなかった。
光も星も、月も、太陽も。
あったのは黒だけだった。
しかも、それは悪霊や、霊ばかりを禍禍しいものを合わせたものであった。
そして、それはある種の台風のように、渦を巻いて、彼の背後へと降り注いでいた。
ギフトの厚い壁を突き破り、死んだはずの人間に吸い込まれていった。
男爵の体は動かなかった。
何故かは全くもってわからない。
しかし、彼の体は鎖にでも繋がれたかのように動かなかったのだ。
何万、いや、何億もの魂だろうか、それを吸収してもなお、百合人の体は動かなかった。
際限なく魂を吸収しつつける百合人に、下の奴らも気づき始めていた。
……
十六夜side
約束の10日という日にちが経ち、死亡者は幸い出てこなかった。
しかし、生死の境をさまよっているものは幾人もいた。
そして、戦いに参加する主要メンバーもペストに侵され始めていた。
「くっそ…げっほ!」
ヴェーザーとの戦いのために、十六夜の体は非常に傷ついていた。
そんな中、彼は民家に背中をもたげ、空を見上げた。
そして、驚愕した。
空から…数多の霊が大きなギフトの中へと吸い込まれていた。
「なんだ?あれ」
十六夜が不思議に思っていると、いきなりどこからともなく…
『ギフトゲーム
The PIED PIPER of HAMELIN
の全参加者に告げます。
今すぐ、ゲームを中止してください。
その後、このゲーム盤から退避するか、ここのゲーム盤に出現するであろう、かの魔王について調査を行ってください。
もしも、かの魔王を討伐した場合。様々な報酬を差し上げます。
一時間後。
最終決定をいたしますので、退避する方は、一刻も早く退避してください。
一時間後、このゲーム盤に残っていた参加者を魔王の調査に回っていただきます。
繰り返します…』
意味がわからないアナウンスだった。
十六夜は頭をフル回転させて考える。だが、わからなかった。
しかし、ただ一つわかったことがある。
体が非常に楽になったという点だ。
あのアナウンスが関係していることは間違いない。
そして、十六夜が立ち上がると、黒ウサギの声がした。
どうやら十六夜を呼んでいるよんだ。
「黒ウサギぃ!今行くぜ!」
十六夜は声の元に急いだのであった
…
百合人side
俺は目の前に広がる光景に驚きを覚えた。
そこは戦場。
俺がいた戦場だった。
帰ってきたのだろうか…
俺は一歩また一歩と歩みを進めた。
後ろは全く振り向かず、
結局のところ、ここはどこなのだろうか。
さっき俺は死んだはずだ。
だとしたら、此処は天国か地獄か。
俺は歩みを止め、上空を見上げる。
空には星々が瞬いているし、月もある。
だが、俺は思った。
ここはマザーではない。
マザーはこれほど、星々が綺麗ではなかった。
俺は自分の馬鹿さに苦笑を漏らした。
そして、また視線を戻すと、
そこには、リンがいた。
「リン!お前…生き返って!」
俺は喜びを表す。
リンが生き返っているなんて至高の喜びだ。
だが、リンは告げた。
「ごめん。生き返ってはない。
死んだのよ。私は」
その言葉を聞いて俺は知っていながら、残念に思った。
「…知っていたよ。だけど、それでも…」
俺は拳を握りしめる。
俺がこの箱庭世界に来た理由は図らずも復讐のためだ。
「もう、いいのよ。百合人。
やめにしよう。復讐するのはさ。」
「えっ?」
だが、リンは俺にあり得ない言葉を投げかけた。
困惑。
俺の感情はそれで満たされた。
「どういうことだよ!俺はお前の復讐するために!」
「うん、それはごめん。謝るよ。
でも……もういいの。
私、死んで分かったの。
死んでたら、復讐なんて望んでなかった。
私の望みは、貴方…百合人が生きていることなの。だから
百合人は生きて。
私の分も
死んでいった仲間の分も
そして、自分の分も。」
「俺は……」
「いいんだよ。
もう、いいの。
復讐はここに置いていって、
生きよう。百合人」
俺は不思議と涙を流していた。
なぜかは自然とわかった。
俺はリンの死に際を見たものとして、復讐をしてそれでいいと思っていた。
だが、それは自己満足だった。
生きてていい。
俺の心にその言葉がとてつもなく心に響いた。
あぁ
そうか。
「ごめんリン。また会おう。」
「うん。またね」
そして、俺の世界は突如崩れた。
……
天幕は霊が尽きると自然にしまった。
ガシャンという音とともに、男爵の拘束は解かれた。
しかし、同時に。
彼が目を覚ました。
そして、立ち上がる。
瞬間。彼の身体を黒いものが纏った。
そして、
暴風が吹き荒れる。それは来るべき厄災への序章なのかと、いうほどに吹き荒れた。
いつの間にか彼の体には『必要悪』と後ろに書かれたマントというよりローブが纏われていた。
彼が一歩踏み出すと、男爵の体は自然と後ろに下がった。
「なぁ、男爵覚悟は決めたか?
俺は寝てる間に、済ませたさ!」
「なぜ…なぜ…なぜ…なぜなんだ。なぜ、生きているんだ!」
百合人は男爵の質問にまるであざ笑うかのように答えた。
「はっ?死んださ。【人間】の俺はな!
だから、俺は名乗ろうか!
俺は【必要悪の魔王】
達皆上百合人
魔王だ。」
ゾクリ。
男爵の肌を鳥肌が襲った。
違いすぎる。
圧倒的霊格の差。
数多の霊を吸収した彼は。
アジ=ダ=カーハにも劣らない力をもったのだ。
【絶対悪】と【必要悪】似て非なるものだからこそ。
百合人は魔王になったのだ。
復讐のためだけじゃない。
今度は間に合うように、
守れるように。
彼の額には、悪の一文字。
それは消えない彼の覚悟の現れだった。
だから、彼は【悪】になる。
「さぁさぁ、男爵!俺のとっておきを見せてやる。進め【悪の行軍】」
彼の背後から黒い空間が現れその壁からそれぞれ武装をした兵士が出てくる。
彼はいつの間にか設置された玉座に座り、言った。
「さぁ、蹂躙せよ。」
そして、百合人の行軍が始まった。
どうもみなさんこんにちは。
unworldでございます
前書きでも述べた通り遅れてしまい申し訳ありませんでした。
えー、まぁ、この言葉を書くのも実質三回目。
毎度毎度このあとがきを書いている間に勝手にシャットダウンを繰り返す。
私は悲しいです。
まぁ、そんなことは置いといて
説明タイムでございます。
まず、百合人の霊格でもある。【必要悪】について説明したいと思います。
そもそも、必要悪とは、確実な悪でありながらも、それを失った時に大きな損失を得てしまうため、世界がその存在を仕方なく必要として受け入れている悪であります。
その一例としては、警察などです。
しかし、私は絶対悪としても語られていて、必要悪としても語られる。
『戦争』に重点をおきました。
なぜかといえばこの作品に置いて、戦いというのは非常に重要な意味を持ってきます。
百合人の出身も戦いの世界。
これ以上は尺とネタバレの関係で、すいません。
えー最後までお付き合いいただきありがとうございました。
長くなりましたが、
次の投稿までお待ちください