クリプターってどういう意味だよ   作:ライトハウス

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2部4章の話(介入するとは言ってない)です。


彼と彼女の色々

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Fooooo!最高だぜ!!やっばこんくらいのスピードが一番だよな!」

 

「気に入ったようで何より。しかし、私としてはこの躯体の性能に驚いているが」

 

「エドワードォ!!項羽様から下りなさい!ぶっ飛ばすわよ!!」

 

「なに!?くそぉ!項羽、スピードアップだ!ぐっちゃんに追いつかれないで!」

 

「汝の頼みとあらば、そうしよう」

 

「項羽様ぁ!?」

 

お、更に速くなった!凄いな項羽。さすがは神様が修理、メンテナンスしたNEO項羽様だ。

 

さて、今現在項羽の背中に乗りながら、ぐっちゃんに(劇場版HF槍ニキなみの綺麗なフォームで)追いかけられているが、落ち着いて回想といこう。てか怖ぇよ、ぐっちゃん。

 

と、言ってもこの状況からわかるだろうが、項羽の怪我が無事に治ったのである。これも神様やその使いのおかげだ。

 

しかもなにやらパワーアップを施したらしく、改造なんかはしていないが、更なる出力を可能にした。

 

ただでさえアレなのにパワーとスピードが上がるとか、もはや最強じゃね?しかも、汎人類史の項羽の人格インストールとかいうオマケ(ってレベルじゃない)付き。

 

その話を聞いて、ほーん、汎人類史の項羽は人型なんだな、なんてどうでもいいことを考えていると、ぐっちゃんとイチャつく項羽がこう切り出してきた。

 

「エドワード・エヴァンズ、汝は私と虞の恩人だ。故に我が力、此度は汝の為に振るおう。私はあの異聞帯(ロストベルト)において全てを賭して闘い、そして敗北した。ここで再び得た命、その恩義を返そう」

 

いちいち喋り方が小難しいのでよくわからなかったが、要約すると「俺はカルデアに敗けたから一回死んだようなものだけど、ここでまた闘えるようになったから、今度はここで頑張るぜ!」ということだろう。多分、知らんけど。

 

てか汎人類史と異聞帯の記憶を持ちつつ、会稽零式としての性能をMAXで使えるとかやっぱめちゃくちゃ強いだろ。今度修行付き合ってもらおう。

 

とまあ、そんなこんなでバージョンアップした性能を確かめたいらしく、地上に降りた結果こうなったのである。ぐっちゃんは項羽についてきた。つまりはいつも通りだ。

 

まさか冗談で乗りたいと言った結果、本当に乗せてもらえるとは思わなかったが。一応良いとこの出である僕は乗馬もお手の物である。乗馬って言っていいのか、これ?

 

「ふむ、凡その性能は理解した。これで駆動には問題ないだろう」

 

すると、項羽は満足したのか急に止まってしまった。あれ、追いつかれちゃいますよ?項羽様?おーい。

 

「やっと追いついたわ…………。このバカ、さっさと下りなさい。申し訳ありません項羽様。コイツにはよく言っておきますので」

 

「構わぬ。私から提案したことだ」

 

「ほら、項羽もこう言ってるしさ。だからとりあえず離してくれません?そろそろ限界だよ?」

 

「アンタは黙ってて」

 

追いついたぐっちゃんは無理矢理僕を引きずり下ろすと、そのままヘッドロックで僕の頭を捕らえた。こう見えてぐっちゃんは筋力Cくらいあるので普通に痛い。だんだん強くなってるし。

 

いや、でもおっぱい当たっててこれはこれで…………。

 

「変なこと考えんな!」

 

「痛い痛い痛い!なんでわかるんだよ!」

 

更に締めが強くなった。ホントになんでわかるんだ。あれか?精霊だからか?

 

「つーか随分初心な反応するな、ぐっちゃん。実は人妻なのに」

 

「人妻言うな。というか……何よ急に。別に良いじゃない…………。アンタとは違うのよ私は」

 

「?」

 

やけにどもるし、顔も赤い。どういうことかと項羽を見る。

 

「簡潔に言うのなら、私に生殖機能は搭載されていなかった。それはどうやらこの躯体でも変わらないようだ」

 

「項羽様!?」

 

え?つまりはそれって────────

 

「…………言うな」

 

「つまりそれって、ぐっちゃんはヴァージ………………」

 

殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────ってことがあったのさ」

 

「だからヒナコがあんなに怒ってたわけね…………。それは貴方が悪いわよ、エドワード」

 

はい。反省してます。いくら驚いていたとはいえ、この僕が女の子に対してデリカシーのないことを言ってしまうとは。いや、わざとなら割とあるんだけどね?今回は素だった。完全に。

 

「というか、オフェリアはぐっちゃんのことヒナコ呼びなんだな。ぐっちゃんの正体はちゃんと聞いてるだろ?」

 

「まあ、そうね…………」

 

この前、中国の異聞帯からぐっちゃんを連れ帰った際に二人は対面している。その後は二人きりにしてあげたので、どんな会話があったのかはよくわからないが、まあ見た目の変化からしてぐっちゃんの正体についての話は避けて通れないだろう。

 

初めて見た時は誰!?って感じだったからな。僕もそうなったけど。

 

「なんというか、『虞美人』って固いでしょう?それに『芥ヒナコ』って凄く良い名前だと思う。雛芥子をモチーフにしていて、可愛いニックネームみたいでしょう?だからヒナコって呼んでるのよ。本人も嬉しそうにしているわ」

 

「なるほどね、あだ名的なやつか。良いんじゃねえの?」

 

「相変わらず適当な返事ね…………」

 

いや、だって当人たちがそうしてるんだから僕から言えることなんてないじゃん……。

 

「逆にオフェリアのあだ名って無いよなあ。作りづらいし。なんだろう、オファムとか?」

 

「それだけはやめてほしいわね」

 

酷い。否、酷いのは僕のネーミングセンス。

 

「…………でも、確かに私のことはずっと『オフェリア』よね。ヒナコのことは『ぐっちゃん』なのに」

 

「あー、まあね」

 

「エドワードはヒナコの正体をずっと知っていたらしいし…………。それに今回の件。ヒナコの態度も……」

 

「あれ?オフェリア?」

 

「それにエドワードのサーヴァント────あの鬼も色々と……。もしかして私が一番遅れてる?また?今までと同じように?」

 

「お、おーい。オフェリアさーん………………?」

 

「他にも天照大御神(アマテラスオオミカミ)と…………天宇受売命(アマノウズメノミコト)も怪しいわね。二柱とも信じられないくらいの美神(びじん)だし、こんなの勝ち目が…………」

 

どんどん声が小さくなっていく。なんかブツブツ言ってて怖いんだが…………。負のオーラみたいなの見えるし。

 

すると、急にオフェリアが立ち上がる。どしたの?

 

「エドワード!」

 

「はい」

 

「デートに行きましょう」

 

「マジ?」

 

「マジよ」

 

なんだか知らんがデートに行くことになった。

 

…………なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で地上に降り、やって来たのは普通の海岸。急に襲ってきたくそデカいタコや、よくわからんサメっぽい化物をぶっ飛ばした後に砂浜を歩く。

 

「海にもあんなのがいるなんて…………。アレはそのままにしていいのかしら?」

 

気絶したまま海に浮かぶ謎生物たちを見て、オフェリアが呟く。

 

「うーん、まあ動物って上下関係がわかれば大人しくなるし。いいんじゃない?また襲ってくれば今度は殺すだけさ」

 

「…………そう。それにしても、いくら貴方でもあんなのまで倒せるのね。今は神の権能が無い状態でしょう?」

 

「あー、それね。まあ今は()()()()状態だからさ、権能なしでもなんとかなって良かったよ。神様に補充してもらえるとはいえ、そうポンポン令呪を使いたくはないしね。スサノオや鬼っ娘たちも頻繁に呼ばれたら困るだろ」

 

「奪ってる?」

 

僕の発言に不思議そうに首を傾げるオフェリア。あれ、そういえば言ってなかったっけ?まあいいか、また今度で。北欧の時に何も言ってこなかったから知っているものだとばかり思ってたぜ。

 

「……にしても、本当にこんなとこで良かったの?自分から提案しておいてなんだけどさ」

 

「私も賛成したのだから当然よ。海なんてしばらく見ていなかったしね」

 

デートと言っても、(当然だが)この異聞帯には映画館やらカフェなんかない。悩んだ挙句、もの〇け姫っぽい森、海、高天原の凄い神社の三択から海を選んだのだ。やだ…………うちの異聞帯、デートスポット少なすぎ……?

 

「まあ相手はオフェリアだしな。そう気張ってもしゃーないか」

 

「…………どういう意味かしら、それ」

 

静かに睨んでくるオフェリア。眼帯つけてても片目で十分怖いです。

 

「いや、脈ナシだってわかりきってるというか…………。僕はキリシュタリアじゃないし、テキトーな気分転換の相手くらいならチャチャッと済ませますよってことだよ」

 

「…………………………………………」

 

あれ、沈黙?まさかの?怖いので何か言ってくれません?くそ、こういう時はアレだ……!

 

横を歩いていたオフェリアの前に素早く回り込むと、僕は彼女に向かって恭しく礼をする。右手を胸に当て、なるべく優雅に。家の長男として外に紹介されるとき、そして女の子の機嫌を取るときにのみ使用する王子様モード(べつに自分で名付けたわけじゃない)だ。

 

「では、レディ。宜しければ僕が貴方のお相手を。美しき華の隣に立つには、我が身は不足かもしれませんが。この一時、僕がエスコートさせていただきます」

 

そして、手を差し伸べる。なるべく慈しむように、優しく。

 

「────それでは王子というより従者ね。まあ、その態度に免じてエスコートされてあげます」

 

そして、彼女が僕の手を取る。正直、何バカなことをやっているの?みたいな感じで流されると思ったのだが。何故か受け入れられたな。と言っても耳が真っ赤で、照れてるの丸わかりだ。

 

そしてもちろん、途中で止めるわけにもいかずしばらく手を引く。夕暮れに染まる砂浜をお姫様が満足するまで歩き、丁度いい岩に腰をかけた。ハンカチを敷くサービス付きだ。

 

「あら、そこまでしてくれるなんてますます従者ね」

 

「王子様だろうとお姫様相手じゃ従者みたいなもんだろ?僕は尻に敷かれるタイプなのさ」

 

「……とても想像するのが簡単ね」

 

「事実だからな」

 

こんなくだらない会話をできるのも、僕がキリシュタリアじゃないからだ。彼女も気楽に相手できて良い休憩になるだろう。

 

海を見る。果てしなく広がるはずの水平線に見える、嵐の壁を。

 

「異聞帯の嵐、ちゃんと維持できてるようで良かったよ」

 

「空想樹なしでどうやって維持しているのか、私にはさっぱりわからないけれど…………」

 

「そのまんま、()()()()()だよ。伐採したって言ったろ?伐採したものはしっかり利用するもんだぜ。それに、嵐の権能を持つ神霊だって山ほどいる。異星の神にできるなら、宇宙を創った地球の神にもできるさ」

 

「…………エドワードは、凄いわ。いつも誰にもできないことをやってのける。私ではできないことも、貴方は成し遂げてみせる」

 

少し驚いて隣を見る。オフェリアは真っ直ぐ、こちらを見ていた。

 

「どしたん、急に。あんま褒められると調子乗っちゃうんだけど。…………というか、凄いのは僕じゃなくてこの異聞帯だよ」

 

「異聞帯を維持するのも、育てるのもクリプターよ。それに、キリシュタリア様に最も強力な異聞帯が与えられたように、異聞帯とクリプターは密接な関係にあるわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お、おう……。ありがとう…………?」

 

マジでどうしたんだ。そんな真っ直ぐな目で見られながら褒められると本当に照れそうなんだが。お前、消えるのか…………?

 

オフェリアは、困惑した僕を見て楽しそうに少し笑う。そして、眼帯を外した。

 

紅く輝く、彼女の瞳。その右目にもはや魔眼としての能力は備わっていなくとも、強い輝きは失われてなどいない。

 

そう、この目だ。

 

彼女の強い意志が宿る瞳。誰かの為に自らの命をも投げ出した、その耀き。

 

僕には、全くもって理解できない。何においても自らの命が最優先の僕には。だから、画面越しに見ていた時からずっと。

 

僕は、彼女の瞳が────────。

 

「ねえ、エドワード」

 

「…………どうした?」

 

「────私、貴方が好き。友達としても、もちろん好きだけど。でも、違うの。別の誰かでもないわ。他でもない、エドワード・エヴァンズに恋をしているの」

 

「────────そうか」

 

「私はずっと、誰かに言って欲しかった。外の世界に出ても良いって。踏み出してもいいんだって。そして、それを言ってくれたのは貴方よ。マシュやヒナコと仲良くなれたのも貴方のおかげ。そして、今私がこうして生きているのも、貴方のおかげなの。だから、私は────────」

 

オフェリアはすこし高揚しているのか、赤くなった顔で話し続ける。恥ずかしがりながらも、僕の目を真っ直ぐ見ながら。

 

そうだ、だから。

 

だから僕は。

 

画面越しに見ていた時からずっと。

 

僕は、彼女の瞳が────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────嫌いなんだ。

 

 

 

 

 

 




日本の異聞帯がこんなことになっていた頃、インドの異聞帯ではペペロンチーノが謀反されてました。インドの神性全てを取り込んだ王に、サーヴァント奪われても生き残ったぺぺさん強すぎない?

それと誤解のないよう言っておきますと、エドワードはオフェリアのこと友達としてとても好きです。異性としてもめちゃくちゃ意識してます。



そして、FGOのストーリーが更新されないと投稿できないこの小説ですが、かなり時間が空くようなら小話やifストーリーでも書こうかと思っています。ifは今のところ「エドワードがう〇ちに行ったことで最初の爆破を免れたら」と「別の理由で生き返ってクリプターと敵対するエドワード」くらいしか思いついていませんが。もし見たいif等あったら参考程度におっしゃってくだせえ。

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