卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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え?あいつ霊王やってるの?

現在は隠居中の先輩


破面篇
12話 彼の日記と親衛隊


○月×日

 

いやー、酷かった。今回良かったと思うのは…処刑されかけた朽木ルキアさんが旅禍に助けられた事かな?

 

まぁそれに…重傷だったけど、死人は俺を含めて居なかったよ!

 

藍染惣右介、東仙要、市丸ギンの三人が護廷十三隊を裏切った。あの後はなんかよくわからん紐みたいなので転移してた、時間無いとか言ってたしな。

 

まぁ卯ノ花隊長が来たおかげで俺は何とか殺されないで済んだ、雛森さん達も回復が早かった。

 

しかしヤバイな。なんか崩玉って奴の解放に1年かかるからまだ動かないらしいけど、とんでもねぇな…隊長を超えた力を手に入れようとしてんのか?

 

まぁ、今の俺には然程関係ないかな。

 

今問題なのは…三番隊と五番隊と九番隊の隊長が居なくなった事だ。

 

だからって総隊長、俺を隊長にしようとしないでくださいよ。

 

○月×日

なんだよ決闘って!ふざけてんのかクソジジイ!!

炎熱系最強って噂ぐらいは聞いたことあんだぞ!?勝てるわけねぇだろうが!!

 

ぐっ、仕方ない…ここは雀部さんに説得してもらおう。

 

○月×日

 

雀部、貴様…謀ったな!?俺がなんで貴方と戦うんですかい!?

おい、天候操るとかずるいだろ!え?私に勝てたら隊長にならなくていい?いいだろう、全力で叩き潰す!!

 

友の眼を覚まさせるのも、友である俺の仕事だ!

 

○月×日

 

とりあえず隊長にはならずに済んだ、始解と剣術だけで雀部さんの卍解を破れた。でも何で卍解・改弐を使ってこなかったんだろ…まぁ使われるかもしれなかったからさっくり倒したけど。

 

え?念願の隊長だろって?断らなくてよくないって?

 

俺が固辞したのには理由がある、藍染惣右介に俺は何もできずに倒された。

 

このまま隊長を名乗っても「斬魄刀を解放しきれてない古参の新隊長(笑)」とか「後方支援の隊長より弱い隊長(驚)」って言われるに決まってる。

 

卍解を超えなければならない、だから現世の哨戒だったかな?日番谷先遣隊も辞退した。俺が隊長になってたら萩風先遣隊になってたかな…危なかった、いきなり仕事とか押し付けられそうだったわ。

 

とりあえず、その任務も雛森さんのカウンセリングを理由に断ったよ。雛森さん藍染の事すっかり忘れて切り替えてるけど、日番谷隊長の顔が見れないとかで仕事に支障が出てる。

 

今はゆっくりと名前を聞いてもショートしない練習中だ、次は雑な肖像画、その次は声を録音して聞かせ、その次に鍛錬中の汗の滴るいい男である写真を見せて行く予定だ。

 

なお、まだ先は長そうである。大丈夫かなぁ……

 

○月×日

 

自分を追い込む、めっちゃ追い込む。俺は死にかけた時に卍解できなかった、卯ノ花隊長達が来なければ死んでただろう。

 

だから、今は死にかけた状態で卍解をする修行をしてる。かれこれ100回ほど生死を彷徨ってるが、まだ卍解を超えることはできない。

 

凡人の俺にはここが限界…とは、決め付けたくない。努力を止めた瞬間に成長は止まる、ならばこのまま努力を続けていくつもりだ。

 

卍解・改弐の道は、果てしないな……

 

○月×日

 

卯ノ花隊長に免許皆伝されました。

 

でも、自主練を怠るつもりは無いぞ。隊長格に並べるだけの力、早く手に入れないといけない。

 

あ、最近虎徹さんがチラチラ俺を見てる気がする。なんだろ…まさか、俺を治療できないから治療の練習できなくて不満とか?

 

いやいや、卯ノ花隊長の稽古は継続してるぞ。単に俺が怪我しなくなってきただけだよ?

 

○月×日

 

虚圏って場所へ派遣される事になった。

 

井上織姫って子の救助任務で、少数精鋭で向かった。俺は行ってすぐに独断行動が許可されたから適当に治療者を探してみた。

 

道中で俺は「死神代行が居るよ!」って、なんか変な鼻水垂らした虚に聞いて天蓋って場所に行った。天蓋って閉鎖空間だからかな?霊圧感じなかったわ。だから気づかなかったけど、入ってみたら死神代行が死にかけ…いや、胸に穴空いてたな。

 

こいつ死んでたな。他にも旅禍だった女の子と眼鏡が居たけど、助かる可能性がない奴を助ける余裕は無いからな。回復できそうな女の子に死神代行をとりあえずは任せた。

 

で、そこのNo.4の奴と戦闘する事になった。途中で何かパワーアップして悪魔みたいなのになったから卍解して倒した。虚と戦うの何気に初めてだったわ、強かった。

 

でもこいつの上に三人も居んのか…副隊長じゃ勝てないだろうな。

 

あ、その後に死神代行が…なんだろう、虚になった。そう表す他に無いんだよね。俺が瀕死にして治療してる虚を殺そうとしてきたから返り討ちにしといた、卍解で倒せたから良かったわ。そしたら骨みたいなのがボロボロ取れて元の人間になってた。

 

まさかこれが卍解・改弐に至る為の鍵か?そんな事を考えながら適当に三人を治療して下ろしといた。虚も卍解ぽい事してたし、でも体の中に虚入れたくねぇなぁ…

 

あ、その後?その後はボコボコにし過ぎた虚の治療やってた、降りて気づいたら卯ノ花隊長と死神代行が居なかった。

 

他の隊長とかとっくに仕事終わらしてたわ。で、そのまま普通に尸魂界に帰ったな。

 

あー、大変だった。

 

○月×日

 

速報 藍染惣右介 逮捕!

 

死神代行と隊長達が倒したらしい、市丸ギンは藍染を殺そうとして返り討ち、東仙要は藍染に普通に殺されたらしい。

 

え?そんだけかって?そんだけだよ、知らねぇよ!副隊長でもなぁ!知り合いとかツテがあるわけじゃねぇんだよ!!

 

まぁ、隊長格を総隊長含めて相手したんだから当然の結果だろうね。

 

隊長たちはやっぱ強いなぁ、俺も頑張らないとなぁ…

 

○月×日

 

溜まった有給消化してきます、俺が隊長に至る為に…卍解を超える為に、生死をかけた本気の修行してくる。

 

○月×日

 

久々に帰ってきたら隊長とか一新してたな、よし。

 

あ、別に…隊長に無理矢理させられるのが嫌だったから逃げたんじゃないよ?そ、そんな気持ちは……少ししか無かったからな!

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

女性の死神の数は少ない、だがそれでも一定数は在籍している。

 

その中でも大多数の女性の死神が所属している、秘密の会がある。

 

【萩風親衛隊】

 

四番隊の副隊長である萩風カワウソの、ファンクラブである。

 

萩風は確かに、イケメンではない。むしろ平均かそれより下である、だがここに在籍する死神は彼を顔で判断していない。

 

顔がタイプという者も勿論居るし、声が好きという者も居る。

 

だが最も彼に惹かれているのは謙虚であり、誰にでも対等に接し、規律は守り、正義感の強い死神である事。つまる所、規範となるべき死神だからだ。

 

例え怪我を負っても大したことは無いからと治療を拒む女性の死神に対しても、怪我の大小に関わらず「確かに、動く分には問題無さそうだもんね」と彼はまず肯定を示した。しかし博識な彼は様々な事象やリスクを説明し、簡単な健診だけは行なうのだ。

 

結果的に魂魄に響く程の重傷でも、それに対して「え、予想外な…んっ、ん!…残念ながら、俺の予想の通りだな」と完璧な処置を行い無事に日常生活へ戻している。

 

彼はどのような時でも、全力なのだ。

 

そしてこの会は、そんな直向きな姿に心を打たれた者たちによって作られたのだ。

 

会長を務めるのは彼の弟子であり、四番隊では卯ノ花隊長に次いで萩風に近い者。

 

虎徹勇音である。

 

現在は定例会が行われており、各部隊の代表(理事)が会議を行っている。

 

しかし、これを見ていたらこう思う人もいるのではないだろうか。

 

このような会を開き、萩風へどのように接し、どの程度なら話してもいいのか。そんな本人とはまったく関係しないところでの決定をしてるのではないか?と。

 

周りを牽制するようにしていたら、嫉妬や誹謗の言い争いに発展してしまうのでは無いかと。

 

だが安心して欲しい、この会は別に萩風に対してのルールを決める会では無い。

 

「会長、萩風様と最近はどうなのでしょうか!」

 

「会長、また日和ったんですか!?」

 

「会長、このままではまた進展がありませんよ!」

 

「で、でもぉ…」

 

会長の恋路を応援する会である。元々はこのような会では無かった。最初は本当にファンクラブから始まり無秩序が秩序の萩風ラブの集まりであった。

 

しかし、そんな時に萩風に対して不快な事を申した死神が居た。内容を簡単に纏めれば「かっこつけたがり」や「どうせ男は下半身に素直だろうぜ!」などだ。

 

その時は皆も実際には上手く反論できなかった、何故なら彼について何も知らないから。一方的な偶像を押し付けていたからだ。

 

だがその時に居合わせた虎徹勇音はこれを真っ向から全て否定、完膚無きまでに言い負かす。その時に萩風へ好意を抱いていた死神達は気づく、彼に相応しいのは…いや、彼女レベルでなければ彼の隣に居てはならないのだと。

 

またその文句を言ってきた男の死神だが、今は改心して女の子になる程である。

 

以来、この会は会長の恋路を応援する会へと変わったのだ。

 

「特記戦力だった雛森副隊長が消えたとはいえ、会長も油断はできませんよ。今は殆ど横並びとは言え、会長も次の一手を打たなければなりません」

 

男の声であるが、今は女の子の幹部が言った言葉に「それは、わかってるのですが…」と、覇気が弱い。元々彼女は内気な性格だ、あまり上に立って皆を引っ張って行くのが得意では無い。

 

だが、引っ張り上げられ、押し上げられる才は誰にも負けない。

 

この会は自身に進展が無いのをわかっているからこそ、彼女は参加している。

 

「私じゃ…萩風さんと、釣り合うかどうか…」

 

そう言って気弱になる会長、だがいつもの事なのか理事たちはそのまま会議を続ける。

 

「さりげないボディタッチはどうだ?」

「師弟関係じゃ効果は薄いんじゃないか?」

「確かに、現に今までも…」

 

「新しい甘味処の無料券は?」「あそこは特記戦力もよく利用する、リスクが高い」「自室でのデートプランは?」

 

「萩風様に剣術の指南を受ければ?上手くいけば…」「あの人の剣術、何秒耐えれると思う?時間が足りんだろ」

 

「あの人の彼女暦を調べて、傾向を…」「駄目ですね。かなり巧妙に隠されてます、可能性の断片すら拾えないとは…」

 

「いっそ押し倒して…」

「一瞬で気を刈り取られるぞ」

 

その後も会議は続いたが、結局進展はなかった。

 

会長の恋を実らせる事はできるのか、それは誰にもわからない。




特記戦力
それは萩風と何かいい雰囲気を醸し出す女性の死神達の中で、最も会長の恋路を阻む可能性の高い者達の事を畏怖を込めて呼称されている。

1.松本乱菊
もっとも最近に警戒人物として登録された死神。
胸部装甲が厚く、人当たりも良い副隊長。彼の回道の力や自己犠牲をしてでも諍いを止める態度を見てから尊敬し始める。

2.伊勢七緒
斬魄刀を持たないというコンプレックスを抱いていたが、萩風が斬魄刀を物にするのに100年かかったのを笑い話のように話してから気が楽になる。この中では比較的に脅威度は低い。

3.卯ノ花烈
特記戦力筆頭、一緒に行動しない方が少ないと思うほどに萩風と共に居る。彼と鍛錬をしてる間は本当の意味での笑顔を見せている程に心を許している、いつでも萩風を籠絡できるので常に警戒している。

4.砕蜂
二番隊の隊長。同副隊長の大前田とは真逆の性格と凛とした態度、そして規範を守る心構えと振る舞いから尊敬されている。彼を隊長に最も押し出したい人物であり、萩風からは敬遠されていると自覚してない。

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