卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋
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帰ってくると言っていたが……いや、待つのは慣れてる。横並びになりたかったよ……え?ち、違う!夫婦という意味で言ってにゃ…言ってない!

護廷十三隊 二番隊隊長 砕蜂


15.虚圏で戦闘中

「うそ…だろ?」

 

石田雨竜は目の前の事実が余りに自分の予期していた未来と乖離していたので、そのまま固まってしまっていた。

 

あまりに現実離れした事実は、聡明な石田の脳をもってしても認め、理解するのに時間がかかっていた。

 

目の前で行われている、目で追うことだけがやっとの高次元でのやり取り。結界で緩和されているが、凄まじい霊圧と覇気、そして全身を襲う謎の高揚感に支配されてしまう。

 

「僕と黒崎が苦戦した奴と互角…いや、押してる?!」

 

天鎖斬月は黒崎一護の卍解であるが、それはスピードに力を極端に割り振った能力を持つ卍解だ。そして目の前の悪魔、ウルキオラはそれを優に上回っていた。

 

なのだが。

 

「卍解も使わずに…本当に副隊長なのか?」

 

そのウルキオラのスピードすら、萩風は上回っていた。

 

☆☆☆☆☆

 

高速で行われている斬撃の応酬に、両者は未だに無傷であった。

 

スピードは萩風が上、防御力はウルキオラが上、戦闘技術は萩風が上、経験値はウルキオラが上、攻撃力はほぼ互角。

 

両者共に一歩も退かないやり取りをしている。

 

「どうした、死神。その程度か?」

 

「そっちこそ、そろそろ本気を出していいんだぞ?」

 

だが、お互いに実力はまだ隠している。それをお互いが理解している、ウルキオラの挑発に萩風は眉一つ動かさずに鬼道で反撃するがそれはウルキオラによって放たれた虚閃で相殺される。

 

そして戦闘が始まってから、初めてお互いに動きが止まる。疲労などではない、むしろ両者はまだまだ力を出せる。止まった理由は、萩風にある。

 

萩風は斬魄刀、既に始解された天狐を一瞥するとウルキオラに向き直る。

 

「お前、見えてるな?」

 

萩風がそう問うとウルキオラは「見えている」と即答する。

 

「言ったはずだ、貴様を殺す為に力を授かったと」

 

天狐の能力は一言で表すならば、虚構の世界に塗り潰す事だ。景色ならば彼の斬魄刀で地獄を天国に、現世を虚圏へ偽ることが可能だ。

 

しかし、それは景色を偽っただけであり霊圧の技術が高い者はその違和感に気づいてしまう。だがそれでも、偽りの全てを把握するのは不可能である。

 

以前に藍染の攻撃を萩風が受けた時、あれは長年の勘で咄嗟に避けられただけではない。藍染の霊圧を無意識で察知できたからこその回避でもあった。

 

更に言うと、藍染程の実力者でも萩風の位置を正確には測れなかったからこそでもある。

 

だからこそ、萩風は違和感に気づく。ウルキオラ・シファーは藍染の四番手、藍染の手下だ。藍染より優れているならば、手下になる事は無いはずだ。

 

「俺の眼は貴様の幻影を見分ける。いかなる小細工も意味を成さない」

 

そして、萩風の考えは正しかった。藍染はウルキオラの目を強化したのだ、天狐を見破る為に。萩風の卍解である【陽炎天狐 炎周・九十九提灯】も言わば虚構が実体を持つ力。

 

しかし、その虚構を必ず見破る。ウルキオラが虚圏に残された理由は一つ。「萩風が虚圏へ現れた場合の対処」だ、現世ならば藍染自らが手を下せば良い。だがあれは群の力、萩風一人で虚圏を落としてしまう。

 

また、それだけではない。今のウルキオラは藍染の配下の破面においては最速、最硬、最大の霊圧を持っている。全ては、藍染から賜るものである。

 

「破道の八十八 飛龍撃賊震天雷砲(ひりゅうげきぞくしんてんらいほう)

 

もはや天狐の能力は無効化された、ならばと萩風は鬼道と剣術をメインに攻防を続ける。

 

「無駄だ、避ける必要すらない」

 

放たれた力の塊、滅殺の極光をウルキオラは片腕で受け止める。そしてもう一方の片腕で虚閃を放つ。また萩風も鬼道でそれを相殺する、そして両者はまた近接戦闘へとシフトしていく。

 

だが、お互いが実力の探り合いをしているこの攻防に動きは無い。どちらかに戦局が傾くような事は、起こらない。

 

だからこそ、ウルキオラは決断した。

 

「お遊びは…ここまでにするぞ」

 

そして、胸にある鈍く輝く玉へ手を当てる。

 

黒翼天魔(ムルシエラゴ)新天地開放(レクイエム)

 

☆☆☆☆☆

 

目の前で急激な霊圧の膨張が始まる。黒と白の光が螺旋状に天に昇っていき、その中心にいる存在…ウルキオラ・シファーが間違いなく、本気を出そうとしていた。

 

これが目覚めた場合、卍解無しの自分では勝てない。そう悟ったのか、萩風は距離を取ると霊圧を高める。

 

蒼天(そうてん)()する(てん)なる大河(たいが)噪音(そうおん)する大地(だいち)真髄(しんずい)

 

目の前では霊圧の膨張が止まることを知らないウルキオラが包まれた光の塔、並みの攻撃ではウルキオラに届きすらしないのを萩風は察している。

 

()()銀嶺(ぎんれい)()わり()皇居(こうきょ)(まど)え・(したが)え・()じ・()()れ・(とが)()れ」

 

結界に守られている石田や井上も現状の異様さと、何かが来るという確信めいたものを感じているようである。だからこそ、萩風は自身の持てる力で最強の鬼道を詠唱している。

 

(みち)しるべ()破邪(はじゃ)洞窟(どうくつ)憑座(よりまし)から(はな)つ・(さば)きの鉄槌(てっつい)

 

萩風の右手が光輝く、すると暗がりの世界であった天蓋に新たな光りが現れる。そして、萩風が合図をするように右手を振り下ろす。

 

「破道の九十三 瞬天閃降下(しゅんてんせんこうか)

 

天から振り下ろされたのは、光の裁きであった。螺旋状に立ち上っていた光の塔を容易く撃ち抜くそれはそのまま中に居たであろうウルキオラを貫通していく。

 

光が落ちてた来た、表すならそんな言葉だ。萩風が藍染という規格外の怪物との戦いを想定して覚えた技だ。

その威力には石田達も驚いている、そりゃそうだろう。光が降り注いだ地は、跡形もなく消滅している。今は空虚な洞窟だけが残っているのだから。

 

ここだけ見れば、圧倒的な力を見せつけて萩風が勝利した…と見えていた。

 

「悪い冗談だろ」

 

思わず萩風は呟くのも仕方ない事かもしれない、それは洞窟からゆっくりと浮かび上がってきた。深淵から舞い戻ったその姿は、禍々しく…悪魔や堕天使といった言葉が相応しい存在感を放ち続けている。

 

「悲観する必要はない、藍染様の御力の前では…皆等しく、無力なだけなのだから」

 

ウルキオラ・シファーは、食らった時の傷を超速で回復させたのか、体からは少しだが煙のような物が出てくるがすぐに収まる。胸には鈍く輝く球体、その力の源らしき物体は……ウルキオラを別次元の存在へと進化させていた。

 

「あ…ぐ…!?」

 

結界に守られている石田や井上は、障壁でいくらか緩和されている筈だが。息が詰まっているような…息をするのを忘れてしまうような存在感に、押し潰されている。それを萩風は確認すると少しだけ結界の強度を上げる。

 

それによりいくらかマシにはなったようではあるが、それでも体に染み付いてしまった恐怖を拭えていないようである。

 

「残紅に跪け 卍解!!」

 

萩風は今のウルキオラと正面から戦うのは分が悪い、そう判断するとすぐに霊圧を解放する。ウルキオラにも見劣りしない、霊圧の解放だ。萩風が卍解を封印していたのは、どこまで卍解無しで戦えるのか、己のレベルを見極めるためだ。

 

そしてある程度、藍染との差を把握したからこそ発動する卍解。

 

「無駄だ」

 

しかし、萩風が斬魄刀を解放しようとするも、現れた虚像の軍団は実体を形作る前に消されてしまう。虚像の状態に攻撃したのだ、この時の萩風にダメージは反映されないが…己の卍解の全てを否定されていた。

 

「っ、何を…しやがった!?」

 

あまりに一方的に消された卍解に、萩風は眼を見開いたまま動けなくなっている。

 

「貴様の卍解なぞ、この状態になる前の俺でも対応できる。虚像は一定以上の霊圧の揺らぎを与えてやれば、実体を保てなくなる。理解したか?」

 

淡々と語られる萩風の卍解の弱点。だが萩風も初めて知る弱点であった、そんな事をされた事もなければそんな事で虚像が消えるとも考えた事が無かったからだ。

 

「遅い」

 

「がばっ…!?」

 

ならばと、萩風は斬魄刀で斬りかかるがそれは防がれる。いや、防御されたのではない。肌が硬すぎて刃が通っていないのだ、だからわざとウルキオラは避けなかったのだろう。そしてカウンターに放たれた翼の薙ぎ払いを避けきれずに投げ飛ばされてしまう。

 

「散れ 黒翼の矢(ネグロ・グラバ)

 

翼から放たれるのは刃の嵐、その全てが並みの死神を瞬殺する破壊力を持つ。それが止めどなく注がれる。数分ほどうち続け、弾着の際に舞い上がった煙が晴れていくとそこには傷だらけの萩風が貫いた羽を支えに座り込んでいる。

 

速度、攻撃力、防御力、霊圧、全てにおいてウルキオラが何歩も先を行っている。

 

萩風がこうなったのは慢心だけではない、天狐の能力がウルキオラに通じていたなら立場は逆転していた可能性もある。藍染が予期し、与えた。それが、今を表している。

 

「終わりか…この程度ならば、藍染様が手を下すまでもなかったな」

 

ウルキオラの全力を受け止められる死神は、総隊長でも厳しいだろう。そう察することができる程度の力の差が開いている。この怪物はその気になれば虚圏を破壊し尽くす事なぞ造作もない存在だからだ。

 

そしてウルキオラはまた与えられた使命を全うするための考えを始める。

 

とりあえず、ここに来た隊長達を順番に殺しておくか。そんな事を考えながら、先ずは目の前にいる石田雨竜から消しに向かおうとすると。

 

「……まだ生きていたのか」

 

萩風はまた、ウルキオラの目の前に立ち塞がっていた。体のあちこちに流血の跡が見受けられる、だが既に傷は塞がっているようでウルキオラの霊圧を目の前で受けても、微動だにしていない。

 

「死ななきゃ、擦り傷だからな。四番隊副隊長は伊達じゃない」

 

そう言うと「じゃあ、こっちも遊びは終わりだ」とボソリと呟く。ウルキオラが辛うじて聞けたそれが何を意味するのか、それは直ぐに分かることとなる。

 

「鬼火よ集え 卍解」




最近、自分の小説の勉強中の作者です。

オリジナル鬼道、あとブレソル三周年記念のウルキオラさんにご登場願いました。レクイエムとか勝手に名付けました。

なんかエゲツない奴になってますが、今後の萩風カワウソをご期待ください。




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