卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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彼は私の中で大した事は無い存在であった、賞賛に値しても警戒に値する死神ではなかった。黒崎一護に敗れた後もそう考えていたさ。だが滅却師の長を倒した時の霊圧を感じてからは、私と同等に彼を警戒しなかった滅却師達を…哀れだと感じたよ。

元護廷十三隊五番隊隊長 藍染惣右介


6話 イケメンって、世の不条理だよね?

俺が死神になってから、500年が経ちました。

 

ソウルソサエティも色々変わった。100年前だと隊長とか3人くらい一気に変わった、まぁ何より変わったのは俺も成長してきているとこだと思う。

 

鬼道を鍛え、剣の腕を磨き、斬魄刀を磨き、はっきり言うとそろそろ卍解・改弐を覚えても良い頃合いだと思うんだ。しかも最近になって天狐ちゃんも「何か、思い出しそうだ…」と言い始めてる、そう言う設定なのかな?思い出したら卍解・改弐を発動できるんかな?

 

そんなこんなでまた俺はいつもの鍛錬場所にやって来る。

 

「よぅ、久しぶりだな。ヒヨッコ」

 

「随分と久しぶりですね、麒麟寺さん」

 

麒麟寺天示郎(きりんじてんじろう)。最初に会ったのは100年前かな?最後は確か20年だった気がする。

 

このリーゼントのおっさんはこの洞窟とか温泉を作った人らしい、まぁこんな場所が自然発生しないとは思ってたから予想は出来てた。

 

それとこのおっさん、無茶苦茶強い。めっちゃ早い動きができる、最初はその動きが全く見えなかった。卯ノ花隊長に鍛えられてた俺が少しだけ天狗になってた時期に会ったんだが、背後に立たれて背中を殴られるまで気づかない早さだった。俺は速力には自信があったけど、護廷十三隊の死神でもないこの人の瞬歩を見たら俺もまだまだだと思った。

 

そして、より一層ここまで走り込んだよ。

 

おかげでここまで1時間で来れるようになった。

 

「ほー、見えるようになったか」

 

そのおかげかね、今は何とか見える。いやぁ、この人おかしいよ。前より動体視力が良くなった俺でも、目の端で捉えるのがやっとなんだから。ちなみに何かよく知らないけど霊王とかいう人を守ってる組織に入ってるらしい、俺はそこら辺がよく分かってないけど凄い事なのかな?異国の王様の近衛兵みたいな?

 

「隊長直々に鍛えられてるんで」

 

それと俺の実力だが、この前にやっと記念すべき初勝利をもぎ取った。34250戦、34246敗、3分け 、1勝!でもこれに自惚れてはならない。何故なら勝てたのは一度だけ、それに加えて卯ノ花隊長以上の怪物が12人居ると考えればもう震えが止まらねぇよ。

 

「積もる話もあるが、実は今日は休みじゃねぇ」

 

ん、休みじゃないのか?この人がここに来るのは休みの時にちょこっと見に来るからって聞いてたんだけど?

 

「霊王様がお前に興味を持ってる、いつかお前はうちに来れる逸材だと思われてるらしいぞ」

 

あ、仕事ですか。勧誘かぁ。この人の入ってる組織は知らない、自己紹介された時に聞き漏らしたと思う。もしくは言ってないのかもしれん。

 

「え、嫌ですけど」

 

もちろん嫌だよ、俺は女の子にチヤホヤされたくてここまで頑張ってきたんだよ。王ってことは男だろ?何で野郎を守る為に剣を振るんだよ、俺は俺と女の子のために斬魄刀を振るからな!

 

「はっ、つれねーな。俺様の本当の湯を味わわせてやろうと思ってたのにな」

 

「この湯で十分ですよ」

 

後、この湯で傷を負う事はなくなった。耐性でもついたんだろうよ、そりゃ何年も入ってたら慣れるか。

洞窟は未だに水の中を泳いでるみたいな違和感あんだけどねー。

 

「そろそろ上がりますよ、女の子を待たせてるんで」

 

この後に色々と約束とかあるんですよ、仕事も修行のこってるしな!

 

☆☆☆☆☆

 

一人で入る風呂が寂しいのか、いや…これは今しがた出て行った男へ対して物思いにふけっているからだろう。彼は独り言を呟いていた。

 

「あいつは自覚してんのかねぇ」

 

零番隊は死神の中の精鋭の中の精鋭の5人。その実力は3000人以上在籍する護廷十三隊の総力を上回る、霊王から選ばれた猛者なのだ。

 

その霊王に選ばれる条件は一つ、ソウルソサエティで歴史に残るような事をしたかだ。例えば零番隊のリーダーの立場にある兵主部一兵衛はソウルソサエティにある全てに名を付けた。

 

斬魄刀も、卍解もだ。

 

他にも全ての斬魄刀の元となる浅打を作り上げた二枚屋王悦など、誰もが偉業を為し得ている。

 

「まぁ、そん時はそんときか」

 

霊王が気にかけているということは、彼はソウルソサエティに変革を起こす寵児になる可能性があるという事だ。

 

麒麟寺が彼を見て、特筆すべき所は無い。確かに実力はありそうだが、ソウルソサエティに変革を起こせるような男かどうかと問われたら答えはノーだ。

 

だが、彼には一つだけ彼の異常なまでの実力がわかっている。

 

「ここを使うとはいえ…いや、ここを使ったからこそ霊王様に気に入られたか…

 

 

 

 

 

 

霊王様が作成された、この地でな

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

約束の時間まで5分か、ギリギリだな。麒麟寺さんと話してて長風呂しちまったな。

 

実は今日は女の子の死神と約束があるのだ、二人っきりでな!残念な事に野郎への贈り物選びを手伝わされるんだけどな!!その子くっそ可愛いのになぁ!!

 

「あ、萩風副隊長!」

 

あ、プライベートなんで副隊長呼びはよして欲しいなぁ。今の俺の格好って、超緩い一般的な平民と変わらない服装なんだからさ。

 

「すまない、雛森さん。遅れてしまった」

 

彼女は雛森桃(ひなもりもも)、5番隊副隊長です。めっちゃ若いよ、俺も容姿だけは若いけどこの子は優等生みたいな子でねすぐに副隊長になったんだよね。半端ねぇよ、俺そこに就くのに400年かかってるのに、その4倍以上早く就くのはおかしくない?

 

この子との繋がりは初めての隊長、副隊長の集まりで緊張してたみたいだから軽く話して輪を広げてあげたくらいの繋がりである。

 

普段なら見知らぬ女の子と話すのは大変なんだけど、キョドリまくってた彼女を見てたら自然と落ち着いて話し合えたんだよね。

 

「やぁ、萩風副隊長」

 

で、このメガネをかけた優男が何でここに居るんですかねぇ…

 

「藍染隊長、お久しぶりですね」

 

5番隊隊長、藍染惣右介(あいぜんそうすけ)。怪物集団である隊長格の一人だ。

 

「買い物かい?」

 

そうですよ、貴方へのね!雛森さんがわからないからって相談に乗ってるんですよ!何で貴方がタイミング悪くも居るんですかねぇ!?

 

なんでよりによってこんなイケメンの贈り物を俺が考えるんだよ!?他のイケメンにしろよ!三番隊副隊長の吉良君とか、九番隊副隊長の檜佐木君とかさ!顔面偏差値高い子達だろ?俺の偏差値は40程度だわ!!

 

貧乏くじにも程があるからな!?しかも雛森さんが「萩風さんしか、こんな事頼めなくて…」って言われたら断れないだろうが!!

 

そん時の周りの目がやばかったからな!特に十番隊の日番谷隊長の目つきやばかったぞ、完全に俺を射殺す眼をしてたからな!

 

「そうかい、邪魔をして悪かったね」

 

くそ、イケメンなんて嫌いだ!鍛えようが無いからな!

 

しかもなんて場の空気が読める人なんだ、イケメン過ぎるだろ!実力もあって心までイケメンとか、こんなの居て俺が隊長になれても刺身の横のツマかシソ程度の価値しか出ねぇじゃねぇか!!

 

「藍染隊長……」

 

はい、隣の雛森さんは立ち去って行くイケメンにうっとりしてます。

 

何で休日にこんな事をしなきゃならんのや……女の子と一緒なのに、ただただ俺と隊長との男としての実力差を見せつけられただけかよ。

 

…その後は特に何も起こらず、無事に俺の休日は終わった。

 

あ、卯ノ花隊長に「今度は負けませんよ、萩風」と鍛錬と言う名の一方的な殺戮が行われてたわ。俺っていつもボロボロだなぁ…

 

それと後日、斬魄刀を片手に「雛森と付き合ってるなら…俺に一言、挨拶は無いのか?」と日番谷隊長が四番隊隊舎にまでやって来た。どうやら密会してると勘違いしたようで、雛森さんが来るまで誤解されたのも書いておこう。


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