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「よし、上手く行ったみたいだな」
南で好き放題動く全員をなんとか統率しようと頭痛を発生させていたデヴィッドに笑みが浮かぶ。指示通り動いてくれるのがダインとクレハ位しかおらず自分のスコードロンのMMTMの仲間が如何に得難いものか実感し思わず涙を流しそうだった。
しかも指示したことより良い状態に持っていけるのが腹立つのである。本戦メンバーは頭おかしい。
グレネードランチャーやロケットランチャーの砲火が目に見えて減り、前線をどんどんと押し上げていく。
「よし、我こそが一番槍をボアッハア⁉︎」
機関銃の雨が止んだ隙に狙撃をくぐり抜けて夏侯惇がゲートを突破しようとしたが出入り口に仕掛けられていたであろう爆弾で吹き飛ばされた。
「バッカヤロー! 早く戻ってこい!!」
『すまん凸侍が伝染った』
この場に残っているのはボブとベアのNPCな事はわかっている。あまり時間を掛ければゲートに爆弾を再設置される恐れがある。
「ダイン、あれをやるから手伝ってくれないか」
「ああ、アレな? みんな! 俺とペイルライダーの援護頼む!」
「何やる気だ⁉︎ みんな援護しろ!」
駆け出したダインとペイルライダーを援護すべく全員がボブとベアのいる場所に制圧射撃を敢行する。するとダインを足場にペイルライダーが塀の上に登って中に入っていった。
コレと闇風の到着でボブとベアは蜂の巣にされた。南側も解放されて出入り口に銃士Xとシノンを残し内部に突入していく。
「おっとお⁉︎ 待ち伏せは良くないですよフィオザンッッ‼︎」
一方、中で暴れろと言われている凸侍は好き放題に走り回っていた。重要施設っぽい方へあてもなく向かっていたところ、長い通路の先で重装甲のマシンガナーフィオが現れたのだ。
「おっ硬いな見た目通り」
凸侍が撃った弾を向かって右の壁に盾を斜めにして滑らせるように弾いた。対物弾を盾でそのまま受けると衝撃によりダメージが貫通するので正しい受け方だ。壁に弾が突き刺さる。
たとえ命中してもシシガネと同じく仕留めきれないだろう。かといって徹甲炸裂弾に頼っては凸砂として芸がない。
お返しと言わんばかりに行われたM60E4の掃射を通路を戻って隠れてやり過ごす。壁に弾痕が大量発生し瓦礫と火花が舞う。試しにフラッシュバンを投げ込んでみるが、フルフェイスのヘルメットと盾でしっかり遮光と遮音されているらしく平気そうだ。
隠れたまま呑気に端末からマップを眺め、悪い笑顔をした凸侍はコガラスマルを起動した。フラッシュバンに耐えられるならばある程度音を立ててもいいだろうということでもう一つ投擲。強烈な閃光と爆発音を尻目に壁にコガラスマルを突き刺して円を描き蹴り開ける。
「とーーりぬけこがらすーー!」
小さくダミ声を出してふざけつつ穴を抜ける。何かのサーバールームのようで涼しいが気にせずそこを駆けていくと、一部のサーバーが先ほど弾かれた弾が壁を抜けてきたらしく故障していた、
「とーーりぬけAW50ーー!」
さっき大体フィオがいた位置に向け壁越しに攻撃し、間髪入れずコガラスマルで壁を切って突入する。
突き破った先では胴体に小さくダメージ判定を出しているフィオがこちらを向こうとしていた。が、重い装甲に機関銃に大型の盾とシシガネ以上の重装備は転回に不利だった。
銃口がこちらを向く前に盾側によりさらに左に脚を使って回り込みつつ発砲。至近距離すぎて外す方がどうかしている凸砂レンジでフィオの頭部ヘルメットが大きく凹んだ。咄嗟に盾で殴りかかってきたそれを銃剣で一刀両断し、凹んだ所へ再度狙撃。
本当はもう銃剣でぶった切った方が早いのだがツッコミを入れるものは誰も居ない。
凹み耐久力を損失していた所に二発目は耐え切れなかったようで、ヘルメットが砕け大きく仰け反るも、まだ死なない。ヘルメットの中から現れた美貌は諦めないとばかりに歯を食いしばり機関銃を倒して反動を利用し横薙ぎに撃った。反動を抑えず利用するという意味ではレンのカーネルさん歩法と同じことである。
7.62mm弾が壁の先のサーバールームをも蹂躙する。反動を抑えないゆえに撒き散らされた弾は回避困難なものだ。
一矢報いたとほくそ笑んだフィオだが、いつの間にやらそこに凸侍の姿はない。自分を覆う影に気づきフィオが上を見れば、AW50の大口径の銃口が最後の光景であった。
deadを点灯させたフィオの脇に着地すると同時に攻撃を受ける。防弾アーマーを貫通し体力が大きく減るその先に居たのはさっき取り逃がしたロイだ。盾の残骸を拾って高筋力に任せフリスビーの様に投擲しつつ逃げる。
先程まで凸侍がいた位置の裏を取る様に現れたので時間を掛けていたら挟み撃ちにあっていた。回復剤を自分に突き刺しつつ走っていると、先から見慣れた黒衣が走ってきた。キリトちゃんである。
「おっキリトちゃん、この先にアサルト使い居るから任せた」
「了解!」
ロイが追撃しようと追いかけてきていた前に出現したキリトにフルオート射撃を加える。
そのほぼ全弾を光剣で弾かれマガジン交換も闘争もできずロイは斬り殺された。合掌。
ほぼ全員が施設内に入り通路を凸侍とキリトが好き放題に繋げた結果NPC達の防衛戦略も崩壊したらしく、どんどん討ち取られていく。全員がどう見てもボス部屋とスルーした部屋を残しNPC達の虐殺劇が繰り広げられた。
外で散々ベータチームを苦しめたグレポンNPCアベルはグレネードも射撃も効かないシシガネに徐々に追い詰められ通路の端でdeadを点灯させられるまで短機関銃を撃ち込まれる羽目になった。シシガネはパンツ一丁にされた恨みを全部アベルにぶつけてスッキリしていた。
最後に残されたのはドク。誰も見かけなかったことからボス部屋にいると考えられた。シノンと銃士Xの狙撃組ももう敵がそこしかいないのでのんびり中にやってくる。
「よし、いくぞ」
部屋のドアをスイッチを押しスライドさせると、射撃が飛んできたがキリトが難なく斬りはらう。その時に前に出て守ろうとしたシシガネのヘルメットの頭頂部が切れて気づいていないキリトとシシガネを除き吹き出しそうになるも、最後のNPCドクもボコボコにされ恐怖の表情を貼り付けたままdeadを点灯させた。
部屋は中央に核弾頭みたいな形をしたものが安置されている以外は殺風景な部屋だった。ドクの死体を退かして皆で近づくと、爆弾を確保中と視界脇にゲージが出た。
三十秒ほどでゲージが満タンになり確保完了と出る。
「よし、地球破滅爆弾確保!」
少し雑な紙吹雪とクラッカーのエフェクトが出て《クリア!》と盛大に表示された。全員がふいーと気を抜いて銃を下ろす。
「世界の平和は守られたな」
「てかNPC全滅させる必要無かったのでは?」
「気にするな!」
「キリトちゃん素はイケメン口調だねぇ、別にわざわざ可愛らしく喋らなくたっていいんだぜ?」
「ええーそんなことないですよー」
「ブフッ」
シノンが吹き出していると視界にメッセージログが流れ出す。
《皆さま、本日のテストプレイお疲れ様でした》
「「おつかれーー」」
《本日のデータをもとにより良いサービスを提供していくため、今後ともガンゲイルオンラインをよろしくお願いいたします》
《参加報酬と成功報酬を皆さまに送らせていただきます。ささやかな物ですがお受け取りください》
全員が歓声をあげる。かなり美味しい報酬だからだ。
「みんな酒場で打ち上げと行くか!」
「いいね!」
《また、ここからは皆様の残機を0にさせていただきます》
「そうだ、みんな、実は隠してたことが!」
キリトが自分の性別を打ち明けようと声を上げた。
《今回の、MVP報酬ですが、最後まで生き残った方にプレゼントとさせていただきます》
だがそれはメッセージによりかき消される。
《レディ! ファイト!》
「えっ」「へっ?」「ん?」「おっ?」
「やあ!」「ふんぬふぁ!」
最後のメッセージにほぼ全員がハテナを浮かべる中最初に動いたのは二人。
なんだかんだこういう事態に強いキリトと闇風ぶち殺してログアウトするイタズラを考えていた凸侍である。
キリトの斬撃がシシガネの頭を切り飛ばし凸侍の銃撃が闇風の胴体に大穴を開けついでにその後ろにいたダインも流れ弾で死んだ。
「ちょ。ちょっと勘弁して!」
咄嗟に部屋を出ようとしたシノンと銃士Xだが、残念。運営の配慮(無慈悲)により部屋のドアが開かない。MVP決めるのに時間がかかるのは良くないからね(配慮)である。
この狭い空間でブレオンと凸砂と相対する厄介すぎる事態に二人の顔が真顔になった。クレハは気合を入れてキリトちゃんを倒しに向かい返り討ちにあっていた。
第一回大乱闘BoBブラザーズの勝者はキリトであった。
メディキュボイド。夏に親友が麻酔をかけられて使わされる装置に俺は寝転んでいる。ジェイクと同じ場所を駆けた事のある俺でテストする事でうまくいくかどうかの確認を取るというものだ。急遽用意された為、敵NPCが変な挙動をするかもと言われていたが、それは仕方ないと割り切った。
参加する仲間達も、本番では俺とドクター以外別の人間がやることになっている。
「なるほど、これはすごいな」
俺は感嘆した。普段やるVRとは比べ物にならないリアリティ。乗り込む瞬間を考えなければここが現実と言ってなんら違和感もない。
俺はジェイクと違い作戦指揮能力はないと言っていい。だから各々の判断を主体に防衛を実行することにした。
第一波は北で一名犠牲を出したものの防げた。南で防衛を担当したフィオがクレイジーと言っていたが、南に敵が集結している事からゲートを、破壊した北に見張りを二人配置して決戦と相成った。
向こうの方が数が多いもののロケットランチャーやグレネードなどの飽和攻撃でなんとか持ちこたえていた時、それは起きた。
無線で知らされたのは北部を突破されたことだ。
『ここは任せろ!』
ボブとベアが叫んだ。ゲームであることを忘れそうな熱い気持ちが胸の底から溢れた。
内部でフィオが接敵し裏を取るべく移動し、見えたのは信じがたい光景だ。銃剣をつけた狙撃銃を持った男。それが舞のごとくフィオの頭を吹き飛ばし脳漿や血肉を周囲に撒き散らす。逃げる男を追った俺の前に現れたのは年端もいかない少女だった。敵だから殺さねばならないと発砲すると、なんと手に持った片手剣で全ての弾丸を切り落とし俺の首まで切り飛ばしてしまった。
「どういうことだ……」
呆けながらも今までの仲間の視点映像の記録を確認する。
フィオの射撃を斬りはらい続け最後ロケット弾を切って爆発するさっきの少女。アンチマテリアルライフルに銃剣をくっつけて壁をぶち抜いてくる男。
ジャンピング地雷を走って避け直近ではさっきかっこよく無線で叫んだベアの周りをニンジャの如く飛び回る男。
メディキュボイドの性能によりそれが間違いなく現実で起きていることに見えるので逆にタチが悪い。
俺の世界はアース◯◯◯とかのコミックの世界だったか?
そんなこんなしていると、メディキュボイドの下で目が覚めた。戦闘が終わったようだ。
起き上がり隣の簡易ベッドを見れば、アミュスフィアを外して死んだ目をしているドクターがいる。
ドクターと今回のテストプレイの報告をしあう為、彼と同じく死んだような目をしてるであろう俺はベッドから起きる。
外は麗らかな春を迎え何をするにも心地のいい一日になるだろう。その一日を辛気臭い病院で過ごすのも親友とその奥さんの為を思えばなんら苦でも無かった。とりあえずNPCをどうにかしないといけないことは全力で伝えようと思う。
「まずNPCは増やそう、その上で全体の性能を現実的なレベルまで落とし込むんだ」
「そうですね。それは私も全力で実感しました」
「というかなんだあれ?」
「まあ、集団で立ち向かうことを想定した人型レイドボスみたいなものですかね」
「それを何人も投入はまずいだろ」
「アッハイ」
『あ、もしもし、シグさんですが? ええ、本社の方でもSJは好評ですよ。それで、第三回開催の後お願いしたいことがあるんですが。ええ、ありがとうございます』