キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

77 / 77
幕間 キリンちゃんを抱くだけの話

 シロと付き合うようになった。

 それは良い。大変喜ばしい事だ。

 

 だが問題はあった。

 十代という多感な時期に、同じ年頃の女の子と一つ屋根の下で暮らすと言うのはとてもしんどい。

 今までどれだけ我慢をしてきたか。事あるごとに小鳥のような声で話しかけてくれる女の子が至近距離にいる事実が、最初数週間はあまり受け止めきれなかった。

 

 今までは付き合っていないのだから、と理由を探して手を出さないよう心掛けていたのだが、ついにその言い訳も使えなくなったので、いよいよ後に引けない状況になってきた。

 

 姿をチラと見るだけで心が元気になる。

 健やかでハツラツな彼女は俺の心の支えでもあり、何処か神聖視していて、自分の手で汚す事に途轍もない忌避感を感じていた。

 

「マスタ〜」

「ん」

 

 今のソファーで自己嫌悪に耽っていたら、後ろからシロに呼ばれる。

 彼女は何か言いたそうな顔でこちらを見てきたが、口を噤んでソファーを迂回しながら俺の隣に腰を下ろす。

 なんの脈絡もないゼロ距離接近に内心ドギマギしつつ、冷静を装いながら俺は尋ねる。

 

「ど、どうした?」

「いえ、なにも。ただ近くに居たくなっただけです」

 

 そう言うとシロは俺の肩に頭を置き、ぴっとりと体を添わせて体重を預けてくる。

 以前はこんな積極的な事はほとんどしてこなかったシロだが、名実ともに交際すると言ってからはその箍が外れたのか、こんな身体的な接触は当たり前、もっと凄いと裸の付き合いを求めるほどだ。

 

 悶々と耽る横でシロは俺の腕に抱きつき、指を絡めあわせて遊んでいる。

 その手つきが妙にいやらしく感じるのは俺の妄想か、それとも彼女の訴えなのか。

 

「マスター。私って魅力ないですか?」

「はっ?」

 

 突然なにを言うかと思ったら、本当に取っ拍子もない事を言い出したので呆気にとられる。

 魅力がない? 何を馬鹿な、こちとら初めて会った時からずっと恋して愛して止まないんだぞ。だなんて面と向かっては言えないが、少なくとも人気な女性であることには変わりないだろうに。

 

「ちゃんとお付き合いするようになってから、なんだか距離が開いたというか、あまり私に触れてくれなくなったというか」

「それは」

 

 俺がヘタレだからです。

 本当にごめんなさい。

 あと一歩、あと一歩踏み出せたら……そんな事を考えて数カ月、ようやく外で手を繋ぎながら歩いても騒がないようになったくらいのヘタレでごめんなさい。

 

 俺の中の自虐を口の中で転がしながら、あーでもないこーでもない、と取り繕う為の言葉選びに必死になっていた。

 だから彼女の気持ちを見逃していたのかもしれない。

 

「私はあっちの世界にいた頃から、マスターに全てを捧げたつもりです」

 

 シロは顔を上げ、潤んだ瞳で俺の目を見上げながら、震える声でそう訴え掛けてきた。

 俺は戒めるように口を一文字に結び、彼女の肩に腕を回して抱き寄せる。

 

「ごめん、俺の失態だ」

「マスター……」

 

 隣同士に座りながら、できるだけ強く抱擁して俺は独り言を呟くように語りかける。

 

「俺の中の、シロを好きな気持ちをちゃんと言えなかった」

「…………」

 

 シロが好きだ。

 ずっと好きだった。

 今も好きだ。

 

 けれど言葉にしてしまうのが怖くて、遠回しな表現ばかりに逃げてしまう。それが惨めで更に逃げてしまう。

 

「下手なりに、言うようにしてみるよ。時間掛かるかもだけどさ」

「……なら私も、もっと好きを伝えます」

 

 小さな事から、伝えていこう。恥ずかしいけど、彼女を愛する気持ちに嘘はないのだから。 

 

「それじゃあ早速」

「えっ」

 

 しんみりしていると突然腕を掴まれ、シロは自分を押し倒させるようにソファの上で仰向きに倒れ、その上に俺が覆い被さる体勢になる。まさしく今から床で致すような体勢に、思わず飛びのこうとして失敗した。

 首に彼女の腕が回され、ゆるい拘束の割にしっかりとホールドしてくるのだ。

 

 しまった───。そんな後悔を思うよりも早く、シロはしたり顔で俺の影の中からこれ以上ない笑顔で囁く。

 

「これまで聞けなかったぶん、た〜〜〜〜っぷり愛してもらいます♡」

「お、お手柔らかに……」

 

 逃げられないままキスをせがまれ、さながら捕食者に捕まったウサギの気持ちが拭えないままあれよあれよと全て頂かれた。

 この日は全く寝かせてもらえなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

なんか、色が薄いピカチュウを見つけたんだけど(作者:ぽこちー)(原作:ポケットモンスター)

▼これは、僕とうすチュウの長くて短い1年の物語———▼


総合評価:3278/評価:9.07/連載:14話/更新日時:2026年04月01日(水) 08:12 小説情報

一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話(作者:しいたvol.3)(原作:崩壊:スターレイル)

我、流浪の身である。▼星神らの一瞥と童貞の卒業を求む。▼全身鎧の男がなんてことなく狙われる話。▼設定のガバ・キャラ崩壊多めです。▼リクエストの募集始めました。下記のリンクからお願いします!▼https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=338210&uid=509610


総合評価:2872/評価:8.54/完結:33話/更新日時:2026年04月03日(金) 23:01 小説情報

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4232/評価:8.8/連載:78話/更新日時:2026年06月01日(月) 18:41 小説情報

転生オリ主は綾紬芦花を幸せにしたい(作者:天戸 蒼香)(原作:超かぐや姫!)

「超かぐや姫!」、面白い! 最高!▼でも舞台裏で泣いてる綾紬芦花も幸せにしたい!▼そんなオリ主が超かぐや姫の世界に転生したから、芦花を幸せにするために原作介入!▼……するも、そんな上手くはいかない話。▼でも芦花も含めてちゃーんとハッピーエンドにするよ、作者が保証しちゃう!▼※百合の間に男が挟まることになります


総合評価:3819/評価:7.86/連載:34話/更新日時:2026年06月01日(月) 09:55 小説情報

貸せ、本当のハッピーエンドはこうやる(作者:四辻ヨキトキ)(原作:超かぐや姫!)

原作把握済み転生者が、推しを推すために物語の最前列でいい空気吸うだけ――――――とみせかけて色んな意味でやらかすやつ。※タイトルはハッピーエンドを保証するものではありません。▼


総合評価:1470/評価:7.57/連載:14話/更新日時:2026年04月16日(木) 07:28 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>