いつも、馬鹿にされているチルノ。

そんなある日、チルノ以外が⑨になってしまう。(⑨=バカ)

チルノが、みんなを元に戻すため、難問を解きあかす話!



1 / 1
チルノは⑨か、Qか?

[寺子屋]

 

カッ...カッ...

 

チョークの音が、静かな空間にひびく。

 

【問1『 2log2の(2-x) ≧ log2のx 』この不等式を解け。

 

 

問2 次の数列の一般項を求めよ。

 

1,4,13,40,121,364......】

 

 

「じゃあ...この問1は..大妖精」

 

「あ、はい!」

 

あたいの隣に正座で座っていた大ちゃんは、鉛筆を置いてぴょこんと立ち上がり、いそいそ黒板に向かった。

 

「じゃあ...この問2は...」

 

眼鏡をかけた慧音せんせーは、目線をあたい達の方に向け、迷い箸を始める。

 

でもその声は、今のあたいには粉みじん切りも聞こえていないのだ。

 

 

(∮0→1√[1-x^2]dxにおいて、置換積分法を用いx=sintとおくとdx/dt=costよってdx=costdtとなり、またxを0から1に極限まで近づける時tは0→π/2に極限まで近づくから与式は∮0→π/2√cos^2・costとおける。0→π/2の時根号を外しても符号は変化しないので....)

 

どこぞの烏天狗も追いつけないであろう思考速度で、あたいは結論を導き出し、ひとやすみのため息をついた。

 

 

 

....意味わからん!!!!!!

 

一般項を求めよ...ってなんなのだ!?...求めよ。ってことはつまりそうか、『どうかこのふつつか者に一般項を恵んでください』とけーねにスライディング土下座でもかませばくれるのかーーー!?

 

「うーん...誰に当たろうか」

 

げげげ、当てられるとやばいよ...!

 

...あたいは、先生と目が合わないよう、あぐらをかいている自分の足に目線を下げ...

 

 

 

「よし、じゃあチルノ、やってみろ」

 

...たけど、むだだったみたいだ。

 

「は、はーい」

 

しょうがなく、木の長机に手を乗せて、あたいは立ち上がる。

 

 

そう、今は午後、寺子屋での授業中なのだ。

 

気が進まないけど、黒板に向かい....

 

ボソボソ...ボソボソ...

 

ん、なんか聞こえるよ.....?

 

 

「...ルーミア、私はシャー芯4本!」

 

.....一歩踏み出した所で、あたいは耳に神経を集めて.....

 

「みすちー、わたしは5本なのだー、リグルはどうする?」

 

「ボクも、5本かなー」

 

.................

 

あたいは、黒板には向かわず、ルーミア達3人がいる斜め後ろの長机に向かった....

 

 

「おい、チルノ?」

 

「チルノちゃん?」

 

慧音せんせーと大ちゃんがあたいの名を呼ぶが、今はそれどころじゃないのだ。

 

ペタペタ....ピタッ

 

「ち、チルノ...?」

 

その机に着いて、3人が驚いた目でこちらを見る。

 

あたいは、勢いよくテーブルに両手を叩きつけ...

 

ドン!!

 

「わっ!」

 

そして、魂の限りこう叫んだ。

 

 

 

「あたいが間違えるかどうかで賭けるなっー!!」

 

「な、なんで分かったのかー!?」

 

「誰でもわかるよっ!!...ていうか、さっきの会話きいてたけど、みんなどっちに賭けてたのだっ!」

 

息が続く限りまくし立てると、みすちーが悪びれもなく、こう答えた。

 

 

 

「全員間違える方だけど?」

 

「賭け成立してないじゃないかー!!!」

 

ドゴーン!「わー!」

 

あたいは、テーブルをひっくり返した。

 

ガシッ

 

「ち、チルノちゃん!落ち着いてぇ..」

 

問1を正解した大ちゃんが、後ろからあたいに抱きついて止めてくる。

 

「これが落ち着いていられるかぁーっ!!大体問題も難しすぎるのだよーっ!!logだのΣだの漸化式だのっ!」

 

「チルノ、授業中だぞ!静かにしないかっ!」

 

「うるさーい!このクワガタ教師ーーっ!」

 

「な、なんだとぉ!?」

 

「だははははははは!!!」

 

「チルノちゃーん!それはダメだよぉ!」

 

ズゴン!!

 

その場を収めたのは、慧音せんせーのヘッドバットだったのだ...

 

 

 

 

 

[放課後]

 

 

「うーん...zzz」

 

「こらっ、チルノ!寝るなっ!補習は始まったばかりだぞ!」

 

「はーーーい....ZZZ」

 

「だから寝るなっ!」

 

「チルノちゃん...寝顔もなかなかいいなぁ...」

 

「はっ!」

 

真横から身の危険を感じ、あたいは飛び起きた。

 

教室の真ん中の机で、正面に慧音せんせー、そばに付き添いの、よだれが少し出た大ちゃんがいる。

 

「どうしてそんなに寝るんだ、チルノ...」

 

「せんせー、あたいは今意気しょーめつ中なんだよ...」

 

「チルノちゃん、『意気消沈』だよ...」

 

「そうとも言うね...」

 

はぁ...なんでもみすちーとリグルとルーミアは、かなり前から、あたいが先生に当てられる時や、テストのたびに賭けをしていたらしい。

 

ちなみに、さっきので99回目らしいのだが...

 

あたいは今回も間違えてしまったのである。

 

「ていうかっ!なんで誰もあたいが正解する方に賭けないんだぁー!」

 

「まあまあ、あいつらはしっかり注意しておいたから、落ち着け、チルノ」

 

こうやって、放課後に大ちゃんに付き合ってもらって補習を受けるのも、もう何度目なんだろ...?

 

「じゃあ、この問題だ」

 

 

『問題』

 

次の時刻表は、①〜④の中のどれか?

 

6:55

7:34

8:07

9:23

10:21 10:52

11:32

12:27

13:53

14:07

15:21 15:42

16:40

17:15 17:53

18:54

19:25 19:56

20:20

21:17

 

 

①成田空港のシャンハーイ行きの航空便

②東京郊外の住宅団地のバス停(最寄駅行き)

③人口約10万人の地方都市の駅前のバス停

④人口約5000人の山間部の村のバス停

 

 

 

「慧音せんせー、幻想郷にバスはな...」

 

「チルノちゃんっ!」

 

大ちゃんに口を塞がれた。

 

「といっても...わからないことばっかだし、こんなのテストで見ても、いつも適当に当てずっぽうだなー」

 

「...チルノ!お前に足りないのはそこだ!」

 

「え?」

 

「いいか、この問題はな...」

 

 

 

 

[夕刻、帰り道]

 

 

「ふーーい...今日も疲れた...いつも付き合ってもらってありがと、大ちゃん」

 

 

「ふふふ、チルノちゃんの為なら、どこにでもついてくよ」

 

な、なんか怖いな大ちゃん....

 

「はぁ...バカって、死なないと治らないのかな?」

 

「...チルノちゃん、自分が馬鹿だと思ってるの?」

 

「なっ、違うよ!?あたいは天才!ミステリアス!」

 

「ジーニアス、だね...」

 

「そうとも言う!...けど、なんというか、ルーミア達の賭けとか聞いても、あたいは問題を解くのが本当に苦手なんだなーって」

 

「........」

 

あ、空気がなんだか重くなっちゃったな...

 

「ま、それは置いといて、早く帰ろう、大ちゃん!」

 

そう言って、大ちゃんの白い手を引く。

 

「あ、香霖堂さんに寄っていいかな?」

 

「おっけーね!」

 

 

 

 

[香霖堂]

 

ぴっ

 

「はい。それにしても、君は本当に勉強熱心だね」

 

「いえいえ」

 

大ちゃんと店主のこーりんが、なんかの商品をやり取りしている。れじとかいう、精算用の機械を最近使ってみてるらしい。

 

帰り道、あたいと大ちゃんは、よくこの店に寄ることがある。主に、大ちゃんがいつも何か買ってるんだけど....

 

ふと視線を巡らせ、壁掛けの埃っぽい鳩時計を見ると、17時28分を指していた。もうそんな時間かー。

 

 

「よっ、チルノ。久しぶりだな」

 

「あ、魔理沙...」

 

金髪の魔法使いに、後ろから声をかけられた。

 

「相変わらず、なーんにも考えてなさそうな顔してるな!」

 

ワシワシと、頭を撫でられる。むぐ...

 

「あたいはバカじゃない!色々考えてるんだぞ!」

 

「ふーん、そうか...じゃあチルノ、1+2は?」

 

魔理沙は何かを期待するような目で、あたいの顔を覗き込んでくる。

 

 

 

しかし、あたいが...

 

「3に決まってるんだぞ!バカにするなぁ!」

 

と言うと、福袋からちゅーごくのパチモンが出てきたような顔になり...

 

 

「なんだよ、そこはああ言うところだろー?」

 

「うるさいっ!」

 

「まぁまぁ落ち着けって!よし、魔理沙さんが知識を教えてお前をまた一つ⑨から遠ざけてやろう」

 

と、魔理沙はふふん、と鼻を鳴らして腕を組んだ。

 

...あたいはご立腹ながら聞いてみることにした。

 

 

 

「今、私たちが生きてるこの場所は、地球って惑星なんだぞ!」

 

「え、えぇーっ!そうだったのか...って誰でも知ってるぞぉ!」

 

ズザザー、とあたいは床を勢いよく滑ってしまった...

 

「はははっ、今のは冗談だってーのぜ!...今、夏だろ?じゃあここから地球の反対側は何の季節だと思う?」

 

「えーと...夏なのかー?」

 

「誰の物真似だよ...正解は冬だ。どうしてこうなるかわかるか、チルノ?」

 

「え、でも地球は太陽のまわりを回ってるぞ?で、えーと...地球そのものもぐるぐるまわってるんだっけ。だったらどこも同じ季節なんじゃ」

 

「23.4°...これ何の数字だと思う?」

 

「うーん...まりさのテストのさいこー点数?」

 

「違うわ...地軸の傾きの角度だよ。要するに、地球は自転する時、23.4°傾いて回ってるのさ。だから四季があるんだ。太陽の届く距離に、1年の時期によって差がつくからな」

 

「ほ、ほうほう」

 

「こんなの外の世界じゃ常識だぜ?ちなみに、私たちが今いるところが北半球、その反対側が南半球って言うぞ」

 

「なるほど!あたいってばまたひとつ天才になったわね!」

 

「まあお前は太陽が無い方が元気よく生きていけるけどな...ぷっ...そう考えるとこの話を氷精のチルノにしたのは変だな...だはは!」

 

「な、なんだとこのぉ....!」

 

「ち、チルノちゃん、行こう...」

 

ケンカに入ろうかと思いきや、用事を終えた大ちゃんに手を引かれた。

 

 

「じゃーなー、お前ら」「まいどー」

 

そして、あたいたちは香霖堂を後にした。

 

 

 

[夜 霧の湖]

 

「明日も寺子屋だし、早く寝よ..」

 

あたいは、目を閉じた。

 

刹那、ある思考が頭に入ってくる。

 

あたいが、天才...だったらなぁ...みんな、どんな目であたいのこと見てくれるんだろう...?

 

今日おぼえたこと、もう忘れかけてるかも....

 

 

 

『・・・・・・・・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

[翌日]

 

「ふわぁ〜」

 

半分寝ながら、寺子屋を飛んで目指す。

 

こういう時って、頭におーつーが足りてないから、深呼吸したらいいんだっけ...?

 

あ、大ちゃんだ。

 

寺子屋の前を歩いている、緑髪の妖精の後ろ姿が目に入った。

 

「大ちゃんー!おっはよー!」

 

「あ、チルノちゃん、おかえり」

 

おかえり?...まいっか。

 

「今日の授業は、理数系多くて辛いよねー」

 

「『りすうけい』って何?」

 

大ちゃんは、首を傾け聞いてくるけど...え?

 

「数学とか、物理とかだけど...」

 

「その、『すうがく』って、さんすうとはちがうの?」

 

「へ?いや、違いはしないけど、なんかこう算数がレベルアップした感じなのだ」

 

「そうなんだ、えへへ」

 

大ちゃんは、顔を少し赤らめて微笑んだ。

 

な、なんだ、今日の大ちゃん、おかしいぞ...?熱でもあるのかな?

 

 

あたいは、彼女のおでこに手を当ててみた。

 

「あっつ!!」

 

「つめたーい!」

 

真逆の反応をしたあたいと大ちゃん...しかし...

 

「あ、そうか、あたいは氷精で体温が低いから、熱く感じるだけで、平熱か」

 

手を見て、そう理解すると...

 

ギュッ

 

「チルノ....ちゃん...うふふふ」

 

その手を、大ちゃんが両手で掴んできた。なんだかキラキラした、色気付いた目であたいを見てくるけど....

 

「ど、どうしたの、大ちゃん...」

 

「まさか、りょう想いだったなんて、うれしいなぁ...」

 

「何が!?」

 

大ちゃんが何を考えているのか、全くわからないぞ...!

 

 

「もー、おでこに手を当てるのは、こくはくの合図だって、だれかが言ってたよー?」

 

「誰が!?絶対違うよ!?そんなの体調崩すたびに告白されるじゃんか!」

 

「う〜ん?まぁ、なんでもいいかな〜」

 

そういうと、大ちゃんは、あたいにひっついてきた。

 

...彼女に一体何が起きているのだぁーーーー!!!

 

 

 

 

 

 

 

[寺子屋]

 

カッ...カッ....

 

昨日と同じく、数学の授業だけれど....

 

慧音せんせーは、黒板に書かれたバスの絵に、大きくバツを書き足して...

 

 

「えー、つまり、幻想郷にバスは出ないから...問1の答えは0人だ」

 

「「「はーい!」」」

 

前言撤回。みんながやばいよ。

 

せんせーは、教科書(役に立ってない)から顔を上げ、こう言った。

 

「よし!じゃあ外に出て、ドッチボールをしようか!」

 

「わーーーい!」「ドッチきちゃああああ」「んふぉおおおお!」

 

まだ一問目なんだけど!?

 

しかもみんなテンション高すぎじゃないかー!?

 

 

 

 

 

その後のドッチボールときたら、酷かったのだ。

 

始める寸前にせんせーが「人にボールをぶつけて得る勝利なんていらないっ!」って言いながらコートに頭突きしたり...

 

ルーミアが闇をまとってボールを投げようとしたら、前が見えずにそのまま失踪したり....

 

みすちーがあたいとリグルとボールの見分けがつかなかったり...

 

 

これは....もしかしなくても....

 

今日のみんな、あたいより遥かにバカになっているような...

 

いやいや、まさかね..

 

きっと、みんな誕生日でも近いんだろう。そうに決まってるのだ。

 

 

 

 

 

[人里]

 

で、今日は何故か昼で寺子屋が終わったので、なんかひっついて求婚してくる大ちゃんと人里に来たのだけれど...小腹がすいたなぁ。

 

あ、丁度いいところにお団子屋さんがあるぞ。

 

「おねーさん!お団子二つ頂戴するのだ!」

 

「はい、まいど!えーと、...85×2...=5×17×2...=...1/5の-1乗×17×log2の4で...」

 

「なんで余計に計算をややこしくするのだ!?170円でしょ、はい!」

 

「あ、まいどー!」

 

「チルノちゃん、ろぐって何?」

 

大ちゃんがあたいの腕にしがみついたまま聞いて来た。

 

「えと、対数っていうものでだね、底のx乗=真数になるんだ。

log2の4だったら、2が底で、4が真数だから、2のx乗=4になって、x=2が答えだね」

 

「わー!よくわからないけどチルノちゃんすごーい!」

 

「すごいですねー!」

 

大ちゃんと団子屋のおねーさんが、天然記念物を見るような目で見てくる...

 

これは...まさか....異変なんじゃ.....

 

大ちゃんは、数Ⅲまで完璧なのに...

 

「ちょっと、よろしいですか?」

 

いきなり後ろから声をかけられ、振り返ると...

 

緑っぽい着物を着て、何かの書物を持っている、里ではとびきり賢いと噂の稗田阿求が立っていたのだ。

 

「あきゅー、どうしたのだ?」

 

「チルノさん、この電車はどこを走っているものか、お聞きしたいのですが...」

 

そう言って、あきゅーは、ぶ厚めの本のページを見せて、文字に指をさした。

 

電車?...ど、どれどれ...

 

 

『地平線』

 

あたいは絶句してしまった。

 

「うーん、よこはま県とかじゃないでしょうか?」

 

「なるほど!メモしておかないと」

 

「そんな県も路線もなーーーーーい!!」

 

 

昨日よりも大声で、二人にあたいは叫んだ。

 

 

人里は、商売にならず、店をみんな閉めてしまっている...

 

 

 

 

 

 

[博麗神社]

 

 

そうだ、これは異変なのだ......みんなが⑨になる異変なのだ...

 

となれば、異変解決のプロの霊夢に任せるっきゃないね。

 

このままじゃ、幻想郷が崩壊しそうだし...

 

大丈夫、あいつはきっと何の影響もないはず...

 

鳥居をくぐると、縁側でお茶をすする、いつもの紅白の巫女服を着た霊夢がいた。

 

よかった、ふつーそうだ。早く異変を伝えないと...

 

 

「霊夢!異変だよー!」

 

「あら、チルノと、大妖精じゃない。どうしたのかしら?」

 

こちらに気付き、霊夢はすすっていたお茶をおぼんに置いた。

 

...隣にある赤い瓶は、なんだろう?

 

「大変なんだ、霊夢!みんながこう、あたいみたいになってるんだ!」

 

「何が言いたいのよ...お茶でも飲んで、落ち着きなさい」

 

そう言うと、霊夢は立ち上がり、新しい湯のみにお茶を作って、お盆の謎に包まれた瓶の中身を入れて、あたいと大ちゃんに出した。

 

そ、そうだな、落ち着かないと...

 

「いただきます...」

 

ゴクゴク....辛っ!!!むしろ熱っ!!!

 

「からぁぁぁぁぁい!」

 

大ちゃんが、率直な感想を言っている。

 

「お、おい霊夢、このお茶どう作ったのだ!?」

 

「え?」

 

霊夢は、何を聞いてるのか、とぽかんとして...

 

「茶葉とお湯とデスソースを混ぜただけよ?」

 

「お前もかー!」

 

なんてことなのだ....霊夢も呪いにかかっている...

 

もしかして、ふつーなのはあたいだけ...?

 

どうしたらいいのだ...誰を頼れば....

 

 

考えにつまって、視線を巡らすと...

 

「ん?あれなんだ?」

 

和室部屋の、奥の壁に...黒い、穴があいている...?

 

立ち上がり、そこの目の前まで来ると...

 

あたいと大ちゃんがギリギリ入れそうな穴...

 

奥はまるで宇宙のように、漆黒の中にキラキラしているような感じだ。

 

「な、何よ、この穴...」

 

「ち、チルノちゃん....」

 

二人は困惑している。

 

カサッ....

 

ん?なんか落ちてる...紙?

 

穴の前に落ちていた紙を拾い上げ、見てみると...

 

『この異変を解決せんとする者よ、自らの英知を極めし者よ、この運命の洞窟に挑戦するべし』

 

...と、書かれていた。

 

 

ふーん...やってやろうじゃないかっ!

 

やっぱりこれは異変だったのか...

 

あたいは洞窟の前に立ち、深呼吸をする。

 

「あんた、行くつもり?」

 

「チルノちゃん、暗いところ平気なの?」

 

あたいは振り返り、カッコつけて言った。

 

「あたいは天才だということを、未来永劫証明してあげようとも

さ!」

 

そういうと、あたいはその洞窟に足を踏み入れた。すると...

 

「チルノちゃんっ!」

 

あ、穴がみるみる小さくなって...!完全に、消えた...

 

なるほど、自機は一人というわけか...!

 

....待ってろみんな!あたいがこの異変を解決して、元に戻してやるっ!

 

拳を握りしめ、真っ黒な洞窟の中を歩き始めた。

 

 

 

 

 

[洞窟奥]

 

 

トコトコ...トコトコ....

 

 

 

無限にも感じる闇の歩行...

 

 

 

それは、そんな中...突然起きた。

 

パッ...

 

【『例題』 難易度:normal

 

1=1

 

2=0

 

3=2

 

7=2

 

9=1

 

11=?】

 

 

!?

 

な、なんだ!?いきなり目の前の空間に...キラキラした、一つ一つが宝石みたいな白い文字で、問題が書かれたぞ...!

 

ど、どうしたら....

 

「残り10秒」

 

だ、誰だ!?女の声で、頭に直接テレパシーされてるように聞こえる...!

 

えー、えーとっ!!

 

「1っ!!」

 

【不解】

 

叫んだ瞬間に、画面がすぐに、きらびやかさを保ったまま切り替わった...

 

「残念、不正解ね..」

 

「だ、誰だ、おまえ!どこにいるんだ!?今起きてる異変は、お前がやったのか!?」

 

「ええ、そうよ...」

 

「な、なんでこんなことするんだ!今すぐ元に戻すのだよ!」

 

「あら、この幻想郷は、あなたが望んだことでしょう?」

 

な、なんだって...あっ、そういえば、昨日...

 

「自分以外が馬鹿になった今なら、あなたはこの幻想郷では、天才になれるのよ?幸せでしょう?...所詮人なんて、他人を見下すことでしか心の平衡を保つことができないんだもの...」

 

「そ、そんなの幸せじゃない!あたいはこんな世界は嫌なんだっ!」

 

「あら、馬鹿にされる方を選ぶのね...まさに馬鹿な子。...ならいいわ。あなたが『問題』を解ければ、元の世界に戻してあげる」

 

「も、問題...?」

 

「5問、あなたに出題するわ。その内、3問解くことができれば、あなたの勝ちよ。さっきのは例題だから、含めないでおいてあげる」

 

 

よ、よかった...けど、問題...か。あたいに...できるのかな?

 

「あら、元の幻想郷に戻したくないの?」

 

 

...!...そうだ、あたいがやらなきゃ...みんなが...元に戻らないっ!

 

自分がバカじゃないことをみんなに示す為にも...あたいが解くんだ!

 

「受けて立つよ!どんとこい!」

 

「そう...ちなみに、さっきの例題の答えは、『3』何故か、わかるかしら...」

 

「...数字を英語にした時の、eの数でしょ?1はoneでひとつ、2はtwoでゼロ、7はsevenでふたつ、11はelevenで3だ」

 

「ふふ、そう...さっき解けていれば、良かったのにね...」

 

もともと数に入れないくせに...!

 

 

 

「では、第1問」

 

きたっ...!

 

パッ...

 

 

【『問題』 難易度:easy

 

 

ある:アメリカ |||||なし:イギリス

 

 

ある:がむしゃら |||||なし:めちゃくちゃ

 

 

ある:おっちょこちょい|||||なし:どじ

 

 

ある:ほねぐみ |||||なし:にくたい

 

 

『ある』に共通することは?】

 

 

え、ええと....

 

わ、分からない...!

 

「あら、これはサービス問題なんだけれど...」

 

か、考えないと...『ある』になんの共通点が...あるんだ...?

 

コチ...コチ...

 

気がつくと、あたいは腕に時計をつけていた。

 

【残り15秒】と表示されている...

 

うーん...分からん...⑨かな...っていやいやいや...ちゃんと考えなきゃ...

 

 

...............

 

 

【不解】

気がつくと、そう表示されていた。

 

「あらあら、時間切れね」

 

くそっ...全く分からなかったぞ....

 

 

【『正答』

 

『ある』に共通するのは、お菓子の名前。

 

アメリカ→飴、がむしゃら→ガム、おっちょこちょい→チョコ、ほねぐみ→グミ】

 

 

こ、こんな...簡単な問題が...解けないなんて...

 

あたいって、やっぱり...

 

 

いやっ!今はそんなこと考えてる場合じゃない、頑張らないと!

 

 

「残念ね〜...不解、あと間違えられるのは、1問だけ...では、第2問」

 

 

不思議と、その声に嘲るようなニュアンスは、あたいは感じなかった

 

パッ...

 

 

【『問題』 難易度:normal

 

 

B C F H I K N O Q W

 

 

仲間はずれは?】

 

 

「さあ、これを間違えれば、もう後がないわ」

 

................................なんだろ、この感覚...

 

さっきは、とっかかりすら掴めなかった。でも、この問題は...あたいの無い頭に、何か引っかかってる...!

 

そういう問題なら...解けるはずだ...!

 

...............

 

【残り25秒】

 

氷精のあたいに、汗が滲んできた...

 

「あなたを、信じてくれる人は、いなかったの?」

 

 

........へ?

 

 

「問題を解くことができるって、信じてくれる人は、いなかったの?」

 

 

それは......いやっ!

 

「慧音せんせーだって、大ちゃんだって...いつか、あたいが問題を解けるって、信じてくれてたんだっ!だから、こんな出来の悪いあたいにも、付き合ってくれて....」

 

 

そうだ、あたいには解るはずだ....

 

【残り10秒】

 

 

ドクン...ドクン....

 

B...C....K...........あっ!!!そうかっ!!!

 

「Qっ!!」

 

パッ

 

【正解】

 

 

「や、やった...」

 

一瞬にして、その文字は、あたいの体の力を抜けさせた。

 

そうだ、これは元素記号...引っかかっていたのはQだ...

 

元素周期表の中で、Qは使われていない...!

 

 

「ふふ、おめでとう...やるじゃない」

 

「と、とーぜんだっ!あたいってば天才ね!」

 

これで1勝1敗...後2問解けば...

 

それにしても...この女の声、聞いたことがあるな...

 

 

「では、第3問...」

 

 

今なら...いける...!

 

 

パッ...

 

【『問題』 難易度:HARD

 

 

英語のなぞなぞに答えなさい。

 

 

what is the electric appliance in your left and right?

 

 

electric appliance→電化製品】

 

 

はぁ!?え、英語ぉ!?

 

な、なぞなぞは得意だけど、英語って...

 

でも、今なら...勢いに乗れば...あたいは...天才なんだからっ!

 

 

...in your left and right...[あなたの左右]かな?

 

 

what are the elect...

 

えっと...[電化製品はなんですか?]か...

 

 

つまり、『あなたの左右にある電化製品はなんですか?』という問題ってことか...え?

 

 

キョロキョロ、周りを見渡すけど...周囲には、電化製品どころか、何一つ無い。

 

そうか...これはなぞなぞだしね...

 

いつか...大ちゃんが、一緒に勉強した時、言ってくれたっけ...

 

『チルノちゃんは...この幻想郷の誰よりも柔軟な発想ができるよ』

 

 

うんうん...その後、『そして私はこの幻想郷の誰よりもチルノちゃんのそばにいたいよ』って言われたのは、一旦忘れて...

 

あなたの、左右、電化製品....

 

 

【残り15秒】

 

 

...なんで、この問題英語なんだ?...英語が関わっている...?

 

youの...左右...そばにいたいよ...って、余計な思考が...

 

 

 

【残り8秒】

 

 

 

『you』の左右......そば...ユー..

 

 

............!

 

 

『U』の左右っ!!!!

 

 

【残り3秒】

 

 

「TVっ!!」

 

パッ...

 

【正解】

 

 

「よ、よーし!」

 

そうだ、youの左右ってのは、Uの左右!

 

アルファベットの並びの....OPQRSTUVW...の、Uの左右...『TV』ってことだ!

 

これで、2連正解!後2問中、1問解けば、あたいの勝ちだ!

 

 

「ふふん、どーだ!降参するかー!」

 

「あらあら、流石ね...追い詰められて、真価を発揮するタイプかしら...?」

 

「なんたって、あたいはみすて...違う、じーにあすだからな!」

 

「そう...では、第4問」

 

 

これで、終わりだ...!

 

 

パッ...

 

【『問題』 難易度:HARD

 

 

次の①〜④の中で、正しいもの、または正しくないものが一つのみある。それを選べ。

 

 

① 2は誤りである。

② 3は誤りでない。

③徳川の8代将軍は、徳川綱吉である。

④1は誤りである。】

 

 

 

....あたいは、固まってしまった。

 

歴史は、一番の苦手としている教科で、綱吉が8代将軍か否かは、全く見当もつかない。

 

それに...正しいもの、正しくないものが...一つのみって...どう言う事なんだよ....?

 

分からない...頭で考えても、③が正か誤りか、判断できない。

 

【残り10秒】

 

もう...だめだ、分からない、知らないことは、考えようがないよ...

 

 

「②...」

 

パッ...

 

【不解】

 

【正答→1】

 

 

く、くそ...つ、次こそは...

 

「さあ、これで残り1問...運命の分かれ目ね」

 

運命...そうだ...あたいが...次の問題を解かなきゃ...全ておしまいだ...

 

この幻想郷のみんなが...元に戻らなくなっちゃう....

 

 

急に、腰の辺りが重くなる。

 

 

はぁ...はぁ...息が荒くなって...意識が遠のき....

 

 

 

『本当に解けるの?』

 

 

...誰だ...?今誰があたいにそう言った?...

 

 

『どうせ、無理なんじゃないの?』

 

 

うるさい...うるさい....あたいは...

 

 

「では、最終問題...」

 

 

!..きたっ...とにかく、解ける...さっきの元素周期表のやつみたいに、頭に引っかかるような...できれば知ってる問題なら...!

 

 

あたいは、乾ききった唇を舐めて、顎を引いた。

 

 

パッ

 

【『問題』 難易度:lunatic

 

 

日本で消費されるかぼちゃは、北海道産のものと、オーストラリア産のものが多い。

 

 

では、日本がオーストラリアからかぼちゃを輸入する理由を答えなさい。】

 

 

 

「この問題は、時間を3分にしてあげるわ」

 

その声は、頭の中に入らなかった。

 

終わった...論述問題、しかもあたいは...

 

 

かぼちゃのことも...日本とオーストラリアの関係も...全くと言っていいほど...知らない...

 

 

どこにあるかとかは...地図帳を大ちゃんとよく見たから...何となく知ってるけど...この問題は...かぼちゃとオーストラリアのことを...よく知ってなければならないのだろう...

 

 

何も...思いつかない...

 

 

ドサ...

 

 

あたいは、その場にへたり込んだ...。

 

 

分からない....やっぱりあたいは...

 

 

『馬鹿だ』

 

 

うるさい...お前、誰なんだよ...また頭に直接...

 

 

『だから、本当は信じてくれた人なんて...』

 

 

やめて...

 

 

『一人もいなかったんじゃないの?』

 

 

あ...これ...あたいだ。

 

 

あたいの中の...あたいだ。他の誰でもない...あたいがそう考えてるんだ。

 

『慧音せんせーも、大妖精もさ...立場上、あたいの前だけ、信じてるフリだけしてただけなんだよ』

 

...そんな、わけな...い...

 

【残り140秒】

 

 

『誰も...あたいなんか、』

 

やめて....その先を言わないで...

 

 

『信じてなんてーーー』

 

バサッ

 

 

...あれ?なんだ..足で、紙を踏んだ...?

 

 

洞窟に入る前のように暗い中、その紙をあたいは拾い上げた。

 

 

暗いけど...文字の光で読める...

 

 

これ...なんの紙だろ...

 

『香霖堂 ○月×日 17時28分

 

 

シャーペンの芯30本入り 0.5mm 113円』

 

 

香霖堂にあった...あのれじとかいう機械の...レシート?なんでこんなところに...いや、待てよ?

 

 

○月×日17時28分って...

 

 

昨日、あたいと大ちゃんで寄った日時じゃないか...

 

 

大ちゃんは、シャー芯を買ってたんだ...え?

 

 

大ちゃんは....鉛筆しか使ってないぞ?

 

 

ギュルギュルと、思考が入り乱れる....

 

 

そもそも、ルーミア達の賭けって、なんで99回も続いてるのだ...?

 

 

全員あたいが間違える方に賭けてるのに...

 

 

賭けとして...成立してるから...?

 

 

大ちゃんは、よく香霖堂に帰り道に寄るけど...毎回、シャー芯を買っていた...?

 

 

それだけ、『失って』いるから?

 

 

..............じゃあ、大ちゃんも...あの、ルーミア達のシャー芯賭けに参加していた?

 

 

それで...あたいは...毎回先生に当てられた時間違えてるから...

 

 

大ちゃんは、

 

 

あたいが、

 

 

正解する、

 

 

方に、

 

 

ずっと張っていた?

 

 

あたいが間違えるなんて、自明の理なのに?

 

 

ルーミア達に...あたいだって正解できるって...示す為に?

 

 

 

 

.......................

 

 

 

 

 

 

頰を...とびきり熱いものが伝って...落ちた。

 

 

 

【残り100秒】

 

 

 

 

ガタ...

 

立ち上がり、顔を上げると、雫が飛んだ。

 

 

絶対に...解くっ!!!

 

 

そうだ...バカだって...いい!

 

あたいはバカでいいんだ!

 

一番の友達さえも...信じられなくなるよりは!!

 

 

....といっても、この問題...どこから攻める?

 

あたいは、かぼちゃをよく知らないし、オーストラリアもあまり知らない。

 

 

【残り80秒】

 

 

...『問題の全てを知っている必要はない』

 

...『知らないことでも、分からないとは限らない』

 

そうだ....昨日の補習の時...!

 

 

 

[前日 補習]

 

 

「せんせー、あたいは飛行機もバスも知ってるけどさー、成田空港がどうとか、そんなの行ったことがないから解けるわけがないよー」

 

 

「チルノ、問題の全てを把握しておく必要はないんだ」

 

「チルノちゃん、『知らない』ことでも、『分からない』とは限らないよ」

 

「どういうことだー!」

 

「まず、この時刻表を見て、選択肢と照らし合わせるんだ」

 

6:55

7:34

8:07

9:23

10:21 10:52

11:32

12:27

13:53

14:07

15:21 15:42

16:40

17:15 17:53

18:54

19:25 19:56

20:20

21:17

 

①成田空港のシャンハーイ行きの航空便

②東京郊外の住宅団地のバス停(最寄駅行き)

③人口約10万人の地方都市の駅前のバス停

④人口約5000人の山間部の村のバス停

 

「あ、④...」

 

「そうだ、チルノ!④は、人口に対して、本数が多いだろ?」

 

「じゃあ、④を外して...うーん...」

 

「チルノちゃん、通勤ラッシュって知ってる?」

 

「知ってるよ!朝は人がたくさん電車とかバスに乗るんでしょ...

 

あ、そうか!③のバスなら、朝に時間帯が増えないとおかしいぞ」

 

「そう、それで、③も除外。あとは①か②だ」

 

「ううーーーん....」

 

ピトッ

 

顔を問題の紙に引っ付ける。

 

「チルノちゃん、いつもわたしと待ち合わせするとき、どうしてる?」

 

「え、えっと、30分前くらいになったら用意して....」

 

あっ....待てよ...そうだ!!

 

「①の飛行機も違うと思うよ!」

 

「どうしてだ、チルノ?」

 

「だって、飛行機って、乗るのに長い手続きがいるんでしょ!なのに、12時27分とか19時56分とか、中途半端な時間じゃ間違える人が増えるよ!」

 

「そうだ!つまり、正解は...?」

 

「②でしょー!」

 

「そうだ、チルノ!」

 

「おめでとう、チルノちゃん!」

 

「へへへー...」

 

「いいか、分からないと思わずに、冷静に問題に向き合えばいいんだ。知らなくても、正解する道はある!」

 

 

 

 

 

【残り60秒】

 

 

そうだ、知らないからって、分からないわけじゃない...!

 

 

さっきの問題だって、そうだ...!

 

 

よく考えたら、綱吉が8代将軍かは、知っている必要がない!

 

 

正でも誤りでも、答えになるのは①だった!!

 

 

なら、この問題は...!

 

【残り50秒】

 

『地球は23.4°傾いて自転してるんだ。だから...』

 

 

オーストラリアは...南半球にある...

 

 

 

 

......................

 

 

「さあ、あと30秒。これが最後の問題よ。英知を極めし者よ。わかったかしら?」

 

「...うん。わかったけど...あたいは、そんな高尚なものじゃない」

 

あら、と彼女は声を漏らした。

 

「そう...でも、答えていいの?あなたは、今の幻想郷なら、王になることだって可能かもしれないわよ?」

 

 

「いいのだ。幻想郷には...いろんな人がいて、一人一人が素晴らしいから。あたいは、今が...幸せだから...

 

 

 

だから...この幻想郷には、

 

 

 

 

バカはあたいだけでいいっ!」

 

 

 

 

【残り15秒】

 

 

「さあ、お聞かせ願おうかしら、チルノ...」

 

 

それは途方もなく優しい、声だった。

 

 

「答えは....!」

 

 

あたいは、あたいらしく、言った。

 

 

 

「日本は北半球。オーストラリアは南半球にある。

そして、南半球と北半球では、季節が逆になるのだ。

かぼちゃは一年中需要があるから、日本でとれない季節を、オーストラリアから輸入して補っているのだよ」

 

 

ニコッと、誰かが微笑を浮かべたような、気がした。

 

 

パッ...

 

 

【正解】

 

 

「おめでとう。元の...幸せな...愛おしき日常に戻りなさい...」

 

 

「ありがとう....誰かさん...」

 

 

体に、力が入らなくなって...

 

 

穴に落ちていくような...感覚...

 

 

ああ、結局、誰が起こした異変なんだろ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[博麗神社]

 

 

「チルノちゃん!チルノちゃん!」

 

んんん....

「ふあああ....」

 

「良かった、起きたんだね..!」

 

左にいる大ちゃんが、泣きそうな顔であたいを見てる。

 

「あれ...ここは?」

 

「私の家よ」

 

右に、霊夢がいた。

 

 

「ねぇ、霊夢...お茶にさ...デスソースって入れるのだ?」

 

「は?んなもん入れるわけないでしょ馬鹿じゃないの」

 

 

うん...いつもの霊夢だ。

 

 

「大ちゃん...えい」

 

ピトッ

 

「わっ...!」

 

大ちゃんのおでこに、手を当ててみた。

 

 

「チルノちゃん....!そんな、起きてすぐに積極的な...いや、わたしは大歓迎だけど!」

 

う...ん。いつもの大ちゃんだ。

 

「あんた、洞窟に入ってから、いきなり天井に現れて降ってきたのよ。びっくりしたわね...」

 

「そうだったのか...」

 

 

きっと、みんなも元に戻っているだろう。

 

あたいは、立ち上がり、霊夢に言った。

 

「ありがとうだぞ、霊夢」

 

「はいはい。もう面倒かけるんじゃないわよ...」

 

 

あたいは、大ちゃんと神社を出た。

 

 

[人里]

 

 

「あきゅー、『地平線』って何?」

 

「地面と空の境界線のことです。この辺りでは見られませんが、外の世界ではあるみたいですよ」

 

 

[寺子屋]

 

「慧音せんせー、幻想郷にバスはないから答えは0人?」

 

「そんなわけあるか!いいか、この問題はだな...」

 

 

 

[霧の湖]

 

大ちゃんと二人で、草むらに寝転ぶ。

 

 

「ありがとう、大ちゃん。」

 

「え?な、何?わたし、何かしたかな?」

 

 

「あ、いや...いつも、こんなあたいのためにありがとう」

 

 

「...チルノちゃん。あなたは自分のこと、どうおもってるか、わたしは『知らない』けど...わたしは、チルノちゃんのこと...大切な友達だと、『分かってる』よ」

 

.....

 

「そう..なんだ」

 

損するのを...『知って』いても...あたいがいつか正解できることを『分からせる』ために、大ちゃんは、一人で戦ってくれた。

 

 

....よし!

 

勢いよく、あたいは起き上がる。

 

「わっ、チルノちゃん?」

 

「大ちゃん、明日だよ!」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

[翌日 寺子屋]

 

 

カッ...カッ...

 

黒板に証明問題を書き終えた慧音せんせーは、振り返ると、また誰を当てるか迷い始めた。

 

「じゃあ...」

 

あたいは、そのタイミングで、また下を向く。

 

こい....!

 

「チルノ、この問題を解きなさい」

 

きたっ...!

 

机の下で、大ちゃんと片手ハイタッチをした。

 

「は、はーい」

 

自信なさげに、あたいは黒板に向かう。

 

ヒソヒソ...ヒソヒソ...

 

みすちーとルーミアとリグルは、また同じテーブルで話している。

 

.......................

 

「今日は、大ちゃんが正解の方に超大張りをしてきたのかー」

 

「シャー芯150本だよね...でも、チルノが解く問題は...黒チャートにも載ってない最難関問題...」

 

黒板には、『円周率が3.05以上であることを証明せよ』と書いてある。

 

「間違えないわけないのかー。わたしは賭けるのかー。」

 

「うん、わたしも!リグルは?」

 

「ボクは、やめとくよ」

 

「じゃあ、大ちゃんにサインを送るのかー」

 

そう言うと、ルーミアとみすちーは、大ちゃんに『賭けに乗る』と、サインを送り、今まで頂いてきたシャー芯を、大量に机に置いた。

 

あたいは...勝利を確信した。

 

勝った......!

 

振り返り、大ちゃんにウインクする。

 

パチッ!

 

...なんで大ちゃん鼻血出てるのだ?

 

 

「チルノ、分からなくてもいい、考えを書きなさい」

 

「おっけーね!」

 

黒板の前に立ち....チョークを握りしめて...

 

「ふふふ、記念すべき100回目、またシャー芯いただきなのだー...」

 

「そうね...!」

 

 

それは....どうかな...?

 

カッ

 

あたいは、黒板にチョークをくっ付けた...

 

そして....!

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!

 

「なっ!」

 

「えっ!?」

 

「はっ!?」

 

『半径1の円の周の長さは2πである。また、この円に内接する正八角形の一辺の長さは....』

 

 

「うおおおおおおお!!!」

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!

 

あたいは、黒板に証明を書き殴り続ける!

 

『...<πという円周率の評価を得る。左辺を計算すると...』

 

ガタッ

 

「ち、チルノを止めるのだー!!」

 

「チルノーー!やめてーー!」

 

ズダダダダ!!

 

やばっ、こっちにみすちーとルーミアが走ってきた!

 

ガシッ ガシッ

 

「頑張ってる奴の邪魔は許さんぞ!」

 

「せ、せんせー、離してなのかー!」

 

「チルノちゃんの証明は止めさせないからね!」

 

「大ちゃんーー!離してよーー!」

 

どうやら、二人が止めてくれたみたいだ。

 

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!

 

「これでぇぇぇえ....終わりだあぁああ!」

 

 

「「やめろーーー!」」

 

 

『3.061...となるので、円周率が3.05より大きいことが証明された。

 

 

証明終了。⑨.E.D!』

 

 

「正解だ、チルノ!」

 

「「ぎゃああああああ!!!」」

 

「へへーん、あたいをなめてると、こうなる運命なのだよ!さあ、大ちゃんのシャー芯を返してもらおうか!!」

 

「チルノちゃん...ありがとう...」

 

 

「ううう....分かったのかー」「返すわよ...」

 

100回目の博打は、大ちゃんの勝ちに終わった。

 

[その夜 ???]

 

 

「あの異変は、やっぱり、チルノにとってはいい影響になったよ」

 

「そう...ならいいけど...」

 

そういうと、八雲紫は、盃を傾けた。

 

「...びっくりしたわね、幻想郷の住人全員を、脳みその境界を操って馬鹿にしろ、だなんてお願いしてきた時は」

 

「はは、そうか」

 

そう言うと、私も、酒を口に含んだ。

 

ゴク...

 

 

「ねぇ、慧音...」

 

「なんだ?」

 

「最後の、かぼちゃの問題...あの子に解けると思っていたの?」

 

「いいや、分からなかったさ....でも....解いてほしい、とは思っていたよ」

 

「へえ...間違える可能性も十分あった訳ね」

 

いや、と私は切り返し...

 

「それでも...チルノが...自分で考えて..出した答えなら、なんだって正解だよ」

 

「.........あのレシートがスキマに紛れ込んだのは、全くの偶然なんだけれど....」

 

「何か、言ったか?」

 

「いえ.....結果的に、あの答えは正しかったのね...」

 

そう言うと、紫は、問題をまとめた紙に目を落とした。

 

『Q.5...日本のかぼちゃは、北海道産とオーストラリア産のものがある。オーストラリアからかぼちゃを輸入する理由を述べよ。

 

A、オーストラリアは南半球に位置し、日本と季節が交互に入れ替わるので、かぼちゃを輸入することで、日本のかぼちゃ需要に一年中応じることができる為。』

 

 

 

 

 

「チルノ、1+2はいくつだぁ〜?」

 

魔理沙は、また、なにかを期待する目で、あたいに質問してきた。

 

 

隣の大ちゃんは、またあたいが怒り出すと思って、おろおろしている。

 

 

 

あたいは、魔理沙の顔を見て、笑顔で、少ししたたかに、こう言ってみせた。

 

 

 

「⑨!」

 

 




長かった...

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。