私の結婚相手は、同じ元クラスメート……同じ戦車道仲間のみぽりん!
……まあ夫婦といっても女同士だから、あくまでも二人の間だけで言ってるだけなんだどね。
でもみぽりんは昔の……黒森峰女学園にいた時に受けた心の傷は今でも完全に癒えていないままで……。
Pixivにも同じものを投稿しています。
十年後ぐらいの未来設定で二人は同棲及び、愛し合ってる関係。
百合物が、みほさおが苦手な方は注意して下さい。
「よしっ、今日の晩御飯もできたっと」
私は武部沙織、元大洗女子学園の生徒で今は専業主婦をやってる。
「うんうん。今日も完璧だし、また腕をあげちゃったかも!」
今は今夜の晩御飯を作っていた。料理は女子力で大切だから得意だったし、特に困るような事はないけど、でも好きな人を楽しませたい事もあるから日々勉強中。
「もうそろそろ帰る頃だよね……」
ちなみに私は今ある人と同棲してる。
「ただいま、沙織さん!」
「あっ、おかえりみぽりん!」
私の同棲相手は西住みほ。戦車道の名門西住流の娘で、今や全国ナンバーワンの強豪校となった大洗女子学園を優勝に導いた伝説の救世主。
今は戦車道のプロ選手で世界大会でも大活躍。そもそも戦車道に携わってる者ならその名を知らない人はいない。
「見てみて!今日は凄く豪華にしてみたんだよ!」
だって今日は特別な日。もちろん、いつも頑張って作ってるけど、今日は凄く頑張ったんだから。
「えへへ……実は私も記念日だからケーキを買ってきたんです」
そう言ってみぽりんは片手に持っていた凄く高そうな箱を取り出した。
「みぽりん!凄く高いケーキじゃないこれ!?」
どこのお店かは分からないけど、とても高い高級店なケーキだというのはハッキリと分かった。
多分みぽりんみたいに世界中を飛び回る人じゃないと買えなさそうな縁はないと思う。
「今日は私たちの結婚記念日だから、思い切って買ってきました」
実際に結婚しているわけじゃない、だって女の子同士だし。
でもどうせ結婚できないなら、恋人通り越して夫婦で、私たちの間でもそう呼ぼうと決めた。
「じゃあみぽりん、私は用意しておくから着替えてきて」
「はい。あっ、でもその前に……」
そう言ってみぽりんは顔を私に向けて近づけると目を閉じて唇を少し前に突き出す。
「んっ……」
そして私たちは口つけを交わす。これはもう毎日の恒例行事とも言えた。
私たち自称にはなっちゃうけどラブラブの夫婦だもんね。
「もっとしたいけど……それは夜のお楽しみね、みぽりん!」
「はい。じゃあ私着替えてくるから」
やだもー!私って夜のお楽しみねとか言っちゃって、自分で恥ずかしくなっちゃった。
私は日頃から男の人にモテたいって思って料理とかも頑張って練習してきたけど、私はみぽりんに恋した。同じ同性の女の子に。
最初にみぽりんをみた時は自覚なかったけど、きっと一目惚れだったんだと思う。
今みぽりんは大洗の伝説の救世主として世界中に名を残している。
寄せ集めの戦車と戦車のせの字も知らない超素人集団を率いて、廃校寸前の学校を救う為、黒森峰女学園を始めとする多くの強豪校を倒し、見事に大洗女子学園を優勝へと導いた。
だから西住みほという存在は伝説の救世主、伝説の英雄、伝説の軍神としてその名を歴史に刻んだ。
こんなみぽりんの軍神エピソードは有名で、いまは学校の教科書にも載ってるのがビックリだよね。
もちろん私のこともメディアに取り上げられたけど、やっぱりみぽりんとはレベルが違う。
でも当然だと思う。普通に考えれば、まるでアニメや漫画から出てきたヒーローみたいだもん。
だから時々考えてしまう。
世界で有名な西住みほと、今は日本の専業主婦でやってる私じゃ釣り合わないんじゃないかって。
みぽりんは忙しい時だと世界中を駆け巡るから、中々家にいられない。
みぽりんも自分がプロ選手になるということは私と一緒にいられない事が多くなるという事も気付いてた。
だからこそみぽりんは何とか無理を言って、私も一緒に連れて行ってくれる。マネージャー的な立場として。
まあ元大洗の通信手という実績もあるからだけど。
こんな私はみぽりんの妻として相応しいのかなって考えてしまったこともあるけれど、でもこんな弱音を見せたらみぽりんを心配させてしまうから言わない事にしてる。
それに私も自分自身を信じないと良い夫婦になれない。だから私はいつだって自分を信じてる。
私はみぽりんを支えていける。私はみぽりんと幸せになれるって。
「ねえ沙織さん」
夕食も終わって、片付けも終わって、私たちは寝室にいた。
「どうしたの、みぽりん?」
世界中で有名なわりには住んでるとこは小さなマンションだし、もちろんベットも二人用だけど少し狭いかも。
「ちょっとだけ……こうさせて……」
そう言うとみぽりんは私の胸に顔を埋めて、まるで幼い子供のようにしがみついた。
「いいよ、みぽりんの好きなだけしてあげる」
この行動がなんなのか、私は知っていた。
「ひぐっ…………ぐすっ………………」
「よしよし……好きなだけ泣いていいよ?私の前では無理しなくてもいいからね?」
私の胸に顔を埋めたまま、みぽりんは泣き出した。
「さおりさぁん…………うぅひっぐ………………」
今の私たちはまるで、辛い事があって泣きじゃくる子供と、その子供をあやす母親みたいだと思う。
みぽりんは過去に黒森峰で起きた事件を、自分のせいで黒森峰が負けてしまって家族と上手くいかなかった時のことを今でも悪夢として見るらしい。
もちろん母親とは完全に和解してるし、元黒森峰の生徒とも和解してるから何も問題はないはずだけど。
でもみぽりんが心に負った傷は十年経った今でも深く残っている。
「みぽりんは本当に頑張ってるよね。辛くても悲しくても、逃げずに一生懸命にやってるの知ってるよ」
「プロになるとプレッシャーも凄いし、周りからの視線だってキツイときもあるんだよね」
多分みぽりんは凄いプレッシャーを感じながら日々戦車道をしてるんだと思う。
「私……怖くて……もし何か失敗したらと思うと…………」
日本全体の期待を背負ってるからなのかな、絶対に失敗できないんだとは思う。
もちろん昔も凄かっただろうけど、今はなんて言ったってプロの日本代表でもあるから。その重みはかなりキツいはず。
「こんなに頑張ってるんだから、もしみぽりんの事を悪く言う人がいれば、例えお母さんが相手でも私は本気で怒るよ」
その重圧は私には分からないけど、出来る事なら私も一緒に負担してあげたい。
よくみぽりんと一緒に世界中を着いて回ってるのは、その意味もあった。私がいたらきっとみぽりんも少し楽になってくれると思うし。
「だからねみぽりん。せめて私の前だけでは好きなだけ甘えていいし、泣いてもいいんだよ?」
よくみぽりんと初めて会った人は、想像と違いすぎる人物だって印象を受けてる。
「さおり……さん…………ぐずっ……びぐっ……」
どれだけ軍神とか言われても、みぽりんは私とどこも変わらない普通の女の子。
よく泣くし、放っておいたら危ない事に巻き込まれそうなぐらいあわあわしてるし。
「……最初みぽりんに会った時に、私はもう一目惚れしてたんだと思う。その事に気付いたのは少し後だったけどね」
なんて言うか、みぽりんは放っておけない子だなと思ってた。
「みぽりんがね、困ってる時や辛い時には何とかして支えないとって考えてるうちに気付いたんだよ」
黒森峰のこともあって、なかなか一歩を踏み出す事が出来ずに苦しんでばかりいたから。何とかして支えてあげたい、何とかしてみぽりんの苦しみを和らげたい。
「同じ同性であるはずのみぽりんに、私は恋してるんだって」
そう思ってるうちに私は気付いた。私はみぽりんに恋してるんだと。
でもそれは同性愛、普通に考えたらありえない恋。
「みぽりんはどうだったかは分からないけど、実は私ね、物凄く毎日の生活が怖かったんだよ?」
「沙織さんが…………?」
ずっと泣きはらした目で、意外そうにみぽりんは私を見つめる。
「みぽりんはよく私に支えられたって言うけど、本当は私の方が支えてもらってたし助けられてた」
みぽりんはそうよく私に言ってくれる。
転校して最初に声をかけてくれた沙織さんに凄く助けられてた。決勝戦の時も沙織さんの言葉に勇気が出たとか。
確かにみぽりんを支えたのだけど、でも本当はずっと私の方が支えられていた。
「同性愛って事が知られるの凄く怖かった。もし気持ち悪いって思われて、嫌われるのがとても怖かったんだよ……」
優しいみぽりんなら、きっとそんな事は思わないし言わない。
でもそれでも怖かった。
「みぽりんはどこか無防備なところがあるでしょ?だからいろいろと見えちゃう部分もあってね、その時も自分の視線とかが怖かった」
正直、みぽりんの無防備なところを私は邪な気持ちで見ていた。
だけどもしも、そんな視線が、私がそんな邪な気持ちで見ていることがバレたら絶対に嫌われるし距離を置かれる。
それが凄く怖かった。
「別に私は……沙織さんを……」
「優しいみぽりんはそんな事を言わないって分かってはいたんだけど……でも怖くてね、なかなか眠れない夜もあったぐらいに」
もし嫌われたら、私は立ち直れかったかもしれない。
だから必死に自分の気持ちを忘れようともしたけど……。
「だけどみぽりんは逃げなかったよね……。黒森峰からは逃げたっていうかもしれないけど、でも私の知る限り、みぽりんは一生懸命に戦ってた」
みぽりんは、一度は黒森峰から逃げたのかれない。でも大洗に来てからは違う。
「自分自身にも。周りの人にも。西住流とも」
「うん……一生懸命に頑張ったみんなを傷つけたくなかったし裏切りたくなかったから……」
みぽりんは逃げなかった。本当は逃げたくて、戦車道なんかやりたくなかったというのは凄く伝わってきたのに、でも私たちの為に大洗の為に逃げずに立ち向かった。
「そんなみぽりんに私は勇気をもらってね……あの日に思い切って自分の気持ちを伝えたんだよ」
そんなみぽりんを見てきたからこそ、私だって勇気を持って頑張らないとダメだって思ったんだよね。
「私は一人の女の子として、みぽりんに恋してます!って」
そして運命の日、私はみぽりんに自分の気持ちを正直に伝えた。
「もちろん断られると思ったけど」
だってこんな気持ちを抱くのは私だけだと思い切ってたから。
それが普通で、それが当然のことだもん。
「転校して上手く馴染めなかった私に……沙織さんに声をかけられたのが本当に嬉しくて……私も沙織さんに一目惚れだったかも……だから私も沙織さんが好きだと伝えて……」
なんと返事はすぐにOKをもらえた。
「絶対に無理だと思ってたから、私はしばらく呆然としてたんだもんね」
絶対に断られると思ったから私は少しの間、信じられなくて呆然と立ち尽くしていたっけ?
そしてしばらくしてから、私は急にほっとして涙を流したんだよね。
「だからね、みぽりん。私はみぽりんに凄く助けられたし支えてもらった。私も全く同じことをしてるだけだから、遠慮なく泣いてもいいし頼ってもいいよ?」
「うん……ひぐっ…………」
そしてみぽりんはまた泣き出す、でもこれは嬉しい方の涙だとすぐに分かった。
「ほら夫婦って助け合いとか、よく言うじゃん?」
どこかの雑誌に書いてあった、夫婦は助け合いが大切だと。それは私たちみたいに仮の夫婦でも同じ。
「沙織さんも……頼りないかもしれないけど……私に頼ってくれますか……?」
「当たり前でしょ?末永く一生、お互いに支え合っていこ!」
「うん……えへへ…………」
やっとみぽりんに笑顔が戻った。
みぽりんの笑った顔って、結構好きだったりするんだよね。なんていうか幼い子供みたいで。
「うん……もう朝なの…………?」
翌朝、みぽりんと一緒に寝た私は目が覚める。カーテンの隙間から見える光で、朝だとすぐに分かった。
「おはよう、沙織さん」
ふと声が聞こえて、隣を見る。
すると私の方をジッと見つめていたみぽりんの顔が目に映った。
「み、みぽりん!起きてたの!?」
「私も少し前に起きたところだよ。でも今日は休みだし、沙織さんの寝顔を見ていようと思って」
「やだもー!」
途端に恥ずかしくなる。実際にはもっと恥ずかしいことをしていたのに、何故か完全に無防備な寝顔となるとそれ以上に恥ずかしくなった。
「本当に今日はみぽりんが休みで良かったね、ベットとかいつもよりめちゃくちゃだもん」
昨日は事情が事情だったし、どっちかというと凄く夜も凄く盛り上がってしまってベットは間違いなく洗濯が必要になる。
「ねえ沙織さん……」
「ん?なぁに?」
みぽりんはどこか真面目な、何かを決意した目になっていた。
何年も一緒にいるから、言いたいことは大体分かる。
「私たちの関係を、お母さんに話してみようと思うの」
実はというと私たちの関係を知ってるのはほんのごく一部の人だけ。
私の親やみぽりんの親は知らないし、話すのは正直に言って怖い。
「うん……私もそろそろ親に言わないといけないしね」
多分みぽりんのお姉さんは私たちの関係に気づいてると思う。こればかりは女の勘だけど。
どうして言わないのかは、私たちから言うのを待ってるのか、それとも私たちを認めてるのか、それは分からない。
「もしかしたら勘当されるかもしれないし……今のお仕事にも影響が出るかも……」
まだ世間は私たちの関係を当然だけど知らない。ただでさえ世間では同性愛の生き方は狭いし、万が一メディアに知られたらとんでもないことになる。それこそ今の仕事が無くなるかもしれない。
「大丈夫だよ。何があっても、私はみぽりんから離れたりしないから」
簡単には認めてもらえないと思う。戦車道の名門の娘が、同性愛だなんて世間的にも大変だと思うから。
「私もお母さんに認めてもらうまでは何百回でもお願いしに行く」
「うんっ、そうでないとね!そろそろ服を着よう、風邪を引いちゃうし」
きっと苦労する事の方が多いと思う。
もしかしたら生活も大変になるかもしれない。
だけど私は何があっても、みぽりんから離れたりしない。誰に何を言われても、どんな目でみられても、絶対にみぽりんと一緒に生きていく。
たまに辛い事があっても、それはみぽりんと一緒に互いを支え合っていきていくから。
「沙織さん……ありがとう……」
「みぽりん……大好き……」
そして私たちはまた、確かな一つの想いと共に口付けを交わした。
ーENDー
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