開き直ってワンピ世界を楽しむ事にしました   作:歯磨き粉

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数話程は書き溜めがあるので毎日投稿します。

何か致命的な設定ミスがない限りはそのまま投稿するのでよろしくお願いします。



明晰夢…じゃないです

 俺はある日気が付いた…気が付いてしまった。

 

「これ、明晰夢じゃなくて現実じゃね??」

 

 こんな電波受信しちゃった台詞を吐いてしまった経緯を説明するにはまず、数年遡る事から始まる。

 

 俺はある日目を覚ますと【ソーン】になっていた。

 このキャラはグランブルーファンタジー(以下グラブル)と呼ばれるソシャゲに出てくるキャラなのだが、その中でもソーンは作中設定でも最強格に位置する。

 というのも、グラブルは10種類の武器が登場するのだが、その10種類の武器ひとつひとつに対応した最強の使い手が十人存在していて、その十人を纏めたグループをグラブル内では十天衆と呼び、世界の抑止力として機能する程の戦闘能力を持つ集団となっている。

 そして、その中でソーンは弓を扱うキャラになっている。

 当然ながら全員ゲーム内性能も非常に高いので取得するにはそれに見合うだけの時間と労力を必要だ。

 

 そしてそんな10人の中では一番取得率が高いキャラがソーンであり、その理由は色々とあるのだが、今はそれを置いておこう。

 

 この時の俺はあまりの唐突さと非現実感に明晰夢だと断定し、夢ならば楽しもう!と思考を切り替え、自身の現状把握をした。

 俺が憑依したソーンの最大の特徴は魔眼の持ち主という点で、魔眼で視えた場所ならばどれだけ離れようと捉える事が出来るという、チート性能を誇る。

 その驚異的な視力に、魔法があるファンタジー世界なので、魔導弓と呼ばれる魔力で動く射程無限の弓を所持していて、その組み合わせにより、作中では弓使い最強として君臨しているわけだ

 当然身体能力も高く、飛翔術と呼ばれる超高難度の魔法も使いこなし、自由自在に空を翔ける事が可能だ。

 

 そして、和製ソシャゲといえば美少女、美女もしくは美男子、美男が出てくるのがお約束だ。

 その為、その例に漏れず、ソーンも絶世の美女と言うべき見た目をしている。

 明るく活発な印象を感じるオレンジブラウンの髪色を胸元より下まで伸ばし、黄緑色の瞳に整った目鼻立ち、服装は黒と白のマントを羽織り、黒を基調としたへそだしの露出度高めな服装に女性としては高身長だが出るべき所は出て引っ込む所は引っ込んだ男の理想を具現化したような見た目をしている。

 

 この時自分は一度も正しく使う事なく消えてしまったマイサンや何故ソーンになっているのか?という事に疑問やショックを受けたりはしたが、夢というのは大概突拍子も無い物だし、何より実は日頃から美少女に生まれ変わってみたいとも考えていた俺にとっては正に夢の体験だった訳だ。

 

 その後、原作通りの動きをできるのか色々と試してみれば、直ぐにまるで最初から使いこなしていたかのように空を飛び、魔法を使い、異常な視力をも平然と扱いこなせるようになっていった。

 

 この時点でいくら明晰夢といえど、度が過ぎているのではないか?とも思うべきだったのだが、非現実的過ぎる上に思った事全てが出来る楽しさから完全に失念してしまったのだ。

 

 ソーンとなり、その力を把握した俺はここが何処なのだろうかと思い辺りを探索する事にした。

 ソーンになっているのなら、ここはグラブル世界なのだろう。だとすればここは唯一海があるアウギュステか?と思ったのだが、いくら飛んでも先を見ても、島の端が見えることはなかった。水平線に隠れているにしては広大すぎやしないだろうか?

 

 代わりに見つかるのは海賊旗を掲げた船とカモメを掲げた船ばかり。

 

 次第に俺はある一つの作品を思い浮かべていたのだが、もう少し情報収集をしようと空を飛んでいると、遂に決定的となる証拠を見付けてしまう。

 

「これって、まさか赤い土の大陸(レッドライン)なのか!?という事はここはONE-PIECEの世界だったのか!何というナイスな夢を見ているんだ俺は!!覚めてほしくないなこれは!」

 

 好きなキャラで好きな作品の世界に来てる事に気が付いた俺はまたしてもテンションがMAXになっていた。

 

 ONE-PIECEといえば、弱肉強食の世界だ。一般市民は搾取され、海賊が我が物顔で暴れる世界。となればこの夢が覚めぬうちに海賊でも狩るか!やっぱりハッピーエンドでしょ!

 と、訳の分からない結論を出した俺はそれはそれは大変に暴れ回った訳だ。

 数えるのも嫌になるほどの海賊を狩ったせいで、多くの海賊達から恐怖されるのと同じくらいに恨みを買うだけに飽き足らず、休息時に立ち寄った島の海軍支部がモーガン大佐のように街に恐怖政治を敷いていた上に、海賊達とも癒着までしているという腐り切った支部に腹を立てた俺は、その支部を壊滅させてしまったのだ。

 当然のごとく懸賞金を懸けられたので、適当に迎撃しているうちに懸賞金はみるみるうちに上がっていったが、未だに夢だと思っていた俺はむしろ途中からどこまで上がるか試してみようかな?などと考え始めていた。

 そしてそんなある日の事、とある場所に向かう人物を見つけた俺はひと悶着ありながらも、一緒に襲撃もしてしまっていた。

 こうして散々暴れ回った後に唐突に賢者モードに入り、冷静に考えた結果、冒頭のシーンに戻る訳だ。

 

「いや、これ…おかしくね?ホントに今更だけど寝て起きたのに夢から醒めてないって変だよな?傷を負うとちゃんと痛いし、そもそも俺の想像力はこんな果てなき世界が見える程に高くないはず。…これ、現実じゃね!?!?」

 

 と、いった具合にホントに今更ながら、俺はソーンになってワンピ時空に転生していた事を自覚したのだった。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 さて、ここで色々と問題が生じてくる。

 先程も言ったが俺は夢だと思っていたので、ソーンになりきりつつ、海賊や海軍を相手に暴れまわったせいで、海賊達から目の敵にされるだけでなく、更には海軍から賞金首として手配をかけられているのだ。おまけにその額が…2億ベリーだ。

 

 賞金稼ぎ擬きの行為をしていた最初でこそ、英雄視する人も居たが俺が賞金首になると手のひらを一転させてしまったのだ。

 まぁ、海軍支部を一つ壊滅させてしまったので、仕方ない事だとは思っている。

 だがしかし、俺はそれだけに飽き足らず、先ほども言ったようにある人物と一緒にとんでもない場所を襲撃していた。

 

 そう、俺はある日赤い土の大陸によじ登る人影を目視したのだが、その人物はなんとフィッシャータイガーだったのだ。

 最初は飛んでいる自分に驚いていたが、俺がマリージョア襲撃の援護をする。と言うと直ぐに気を取り直し、人間の手など借りるか!!と逆に追い返されてしまった。

 

 だが、その頃はまだ阿呆にも夢だと思い込んでいた俺は聞く耳を持たず、天竜人が嫌いだった俺は一泡吹かせてやろうとフィッシャータイガーが襲撃して奴隷解放をし始めた頃に再び捕まりそうな奴隷たちの援護をしたり、逃げ回る天竜人の付近にわざと沢山の矢を突き刺しまくったりしていた。

 当然タイガーには余計な手出しするなと怒られたが、それも無視して奴隷解放を手伝っていたのでそのうち呆れて、タイガーも解放に回っていた。

 

 そしてその途中にハンコック3姉妹を見つけたのだが、リアルで見ると更に感じる凄まじい美女っぷりに驚きつつも保護することにした。原作上グロリオーサ、レイリー、シャッキーによって保護されて安全に帰還できるとは知っていたが念の為に一緒に付いて行って送り届けるついでに、夢が覚めるまで女ヶ島で一緒にハンコックと暮らして居候するのもいいんじゃないか?と考えてから2年も経ってようやく気が付いたのだった。

 

「いや、ホントに…我ながら鈍すぎじゃない?最初の非現実感から夢だと思うのはいいとして、暴れまわった挙句2年も女ヶ島に居ついて初めて気が付くのはないだろ。それさえなければ海軍に追われる事も賞金稼ぎに狙われる事も海賊に目の敵にされる事もなかったんじゃないのか?」

 

 その虚無感から思わず独り言を呟いてしまい、深く深くため息をつき、木の上でこれからどうしようかと思い悩んでいると、後ろから人が来る気配を感じたのでそちらの方を向く。

 

「やっと見つけたのじゃ!!相変わらずソーンはどこに居るのか見当も付かぬ、このわらわ自ら探す人物などそなたくらいのものだぞ?」

「——あら、それは悪かったわね、少し考え事をしたかったから、ジャングルでひとりになっていただけよ?それで、もう皇帝にはなったのかしら?」

「それはこれからじゃ、だからこそ、そなたを探していたのだ。全くこのわらわに対してそんなぞんざいな扱いをするのは後にも先にもソーンくらいじゃな」

「それはどうかしら?もしかしたら、貴女に興味が湧かない男が現れるかもしれないわよ?」

「このわらわに邪心を抱かない男が現れるはずがなかろう?ソーンの冗談も上手くなったものじゃ」

「ふふふ…そうだといいわね?」

「ともかく、そろそろわらわの新皇帝就任式が始まる、見ていてくれるのだろう?」

「えぇ、勿論あなたの友達として盛大に祝わせてもらうわ、とっておきの武々を最後に見せてあげるわよ」

「そなたの武々は本当に美しいものじゃ、楽しみにしておるぞ?」

 

 そう言うとハンコックは踵を返して、九蛇城へと踵を返す。

 それにしても…最初はノリノリでソーンになり切ってたから抵抗を感じていなかったうえに、2年も経っているので自分が女性の肉体に変化している事にもすっかり慣れてしまったのだが、その二年遅れで自覚したせいで余計な違和感を感じてしまっていた。

 正直美少女になる、それもソーンという最高の美少女になるのは大変素晴らしい事なのだが、やはり元男としての最低限守りたかった部分が無くなってしまったのはかなり辛い物がある。

 とはいえ今の肉体にすっかり慣れたように、いつしか気にする事も無くなるだろう。

 ひとまず、ハンコックの新皇帝就任式に立ち並ぶとしよう。

 そう考えを纏めると、俺は魔力を巡らせて飛翔術を発動させ、九蛇城に戻るのだった。

 




ソーンさんは原作だと眼が良すぎるせいで海に乱反射する日光に非常に弱いんですが、こちらのソーンさんは特に問題なく海を見れます。だってそうじゃないと話が作りにくすぎるですよ…。すいません許してください!!なn

一応、言い訳するとポーチャーズデイが出る前からこれは考えてたんです!書きはじめたのは最近ですけどね!

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