どうも、ソーンになってしまった元男です。とりあえず自分の置かれた状況については置いておいて、ハンコックの新皇帝就任式に出てます。
女ヶ島に訪れる際にはまだまだノリノリだった自分は早速「武々」に出て、バキュラをボコし、サンダーソニア、マリーゴールドもボコしたことで、新参ながらもハンコックの次に人気のある女傑となっていた。
この頃のハンコックの強さはわからないが、少なくともフィッシャータイガーと一緒に戦ってマリージョアを火の海に変える事ができる程度には強いので、ハンコックにも勝てたとは思う。ただ、そうすると自分が皇帝になってしまい兼ねなかったので、夢の中とはいえ国の王になるのに抵抗を覚えたので、試合は辞退していたのだ。
見聞色の覇気を習得している上位のアマゾンリリー達の戦士を相手にしても余裕で立ち回れるくらいのチートスペックを持つ肉体のお蔭で、今の所は精々かすり傷程度しか負っていなかったりする。
そんなわけで、アマゾンリリーの中でも注目されている俺はハンコック達と一緒に並んで就任式に出ているわけだ。
「きゃ~~~!!蛇姫様~~!!」
「ソーン様も居るわ!」
「あの方が、ハンコック様の次に強いとされる御方ね!」
「その魔眼で私を撃ち抜いて~~!!」
やはり男禁制の島だけあって、強く美しいとそれだけですさまじい人気だ。女子の運動系部活で部長が同性からモテるのと同じ意味だろうか。
そのまま、歓声が鳴りやまぬままに、就任式は着々と進み、閉会となった時、ニョン婆が司会として声を上げる
「それでは、魔眼の狩人ソーンと現皇帝ハンコックにニョる、二人の武々によって式を締めるニョじゃ!!」
とりあえず、今の自分の状況は置いといて、ここが、現実なのだとわかった以上ハンコックの信頼を裏切る訳にはいかない。
あのハンコックにも褒められたこの魔眼と弓の腕前を披露してやるぜ!
「それじゃ行くわよ?」
「当然、一つ残らず撃ち抜いてくれるのじゃろう?」
「勿論、狩人に失敗はないわ」
そう、呟いてから飛翔術で空を飛び、魔力によってのみ扱える魔道弓を構える。すると自分の周りに多数の弓矢が浮かび上がる。
そして、それを見たハンコックがメロメロの実で大きなハートを作り出し、大きく弓を引き絞るような動作をする。
「虜の矢!!!」
同時に空中にばら撒かれた的に命中し、石化していくが、それがすべて石化した瞬間を狙って次々と矢を放ち、一つも取り残すことなく、すべて撃ちぬいていく。
こうして、ハンコックと一緒に式を盛り上げたのちに、武々も終盤に差し掛かったあたりで少し高めに高度をとった俺は、再び魔道弓を構え、魔力を強く籠める
そして、それを見たハンコックもひと際大きなハートマークを空に打ち上げる。自分を飛び越え、遥か上空に差し掛かった辺りで、その魔力を解き放つ。
「この眼で捉えた!射抜いて見せる!”アストラルハウザー”!!!」
大量の魔力を込めた事により、魔道弓から自分を覆うように巨大な光り輝く翼が現れる。そして、巨大な矢が放たれた直後、幾多の矢が同時に現れ、その全てが大きなハートマークに命中すると、空一面にハートマークが舞い散る。
そして最後の武々の興奮冷めやらぬままに、就任式は終了し、ハンコックは無事皇帝として君臨した。
「最期の武々どうだったかしら?ソニア、マリー」
「お見事の一言でした!姉様との武々はまたみたいわ!」
「最後のあの一矢が素晴らしかったです!姉様から聞きましたが、あれがソーン様の言っていた秘術なのですか?」
「えぇ、そうよ。この眼で捉えた獲物は誰であろうと逃さない。だからその圧倒的火力で殲滅するのがあのアストラルハウザーよ」
先ほど最後に放ったのはいわゆる必殺技みたいなものだ。グラブルは王道ファンタジーRPGなので、その他にも色々とアビリティやスキルがある。
「さて、ハンコックが無事皇帝に就任したことだし、私はそろそろ旅に出ようかしら」
「…やはり、どうしても出ていくのじゃな?」
ハンコック達が寂しそうな顔をして、こちらを見つめてくる。
うっ…前世じゃこんな美人に見つめられる事なんてなかったから罪悪感が…!だが、しかしここが現実とわかりワンピースだとわかったのならば、やはり絶対にしたい事が俺にはあるのだ!
「そうね。…あなた達を”あの場所”から連れ出した時から私はここからいつの日か
「そうか…、本当にそなたは最初から最後までわらわを惑わしてばかりじゃな」
「あら、その台詞は貴女には言われたくはないわね?アマゾンリリー皇帝の蛇姫様?」
「全く、このわらわにそのような口の利き方をしていいのはソーンだけという事を本当に理解しておるのか?」
「えぇ、勿論よ?でもね、この私でも見通すことができない程にこの世界は広いのよ?だから、もしかしたら私以外にもそんな人が現れるかもしれないわよ?」
「最近のソーンはそればかりじゃ、まるで見てきたかのように言うのじゃな」
「私が未来をも見通す魔眼の持ち主って言ったら、信じるかしら?」
そう呟き、ハンコックを見つめる。いつかルフィというイレギュラーがやって来る。あと数年もすればハンコックは今以上に美しい乙女になる事は間違いないのだ。
「…ソーンならば、あり得ないとは言い切れないのが怖い所じゃ。」
「冗談よ、私も人の子よ?悪魔の実能力者でもないのだから未来を視ることなんてできないわ」
「悪魔の実の能力者でもないのに、そうして空を飛び、見たことも聞いたこともない力を使いこなすソーンならば信じたくもなるものじゃ。」
「酷い言われようね、いっそのこと"化け物"と呼んだらどうかしら?」
「そなた程の恩人相手にそのような事を言い放つ程わらわは傲慢ではないぞ?…それに、あまりそうやって自分を化け物と呼ぶのはやめるのじゃ。」
この"化け物"とはソーン自身がそう呼んでいたのだが、グラブルの主人公に会うまではその力ゆえに孤独だったソーンは自分を弓使い最強ではなく、一人の人間としてそして友達として見てくれる人を探していた。
主人公と会ってからは主人公達の仲間とも仲良くなり、その可愛さと尊さを感じさせる素晴らしいシーンがあったりする。——閑話休題
そしてソーンになりきっていた俺は以前からハンコックの前で時折自身を化け物と呼びからかっていたわけだ。
「ごめんなさいね、ハンコックをからかうのが楽しくて。貴女の前では言わないと約束するわ。」
「…まぁ、今はその事は置いておくとしよう。ソーンが出て行くのだと決めたならば、もう止めはせぬ。出立はいつなのじゃ?」
「そうね、今日の夕方には出ようと思ってるわ」
「随分と急じゃな!アマゾンリリーの戦士達も驚くに違いない。何か急がないといけない理由でもあるのか?」
「そういう訳ではないのだけれど、ハンコックも皇帝になったし、ニョン婆も居るでしょう?旅に出ようと思ってたからちょうど良かったのよ。」
「そうか、なら戦士達にはわらわから伝えておこう。」
「ありがとう、それじゃ最後にゆっくり雑談でもしましょう。」
こうして最後の数時間程、今後の旅路や予定、そしてソニアとマリー達にコッソリとよく伸びる男に気を付ける用に軽く言い含めた後、旅の準備をして、九蛇城から飛び上がる。
「それじゃ、たまにはここに戻って来るからハンコックの事よろしくね、ニョン婆」
「ソーンに言われんでもわかっておるニョじゃ、安心して行ってくるといい」
「戻ってきた時はまた武々をしましょう!」
「次はそう簡単には負けないわよ、ソーン様!」
「くれぐれも男には気をつけるのじゃぞ、ソーンよ!」
「その時は受けて立つわよソニア、マリー!それにハンコックもそんな心配は無用よ?」
「そなたは変に無防備だから心配なのじゃ…と言っても伝わらないのはもう承知しておる、だからいつでもここに戻ってくるといい、待っておるぞ!」
「ありがとう!それじゃ皆行ってくるわね!」
そう伝えると、飛翔術を発動させた俺は空へと舞い上がり、グランドラインを島伝いに進んでいくのだった。
ハンコックの性格が主人公に対してかなり柔らかいのは仕様です。恩人や妹に対しても尊大な態度を取るのがハンコックなのですが、作者の力量では扱い悪すぎて無理でした。