開き直ってワンピ世界を楽しむ事にしました   作:歯磨き粉

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バスティーユ少将の苦難

 とある海賊船が航行している航路の名は偉大なる航路(グランドライン)。非常に危険度が高い海域ゆえに常に船員が目を光らせるのが常識なはずだというのにその海賊船では何故かほぼ全ての船員たちが眠っていた。

 そんな船の上でわが物顔でくつろぐ人物こそが、その犯人だった。

 

 

 ふぅ…流石にマーキュライトを使用した後に長時間の飛行は疲れるな。ちょうどいいところに海賊船があって助かった。

 流石のチート肉体と言えど、人間であることには変わらないので当然疲労もするし、眠気も襲ってくるので時々休憩をするのだが島から島へと移動するには数日間はかかる。

 しかし海上で休憩するには船以外にないので、こうして適当な海賊船を襲って休んでいるのだ。襲われた海賊船側はたまったものではないだろうが、そこは運がなかったと諦めてもらうしかないだろう。

 自前の船があればとは思うが、せっかく飛べるのに船で航行するのでは面白くないので、そこは諦めている。

 

 それにしてもあの二人に喧嘩を売ってしまったのは少々早計だったかもしれない。

 別に航行不能にした時点で終わらせてもよかったのだが、原作キャラに会ってテンションが上がっていた所を更に追い打ちをかけられたようなものだったのだ。

 あそこで我慢できずに勢いで行ってしまったので、反省はしているのだが後悔はしていないぜ!!

 この結果また賞金首が上がったとしてもすでに世間を騒がしまくって億越えしているので今更感もあったりする。

 

 そして、黄猿とガープ達と一戦を交えたあの日から数日ほどは再び海軍からの追跡を逃れるべく警戒していた自分だったが、次第に妙だと思い始めていた。というのも、前に姿を見せた時は増えていた海軍の船が特に増えるという事もなくいつも通りのパトロール体制を取っていたからだ。

 

 最初はただ船を増やすだけでは意味がないことに気が付いたのかと思ったのだが、たまに見る海軍船のマストに変な事が書いてあることに気が付いてからはそれが勘違いだった事を知る。

 そこに書いてあることは要約すると「海軍本部に来い」と書かれた文字が遠距離では明らかに魔眼でしか読み取る事のできない大きさでソーンの名前が書かれていた事から、自分宛にあてられたものだった。

 

 当然、これはそのままの意味での出頭命令ではないだろう。逃げ回り続ける賞金首がそんなことで自首すると思っている程、海軍もバカではない。

 となると、恐らくは単純に自分に話したい事があるとみるのが自然だ。遥か先から捕捉し、自由自在に空を飛び回る自分に対しては最も効果的な方法だろう。

 勿論そこまで深読みした罠の可能性もなくはないが、先ほどの戦い方で原作最強クラス二人を相手にしても逃げるだけなら容易だった事から罠だとしてもそこから逃走することは可能だろう。

 

 問題は何故わざわざこんな方法で呼び出しているのか?という事だ。勿論、マリージョア襲撃の件だとは思うが、捕縛ではなく出頭命令のような形に方針を変えてきたのかが気になる所だな。

 う~~む…考えていてもわからんな!とりあえず海軍本部に向かえばわかる事だ。さっそく海軍本部に向かおうと思い空に飛びあがってから、ある事に気が付いた。

 

「海軍本部の永久指針持ってないじゃん…?」

 

 今迄は水平線には隠れない程度の距離にある島伝いに観光してたので問題はなかったが、流石に水平線に隠れる程に遠い距離にある島を見付けることはできない。

 そもそも海軍本部がどこにあるのかがわからないので、島伝いに海軍本部に向かうのは非効率すぎる。

 

 仕方ない、適当な海軍の軍艦にお邪魔して海軍本部に案内させてもらうとしよう。

 水平線を目安にぐるっと一周して眼を凝らすと、一隻の軍艦を見付けたので早速そちらに向かって飛行する。

 

 しばらくしたのちに、軍艦の上空に到着したのだが甲板上には慌ただしく海軍が動き回り、多数の大砲や小銃がこちらに向けられた厳戒態勢だった。

 当然といえば当然の対応であり、この程度ならば問題なく避けられるが落ち着かないのは確かなので、早く武器を収めてもらえないだろうか?と思いながら、甲板に降り立つ。

 すると一人の海兵が警戒心たっぷりの声色で前に出てくる。

 

「…俺の名前はバスティーユ少将だら。貴様は魔眼の狩人ソーンだら?あのマストの文字を見てやってきたんだらァ?」

「えぇ、そうよ。だから危害を加えるつもりはないわ。落ち着かないから銃口を下げてもらってもいいかしら?」

「例え本当に戦意がないとしても、目的不明の海賊相手に警戒態勢を解く訳には行かねんだら。要件だけさっさと伝えるんだら!」

「確かにあなたの言う通りね、それじゃあ早速だけど、海軍本部に案内してくれないかしら?場所がわからなくて困っていたのよ。案内が嫌なら別に海軍本部の永久指針でもいいわよ?それを頼りに向かうわ」

「わかっだらァ、案内するだら。…いや、貴様なら永久指針の方が早いだらァ?」

「そうね、帆船よりは早く着くわ。」

「それなら、海軍本部の永久指針を貸すだら。返すときは俺の名前を出すといいだらァ。」

「助かるわ、それじゃあ近いうちに海軍本部に行くと連絡してもらえるかしら?海軍本部に近づいた瞬間攻撃されたりするのは避けたいわ。」

「いいだらァ、連絡しておくだら。…おい、永久指針を持ってくるだら。」

 

 バスティーユが部下の一人に命令した後持ってきた永久指針をこちらに渡してきたので、それを受け取る。

 

「それじゃあ、お邪魔したわ。…もしまた会うときがあったらその時は海軍本部かもしれないわね」

「それはいったいどういう――」

 

 もしかしたら、ルフィ達と一緒に頂上戦争に来るかもしれないので、最後にわざと意味深な言葉を言ってからバスティーユを無視して空へと飛び立ち、永久指針の指す方角めがけて飛んでいく。離れてから軍艦に目を少し向けると、気が抜けたのかどっと疲れたかのように多くの海兵達が座り込んでいた。

 

 過去に散々やらかしておいてなんだが、あれだけでそんなに精神力を使うほどに警戒していたなんて少しかわいそうだったな。などと思いつつ、速度を上げて本部に向かうのだった。

 

 

 ――――――

 

 

 ソーンが見えなくなるまで警戒態勢を続けていた海兵達はようやく息をつく。

 すると一人の部下がバスティーユに話かけてきた。

 

「海賊に海軍本部の永久指針を渡してもよかったのですか?バスティーユ少将」

「不本意だが仕方ないだらァ。あれ程の実力者を乗せたまま、何日も航行していては部下の気が休まんだら。…にしても海賊が自ら海軍本部に向かうだけでも異常だらぁ。それなのにまるで観光でもしにいくかのような余裕っぷり…まさしく化け物だらぁ。」

「そうですね、私では50mも離れればただの海軍旗にしか見えない程の小さな文字を遥か数十kmも先で認識するなんて一体どんな視力をしているのでしょうか」

「マストの上で望遠鏡を使って監視していた海兵が認識した時には、すでにこちらに向かっていただら。…つまり、あの女が本気で俺たちを攻撃していたら全員ここには立っていなかった。という事だら…」

「…ッ!」

「(更にはあの中将お二方が乗っていた軍艦すら無力化されたと聞いているだら。そんな脅威度の高い海賊を本部に呼び寄せるなんて、一体何を考えているだら?…いや、そうか!そういう事か、しかしあの女がそう簡単になるとは思わないんだら…。)」

 

 もうすでに見えなくなってしまったソーンが居たであろう方向を向きつつも、深くため息をつくのだった

 


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