超次元ロマン海域アズールねぷーん   作:アメリカ兎

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キャラ紹介
主人公そのいち エヌラス/絶望の魔人……色々あってネプテューヌ達の教会で世話になっている魔人。体術から魔術まで何でもござれの戦闘能力極振りだが、生活能力が壊滅的である。目玉焼きすら焼けないくらいには壊滅的。悩みのタネは話を聞いてもらえないこと。

主人公そのに 指揮官/菩薩提督……アズレン世界の母港で艦隊を運営している責任者。いつもニコニコ爽やか青年。ネプテューヌ達が突然来訪した時も笑顔で即時対応したくらいには心が大海原並に広いが、怒らせると非常に恐ろしい。秘書艦はローテーション制。未ケッコン勢。悩みのタネは艦隊からの熱いラブコール。


それは超特急の出会い

 

 

 

 ──ゲイムギョウ界。超次元とも呼ばれる、四人の女神が世界を守護する世界。

 そして、女神達はとある事件によって新たな世界との邂逅を果たした。

 その名は「アズールレーン」と呼ばれ、少女の姿をした艦船達が謎の勢力「セイレーン」との戦いを続ける世界。そこへ続く次元の通り道は今もなお、開いたままだという。

 

 

 

「と、いうわけで! エヌラスも行ってみない?」

「導入くっそ雑だな。類まれに見る適当加減に草が禁じ得ないんだが、ネプテューヌ」

 プラネテューヌの教会こと、プラネタワーの最上階。紫の守護女神パープルハートこと、ネプテューヌが特大スライヌクッションに体重を預けながら教会で世話をしている絶望の魔人、エヌラスに一緒にアズールレーン世界へ行ってみないかと提案していた。

 

「いやー、わたしもさー。久しぶりに綾波とかーラフィーとかージャベリンとかーニーミとかに会いたいし。せっかくだしエヌラスも一緒に行こうよーね~え~いいでしょ~? 一生のお願いだからさ~」

「一生のお願い軽すぎないか? 大体いいのかよ、こっち」

「ネプギアがいるからだいじょーぶ! ね、ネプギアー!」

「はい。お姉ちゃんが不在の間はわたしが頑張るので安心してください」

「うんうん。やっぱりネプギアがいると安心するなぁ。ほら、ノワールたちも一緒に行くって予定だからさぁ、それならいいでしょ~?」

 あらかじめ訪問の予定が取り決められていたらしい。エヌラスはため息をつきながら考える。

 

「いいのかよ、俺も行って? 向こうに何も言ってないのに」

「いーのいーの。向こうの指揮官さん、すっごくいい人だから。挨拶したくらいだけど、プリン用意してくれたし!」

「お前の判断基準プリンかよ」

 信用ならないが、話を聞けば、突然現れたネプテューヌ達に対して笑顔で部屋を用意してくれたとのこと。それを聞く限りでは仏のような指揮官だ。一応世話になっている身分、こちらも挨拶くらいはしておくべきだろうか。

 

「まぁ、そこまで言うなら俺もついていってやるが……」

「やったー! ありがとうエヌラス! じゃあ待ち合わせ時間過ぎてるから飛んでいくね!」

「テメェのスケジュール管理どうなって、ああああああぁぁぁぁ!!?」

「いってらっしゃーい」

 女神化したネプテューヌ、パープルハートに手を引かれてエヌラスはプラネタワーから飛んでいった。

 

 

 

 ブラックハート、グリーンハート、ホワイトハートの三人と共にアズールレーン世界へ繋がるという次元の入り口を通過する。イストワールが管理しているというので安全だとは思うが……。

 

 ──抜けた先で、真っ先にエヌラスを待ち受けていたのは一面の海。大海原と突き抜けるような青い景観だった。

 青空と、青い海が地平線の彼方、水平線の彼方まで続いている。磯風と波しぶきの音を聞いて、遥か眼下に望む景色の中で水上を走る少女達の隊列を見た。こちらにまだ気づいていない。

 

「このまま母港まで行くわよ。エヌラス、しっかり掴まってて」

「あっ」

「あっ」

 言うのが遅かった。パープルハートの手から落ちたエヌラスが変神して飛行しようかとシェアクリスタルを取り出そうとするが──シェアがない。

 そのまま耐衝撃体勢で水柱を上げて海面に叩きつけられた。

 やってしまった、という顔でパープルハートが眉を寄せている。

 

「しまったわ……」

「貴方ね。こっちの世界に来たばかりの時のこと、もう忘れたの? 私も貴方もシェアがなくて変身できなくて困ってたじゃない」

「そうだったかしら? なんかノリと勢いでどうにかしてたくらいしか記憶にないわね」

「はぁ……とりあえず、エヌラスを引き上げて母港に急ぎましょ」

「そうですわね」

「だな。初っ端から濡れ鼠なんてついてねーな、エヌラスのやつも」

「ここは、やはりわたくしが連れて行くべきでは?」

「なに抜け駆けしようとしてるのよ。私が連れて行くわ」

「なんなら、あたしでもいいんだぜ?」

「ちょっと三人共。勝手なことを言わないでちょうだい、わたしが責任持って最後まで──」

 

「ごぼぼぼぼぼぼ…………」

 四人が言い合っている間に、エヌラスはなんとか海上に顔を出した。思い切り海水を飲んでしまって舌がひりつくような痛みを訴えて涙目になっている。

 そんなエヌラスを囲むようにして、少女たちが近くまで滑るようにして停まった。

 

「あの、大丈夫、ですか?」

「どこから……?」

「あ、あそこ見てください! ねぷねぷ達です! お~い、ねぷねぷ~!」

「俺を引き上げてくれ……」

 いっそのことここから泳いで母港まで行ってやろうか? エヌラスが血迷い始めた頃に、ようやく手を差し伸べられた。

 

「大丈夫か。私の手を取るといい」

「ああ、サンキュー……このまま泳いでいくところだった……」

「そ、それはすごい根性だな……」

 大きな弓を持った、銀髪の女性。肩には鷹が留まっている。しかし、一人では流石に厳しいのか大口径の砲台を背負った青い服の女性も手を貸した。

 

「災難でしたね。私達が母港まで護衛してさしあげます。それまで辛抱していただけますか?」

「願ったり叶ったりだ。もうあんな高度から海面に叩きつけられたくないからな……ありがとう、命の恩人」

「ふふ。大げさですね。申し遅れました。私はフッド」

「ヨークタウン型二番艦エンタープライズだ。母港近海の巡回も兼ねての出港だったのだが、思いの外早い帰還になりそうだ」

「迷惑掛けてごめんな……」

「お気になさらず」

 淑女らしく、やんわりとした微笑みを向けてエンタープライズとフッドの二人に連れられてエヌラスはネプテューヌ達が世話になったという母港へと向かう。その間、パープルハート達は久しぶりに出会った綾波やジャベリン、ラフィーと談笑していた。お前のせいだぞ、お前の。

 

 

 

 早々に母港へ帰還することとなったエンタープライズの率いる艦隊はすぐに他の仲間達に囲まれた。というのも、ネプテューヌ達が来たからである。

 元から人気者だったらしい女神達は再会からあっという間に溶け込んでいた。

 その一方で、頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れとなったエヌラス。黒髪、ツリ目に血のような赤い瞳。加えて左目に刀傷の黒スーツ。少々近寄りがたい風貌の成人男性だが、ハンカチを差し出してフッドが顔を拭っていた。

 

「ここの艦隊の指揮官に挨拶したいんだが……」

「その前に服を乾かさないと、風邪を引いてしまいますよ?」

「いや、服はいいんだ。すぐに乾燥させられるから。少し離れてくれ」

 フッドが二歩下がり、エヌラスは右手の魔術刻印を起動させて服を払う。そうすると、一瞬のうちにスーツの水分が蒸発して乾燥する。全身から霧を噴き出したかと思えば、元通りだ。ついでに前髪もかき上げて邪魔にならない程度に散らしておく。やや左側を隠すように伸ばした髪をセットして、準備万端だ。

 

「これでいいか?」

「……驚きました。まるで魔法のようですね」

「ああ。手品のようだ」

「いやぁ、ははは……まぁ」

 まるで、というか。まんま魔法なのだが。あんまり使うべきではないだろう。異文化コミュニケーションにも限度がある。

 

「しかし、母港近海の巡回が必要なほど危険なのか?」

「いや、そこまでの脅威は無い。散歩のようなものだ」

「散歩に戦艦と空母ってとんでもない燃費だな……」

 軍関係の知識はある程度備えているエヌラスは、二人の武装を見てそう判断した。それは当たっていたらしい。

 話を弾ませているネプテューヌ達の邪魔をするのも悪い。こちらで挨拶を済ませてしまおう、そう考えていたエヌラスの目に留まったのは、一人のメイドを引き連れた白い水兵服の青年だった。

 

 軍帽を外し、耳に掛からない程度に短く切り揃えた黒髪のショートヘアの男性は恐らくは成人済み。温和そうな顔立ちの男性はやや下がった目尻に、少しだけ幼さを残していた。

 

「おかえり、エンタープライズ。フッドも。巡回の方は途中で切り上げたんだって? なにかあったのかい?」

「指揮官。ただいま戻りました」

「無事で何より。それにしてもこの騒ぎ……ああ、ネプテューヌちゃん達か。納得」

 うんうん、としきりに頷き、指揮官と呼ばれた責任者は軍帽をかぶり直してエヌラスと向かい合う。背丈はやや低い程度。身長は恐らく一般的な数値の誤差といったところ。

 

「それで、貴方は?」

「女神様のお知り合いです。連れてこられました。お世話になったらしいので挨拶にでも、と」

「なるほどなるほど。いやぁ、その折はこちらも大変お世話になりました。固くならなくていいですよ。あっはっは、あの時は大変だったなー」

 朗らかに笑って済ませるが、隣のメイドの顔が少しだけ呆れていた。その様子から当時の苦労が窺える。

 

「おっと、自己紹介が遅れた。俺はエヌラス」

「ボクはー……まぁ、指揮官とでも呼んでください。みんなそう呼んでくれますし」

「そうか。それじゃ、よろしくな指揮官」

「よろしく。エヌラスさん。男の人が来てくれたのは多分史上初じゃないかな。いやー嬉しいなぁほんと嬉しいなぁ。そうだ、ベルファスト。早速おもてなしの用意を」

「かしこまりました、ご主人様」

「ボクはいつもどおりで。エヌラスさんは何か飲まれます? コーヒーから紅茶まで、何ならウイスキーにワインに、ビールとアルコールも多数取り揃えてますよ」

「流石に昼間から酒は呑まないな……じゃあ、紅茶で」

「すぐにご用意致します。どちらまで」

「執務室でよろしく。それでは、我が母港をご案内します──ようこそ、我が海戦(ロマン)の最前線へ」

 

 

 

 

 指揮官に案内されたのは、大食堂に講義室。道すがらに購買部。艦船達の寮舎。それからすぐに執務室へエヌラスは案内された。

 ネプテューヌは駆逐艦や軽巡洋艦達と一緒に遊び始め、ノワールは重巡洋艦達と何やら真面目な話をしている。ブランは図書室へ、ベールは空母の待機室……もといゲーム部屋へそれぞれ思い思いの行動をしていた。それに関してエヌラスは大丈夫なのか、と尋ねる。

 

「うん? 勝手知ったる人の家。ボクとしてはみんなと交流を深めてくれていたらそれでいいよ」

「指揮官。あんた聖人かなんかか?」

「顔のせいか成人済みかよく聞かれるんだよね。困ったなぁ、これでも健全な成人男性なんだけれども」

「失礼いたします、ご主人様。お茶のご用意ができました」

「早いな!?」

「メイド長としてこれくらいは朝飯前です。それとこちらは焼き立てのスコーンです。よろしければ」

「助かるよ、ちょうど小腹が空いていたんだ」

 まるでタイミングを見計らっていたかのようにベルファストが紅茶とスコーンを運んできた。執務机の書類を簡単に片付けてから、入れ替わりで手渡す。

 

「それじゃあ今度はコレを明石によろしく」

「かしこまりました。それではごゆっくり」

 会釈すると、胸元の開いたメイド服からこぼれ落ちそうな胸の谷間が覗いた。首から垂れた鎖も相まって何とも艶めかしい雰囲気だが、それを気にさせないほどの瀟洒な立ち振舞。軽やかな足取りで執務室を後にする。

 

「さて、それじゃあせっかく用意してもらったんだし美味しくいただこうかな。エヌラスさんもどうぞどうぞ、くつろいでください」

「それじゃあ遠慮なく。ぐでぇ」

「あっはっは、良いリラックスぶり。それじゃあボクも。ぐでぇ~」

 ソファーに腰を下ろしたエヌラスが肩の力を抜いてリラックスする。それに倣って、指揮官もまた執務机に突っ伏しながらスコーンを頬張った。行儀が悪い、なんて叱る艦船も此処にはいない。

 執務室に来るまで数え切れないほどの少女たちとすれ違った。笑顔で挨拶をする指揮官の苦労なんて測りきれるものではない。どれほどの激務に普段から追われているのか。付け加えてネプテューヌ達女神の面倒も見てくれたとあれば、こちらも何か礼の一つしなければ割に合わない。

 ベルファストの淹れてくれた紅茶を一口含む。上品な味わいに仕上がった茶葉に、スコーンにも手を伸ばす。くどくない甘みに、程よい熱さが紅茶を進ませる。

 

「気に入ってもらえました?」

「そりゃもう。ホント美味しいな、この紅茶もスコーンも……」

「ベルファストはうちの艦隊随一のメイドですからね」

「……やっぱり戦闘も?」

「ええ当然」

 戦闘も家事もこなしてこそメイドの務めとベルファストは言う。さすが一流のメイドは言うことが違う。見習え我が家のダメイド一号二号。エヌラスは感心しながら紅茶を空にした。

 

「さて、十分にくつろがせていただいたところで。少々折り入って話が」

「ボクに出来る範囲でよければ聞きますよ。こう見えて結構融通が聞く艦隊なので、ええ。自慢ですとも、ふふん」

「なにか俺に手伝えることはないかな、と」

「……いいんですか?」

「ネプテューヌ達も世話になったみたいだし、窮地を救ってくれた恩人ということで。女神に代わって何か恩返しをと」

「とんでもない。女神様達にはボクも大変助けられました、恩返しなんてそんな」

「そうは言われてもねぇ……」

 外から聞こえてくる「ねぷねぷ音頭」のはしゃぎっぷりときたらちょっとしたお祭り状態だ。このままでは午後の艦隊運用にも支障をきたすのではないかと思われる。

 

「ちなみに午後の予定は?」

「出撃予定でしたけど、まぁ後日でいいかな。今日はお休みで」

 そんなんでいいのか艦隊運用。適当過ぎないか指揮官。どれだけ心が広いんだ。この水平線ばりに懐が深くないか。それぐらいでなければ笑って流して事は無しなんて言えないのだろう。まさに菩薩のような指揮官だ。

 

「それじゃあ艦隊に休暇の通達をしますので……そろそろか」

 指揮官は懐中時計を取り出すと、時間を確認して頷く。視線をドアに向けると同時に三回ノックから、再びベルファストが執務室へと入室した。

 

「お待たせしました、ご主人様。紅茶のおかわりをご用意させていただきました」

「流石、時間どおり。ベルファスト、今日の出撃は中止。全艦に半休だと伝えてもらえるかな」

「ええ。かしこまりました、ではそのように伝えて参ります」

「メイド使いが荒くていつもゴメンよ」

「お気になさらないでください。主に仕えるはメイドの本懐でございます。何なりとお申し付けくださいませ、ご主人様」

「本当に助かるよ。……どうかしましたか、エヌラスさん?」

「どこか痛みますか?」

 目頭を押さえ、俯いていたエヌラスが首を横に振る。

 

「いや……そうだよな。メイドって本来こうあるべきのが正しい姿ってのを見せつけられて、なんだかこう、目が熱くなってきただけだ……気にしないでくれ」

「は、はぁ……そうですか。体調不良の際はお申し付けくださいませ」

「よくわかりませんが、エヌラスさんも苦労してるんですね」

 身内の苦労など他人には推して計れるものでもない。ベルファストの紅茶で涙を飲み干す。

 かくして──エヌラスは指揮官の運営する母港でネプテューヌ達共々世話になることとなった。

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