超次元ロマン海域アズールねぷーん   作:アメリカ兎

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カムバックキャンペーン女神様

 

「やっほーみんなー! たっだいまー、いつも笑顔でニコニコ。貴方の隣にネプテューヌ!!」

「おう、よく来たなネプテューヌ」

「おーエヌラス。よかったー元気そうで」

 ゲイムギョウ界に戻っていたネプテューヌ達が再び母港へと訪れていた。というのも彼女たちは女神である以上、本業はどうしてもそちらになる。

 エヌラスは頭を鷲掴みにすると、腕を振り上げた。

 

「テメェ俺を置いて帰ったことは忘れねぇからなぁぁぁぁぁああああっ!!!!」

「ねぇぇぷぅぅぅぅうううううっ────………………!!!」

「ああ、ねぷねぷが凄い飛んでいっちゃった!?」

 通りすがりのジャベリンに犯行現場を目撃されたが、投げ飛ばされたネプテューヌが青空に向かっていき、地球の重力に従って放物線を描きながら落下していき……海面に着水。水柱があがった場所は安全海域を示すブイを越えている。

 新記録達成にエヌラスは右腕を掲げて勝者のガッツポーズ。なにと戦っているんだいったい。

 

「おはようジャベリン、お前も飛ぶか?」

「え、えぇー。ジャベリンは遠慮しておきます……」

「そうか。残念だ」

「なんでですか!?」

 泳いで戻ってきたネプテューヌはずぶ濡れになっていた。

 

「もぉ~、いくら再会できたのが嬉しいからってわたしを投げるのはどうかと思うよ!? そこのところどうなのさ!」

「お、そうだな」

「でしょー? ほら、わたし悪くないよね! どやぁ」

「だがそれはそれとしてよくも置いていきやがったなテメェェェェ!!!!」

「ねぷぅぅぅううううう────!?!?」

「わー、ねぷねぷよく飛びますねー」

 

 ──二度目の新記録達成にベールとブランから拍手が送られた。ありがとう。……なんの?

 

 

 

 指揮官と挨拶を交わした女神達は早速思い思いの行動を起こす。ベールはリーンボックス特産の茶葉を渡し、真っ先にゲーム部屋へ向かっていた。ブランは借りていた小説の返却と、ルウィーから持ってきたラノベの贈呈。ノワールはラステイション海軍から譲ってもらったレトルトカレー。

 ネプテューヌは「ねぷのプリン(手書き)」をプラネテューヌからわざわざ持ってきてくれた。それらを受け取り指揮官が頭を下げている。

 

「いやぁすいませんねぇいつもいつも」

「いえいえ、とんでもありませんわ。わたくし達もいつもお世話になっておりますもの」

「そんな、こちらこそお世話になってますし」

 

「……なにあの、ご近所付き合いのおじちゃんおばちゃんみたいなの」

「オジ……!?」

「オバ……!?」

 二人がブランの言葉に少なからぬショックを受けていた。落ち込む指揮官とベールはともかくとして、本日も母港の運営は通常営業。

 エヌラスは朝から工廠で明石と艤装の初歩的な整備と点検の実技演習。出撃に備えての燃料と弾薬の補充。遠征に出る子達の装備も一緒に点検しておく。チェック担当者は全部明石の名前にしておいた。海軍上層部に提出する書類に名前を記載するわけにはいかない。

 

 

 

 ──ベールがロングアイランドのいるゲーム部屋に入ると、いつものごろ寝スタイルで動画を漁っていたようだ。

 

「お邪魔しますわよ~?」

「おや? いらっしゃ~い」

「ふふ、相変わらずの自堕落っぷりですわねロングアイランドさん。今は何を?」

「動画を観てたんだよ~」

「どれどれ……」

 画面を覗き込むと、だいぶ古い動画のようだ。FPSのプレイ動画のようだが、動画撮影者の腕前も中々の熟練者である。中の上、といったところだ。まだまだ警戒心の浅いところや気を抜いた動きなどが見られる。しかしプレイング自体は丁寧で判断も的確だ。

 

「悪くない動きですわね。ですが少々荒削りといったところでしょうか」

「あ、違うの~。ほら、ここ。このスコア見て」

「……!?」

 ロングアイランドが画面を一時停止する。動画投稿者の敵チーム、成績トップ。キルレートが一人だけずば抜けている。ゲーム内での階級も最高ランクに位置している。

 

「良い腕前をしてますわね。ですが」

「いーい? この試合の~次が凄いのぉ」

 カチカチと試合終了までシークバーを動かし、次の試合開始から再生する。ロングアイランドの言葉に、ベールも画面に食い入るように見つめていた。

 試合風景を眺めながら眉を寄せる。

 

「こちらの動画をどうして観ていたんですの?」

「この試合、伝説の百人キルが起きる瞬間を撮った試合なんだ~。さっきの人が動画に映ってたのコレしか見つからなくて」

「百……?」

 動画投稿者のボイスチャットが何やら叫んでいた。拠点を制圧していた味方が目の前で一人、また一人と倒れていく。物陰に隠れて制圧していたがヘッドショットで倒されてしまった。それから相手が見計らったように拠点を奪い返す。

 結局その試合は拠点の差とキルデスが決定的な差を生み出し、それが埋まることはなかった。試合終了後に出る戦績で、相手のトップに輝く100キルノーデス。動画投稿者もその奮闘ぶりに画面の前で拍手を送り、チャットでそれを褒め称えていた。

 

「アレだけの腕前を持っていながら、どうして動画がこちらだけですの?」

「うーんと、その人垢BANされたらしいの~。この試合のせいでチートを使ってた疑惑とかぁ、他にも口コミで色んな人から情報を集めたら……」

 ヘッドショットを外さない死神。サイドアーム一つで分隊を壊滅させた。狙撃で戦闘機を落とす──眉唾なものから実際に可能とされる動きまで様々な噂が飛び交っていたそうだ。特に印象深いのが、常に分隊に所属しないという。戦場にふらりと現れては圧倒的なキルレートを叩き出して消える亡霊の死神(グリムゴースト)

 プレイヤー名『solo_caust』は、その数年前の動画を最後にゲーム業界から姿を消した……。今となってはその伝説の活躍が映されたこの動画だけに生きている。

 

「なんか、開発したゲーム会社の関係者とかぁ。世界大会への招待とかも断ったとかの噂もあるんだぁ~。えっとーどれだったかな~……? あった、これこれ」

「ふむふむ……」

 試合開始前の挨拶に、ソロコーストと思われるアカウント所持者に招待の手紙を送ったことと今回の大会参加を丁重に断られたものの、成功を祈る手紙。その報告を〆に世界大会が始まった。

 

「それだけ有名なプレイヤーの方なら、他にも動画があるはずですわよ」

「う~ん、それがねぇ~。なんか当時は色々不評とかもあったみたいで……チート野郎が映ってる~とかでね削除祭りだったの。この人のは多分、よく動画投稿してるからじゃないかな? 有名な人だし」

「動画タイトルもよく見ると「legend 100」ですわね……」

 この一本だけはまったくの偶然で撮れたもののようだ。動画紹介文も、伝説の最後と大仰な言葉が並べられている。コメントも批判的な物が多く、しかし動画投稿者は追記でホンモノであったと主張していた。彼こそは生ける伝説だったと。

 動画投稿者自身はいまだ最新作をプレイしているようで動画を現在も投稿している。きっとまたいつか戦場で出会えると信じてゲームを続けているのだろう。

 

「私もちょっとでも女神様に近付こうとしてて動画見てたら思い出したんだぁ」

「わたくしも一度、お手合わせ願いたいものですわね。それも叶いそうはありませんが」

「いつか見てみたいなぁ、ホンモノの死神……あ、ロングアイランドさんは幽霊だった……あぶないあぶない……それに出撃前にこんなこと言ってたらみんな不安がっちゃう……お口チャックしなきゃ……」

「あら、本日は出撃ですのね」

「そうなの~。今日は遠征任務に出なきゃなんだ~」

 大きめなシャツ一枚で寝転がって動画を観ていたロングアイランドだったが、出撃のための準備があると言ってゲーム部屋を後にしていた。今日は夕張も工廠で明石と実験があるとかで不在だ。ゲーム部屋に取り残されたベールは興味本位でパソコンの前に座り、亡霊の死神についてネットで検索する。

 世界大会未参加であるが、開発元が検証したデータによればトップランクキルレートを維持していた。最も多く使用していた武器は狙撃銃とハンドガン。しかも初期装備。ストイックなプレイスタイルであり、チームと連携を取る気が全く無い。廃ゲーマーであるベールとしては興味が湧いて仕方がなかった。

 匿名掲示板でその人物について書き込みしてみる。すると、賛否両論の話から海外からの書き込みまで雪崩込んできて軽く炎上した。

 

『彼と戦ってみたいと思いますか?』

「……さて、どう反応されますかしら」

 すると、賛成が大半。反対が少数意見だった。チートを使ってでも戦いたいと言う過激な意見まで出てきている。特定のコミュニティに所属することもなく、個人チャットなどにも参加したことがなく、ただひたすら自分のプレイングを極めることにのみ没頭していた亡霊。当時のプレイヤー情報を覗いた画像が添付された。ベールが開いてみると、何の変哲もない画像だが、明らかに初期装備だが不釣り合いなほどキルレートが高い。

 ベールはその画像を貼った人物に感謝しながら、チャットを閉じた。

 

「……わたくしのゲーマー魂に火が点いてしまいましたわ。こうなれば、今度はわたくしが伝説を越えてみせますわよ!」

 ヘッドフォン、良し。飲み物、良し。マウス、良し。キーボード、良し。ポテチ、良し。エナドリ、良し。準備万端、モニターの前に陣取り、ベールはFPSの世界へとダイブする。

 

 

 

 ノワールが重巡洋艦と挨拶を交わしながら母港を歩いていると、いつもに比べてテンションが低い鉄血の制服を見かけた。

 

「あら、どうしたのよプリンツ。今日は具合悪そうね?」

「……ん? ああ、女神様じゃない。戻ってきてたの? おかえりなさい」

「ええ。珍しいわね、貴方がそんな調子だなんて」

「ちょっと飲みすぎちゃって……」

 いつもの軽口を叩く余裕も無いのか、頭を押さえている。二日酔いだろうか。そこへ、高雄と愛宕の二人が通り掛かる。

 

「あら、女神様。こんにちは~」

「こんにちは、二人とも」

「鉄血のも一緒か。調子が悪そうだが、如何された?」

「ただの飲み過ぎよ。気にしないで」

「珍しいわねぇ、あの鉄血がハメを外して二日酔いだなんて。静かに程々、という感じなのに」

 どんちゃん騒ぎとは程遠いイメージがあったが、こんな姿を見せるのかと愛宕は不思議がっていた。プリンツ・オイゲンもそれは反省しているのか少しだけ不機嫌そうに眉をつり上げる。

 

「悪い? そんな日もあるのよ」

「別に悪いなんて言ってないわ。でもそんな飲み方をするなんて、よっぽど美味しいお酒だったか……それとも、飲まなきゃいけなかった理由でもあるとか?」

「…………」

 ──脳裏に浮かぶ飲み比べ。ネクタイを外し、ボタンを弛めた補佐官とグラスをテーブルに叩きつけてひたすら酒を飲んでいた。挑発されたものだから、らしくもなく躍起になって飲んでいた事を思い出す。

 

「私から言えるのは、あの補佐官と飲み比べだけは辞めておいた方がいいわよ。とだけ」

「酒豪、なのか?」

「そんなレベルじゃないわ。なんていうか……胃袋が宇宙にでも繋がってるんじゃないかって疑いたくなるほどよ」

「そ、それほど……?」

 ノワールには心当たりしかない。なんというか、こと食事に関して名状しがたい化物のような食欲を誇るのがエヌラスだ。それで腹を壊したことがないのだからつくづく驚かされる。

 女神に向けられる視線に、なんと答えるべきか。とりあえず本当の事を言っておく。

 

「プリンツは身をもって知ったでしょ? 長生きしたかったらアレと食べ物関連で近づかない方がいいわよ」

「そうするわ。はぁ……お酒を飲んで、ベッドに運ばれてからの記憶がないのよねぇ……」

「あら~……」

「なん……!?」

「────エヌラスは確か工廠だったわね?」

 引き止める暇もなくノワールはダッシュで工廠へ向かった。その後姿を見送ってから、プリンツ・オイゲンは身体を伸ばす。

 

「……それで真相は?」

「別に? そのまんまの意味よ。ま、レーベ達が言うにはベッドに運んでからすぐに自分の部屋に帰ったらしいけれども」

「相変わらず意地の悪い性格だ」

「ごめんなさいね、性分なの。つい、からかうのが楽しくて」

「補佐官殿も災難なことだ」

 工廠の方角から明石の悲鳴と爆発音と甲高い金属音と補佐官の絶叫が聞こえてくるが、大丈夫だろうか?

 

 

 

 ネプテューヌが母港を歩いていると、白いマントが目に入った。

 

「やっほー、クリーブランドー!」

「お、ネプテューヌじゃないか! 戻ってきてたんだな。こっちは相変わらずだ」

 モントピリアも一緒にいたが、軽い会釈だけに留まる。

 

「とぅ!」

「おっとっと、なんだ、どうしたんだ抱きついてきたりしてー? スキンシップか? なら私も負けてないぞ、お返しだ」

「あははは、くすぐったいじゃーん」

 白いケープの中に潜り込んでしがみつくネプテューヌの頭をワシャワシャと撫でながらじゃれつく二人。

 

「……姉貴、今日は出撃じゃなかった?」

「へ? ああそうだった。今日は遠征班だったな、私」

「そうなの?」

「ああ。なんかロイヤルネイビーが大規模合同演習をするから、そのための燃料と弾薬が必要らしいからかき集めなきゃいけないんだ」

「そっかー、そうなんだぁ。どんな事をするの?」

「それは私達も知らされてない。指揮官か、ロイヤルの子達に聞かないと」

「ってわけで、悪いけどコミュニケーションはここまでだ。戻ってきたらまたやろうな」

「うん、いってらっしゃーい!」

 ネプテューヌは手を振って二人を見送る。

 

 ロイヤルネイビーの予定している演習の情報を集めてみようと母港を走るが、廊下で誰かとぶつかってしまった。バラバラと床に散らばる金品の数々に目が眩みながらも立ち上がる。

 

「いったぁい!? あたたた……んもー、前見て走らないと危ないじゃんかー」

「ぶつかってきたのはそちらなのに……えっと、メガネ……あ、あれ? キラキラしててよく見えない……」

「あ、エバラ」

「エディンバラです! なんか肉の部位みたいに言わないでください!」

「うーん、お肉っていうか。タレ? はいメガネ。これでしょ?」

「ありがとうございます。ふぅ……あ、女神っぽくない方の女神様じゃないですか」

「女神っぽくない方の!? なにそれ初耳!?」

 ぶつかった相手は大きな丸メガネを掛けたエディンバラ。ベルファストの姉だが、出来すぎた妹の妹らしくない立ち振舞にちょっぴり不満がある不遇な姉である。スカートの中に金品を隠していることがあるらしく、ネプテューヌは落とした宝石やネックレスを拾い上げた。

 

「金銀財宝がザックザクー、どこから持ってきたの?」

「これは隠し財産のようなものなんです、万が一に備えての……っていいから拾うの手伝ってください。こんなのベルに見つかったらまた怒られちゃう」

「うーん、おかしいなぁ。エディンバラの方が姉なのに姉っぽくないの。わたしとしてはものすっごく親近感が湧くっていうか、身近に感じるというか」

「うぅ……そうなんですぅ。事あるごとに逐一確認を取ってくるのよアイツ。妹なのに妹っぽくないっていうか、私の方が姉なのにまるで「エディンバラ級ネームシップのベルファスト」みたいな扱いされてて……」

「うんうん、わかるわかる。わたしの方が立場が上のはずなのにいつの間にか尻に敷かれてたり身の回りのお世話されてたり……ま、楽が出来るからいいんだけどねー!」

 せっせとスカートの裏地に金品を隠すエディンバラもうんうんと何度も頷きながらネプテューヌの話に耳を傾けている。

 身の上苦労話で盛り上がっている間に拾い終わって立ち上がった二人はそのまま廊下を並んで歩き出す。

 

「あ、そうだ」

「唐突ですね」

「ねね、エディンバラ。ロイヤル艦隊が予定してる演習ってどんなの?」

「それはですね──きゃっ!?」

「ねぷっ!?」

 よそ見をしていたネプテューヌとエディンバラが再び誰かとぶつかって尻もちをついた。

 

「イタタ……もう、今日はよくぶつかる日……でもメガネは落とさなかったし」

「あら、姉さん。このようなところで油を売っていてどうされました?」

「……誰かと思えば、女神っぽくない方の女神様」

「あ、ベルファストとシェフィーだ。やっほー。今ちょうど話をしてたところなんだー」

 その横でサッと顔が青ざめるメガネのメイドが約一名。興味深そうな表情を浮かべてから、満面の笑みを浮かべてベルファストが頭を下げた。シェフィールドはいつものジト目で見つめている。

 

「それはそれは、どのようなことでしょうか?」

「あ、あわわわ……あ、あのネプテューヌさん、ソレ以上は……」

「……ん? ベルファスト、床を見て」

「あら、これは……」

「──あ、終わった」

 ぶつかった際に落とした金品が、廊下に幾つか落ちていた。それを拾い上げて見つめるベルファストの視線が姉に向けられている。

 あくまでも、笑顔で。

 

「少々お話がございます。よろしいでしょうか?」

「え、えぇ!? ほら私母港のお掃除とか陛下のお茶とか」

「シェフィールド、お任せします」

「任せて」

 そそくさと業務を引き継いで立ち去るシェフィールド。まるで取り決めていたかのようなスムーズな動きにネプテューヌはポカンと口を開けていた。そして、金品をポケットにしまいこんでベルファストがエディンバラの肩を掴む。

 

「では、姉さん? お話をお伺いさせていただきますね」

「ひ、ひぇぇぇ……!!」

「……あ、あー……行っちゃった……うーん、こうなるともうわたしからは、ドンマイとしか言えないね! プリン買ってきておいたからあとで食べてね、エバラ!」

「お心遣いは嬉しいんですけど助けてくれるともっと嬉しいですぅ~!」

 ──その後、エディンバラの姿を見たものはいない。

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