超次元ロマン海域アズールねぷーん   作:アメリカ兎

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新人歓迎会は盛大に

「エヌラス。熊を仕留めたとお聞きしましたが、本当でしょうか?」

「首の骨へし折ってやった」

 ベールからの質問に、エヌラスはあっけらかんと答えた。ゲイムギョウ界の女神様も少々信じられないといった面持ちで困惑している。

 

「アナタを野放しにしておくと危険っていうのを再認識しているところよ……」

「そうね。雪国のルウィーでもクマは出てくるけど……」

「プラネテューヌじゃ滅多に見かけないけどなー」

「リーンボックスでも出ますわね。グリズリーですけど」

「九龍アマルガムに出てくる殺人熊の話したっけ?」

 聞きたくない。ネプテューヌ達は全力で首を横に振った。

 食堂で雑談をしていたところへ、指揮官が顔を覗かせる。母港の見回りも兼ねて、休憩中のようだ。デスクワークで腰を痛めないようにこうして身体を動かして対策している。

 

「補佐官殿。熊を仕留めたとか。ベルファストが珍しく本気で困惑してましたよ。いやぁ良いものが見れました」

「おう、指揮官。なに、あれくらいだったら朝飯前だ。俺の故郷に出てきた殺人熊に比べれば」

「もしかして人外魔境の生まれですか?」

「うん? いや塵骸魔京なら近場だったが」

「え?」

「え?」

「……その、殺人熊ってのはあれですか? 人里に降りてきた熊、とかですかね」

「ああ。街に現れた熊だ。いやぁ、サイバネマフィアが十数人掛かりでも討伐できなかったとか聞いた時は冷や汗物だったなー」

「え?」

「え?」

 ちょくちょく聞き慣れない単語が出てくるが、指揮官は深く考えないことにした。

 

「討伐したんですよね」

「ああ。最後は腹をぶち抜いた」

「戦車とかですか?」

「拳」

「拳で」

 間の抜けた顔で女神たちに視線を向けると、無言で顔を横に振る。言うだけ無駄だ、諦めろ。考えるな感じろ──まるでそんなことを言いたげに。指揮官は少しだけ考えて、思考を放棄した。

 

「まぁ補佐官殿ですし、それくらいやりますよね」

「ははは。やったの俺の師匠だけどな」

「はい?」

 この人の上がいるのか。指揮官の頬が引きつった。

 

「大丈夫ですか? その人生まれる世界間違えてませんか?」

「少なくとも常識と良識を期待するだけ無駄なことは明白だな」

「…………」

「俺の師匠のことはいいや。それで、歓迎会の準備は進んでるのか?」

「あ、はい。順調みたいですよ。ただ補佐官殿が仕留めた熊を見てクイーン・エリザベスが半泣きになってましたけど」

「なんでや」

「当然ね……」

 熊を見る機会なんて早々ない。物珍しさから写真撮影とかしている子達もいる。明石がクレーン車引っ張り出して宙吊りにしているが、二メートルを超えている姿には山の幸希望と言い出しっぺのクイーンエリザベスも泣きそうになっていた。

 

「そういえば。もう一隻、潜水艦が着任予定なんですけれども遅れるらしいんですよね」

「へぇ。またなんか問題でもあったのか?」

「さぁー? ボクとしては戦力が増えるのは嬉しいので、無事に到着してくれれば」

「あ。その話題で思い出した。指揮官、明石のプレゼントってなんだったの?」

 配給会社のトラブル発生で遅れた例のアレ。ボイコットにまで発達した問題のプレゼント。ネプテューヌが興味津々といった様子で尋ねると指揮官は頬を掻きながら視線を逸らしている。

 

「大したものじゃないんですけどね。明石が以前から欲しいと言っていた工具一式なんです」

「あー。それで最近真面目に働いてるのかアイツ」

「そうなんですか? 明石はいつも真面目だと思いますけど」

 それはお前の前だと猫をかぶっているからだぞ? 補佐官が知っている限りでは、ドックの中で目を盗んで怪しげな事をしている。仕事の邪魔にならなければなんでもいいのだが。

 

「以前カタログを広げて目を輝かせて欲しいにゃー欲しいにゃーと言ってたんですけれど、当時はちょっとお財布事情が寂しかったので」

「指揮官様は優しいですわね」

「明石にはいつもお世話になってるので少しくらいは」

「いーなぁー。ねぇねぇ指揮官、わたしにもなにかないのー?」

「こら、ネプテューヌ」

「そうですねぇ。ロイヤル艦隊の実施する大規模戦術演習で良い成績出したら考えておきます」

「ホント!? よーし、頑張るぞー!」

 ネプテューヌ以外が一斉にため息をついた。これだから女神らしくない女神様は。

 

 

 

 そして、大鳳とエセックスの歓迎会が開かれる。今回はロイヤルネイビーのクイーン・エリザベスから大規模演習の詳細も発表される。

 エンタープライズとは顔なじみなのか、二人で談笑していた。大鳳はと言うと、重桜艦隊で赤城とニコニコ笑いながら話をしている。笑っているが寒気が走った。絶対にお近づきになりたくない空母だ。というかなにか、重桜の空母は頭がやべぇのしかいねぇのか。そんな事を考えながらエヌラスがテーブルの料理に手を伸ばしていると、男装姿のクリーブランドに肩を叩かれた。

 

「よっ、補佐官」

「もぐー」

「ココ最近、パーティを開きすぎな気もするんだけどな」

「俺は別に太らないからいいが」

「私達はどうなんだろう。まぁいいか。折角美味しい料理が並べられてるんだし、食べなきゃ損だしな」

「……しかし、なんで男装姿なんだ?」

「それを私に聞かれても困るんだよな……いやいいんだけどさ」

「似合ってるぞ」

「はは、ありがとう」

 素直に褒めると嬉しそうに笑いながら小皿にサラダを取り分けている。そこへ、モントピリアが歩み寄ってきた。軽い会釈をして、クリーブランドの隣に並ぶ。

 

「姉貴、あとで写真撮ってもいい?」

「ん? もちろんだ」

「一緒に写りたいんだけど」

「全然かまわないよ。何なら全員呼んで写真撮影だ。補佐官は?」

「遠慮しとく。撮る側ならいいが、写るのは苦手なんだ」

 なんで?という顔をする二人にエヌラスは自分の左目を指した。

 

「こんな面の男が、仲良し姉妹に交ざるだけで一気に不穏な写真になるぞ」

「……確かに」

「私は気にしないぞ?」

「あと俺は写真写り悪い。よく変なの写るから止めておけ」

 お祓いでもしなきゃまともな写真なんて撮れない。よく背後に女性の霊が映ったり、馴れ馴れしく人と肩を組んでいる男性の幽霊だったりとパターンは豊富だ。今度片っ端から除霊してやろうか物理的に。

 エヌラスがテーブルの料理を物色していると、新しく着任したエセックスが近かったので声を掛けてみた。

 

「よ、エセックス」

「あ……どうも。指揮官から話は聞いてました。補佐官がいる、と。貴方ですね?」

「エヌラスだ。これからよろしくな」

「はい。こちらこそ」

 軽く握手をして挨拶を交わし、少しだけ話をする。次の大規模演習の内容や、艦隊と上手く付き合っていけるかどうか。

 着任したばかりでまだ分からないが、エンタープライズが言うには、少しだけいい加減な指揮官だが前線指揮には期待してもいいと。あながち間違いじゃない。此処には一月ほどいるが、片付けができない以外は大体有能だ。

 ふと、会場の片隅を見るといーぐるちゃんともう一匹。見慣れない鷹が指揮官からご飯を貰って食べている。

 

「……なんか増えてる」

「片方は私の鷹なんだ。指揮官はいーぐるちゃんで手慣れているみたいだけど」

「おとなしそうで良い子だな。飼い主に似て」

 小さくエセックスが感謝の言葉を言っていた気がするが、エヌラスは聞こえないフリをした。

 

「そういえば、見慣れない子達がいるようだけど」

「ああ。守護女神達か」

「どうしてここに?」

「話すとちょっと長い。異次元からのお客様ってことでひとつ」

「…………なるほど?」

「案外、すんなりと納得するんだな」

「まぁ。セイレーンの実験場と呼ばれる鏡面海域というものがあるくらいだ。異次元から誰かが迷い込んできても不思議なことじゃない。貴方もその一人か」

「いや、俺は女神に拉致られた」

「……神隠しというものでは?」

 そうとも言う。というか今ちょっと聞き捨てならない単語が出てきた気がする。鏡面海域ってなんだ。エヌラスが尋ねようとして、エセックスはエンタープライズに呼ばれてしまった。そのまま離れていってしまう。

 セイレーンの脅威はどうも純粋な戦闘能力だけではないようだ。

 ふと会場を見渡してみて、鉄血の姿がどこにもないことに気がつく。

 

「ふむ……?」

 唐揚げを食べながら首を傾げていると、ベールが何か探している様子でこちらへ近づいてきていた。エヌラスに気がつくと、微笑んで柔らかい表情を浮かべる。

 

「あら、エヌラス」

「ベール。鉄血艦隊知らないか?」

「今回は不参加のようですわね。まぁ、元々あまり社交的な方たちではありませんでしたもの」

「そうか?」

「レーベちゃんやニーミちゃんは駆逐艦の子達と仲良くしてるのはよく見かけますが、他はあんまり見かけませんわね」

 言われてみれば、近寄りがたい雰囲気というか、そんな空気がある。戦術学園の方などで教師役などを務めているケルンやケーニヒスベルクなどもいる。カールスルーエはよくあちこち歩き回っているようだが、謎だ。

 鉄血のことだ。今回の歓迎会に興味が惹かれなかっただけだろう。そんな事を考えているエヌラスの顔をジッと見つめていたベールが顔に手を伸ばした。

 

「ん? なんだ、ベール」

「せっかくの歓迎会なのですし、もう少し身だしなみに気を使ってくださいまし?」

「そうは言われてもな」

「ヘアピンと、リボンでちゃんとまとめた方が男前が上がりますわよ?」

「上げてもなぁ……」

「まぁまぁそう言わずに」

 仕方なくエヌラスはスーツの内ポケットからヘアピンとリボンを取り出してベールに渡す。手櫛で前髪を整えて、刀傷を隠すように伸ばしていた左の前髪を留める。横髪も、耳を出すようにハーフアップで後ろにまとめてリボンでしっかり留めておく。ベールと同じような髪型になるが、顔立ちや髪質で印象や雰囲気が全く異なっていた。

 

「ふふ。とってもお似合いですわよ」

「そりゃどうも」

「……照れてるんですの?」

「自分でやる分にはいいが、他人にやってもらうと妙に恥ずかしい」

 前髪をかき上げながら、慣れない感覚にエヌラスが口をへの字に曲げている。ベールの顔を見れば、なにが面白いのか満面の笑みを浮かべていた。

 

「なんだよ」

「うふふ。別に大した事ではありませんわ。ただ、お世話をされて照れているエヌラスの姿が歳不相応に可愛らしいというだけですもの。お気になさらず」

「……気にするっつうの」

「あらあら、珍しい物が見れましたわ。ごちそうさま」

「~~、怒るぞ。ベール」

 口では言うが、決して手を上げないのを知ってか知らずかベールはまだ笑っている。

 

「さぁさ、もっと顔をよく見せてくださいませ♪」

「おい、やめ」

「そう恥ずかしがらずに。いいではありませんか」

 両手で頬を捕まえられて見つめ合うが、青い瞳に吸い込まれそうになるのを堪えて不意に視線を外した。それにつられてベールが顔を逸らすと、ノワールが不満そうな顔をして立っている。

 

「私のことは気にしないで続けたら?」

「見てたなら止めてくれよ、ノワール」

「あら。私の目には楽しそうに見えたから邪魔しなかったんだけどー?」

「ベールが楽しんでるだけだ」

「もぅ、ノワールったらもう少しくらいいいではありませんか」

「アナタのじゃないでしょ」

「ではノワールの、でしたかしら?」

「おーっと予期せぬ方向に舵を切るのは止めてくれ? 俺が悪かったから」

「「エヌラスは黙ってて」」

「ういっす……」

 もう勝手にしてくれ。エヌラスは睨み合うベールとノワールからそそくさと離れた。どうせ後で痛い目に遭うのは確定している。今だけでも至福の時間を味わいたい。

 食事の手を休めずにテーブルを回りながら話をしていると、今回の歓迎会の為に衣装を変えている子達をチラホラと見かける。話を聞いてみると、指揮官が以前購入してくれたものらしい。こうした衣装も全部明石が入荷しているようだ。買えるかどうかは指揮官次第。

 

 いつもの白いドレスから、青いドレスに着替えたイラストリアスが妹のユニコーンと一緒に微笑ましく歓迎会を満喫している姿に軽く手を振ってみる。それに気づいた二人が会釈した。

 

「補佐官様、こんばんわ」

「黒いおにいちゃん、こんばんわ」

「こんばんは。歓迎会、楽しんでるみたいだな」

「ええ。指揮官様はこういった催し物がお好きみたいですし」

「そういや事あるごとに宴会やってんな……」

 軍資金にも限りはあるだろうに、随分と大盤振る舞いなことで。基本的には貯蓄しているらしいが、こうした宴会で消費しているようだ。艦隊のストレス発散と交流を兼ねているのだろう。そうした面から指揮官の方針が窺えるが、評判は悪くないらしい。

 

「しかし最近ちょっと緩みすぎな気もする。俺から指揮官に言っておくか」

「そうですね。よろしくお願いします」

「……そういや、イラストリアス。そのドレスは」

「あ、ああ……これですか? 指揮官様が用意してくれた物だったので、今回は着ておこうと思いまして」

「呼んでくるか? せっかく着替えたんだ、見てもらいたいだろ」

「でも……」

 その指揮官は今、重桜の方で話をしていた。赤城と大鳳が火花を散らす中、隙を見て翔鶴が会話をしつつ、綾波が小皿を差し出している。身動きが出来るような状態ではなさそうだ。思慮深いイラストリアスには少々声をかけづらい状況だろう。邪魔をするのも気が引ける上に、空母としては一航戦達に一歩劣る。重桜艦隊の航空戦力は侮れない。

 

「できれば、そうですけれど。指揮官様のご迷惑に」

「よーし行ってくるか」

「あ、行っちゃった……」

 イラストリアスがやんわりと断ろうとしていたが、エヌラスは重桜艦隊に囲まれている指揮官のもとへまっすぐ近づいた。ぶっちゃけ逃げ出したい空気だ。あー近づきたくねぇ。

 

「おーい、指揮官」

「もぐもぐ……あ、補佐官殿。熊肉美味しいですよ?」

「マジで? 俺も貰っていいか?」

「どうぞどうぞ」

「熊肉が見当たらなくて探してたんだよ。こっちのテーブルだったのか」

「ええ。鍋とかは重桜の十八番ですからね」

「……その土鍋は?」

「明石の手作りです」

「アイツこんなの作ってたのか……」

 テーブル一つ丸ごと占領するような土鍋。中には具材が山盛り。当然仕留めた熊の肉も入っている。異文化交流における最大の難関である食文化が立ちはだかっていたが、エヌラスにはそんなことお構いなし。雑草食ってでも生き延びる男である。

 高雄がよそい、エヌラスに差し出した。

 

「仕留めた本人が口にせぬのは、良くないからな。出汁も染みて良い具合だ」

「ありがとな。そういや熊の右手は?」

「東煌艦隊が美味しく調理してすでに平らげた後だ」

「そうか。いただきまーす」

「山菜の天ぷらもあるわよぉ」

「むぐ? 誰が調理したんだ、これ? 随分と美味しいが」

「赤城や加賀です。ねー」

「うふふふ。将来指揮官様の台所を預かる身として、料理くらいはお手の物ですわ」

 その言葉に大鳳が反応したが、すぐに矛を収める。赤い着物を着ていたはずだが、今は真っ赤なドレスに着替えていた。

 

「大鳳のドレスは、もしかして指揮官が?」

「ええ。明石が用意してくれたものなのでついでに」

「ついででドレス買うのかよ。高そうだが」

「先行投資、ということで。ここはひとつ」

「ご安心ください指揮官様ぁ。この大鳳、ご信頼に背くようなことは一切しませんわぁ♪」

「期待してるよー」

 重桜の調理した和食を食べつつ、エヌラスは頃合いを見計らって指揮官を連れ出す。

 “まぁ補佐官なら”と気を許した重桜艦隊だったが、ユニオンやロイヤル艦隊と話をしている姿に少しだけ頬を膨らませつつも見守っていた。

 

 なんとか重桜艦隊から指揮官を連れ出すことに成功したエヌラスが、イラストリアスのもとへ戻ってくる。

 

「指揮官様」

「や、イラストリアス。ユニコーンも楽しんでる?」

「うん……おにいちゃん達が用意してくれたご飯、すごく美味しい」

「それはよかった。でもちょっと眠そうだね、ユニコーン」

「……ちょっと、眠いかも……でも、イラストリアスお姉ちゃんもいるし、ユニコーンまだだいじょうぶ、だよ……?」

「夜更かしは身体に悪いよー? ね、ほら」

「うん……」

 ペチン、と。エヌラスが指揮官の頭を軽く叩いた。なぜ叩かれたのか不思議そうな表情で振り返り、顎で指し示されたイラストリアスのドレスを見て、そこでようやく気づく。

 

「あ、あー。そのドレス。着てくれたんだ」

「はい。どうでしょうか?」

「いつも白いドレスだからね。青いのもすごく似合ってる」

「他には?」

「他ですか? えーと、イラストリアスはいつ見ても綺麗だから……」

「ていっ」

「おぅっふっっ……!!」

 指揮官のスネにローキックを入れて、しっかり肩を組んでエヌラスは鈍感な相手にも分かるようにしっかりと指した。

 

「いいかぁ指揮官? 今日のイラストリアスはドレスも着て、口紅も塗ってチークも入れて化粧もしっかり決めてこうしてパーティに来たってのにお前のその眼はなんだ? ん? アレか? 美人すぎて直視できねぇって言いたいのか、えぇこらぁ?」

「すいませんごめんなさいボクそういう女性用化粧品のこととか詳しく知らないんです語彙力低くて勘弁してください補佐官殿ぉぉぉ、うぉぉぉゴリラ力たけぇこの人ぉぉぉ……!!」

「ゴリラに謝れテメェ。見た目の割に慈悲深い生き物なんだぞパワーオブゴリラぁぁぁ!!」

 腕力任せのアームロックでイラストリアスに頭を下げさせて、エヌラスは拘束を解く。まったくこれだから指揮官は。

 

「いやーすまん、イラストリアス。連れてきた挙げ句にコレじゃ申し訳ねぇ」

「い、いえ補佐官様が気に病むようなことじゃないです。ほんとうに。連れてきてくれただけでも感謝していますよ?」

「指揮官はもうちょっと女性に対する理解を深めるべきだな。女所帯なんだから」

「いてて……逆に聞きますが補佐官はどうやって理解を深めたんですか?」

「…………その昔、俺は女性用下着売り場に連れて行かれたことがあってだな」

「すいませんでした! なんかごめんなさい!」

 遠い目をするエヌラスに、指揮官は何か申し訳ない気分でいっぱいになった。この人、過去に傷を負いすぎではなかろうか?

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