「全ての男女は星である」   作:右方

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「全ての男女は星である」

俗に言う超常黎明期と呼ばれる時代。ある巨悪とある男が争っていた。OFA、オールフォーワンと呼ばれる巨悪とその弟、ワン・フォー・オールと呼ばれる個性を持った男だ。

人のために個性を使い裏社会を支配していると宣う巨悪であるOFAを前に、そんなことは許せない、私利私欲で人を弄び、異能を扱うアンタには!と弟は叫ぶ。成る程、その姿は正に巨悪と戦うヒーローの姿だと言えよう。

しかし、ヒーローだ、巨悪だとそんなことはどうでもいい。彼らの所為で娘が死んだ。そこにあるのはその事実だけだ。幸せに暮らしていた娘に訪れた悲劇(運命)。そのような運命なぞ認めるものかよ。運命によって全てが翻弄されることなどあり得てはならない。

 

誰もが訪れる悲劇に仕方がなかったと嘆くことのない世界。奇跡や異能に頼らずに努力が成果となる世界。誰もが当たり前に憤り、疑問を持てる世界。そんな世界こそ正しい光景だ。

 

「個性」という異能が現れる前までは良かった。個性が現れる前は位相と位相が衝突するようなことは無かったと言うのに。ヒーローだのヴィランだのと名乗る塵芥どもはいつまでたっても進歩しない。誰も個性とは何かを確かめることすらできてない。ただただ、その力で暴れるだけ。お前たちがその力を振るう程、位相はぶつかり、火花は散る。そして諦めるしかない運命が振りまかれる。

 

個性。ヒーロー。ヴィラン。下らない。許せない。

 

──そう、故に。この私がこの悲劇をこの世から消し去り、誰もが夢見るまっさらな世界に、普通の世界に戻してみせる。

 

 

 

 

 

 

 

個性。誰もが持つ超常的な能力。誰もがその超常的な力を手に入れているということは、勿論その超常的な能力を自分の欲望に正直に扱う人間たちも存在する。現在ヴィランと呼ばれる者たちだ。今ある銀行でも三人のヴィランが銀行強盗に勤しんでいた。

 

「ボスゥ! 今回は大成功ですね!」

「はは、何を言ってるんだ馬鹿め、俺たち強盗団トライアングルアタックはいつも大成功だ!」

 

仮面をつけたアホっぽい少年の嬉しそうな言葉に目が一つしかない大男はおちゃらけて答える。

 

「・・・そんなにいつも成功してないけど」

 

そんな彼らに呆れたようにため息をつく下半身が半透明で透けている女。現在強盗を成功させて逃走中の彼らは最近世間を賑わせている強盗集団トライアングルアタック。何件も銀行を襲い、そのたびに新聞やテレビで特集を組まれたりするがいつまでも捕まらない逃げ足の早い有名な強盗団だ。まあ何件も襲ってる分失敗も多いが。

 

路地裏を逃走中の彼らの先頭、一つ目の男は右の道から突然出てきた少女にぶつかってしまう。大男と少女。衝突したらどちらが転ぶかは誰もがわかるだろう。転んでしまった少女に、大男は足を止めて申し訳なさそうに少女に手を差し出した。

 

「おい、大丈夫か?」

 

確かに彼らは強盗団でヴィランだが、基本的に無闇な殺しはしない主義。自称優しいヴィランなのだ。故に転ばせてしまった少女にすら手を差し出す。少女は手を取り、立ち上がった。そして、呟く。

 

「うんうん。わかってるよ、数多おじちゃん」

 

突然独り言を呟き始めた少女に強盗団達は戸惑い、不審に思った。それが最後のチャンス。数分後、路地裏から出てきたのはその少女──木原円周だけだった。

 

 

 

 

 

 







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