前回までのあらすじ
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本編を忘れました(震え声)
フェンリル極東支部の郊外から少し時間を掛ければ足で行ける程度の距離にある郊外の一角。
そこは幾らか原形を留めた廃屋が点々と建ち並び、風化して砕けた用水路が川として機能している住宅地跡であり、緑が生い茂るばかりで既に資源の欠片もない場所であった。
「お花どこだろう……?」
そこを齢一桁程の少女が、辺りを見回しながら歩いており、傍から見れば彼女の期待に満ちた屈託のない笑みに癒やされるような光景であろう。
ただ、問題は今の時代は半世紀以上前の平和な時代ではなく、そこら中に何もかもを喰らうアラガミが闊歩しており、少女はサテライト拠点の難民キャンプから一人で来たという事であろう。
アラガミに対する守りが世界有数であるフェンリル極東支部のサテライトで生まれた彼女は、アラガミというものが話の中の怖い怪物であるという程度でしか知らず、診療所で見掛けた写真に写っていた"花"というものに興味を示してしまったのが運の尽きと言える。
母親の誕生日に特別な何かを贈りたいと考えた少女は、外にある花という物を摘みに出てしまったのだ。
サテライトへの戻り方も考えていない彼女は、体力と好奇心の続く限り何も疑問に思うことなく、外の世界を歩み続ける。
「わぁ……!」
そして、奇しくもアラガミに一度も出会う事の無かった少女は、川辺りに群生しているツユクサという青い花々を見付けたのだった。
それらに駆け寄り、写真で見たものとはやや異なるが、それでも尚美しいそれらを見据え、母が喜ぶ顔を思い浮かべ――。
『■■■■――……』
獣が唸る声が聞こえ、少女が振り返るとそこにはマント状の赤い
少女を追っていたのか、偶々水を飲みに来た序でに見つかったのかは分からないが、少なくとも笑うように薄く開かれた口から覗く鋭利な牙を見れば、それが彼女をどうするのかは手に取るように分かるであろう。
「えっ……あっ…………ひ、ひぁ……」
初めて見るアラガミというもの。オウガテイルやザイゴートですらゴッドイーターでも死傷者が出るというにも関わらず、巨体の体躯を持ち、殺す事に特化した生命のようなそれは、少女を本能から恐怖させるには余りにも十分過ぎた。
『■■――!』
そして、獲物がゴッドイーターたちとは違い、抵抗すら出来ない矮小な存在である事に気付いたのか、ヴァジュラはひと鳴きすると歩くような足取りで少女へと近付く。
「いや……お母さ――」
そして、少女が収まるような大口を開け、彼女を喰らおうとそのびっしりと並び立つ牙を見せ――。
『■■■……?』
ガキンと、噛み千切り難い程硬い何かを噛んだ音と感触により、ヴァジュラは疑問符を浮かべながら少女を見据える。
「ヲっ」
そこにはツユクサを足元に落としてへたり込む少女の間に割って入り、片腕をヴァジュラの口に差し込んで止めている無機質な表情のアラガミの姿があった。
牙の生えた深海魚に砲身と触手を付けた大きな帽子のようなものを頭に乗せ、黒いマントを羽織り、黒いステッキのようなものを片手に持ち、白い肌と髪に青い目をした女性型のそれを少なくともヴァジュラはアラガミであると認識している。
とは言え、アラガミ同士でも生態系があり、上位に位置するヴァジュラにとって刃向かってきた他のアラガミなど餌に等しい。
そのまま、牙に力を入れると帽子のアラガミの腕は異音と共に深く損傷する。
「ヲっ」
『■■■■■■――ッ!?』
しかし、それを全く意に介さない帽子のアラガミは、ステッキを落とすとヴァジュラの片目にもう片方の手を差し込む。
そして、視神経ごとヴァジュラの片側の眼球が引き出されるのと、帽子のアラガミの片腕が二の腕から喰い千切られるのはほぼ同時であった。
更にその直後、何かの駆動音が響き渡ると帽子のアラガミの帽子に付いた口から前衛的なデザインの黒い艦載機のようなものが幾つか飛び出す。
そして、掃射と爆撃により、ゴッドイーターでも刃が立たない程硬い筈のヴァジュラの赤マントの大部分が、木っ端微塵に爆散した。
「…………(もぐもぐ)」
引き抜いた眼球を帽子のアラガミが小さな口で咀嚼している様が、明らかにそれがアラガミであるという事を理解させる。
『■■■■■――ッ!』
「ヲー……」
急いで飛び退いて距離を取り、威嚇と共に咆哮しつつ頭部の周囲に雷球を2つ発生させるヴァジュラ。
それとは対象的に眼球を食べ終えた帽子のアラガミは、周囲に艦載機を展開しつつ、ステッキを拾い直しながら千切れた片腕を少し振るって状態を確認しているようであった。
そんな帽子のアラガミにヴァジュラの雷球が砲弾のように幾つも殺到し――それらはオラクル刃によって容易く斬り伏せられて霧散する。
「ヲっ」
見れば帽子のアラガミが手にしているステッキに纏うようにオラクル刃が形成されており、ゴッドイーターのペイジのようなショートブレードのような刺剣と化し、それを2度振るって迎撃していた。
『■■■■■■■――ッ!!』
それを見たヴァジュラは間髪入れずに全身の至る所に雷球を出現させ、その数は十を優に超える。
そして、それらはミサイルのように帽子のアラガミへと向かうが、対する彼女はステッキの石突を地面に突き立て、その瞬間にステッキは解けて大量の節へと変形し、握り手を除いて鞭のように変わった。
「ヲっ」
そして、伸ばして振るわれた仕込み杖の鞭の節は、オラクル細胞によって物理法則を無視して20〜30mまで伸び、また全ての節にオラクル刃が纏わされている。
結果として、さながらのたうつ蛇の意志が宿るようなソレは、異様な軌道を描きながら容易く全ての雷球を弾き落とした。
「お姉ちゃん……?」
「ヲっ!」
そのまま、帽子のアラガミは、高いヒールと長いブーツが組み合わさったような細く女性的でしなやかな足を動かし、背後にいる不安げに声を上げる少女を更に庇うようにステッキを構え直す。
心なしか無機質な表情に微かな意思が宿ったように思える。
『■■■■――■■■――ッ!?』
その様子にヴァジュラは警戒を強めた直後、自身の腹部が何かに貫き穿たれた事に気付き、痛みとも怒りとも取れる絶叫を上げる。
腹部にはヴァジュラの真下の地面から生えた白い触手が背中まで突き抜けており、それの出処は帽子のアラガミの帽子に付いた大きな二本の触手が、彼女の足下の地面に突き立てられている事から想像出来るであろう。
更に帽子のアラガミは、帽子についた砲身で砲撃し、艦載機を飛ばして再びヴァジュラに爆撃と銃弾の雨が襲う。
そして、最後にその身に宿る心臓部を帽子のアラガミのステッキの切っ先が刺し貫いた。
『■■■…………』
それによって至る所が吹き飛んだ上、全身が穴だらけになったヴァジュラは、少しだけ佇んでいたが、やがて力なく地面に崩れ落ちると二度と動かなくなった。
「ヲー」
すると帽子のアラガミは、調子外れな無表情と抑揚の薄い声を出しつつ勝鬨を上げるようにステッキを掲げ、それが終わると直ぐに彼女は少女の方へと向き合い、腰を落とすと少女と同じ目線になり、ぼんやりと青く光る瞳で見つめる。
そして、ステッキを静かに落とすと片手を地面に伸ばし、少女が足元に落としていたツユクサを拾い上げると、それを彼女へとそっと差し出す。
「ありがとう……」
「ヲっ」
受け取るのを見届けた帽子のアラガミは少女の頭に片手を置き、そのままゆっくりと撫で始めた。
「お姉ちゃん手が……!」
「ヲ……?」
少女に言われ、帽子のアラガミは思い出したかのように二の腕から食い千切られた片腕に目を向ける。
「………………ヲー」
暫く腕を見つめてひと鳴きした後、帽子のアラガミはヴァジュラの死骸へと向かうと、帽子に生えた触手を伸ばしてヴァジュラの口を抉じ開けた。更にその口内に片腕を肩ごと突っ込む。
そして、中から引き抜かれた腕には喰われた彼女自身の片腕が握られており、濡れた雨傘から露を払うように二三度振るうと、断面に熱い飲み物でも冷ますように息を吹き掛ける。
それが終わると最後に二の腕の断面と取れた腕の切断面をくっつけて見せた。
「ヲっ」
「くっついた……!」
少女を安心させるようにグーパーを交互に繰り返しながら小さく手を振るう。
「ヲ、ヲ……ヲっ」
「……?」
すると帽子のアラガミは手を後ろ手に回し、帽子から生える触手が何かをそこに手渡す。
「ヲー」
「わぁっ……! お花のかんむり!」
そして、手を前に出すとそこには花で出来た冠があり、それを少女の頭にそっと乗せる。
「くれるの!?」
「ヲっ」
「ありがとう! じゃあ、あげるね!」
「ヲ?」
すると少女は自身が持っていた一輪のツユクサを帽子のアラガミの髪に挿し、彼女はそれを不思議そうに指でつついていた。
「お姉ちゃんきれいっ!」
「…………」
喜ぶ少女を眺める帽子のアラガミの表情は相変わらずの無表情ながら何処か優しげに見え――体内のレーダーが"数体のヴァジュラ"の接近を認識した事で再び無機質な表情へと戻った。
「ヲ……」
「どうしたの?」
帽子のアラガミは花の冠にご満悦な少女に、再び背を向けて歩き出し、その途中で帽子に付いた砲塔を上方へと向けて発射し、赤く丸い花火のような光が真昼の空で輝く。
目を丸くする少女には、帽子のアラガミが纏うマントに描かれた"フェンリルのエンブレム"と――。
"深海棲艦"と銘のある金属プレートと、"空母ヲ級"という刺繍文字に似たモノが酷く印象に残った。
「ヲー?」
「わっ……!」
すると少女の後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、そちらへ振り向くと帽子のアラガミ――空母ヲ級と全く同じ容姿と装備をした個体が現れ、少女を気遣うように一礼や声を掛けてから少女を助けた個体と合流する。
「お姉ちゃんいっぱい……!」
「ヲっ」
「ヲー」
更にわらわらと様々なところから空母ヲ級という個体群が集まり、少女を助けた個体を先頭に6体が並ぶ。
「ヲ……!」
「ヲっ!」
そして、前衛の3体と後衛の3体に別れ、前衛はステッキと触手をそれぞれ構え、後衛は大量の艦載機を帽子から吐き出す。
その直後、殺到して来たヴァジュラの群れとヲ級の隊列が衝突した。
◇◆◇◆◇◆
「ヲっ」
「ありがとうございます……!」
ヴァジュラとの衝突から約一時間後、フェンリル極東支部のサテライト拠点の外れで少女は母親に抱き締めされており、髪にツユクサを挿したヲ級は手をひらひらと振って会釈していた。
よく見ればヲ級の触手の一本の先がチリチリになっており、戦闘が苛烈であった事を物語るが、相変わらずの無表情な表情からは特に伺えないだろう。
また、少女には花の首飾りやブレスレットなどの花飾りがされており、それは"6箇所"に付いている。
ヲ級は踵を返して外の世界へと戻ろうと一歩踏み出し、その時にマントを弱く引かれている事に気付き、足を止めて振り向いた。
「お姉ちゃん……」
「ヲっ?」
「また会える……?」
「…………ヲっ!」
自分の口角を両手の人差し指で押し上げて笑ったようにする。
そして、それに釣られて笑顔になった少女を背にし、フェンリルのエンブレムが刻まれたマントを棚引かせながら再びアラガミの生きる外の世界へと帰って行ったのであった。
翌日――。
「ヲっ」
「あっ、お姉ちゃん!」
約束した通り、きっちりとヲ級は少女の家に遊びに来ていた。
ちなみに何故か全く萎れず枯れないツユクサを髪に挿したままであり、それは少女が付けている花飾りも同様である。
「えへへっ……お姉ちゃんだいすき!」
「ヲー」
更に蛇足だが、このアラガミに価値観やら何やら色々と破壊されたこの少女が、十年ほど経ってこのヲ級と共に活動するゴッドイーターとなるのは、もう少し先のお話である。
◆◇◆◇◆◇
「いやぁ……だいぶ、カナ君が生態系に刻まれて来たねぇ……」
『ソコハ"隠シ切レナクナッテ来タ"トカ言ウ場面ジャナイノカシラ?』
ラケル・クラウディウスからの贈り物を受け取ってから少し経った頃――。
現在、フェンリル極東支部のラボラトリ区画にて、ペイラー・榊と白衣に眼鏡姿のニライカナイは、極東周辺の分布図を液晶画面に出力し、既に100以上の点が確認出来る事を確認し、呆れるニライカナイとは対象的にサカキ博士は明らかに楽し気であった。
これは"深海棲艦"という神機兵の亜種の"空母ヲ級"というモデルの分布図を示すものである。
詳しく言えば、フェンリル創設者の一人であるペイラー・榊が、第一種接触禁忌種ニライカナイのオラクル細胞を用いて実験開発中の神機兵の亜種となっており、最早女性体部分は90%以上アラガミで構成されているという専門家が頭を抱えるブラックボックスかつオーパーツ――ということに対外的にはなっていた。
「お前ら何してんだ……」
「いい質問だね。なに大したことじゃないよ。行儀よくする事も穏便に事を進める必要もないって事にこの前気付かされただけさ」
『
そして、意味の分からない回答をする二人の奇天烈な研究の内容を知るために定期的に足を運んでいるソーマ・シックザールは、現在頭を抱えている様子であった。
と言うのも前回足を運んだ時から爆発的な進展があったらしく、極東支部製亜種神機兵という訳のわからない物体をいつの間にか製造しており、それを試験運用し始め、極東支部に知れ渡った段階でソーマが二人を問い詰めた結果がこれである。
そもそも深海棲艦とは、神機兵などではなく、未完成の第三のノヴァであるニライカナイが直接造るあるいは彼女のオラクル細胞で造られたモノ。また、空母ヲ級は深海棲艦としては最初に造られ、ヴァジュラ種相当に当たる存在。つまりはただの人造アラガミであり、それに大層な名前とフェンリルの証をつけただけというあまりにも大胆過ぎる凶行であった。
ちなみに無論、全てがソーマの妹に当たる。
「どう見てもマトモな研究に見えないだろうが……」
そして、無論その発生源は極東支部のラボラトリ区画であり、ペイラー・榊の研究室の奥に位置する区画のひとつにて、ソーマの眼前には人型の存在が入った黒い繭のような物体が所狭しと葡萄の房のように並んでいた。
黒い繭は、その満たされた中身がぼんやりと青い機械的な発光しており、その中心に浮かんでシルエットのみ確認出来る人型アラガミが呼吸する度に繭全体が静かに脈動し、それが数十以上存在するため、研究室は機械と生物を融合させた巣窟のような異様な様相を呈している。
更にそれぞれの繭から天井へ向けて伸びる一本の黒い管はさながら長過ぎる人間の脊髄のように見え、繭が床や壁に設置しているところからクモの巣状に伸びている赤黒い管はまるで人間の大動脈そのものに見える質感をしていた。
眠りながら細胞を構築している繭の中身に刺激を与えないように最小限の灯りしか研究室内にはなく、それが更に狂気と冒涜を演出し、何も知らない人間が見れば極東支部の闇等と一言で切り捨てられるような空間である。
『コレ、スッゴイ悪イ奴ガヤル事ジャナイカシラ……?』
「フェンリルなんて組織そのものが似たようなものだよ?」
『"マッドサイエンティスト"ニ"力"ト大義名分ヲ与エテシマッタワ……』
実際のところ研究は誰一人として犠牲者を出しておらず、確かに道徳心に則ってはいたが、基本的にサカキ博士は善良なだけのマッドサイエンティストであり、ニライカナイは悪意で構成されて狂気で彩られた身体が何故かマスコットのような挙動をしているバグなのが如実に現れていると言えるだろう。
要するに
ちなみにアイーシャ・ゴーシュとして覚醒したニライカナイは、当然ながらアラガミの研究者としてのアイーシャの全てを有しているため、極東支部でサカキ博士に次ぐほど優秀な研究者でもある。
そのため、サカキ博士が悪の研究者ならば、彼と共に自分で自分を研究し、その成果を極東支部周辺にばら撒いているため、彼女はマッチポンプどころか諸悪の根源も良いところであった。
「ヲっ!」
『アッ、マタ生マレタワ。ウフッ……ウフフフ……オハヨウ、私ノ愛シイ
「ヲ〜」
「カナ君も大分エイリアンの女王とかみたいだよ?」
『"アラガミ"ナンダカラ元々似タヨウナモノデショ?』
ニライカナイは繭を破って出て来た一体の空母ヲ級を抱擁して猫可愛がりしており、その光景だけを切り取れば、完全に侵略者のクィーンであろう。
「ヲっ」
「ヲー?」
(コイツらどっちもどっちだろ……)
「ヲ……」
「ヲー!」
ソーマはそんな事を考えつつもアラガミ研究としては、世界最先端どころか異次元レベルの技術により、確かな成果を極東支部にもたらしている事もあり、人道的に逸脱しないように釘を刺しておく程度しか出来ず、日に日に増えて行く妹達に囲まれるばかりである。
こうして人間とアラガミの研究者二人の計画は、全く水面下で行われる事なく、大々的にぶち撒けられているのであった。
「レっ」
「おや? カナくん、色々弄ったり試していたら違う鳴き声の子が生まれたよ?」
『ワァ…………ァ……』
〜 用語集 〜
・深海棲艦
深海魚や触手を持つ海洋生物に似た要素と、軍艦を象ったような装備をし、さながら水に纏わる妖怪の水鬼のように亡霊のような女性型の外見をした自律型人造神機たちの総称。
表向きにはフェンリル創設者の一人であるペイラー・榊が、第一種接触禁忌種ニライカナイのオラクル細胞を用いて開発中の神機兵の亜種となっており、最早女性体部分は90%以上アラガミで構成されているという専門家が頭を抱えるブラックボックスかつオーパーツである。
真相は、ニライカナイによる掃討によって極東支部に大量にあるコアを使い、未完成の第三のノヴァであるニライカナイのオラクル細胞をベースに直系あるいは分化させて生み出された人造アラガミであり、既に極東支部周辺のアラガミの生態系に打撃を与えている特定外来種である。
ちなみにニライカナイが擬似的に創造したコアを持つかそれを原料に生まれた深海棲艦を直系、ニライカナイのアラガミ細胞を培養して生み出された深海棲艦は分化と便宜上呼んでいる。人間で言えば本家と分家ようなもので、実際に前者の方が後者よりも性能が高く、ハイエンドモデルと量産モデルに近い関係なのだが、当アラガミ達にはそう言った区別意識は特にはなく、相変わらずの年功序列と家族意識があるのみ。つまり、全員姉妹かつ家族である。
更に蛇足だが、深海棲艦の名称の大部分はニライカナイが名付けているらしい。
・空母ヲ級
ニライカナイたっての希望で最初にデザインされた深海棲艦。深海棲艦のヴァジュラ種相当に当たる存在であり、ニライカナイベースの量産型アルダノーヴァ。そのため、帽子に見える部分は男性体である。
既に相当数が、極東支部のアラガミの生態系を荒らしており、亜種神機兵である深海棲艦の顔のようなものともなっている。分化の深海棲艦は単語しか基本的に喋らないが、なんとなく相手にニュアンスは伝わるため、コミニュケーションは取れるらしい。
単体としてはヴァジュラ2〜3体を同時に相手取れる程の性能を持ち、艦載機による広範囲攻撃にも秀出ている。そのため、極東支部周辺ではヲ級達によるアラガミの殲滅が日中に行われており、夜間はもっぱらぐっすり寝ている。
ちなみに深海棲艦全体に言える事だが、性格的な個体差があり、例えばカメラを向けると顔を手で隠す個体がいれば、無表情でダブルピースして来る個体もおり、好きな食べ物の趣向や娯楽を覚えた場合の趣味なども異なる。また、特定の人間に懐き、友人関係や、恋人関係になっている個体も幾らか確認されているらしい。
◯ヲ級装備
ヲ級ステッキ
ペイラー・榊とニライカナイが開発したアラガミ専用後期型第二世代神機。近接戦と遠距離戦に対応した機構を持つ従来の第二世代型神機とは異なり、近接武器と中距離近接武器変形する機構を持つ。
また、設計段階の時点でゴッドイーターではなく、アラガミが持つ事を想定しているため、体内のオラクル細胞をオラクル刃に変換する機構を持ち、瞬時に見た目以上の威力と範囲攻撃を可能とするが、ゴッドイーターで例えれば、血液と引き換えに仮初めの刃を形成する魔剣であり、文字通りの意味でアラガミ用である。
「カナくん、なんで頑なに杖ではなく、ステッキなんだい?」
『ソッチノ方ガ響キガ可愛イデショ?』
ヲ級帽子
ヲ級の艤装部分であり、アルダノーヴァの男性体に当たる部分。口から艦載機を飛ばし、見た目に反して触手だけで立体移動が可能なほど強靭かつ盾に出来るレベルで女性体より強度がある。
実は脱げる。麻雀などで人が集まらないと数合わせとして分離して席に着く姿も見られる。アラガミは体表面の汚れも食べるため、洗わないと臭くなるような事はないが、何故か川などで女性体に丸洗いされている姿が、偵察班やゴッドイーターに目撃されている。
『"アイドル"ハ綺麗ニシナイトネ』
「どういう意味なんだい?」
『マサニ最強デ無敵ノー♪』
「時々、カナくんがわからなくなるよ」
ヲ級マント
フェンリルのエンブレムが付いた美味しくないマント。ニライカナイの手縫いということ以外にこれと言った特徴はない。
「アラガミ装甲技術由来の繊維じゃないと、ね」
『ヲ級チャンガ食ベチャウカラネェ……』
・戦艦レ級
正確には航空戦艦レ級だが、後に生まれる戦艦ル級や戦艦タ級よりも先にペイラー・榊が生み出したため、戦艦と呼称されている。深海棲艦神属の第二種接触禁忌種相当に当たる存在の一角。ニライカナイにより生み出される直系のアラガミであり、姫級以上の個体を指す深海棲艦神属の第一種接触禁忌種と戦闘能力は遜色ない。
サカキ博士が深海棲艦の建造をしていると偶に発生する個体らしい。ニライカナイは"サカキ博士の建造テーブルのSSR"等と謎の呼称をしている。
後の性能試験の結果、航空戦、砲撃戦、雷撃戦、夜戦の全てが可能なため、本来ならニライカナイは超弩級重雷装航空巡洋戦艦レ級と名付けようとしたが、普通に長過ぎるとのことで榊に却下された。
「レ〜」
『………………(わしわし)』
「なんだかんだ言ってもちゃんと可愛がるんだね、カナくん」
『コノ娘モイツカ、好キナ人ヲ見付ケテ幸セニナルノカシラネ……』
「そんな世界はロマンがある……ね」