ハリー・ポッターと秘密の守り人   作:風里

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後半オリキャラ登場します。


秘密と計画の行方

 

 

 

「ルイス、ちょっと出かけてくるわ」

 

「かしこまりました。お帰りは何時ごろになりますか?」

 

「遅くはならないと思うけど、夕食の準備は要らないわ。用事が済み次第連絡するわね」

 

「お願い致します。それと、こちらをお持ちください」

 

そう言ってルイスが差し出したのは、羊皮紙の束をまとめたものだ。

これからどこへ向かうかを察してルイスが用意したものだった。

 

それが何なのか気付いたジルは苦笑してからそれを受け取り、「行ってくる」「お気をつけて」と短くやり取りをすると黒壇の杖を振り、姿くらましをした。

 

 

 

 

バチン!と鋭い音がしてジルが姿あらわしをしたのはホグワーツに程近い、魔法使いの村ホグズミードだった。

治安の悪化が進んでいるせいか、人影は少なく、行き交う人々の表情も暗いままだ。

 

ジルはローブを被りなおすと、ゆっくりと足を進める。

在学時代、何度か世話になったバーのドアを開けて店内を見回すと、目的の人物がひっそりと端の方でグラスを傾けていた。

 

「お久しぶりです。お待たせしました、ダンブルドア教授」

 

「おぉ、よう来たの。元気だったかね?」

 

「えぇ、恙無く。教授もお元気そうで何よりですわ」

 

ジルはダンブルドアの隣に座ると学生時代からお気に入りで飲み続けているワインを注文した。

二人以外に客もいないため、マスターはすぐにワインを用意してジルの前に置いた。

 

「相変わらず此処は良いワインを入れてますね」

 

香りを楽しんでからグラスを傾けて一口含む。

ルイスの用意してくれるワインも悪くはないが、やはり長い間親しんだこの味が一番美味しく感じた。

 

「良い飲みっぷりじゃの」

 

「教授こそ。それ、この店で一番強いやつでしょう?」

 

「なに、若気の至りで飲み始めたら存外慣れてしまっただけじゃ」

 

「ふふ、教授はいつまでも変わらないですね」

 

「ジル、君も変わっておらなんだ。……卒業してから何年経っても」

 

穏やかな会話の中に突然投げられた発言にも動じずにジルは微笑みを浮かべたままだが、反対にダンブルドアの表情はいつになく硬く、警戒しているように見える。

いつも飄々としている老人にしては珍しく、ジルは心の中で僅かに驚いていた。

 

「ニコラスですら老いには勝てなんだ。それをどうやったのかね?」

 

「あら、女の秘密を探ろうなんてナンセンスですよ?」

 

「これは手厳しいのぅ」

 

「一つだけ言えるとすれば、そうですねぇ。ある意味分霊箱や賢者の石よりも万能で汎用性が高いとだけ」

 

「!」

 

グレーの瞳が鋭くジルを見つめる。

 

「ジルよ、おぬしはどちら(・・・)じゃ?」

 

「私は、どちらでもありませんよ。ただ自らの目的の為に、成すべきことを成すだけですから」

 

「……」

 

「開心術をしかけても無駄です、これでも閉心術に関しては折り紙つきですので。……あぁ、そうでした。これをどうぞ」

 

無言呪文を使って執拗に開心術を仕掛けてくるダンブルドアを面倒だと言わんばかりの表情を向けて言うとジルはある物を差し出した。

それは出かける直前、ルイスが渡してきた羊皮紙の束だった。

 

「……これは?」

 

「貴方が欲しいであろう情報が書いてあります。感謝してくださいね?うちのルイスが直接(・・)調べたものです。正確性については保証します」

 

羊皮紙を開いたダンブルドアが驚愕に目を瞠る。

そこにはまさに求めていた、必要な情報が漏れなく記されていたのである。

 

現在の死喰い人のリスト、まだ生きている行方不明者の所在、そしてヴォルデモート自身の現在。

事細かに記された情報、その最初の数行だけでもダンブルドアや騎士団だけでは入手できなかった情報ばかりだった。

 

「おぬしはこれを読んだのかね?」

 

「いいえ。必要があればルイスから報告があるでしょうし」

 

「随分と信用しておるんじゃな」

 

「えぇ、私の目であり、耳であり―――手足ですから」

 

事実、ルイスはホグワーツから抜け出せないジルに代わり、多くのことをこなしてくれた。

サラザール・スリザリンの遺品探し、拡大する闇の勢力への偵察など、かなり無茶振りした自覚があるジルは過去――前世も含めて――で唯一と言っていいほど、ルイスを信用している。

自分の不利になることは絶対にしない、絶対服従、自らの意思のままに動かせ、自分だけでは足りない、届かないところにも届かせるための、手足なのだ。

 

ジルは探るようにこちらを伺うグレーの瞳を見つめ返していつもの微笑みを浮かべた。

 

「お主は、血縁が……弟が死ぬことに何の感情も持たぬのか。ホグワーツに入学する前は仲が良かったと思ったんじゃがのぅ」

 

「そんな感傷(もの)、とっくのとうに捨ててますよ。言ったでしょう、私は自らの目的の為に、成すべきことを成すだけだと」

 

「……トムを止める気はないようじゃな。それにおぬしの目的とは何じゃ」

 

「そうですねぇ、今言っても特に流れに問題は無いと思いますけど……でもやめときます。必要になったら会いに行きますからその時にでも。では、他にも行くところがあるのでこれで失礼しますね。マスター、ワインのお金は後ほどルイスから届けさせますから」

 

「、待つのじゃ!」

 

ダンブルドアの制止を気にも留めず、ジルはその場で姿くらましをした。

一人残された老人は浮かせた腰をもう一度降ろして、深くため息をついた。

 

 

 

一瞬にして切り替わった景色は、薄暗いバーから黄昏に染まった郊外にある屋敷の前へと変化している。

めくらましの呪文をかけられているせいか、空を飛んでいる鳥たちは不自然な経路で屋敷の屋根を避けていく。

見た目は廃墟のような、見るからに誰も住んでいなさそうな屋敷だが、実際は闇の勢力とは違う、別の勢力が集まるアジトの一つだった。

その屋敷の前ではウルフカットの精悍な顔つきの青年がジルに気付くと口角を吊り上げて言った。

 

「ようやく来たか」

 

「えぇ、待たせたわね」

 

「かまわねぇさ、アンタが来なきゃ意味がねぇしな」

 

「エディは?」

 

「もう着てるぜ。それに、アリスの奴もな」

 

「それは重畳」

 

薄暗い廃屋に入り、奥へと進む。ところどころ荒れ果てて痛んでおり、ルイスは直そうとしていたがそうそう頻繁に使う場所でもないため止めていた。

 

青年――ショーズは紳士よろしく扉を開けて脇に退いた。

 

「お久しぶりですね、マイレディ」

 

「久しぶり、エディ。元気そうで何よりだわ。それにアリスも」

 

「アリスはいつでも元気だよ?お姉ちゃんも元気?」

 

「えぇ、もちろん。それじゃ早速、例の計画について進めましょうか」

 

ジルの形の良い唇が弧を描き、集まった三人は頷いて同意を示した。

 

 

 


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