・魔力感知
魔力持ちやマグルでも勘の鋭い人間なら持っている能力。
所謂、第六感。シックスセンス。
「ジル、お客様がお見えですよ」
シスターが私室まで来て、そう告げた。
ついにこの時が来たか、とジルは待ち侘びた人物がシスターの後ろから現れるのを待った。
「Mr.ダンブルドア、この子がジルですわ。それでは私はこれで」
言葉少なにジルを紹介するとシスターはそそくさとその場を立ち去った。
関わりたくないという本音が透けて見える様子に老人は僅かに眉を顰めたがすぐに部屋の中にいる少女に向かってダンブルドア、と呼ばれた老人は好々爺らしく笑みを浮かべる。
ダンブルドアが挨拶しようと口を開いた瞬間に、少女はソレを遮って頭を下げた。
「初めまして、Mr.ダンブルドア。私はジル・マールヴォロ・リドルと申します。ご用件はホグワーツ魔法学校の入学について、ですよね?」
「いかにも。わしはアルバス・ダンブルドアじゃ。Ms.リドルはホグワーツのことを知っておったのかね?」
「私は弟と違って両親の記憶がありますから」
はいともいいえとも取られないような返事をにっこりと笑ったジルにダンブルドアは愉快そうに特徴的な笑い声を上げるとローブの懐から一通の手紙を差し出した。
それを受け取ったジルはさっと目を通すと、どうやら入学承諾書のようで、そこで自分が孤児院出身故にふくろう便での返事が出来なかったため同封されていた承諾書を返送していなかったことに思い至る。
「……すみません、お手数おかけしました。入学させていただきますわ」
「それは何よりじゃ、ホグワーツは君を歓迎するじゃろう。ところで、君の弟はどうするのかな?別の孤児院にいるとはいえ、全く疎遠というわけでもないのじゃろう?」
「多少心配ではありますが、トムなら大丈夫です。私がお世話になっていた人を紹介する予定ですし、何よりあの子は賢いですから」
さらさらと承諾書に自分のサインを記入して、もう一度承諾書に目を通し疑問がないか確認しているジルへ在学中の弟について尋ねるダンブルドア。老獪な人物相手に顔色一つ変えずにジルは笑顔でい続けた。
「君がそう言うなら任せよう。……では、入学には同意ということで校長に伝えておこうかの。Ms.リドル、入学用品の買出しもあるがそちらはどうかね?」
「そちらも心配いりませんわ。ダイアゴン横丁に詳しい方を知ってますので。お気遣い、ありがとうございます」
「爺の余計な心配じゃったな、ふぉっふぉっふぉ」
ダンブルドアはそれからいくつかジルに質問をした後、入学承諾書を持って孤児院を去って行った。
対してジルは、というと。
ダンブルドアが去ってから詰めていた息を吐き出した。それは安堵から来るもので、存外自分はあの魔法使いと相対することに緊張していたようだと今更ながらに気付いたのだった。
笑顔と遠まわしな言葉に隠された真意。
ダンブルドアは恐らくジルの異常さに気付いていたのだろう。
事実、あの好々爺めいた笑みの裏で隠れて自分に開心術を仕掛けてきていたのだから。
気付いてない振りをしていたがジルはジルでしっかりと閉心術を使って防いでいた。
ダンブルドアはジルの心を覗けなかったばかりか、逆に自分が開心術をかけられているとは露にも思わず、ジルを孤児院にいる子供、ということで感情を隠すことに慣れている解釈したようだが。
魔法族の両親を持って、かつ両親から教えてられていたとはいえ、本来11歳の子供が大人しく理知的に会話が出来るのもなかなか難しいことなのだ。
しかもその相手が見知らぬ他人。それに子供とはいえ、魔力を持つ者なら誰もが持っている魔力感知、マグル的に言えば第六感だろうか。
ダンブルドアの膨大ともいえる魔力の大きさに気付かないはずが無い。
いるとすればダンブルドアをも上回る魔力の持ち主くらいだろう。
そのことを古書や禁書から知識を得ていたジルは、ダンブルドアの実力を知るため、また自身に内包される魔力量を知りたかった。
結果、ジルは強大な力を前にした時に感じるであろう“怖れ”を期待していたのだが、それもなく。むしろあっさりと心を覗けてしまい拍子抜けしてしたのもまた事実だった。
未来のヴォルデモート卿が恐れていた人物はこんなものだったのかと、僅かな落胆もあった。それと同時に、アルバス・ダンブルドアの最大の脅威は魔法だけではなく、如何なる時でも感情を切り離し、どんな物でも使う冷酷な策士であるということだ。
「9月からホグワーツ……気を抜き過ぎないように気をつけないといけないわね」
ダンブルドアがまだ校長ではない今、教師という身近な立場にある老人による監視の目があると考えた方がいいだろう。
それに、純血主義の生徒が多いスリザリンでは半純血とはいえ、マグル出身とほぼ変わらない自分がどういう立ち位置にされるのかも気がかりだ。
まぁ、どちらにせよ、確実にスリザリンになるであろう自分の未来を思い浮かべてジルはまだ見ぬ同寮との生活にため息をつくのであった。