ハリー・ポッターと秘密の守り人   作:風里

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思案する

 

 

忠実な手足とも成り得る存在を手に入れたジルはまず自身の生活環境の改善から手をつけた。

ルイスに孤児院近くの一軒家を購入してもらい、さらに防犯として強力な模倣をかけ、秘密の守り人としての役割をルイスに与えた。

そして家具やら何やらを揃え終わると今度は自身の知識を増やすことにした。

元々ルイスの趣味が魔道具集めや禁書集めだったこともあり、まずはその蔵書を借りて読み始めた。

 

まずは簡単なホグワーツでも教科書として使われるような物から始め、元々サラザール・スリザリンの血筋ということもあってか覚えることは苦にならず、しかもルイスという優秀な魔法使いが側にいたこともあり驚異的な早さでジルは魔法を修めていった。

 

「―――これで大体ホグワーツで習うおよその技術は終わったかと」

 

「そう……でも案外簡単ね。難があったのは守護霊の呪文と魔法薬学かしら」

 

「それは仕方ないでしょう。ジル様がいくら特異な方とはいえ、まだ十年しか、それも孤児院でお過ごしなされているのですから。魔法薬学に関してはかかりきりにならなければ完成しない物も多々ありますゆえ。難ありと申されてもフェリックス・フェリシスくらいでしたし」

 

「そうねぇ。まぁこれからまだまだ時間はあるし、大丈夫ね。……そうだ、ルイス」

 

「何でしょうか」

 

「貴方、もっと生きたい?(・・・・・・・・)

 

「……どういう意味でしょうか?」

 

主の意図がつかめず申し訳なさそうに聞き返すルイス。こっそりとほくそ笑むジルは悪戯が成功した子供のように声を弾ませて言った。

 

「いえ、ね。ゆくゆくは若返りの魔法か薬を開発しようと思ってて。私は今の状態、というかある一定のラインで老化を止めておきたいのよ。そうなると私よりだいぶ年上の貴方は先に死ぬことになるでしょう?だから実験も兼ねて若返ってくれないかなって思って聞いたの」

 

ジルの言葉を段々と理解したルイスは喜色満面で肯定の意を返した。

自らの人生を悔いた事はないが唯一懸念があるとすればジルのそばにいられる時間が少ないことだった。

このままいけばジルが三十を迎える前に寿命か病気か事故かはわからないが死ぬことは確実だった自分の残りの時間。それをジルは、暗にもっと己の側にいろと言ってくれたのだ!喜ばない方がおかしいだろう、とルイスは内心で思う。

 

従者として、またある時には教師として共に過ごしたジルに、求められるということはタチアナ家に生まれたルイスにとって至上の喜びとなった。

 

「ジル様、このルイス一層の忠誠を誓います」

 

跪いてそう言うルイスにジルは苦笑を浮かべる。

従者として仕えることになったあの日から二ヶ月ほど経つが、ルイスの忠誠心が高ぶる度に忠誠の儀(ルイスがそう言っていた)はもう両手では足りないほど繰り返されている。

 

満足したルイスは立ち上がるとジルのお気に入りの紅茶を淹れ始める。

 

「美味しい」

 

「ありがとうございます」

 

猫舌で熱いものがあまり好きではないジルに合わせて少し温めに、そして紅茶も甘い方が好きなジルのためにフルーティーな茶葉を厳選して淹れられた紅茶は飲むだけでほっと息を吐いてリラックスできるほど体に染み込んだ。

 

短期間でジルの好みを把握したルイスも従者としての腕を磨き続けてきた甲斐があったものだろう。

 

「ところで、ジル様は弟君はお会いにならないのですか?」

 

「そうね……悩みどころではあるの。私が知る道筋には私はいないから、私がトムに会ってどう変化するかも怖いのよねぇ」

 

「そうでしたか……。情報によると孤児院の経営が行き詰っているようで、近々経営縮小が成されるようです。今までも子供たちは満足できるような生活ではなかったのでさらに困窮するかと思いますので、私の方で援助してもよろしいでしょうか?」

 

「それくらいなら構わないわ。私がいる方は気にしなくて良いわ、今年中にはダンブルドアが来るでしょうし、まだ怪しまれたくはないから」

 

「承知致しました」

 

従者どころか貴族や王族で言う暗部の様な働きまでするルイスに、良い駒を手に入れたとジルは上機嫌だった。

 

ホグワーツでは困らない程度の知識は手に入れたが、それだけではまだ足りない。

ジルの目下の目標は若返りの魔法か魔法薬を作ることだ。

未来では例の赤毛の双子が老け薬なるものを作っていたが、ホグワーツ在学中に作れるくらいのものなのでジルにも作れるだろう。故に目指すのは更に先、完全な(・・・)若返りなのだ。

 

「まぁ正直なところ、貴方は若返りである必要があるけど私は老化が止まれば問題ないのよね。薬なり魔法なりが出来るのはまだ先でしょうし、考えておいてくれる?」

 

「返事は決まっているも同然ですが……、かしこまりました」

 

よくよく考えれば、魔法や薬に拘る必要も無いのだが、まぁそこは追々考えればいいかと頭の隅に投げやった。

 

可愛らしい砂糖菓子をつまみながらジルは別のことを思案する。

 

先ほどルイスから振られたトムのことだ。

 

ルイスにも言った通り、自分が知る未来にはトムの姉(ジル)という存在はない。

どうしたものか……。

 

「いっそのことオブリビエイトでもかけてしまおうかしら……」

 

ぽつりと呟いた言葉にルイスはあえて反応しなかった。

ジルがルイスに求めているのならそう声をかけるし、今は反応することを求めていないと判断したからだ。

 

「……ままならないものねぇ」

 

出来るならば物語の強制力とやらに期待したいものだ。

 

今度、会いに行ってみようかしら。

もし道筋が変わってしまうようならば、消してしまおう。

 

ジルはおいしい紅茶を一口飲み、薔薇の形をした砂糖菓子をつまんでそう決意した。

 

 

 

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