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あれから結局、ジルは『最悪忘却術をかければいいや』と決めてトムに会いに行くことにした。
最初は陰からこっそりと様子を伺っていたのだが、よくよく見ていると他の子供がトムに悪質な悪戯を繰り返しており、またその本人もやられたら倍返しとばかりに魔法を使って仕返しをしていた。
やっぱりそこは原作通りなのね、とは思った。ただ些かあいての子供が可哀想なのは否定できない。何しろトムは原作でもチート級なのだ。
たとえ子供であってまだ魔力の扱いに慣れていないとはいえ魔法は魔法。
ただの子供と魔法使いの子供とではハンデに差がありすぎる。
かといって相手の子供もトムにちょっかいをかけているのでどっこいどっこいなのだが。(嫌なら構わなければいいという思考)
「それでもあちらは気に食わないんだけれども」
ちらりと見遣った先には施設の従業員が数人、嫌悪感に満ちた視線でトムを見つめて、否、睨んでいた。
大方面倒ごとばかり起こす上に得体の知れない力を使うトムを疎ましく思ってのことだろう。嫌がらせでもしてやり返されたから手を出すに出せないといった状況なのかもしれない。
「随分とまぁ、早い段階から敵を作りますねぇ」
それが未来の彼の業でもあるのだろうか。
そしてそれは私の業にも成り得る。
「それにしても気に食わない」
一人、訥々と喋っていたジルの明確な敵意が大人に向けられる。
ルイスを相手に魔法を使った戦闘をしていたジルは十歳にして一端の闇祓いと遜色ない程度には戦闘慣れしていた。
それでも理性では抑えているためか、殺気向けられた本人たちはぞわりと寒気を感じて両腕を擦る程度で終わっている。
「仕方ありませんね」
ジルはそう言ってため息をつくと、孤児院の入り口へ向かう。
受付では女性が一人、淡々と事務作業をしていたがジルに気付くとめんどくさそうに応対を始めた。
「お嬢ちゃん、此処に何の用かしら?」
「いえ、ちょっと知り合いに会いに来たんです」
じっと意識して女性の瞳を見る。
「……そうなの?名前はなんていう子なの?」
「トム、トム・リドルです」
「え……、あの子の知り合いなの?」
ジルの顔を見て顔を赤らめていた女性は表情を一変させると嫌悪を浮かべて「やめといた方がいいけど……」と声を潜めて忠告してくる。
ジルは何故?という意味をこめて首を傾げると女性は辺りを見回して誰もいないことを確認してからジルの耳元に顔を寄せて言った。
「呪われるんだって」
「呪われる?」
「えぇ、その子に関わると物が無くなったり壊れたり、小さい怪我から大きい怪我までいろんな人が酷い目に遭ってるわ。だから会うのはやめといた方がいいと思うのだけれど……」
気まずそうに、けれど心配しているの様子を見せる女性にジルはにっこりと笑って返した。
「お前如きが私の弟を語るな、虫けらが」
「っ……」
底冷えする冷たい瞳に見据えられ、ぞくりと背筋が粟立つ。
「なぁんてね。でも、あまり
鈴を転がすような笑い声を上げてジルは女性を見る。
「私が言ってる意味、わかりますよね?」
顔を強張らせた女性は言葉も出ないのか、ジルの言葉に同意する様にひたすら首を立てに振る。
その反応に満足したのかジルはにっこりと笑ってそのまま受付を素通りして行った。
残された女性の顔には恐怖を感じたはずなのにどこか恍惚とした感情が見え隠れしていた。
次話は(多分)ホグワーツ話にするか、もしくはちょっとした小話になる予定です。