最強の魔法使い(自称)が暴れるそうです。RE:   作:マスターチュロス

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EP02.オールスター感謝祭(前編)

 

 

「……ここは?」

 

 気が付くと、そこは見渡す限りの白い空間だった。

 

 上下も奥行きも判然としない、境界の曖昧な世界。足元は確かに地面の感触があるのに、遠くには何も存在していない。

 

 音も、風も、匂いもない。

 

 ただ──“何か”の気配だけが、確かにそこにあった。

 

「結依魔理沙だな?」

 

 不意に背後から声がかかる。

 振り返ると、そこに立っていたのは──見覚えのありすぎる人物だった。

 

「……()()()()()?」

 

「そうだ。よく分かったな?」

 

「そりゃあ……元ネタですし……見た目も7割くらい同じですし……」

 

 金髪に黒い魔女帽子、そして白黒のエプロンドレスのような服装。そこまでは結依魔理沙とほぼ同じ。しかし顔の黒さと髪のボサボサ具合、そして溢れ出る邪気に顕著な差がある。

 

 本家を前にどことなく気まずさを感じる結依魔理沙だったが、彼女の方もどことなく変なことに気づく。

 

 難しいが、存在そのものが薄いように感じられた。例えるなら、ハリーポッターシリーズに登場するホグワーツ城を彷徨う幽霊のような、地に足つかない雰囲気を纏っていた。

 

 だんだんと首が横に倒れる結依の様子を見て、霧雨魔理沙は少し口角が上がる。

 

「ただし、()()()()()()けどな。私はあくまで、お前の能力に宿った"残穢"そのものだ」

 

 "残穢"、それを聞いて結依魔理沙は理解した。

 

 おそらく異能力には元の所有者の人格の一部を保有するような性質を持っていて、残穢はそこから生まれるのだろう。

 

 その残穢が、いったい何の目的でここにいるのかは不明だが。

 

「で? その残穢たちは私に何の用なの?」

 

 魔理沙の質問に、魔理沙が答える。

 

「私はあくまでメッセンジャー。他の残穢共の代わりに交渉しに来たのさ」

 

「交渉?」

 

「私らは普段お前の意識の底で静かに眠っているんだが、お前が誰かと戦う度に起こされてるんだ。そしてだいたい、お前の中で観戦してる」

 

「そうなの???」

 

「その上お前は平日も訓練しているから、一部の残穢はほぼ寝ずにお前の行動見てるぞ」

 

「それ……誰?」

 

「メイド長」

 

「ぐぉおおお時間停止だぁあぁああぁあ!!!!」

 

 心当たりしか無い人物を想像し、膝から崩れ落ちる魔理沙。彼女に今までの行動全てを見られていると思うと、恥ずかしさで死にそうになる。

 

 いや待て。今、彼女は寝ずに私の行動を見ていると言った。

 

 それは仮に彼女が寝たいと思っても、私が時間停止を多用するからロクに寝ることができない、と考えられる。

 

 その心境、察すれば察するほど、こめかみに青筋を浮かび上がらせた完全で瀟洒なメイド長の姿が目に浮かんでくる……ッ!! 

 

「え……もしかして怒ってる? 怒られるコレ?」

 

 魔理沙はおそるおそる聞いた。

 

「いや怒るも何も、私ら残穢に健康とか8時間睡眠とか無いから」

 

「むしろ、この何も無い世界でやれる唯一の娯楽がそれ(観戦)しかない」

 

「だから、アイツも感謝してるだろうよ」

 

 その言葉を聞いて、魔理沙はホッとした。これで仮に出くわしたとしても、初手殺人ドールを食らわされることは無い。浮かび上がった青筋もきっと抑まっているに違いないだろう。

 

 魔理沙は気を取り直して問い直した。

 

「……それで、結局残穢たちは私に何の用なの?」

 

 魔理沙の質問に魔理沙が答える。

 

「お前と戦いたいらしい」

 

「はい?」

 

「残穢ら曰く、"使い方がなってない"らしい。あと、一部の強いヤツの力を擦り過ぎなんだと」

 

「そのセリフで一番傷つくの、私じゃなくて作者だと思うんだけど」

 

「とにかく、お前が収拾つけないとアイツらが喧しいんだよ。一部のヤツはお前を殺して主導権握る気らしいし」

 

「もう帰っていい?」

 

 真顔で答えた。

 

「落ち着け。私らにそんな力は無い」

 

「だからほら、手伝ってくれ。今から呼ぶから」

 

「……分かった」

 

 魔理沙がそういった直後、突然白い空間に白銀のオーロラのような何かが現れる。……見覚えのあるオーロラの壁だが。

 

「……あれは」

 

 カーテンの向こう側に人影が浮かぶ。

 

 それは次第に大きくなり、そして壁を超えて影が姿を現す。

 

「『ようやく会えたね、魔理沙ちゃん。僕のことは覚えているかい?』」

 

「裸エプロン先輩……!」

 

 反射的に叫ぶ魔理沙。かの存在は、混沌よりも這い寄るマイナス。隙あらば女子生徒に裸エプロン、手ブラジーンズを要求する変態紳士。

 

 そして、ありとあらゆる存在を無かったことに出来る"大嘘憑き(オールフィクション)"の能力者。裸エプロン先輩こと"球磨川禊"が現れた。

 

「『正解! よく知ってるね!』」

 

 傍から見れば不名誉な肩書きで呼ばれているにも関わらず、全く気にも止めない球磨川。

 

 一見、愉快でユニークな先輩に見えるが、彼は作中トップクラスの危険人物である。

 能力以上に性格が凶悪であるため、関わった人間のほとんどが彼によって心を折られ、廃人と化している。

 

 魔理沙は険しい表情で球磨川の行動を警戒しながら、話を伺う。

 

「で、先輩が私を殺して主導権得たいとか思ってる人?」

 

「『いいや? 僕は暇だからここに来ただけさ』」

 

 予想外な返答に魔理沙は驚いた。

 

「『僕は彼女ほどお節介じゃないんでね。勝手に争えばいいんじゃないかな?』」

 

 反応的に興味が無いことを察した魔理沙は、ホッと胸を撫で下ろした。

 

 しかし、彼は()()()()である。

 

「……ホンモノじゃないのは分かってるけど、居るだけでトラブル起こしそうなこの雰囲気は本物と遜色無さすぎる……!!」

 

 いつ爆発するか分からない爆弾を持たされているようで、魔理沙の気が滅入る。

 

「『そんな/// 褒められても何も出ないって///』」

 

 先輩は乙女のように照れた。

 

 魔理沙は切り替えていくことにした。

 

「で、次は?」

 

「私ですわ」

 

 次に壁の向こうから現れたのは、日傘を携えた女性だった。

 

「……初めて見たけど、美人過ぎるな」

 

「あら、意外とお世辞を使えるのね」

 

 金髪ロングに紫紺の瞳、白ベースの道士服。そして上品な佇まいに、魔理沙は確信する。

 

 幻想郷の結界の管理者、"八雲紫"。

 

「それで、紫様(妖怪の賢者)は何の用で?」

 

「お話しに来たのよ。貴女と」

 

 全く好戦的ではない雰囲気に、魔理沙は首を傾げる。

 

 紫は話を続ける。

 

「貴女は、自分の正体について考えたことはある?」

 

「無い」

 

「即答ね。けど、違和感くらい感じているでしょう?」

 

「……」

 

 図星だった。

 

「貴女、転生する前は普通の人間だったのでしょう? どうして、私たち(残穢)を大量に抱えて"自我"を保てるの?」

 

「ただの多重人格者ですら、まともに制御できないのに」

 

 魔理沙は少し考え込む。

 

「……知らないけど、自我を保てる能力が自動で発動しているんじゃないの?」

 

「貴女にその能力は無いわ。調べがついているもの」

 

 あっさりと否定される魔理沙。再び思考の渦に入るも、紫がそれを止める。

 

「ま、概ね理由は推測できるわ」

 

「え……教えて欲しい」

 

「内緒♡」

 

「最初から教える気ないヤツだコレ!!!」

 

「そんなことないわよ〜♡」

 

 紫はクスクス笑う。

 

「貴女が()()()()に勝てたら、ヒントくらいは、教えてあげていいかも?」

 

「彼女……?」

 

 その瞬間、壁の向こうから圧倒的な気配が迫ってきた。

 

「ほら来たぜ、結依魔理沙。()()()()だ」

 

「え……?」

 

 息つく暇もなく、壁から続々と現れた。

 

「やっと会えたわね、魔理沙似の魔理沙」

 

「……おぜう様!」

 

「誰よソイツ!! ……レミリアお嬢様とお呼びなさい……!」

 

 さらに背後から巨大な影が現れる。

 

「やっと余の前に現れたか、痴れ者」

 

「……英雄王(AUO)!!」

 

(オレ)の宝物庫を許可なく使用した罪、そしてこの俺をこんなつまらん場所に閉じ込めた罪、万死に値する」

 

 全身に黄金の鎧を纏った最強のサーヴァント、英雄王ギルガメッシュが姿を現す。

 

 言葉から察するに、間違いなく彼が主導権を握る気満々の残穢で間違いないだろう。

 

(……妥当!!)

 

 彼がブチ切れ具合を見て、魔理沙は思わず心の中で叫ぶ。残穢の存在を知らなかったとはいえ、財宝に許可なく手を出しバビった責任は重い。

 

 もう後戻り出来ないレベルに到達したことを悟った魔理沙は、戦う覚悟を決めた。

 

 そしてさらに、英雄王の背後から再び影が現れる。

 

 白髪に白を基調とした服装。神秘さを秘めた青年のような見た目。

 

 魔理沙の表情が引き攣る。

 

「はァ……何で僕がわざわざこんな辺境な場所に行かなきゃならないんだか。普通、キミの方が僕のところに来るべきじゃないの? キミはこの体の当事者なんだから好き勝手に動けるけど僕はそうじゃない。わざわざ僕をこんな場所に縛り付けているのはキミなんだから、キミが責任をもって僕を歓迎すべきなんだ。それを放棄するってことは、キミは僕のことをどうでもいい存在だと思ってるってことだよね? それって失礼だと思わないの? 僕はキミの不躾な振る舞いを許してこうしてキミの前に現れたというのに謝罪一つ無い。僕の貴重な時間を、寛大な心を、キミは無下にしたんだ。それって、僕の権利の侵害だよね? 無欲で理性的な僕に対する、権利の侵害だ」

 

 魔理沙は過去一やるせない表情で振り向いた。

 

「……ねぇ、誰? 呼んだの」

 

「私、あの人の能力一度も使ってないんだけど」

 

「あの人? あのさぁ、キミ、初対面の人にあの人って言うわけ? それってちょっと失礼だと思わない? 確かに僕もキミの不躾な態度に心を乱されて、自己紹介が遅れてしまったよ。だからキミが僕の名前を知らない理由は分かる。けどね、最初からキミが相手に対する配慮の心を持っていればこんなことにはならなかったんだ。キミが少しでも反省の色を見せてくれれば、僕も少しは許す気になったかもしれない。けどキミは相変わらず態度がデカくて、ずうずうしくて頭も大して良くなくて、ろくに礼儀もなってないダメな人g」

 

「そうか、〇ね!」

 

 言葉を遮るように、魔理沙は即座に右手を掲げる。

 

 掌の中央に、黒い“目”が開いた。

 

 空間そのものを削り取るような、純粋な破壊の兆し。

 

「待て待て! 全員出揃うまで技禁止!」

 

アレ(魔女教大罪司教)と同じ空気吸ってるだけで反吐が出る」

 

 魔理沙は本気で嫌な顔をした。

 

「キミ、いい加減態度を弁えたらどうかなァ……? 流石の僕もここまで虚仮にされるとイライラするんだけど? 平穏で満たされた僕の精神を何の気なしに乱して何様のつも「マジさっさと次の残穢紹介してくれ精神がもたない!!!!」」

 

 もはや限界だった魔理沙は次の残穢を出すよう催促する。

 

 その瞬間、もはや人ですらない大きな影がオーロラの壁を突き破り、空高く舞い上がった。

 

 天の頂きに到達したかの存在は、その銀色の翼を拡げ、地上へと急速降下する。

 

 煙の先に見えたのは、鳥のような顔。流線形の体に銀色の鱗を纏い、巨大な翼と長い尾を携え、翼の後端にはジェットエンジンの噴射口ような機構が備わっている。

 

「ピィアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 怪物が天に咆哮すると、莫大なエネルギーが全身を巡り、頭部と翼、そして胸部が赤黒く輝く。

 

 その姿、まさしく"銀翼の凶星"。

 

「いやバルファルクの残穢は聞いてない!!!!」

 

 もはやジャンル度外視の登場に魔理沙は思わずツッコミを入れる。

 

「ハイ次!!!!」

 

 驚く時間も勿体ないので先を急ぐと、再びオーロラの壁に人影が浮かび上がる。

 

 現れたのは、派手な装飾が施された鎧を身に纏った存在だった。

 

 赤、青、金、黒といったラスボスを彷彿とさせる配色に、天球儀や星座早見盤を模した装飾。そして向かい合って口を開く蛇を彷彿とさせる顔面のデザイン。

 

「よっ!(*^^*)」

 

「えええええエエエボルトォォオオオオオオオオ!!!!」

 

「チャオ☆」

 

 宇宙で最も凶悪な地球外生命体、"エボルト"が現れた。

 

「以上、代表5名」

 

「ロクなのいねぇんだけど!!!!」

 

「ロクなの? キミの方こそ好き勝手暴れ散らかしてるロクでなしなんじゃないの? そうやって自分のことを棚に上げて誰かを否定する人、僕嫌いなんだよね。そういう人って、生まれの時点で育ちも悪いし、他者へのリスペクトが無くて困るよ。16年も生きていて未だに社会常識すら身についていないって、ちょっとドン引きだよね。お母さんに習わなかったのかい? それともお母さんもキミに似て常識の無い人間なのかな? だとしたら仕方のないことかもしれないけど、仮にそうだった場合、キミはその環境に甘えているから態度を弁えてないってことになるよn」

 

「紫様、マジでこの人止めてください」

 

「しょうがないわね……」

 

 紫は結界術でレグルスさんを囲んだ後、結界ごとそのまま運び出した。

 

 レグルスさんの金切り声が、遠くまで響いた。

 

「キサマ以上に虫唾の走る痴れ者だったな」

 

 突然、後方から英雄王に声をかけられる魔理沙。

 

 予想外だがこれを機に距離を縮めたいので、魔理沙は全力でにこやかに荒波立てぬよう配慮しながら答える。

 

「良かった……英雄王も同じ気持ちで……!」

 

「……自惚れるな、雑種。お前ごとき存在が我と同列に語れると思うな」

 

「……」

 

 もうダメだ。

 

「じゃ、今からルール説明するぞー」

 

 霧雨魔理沙がパン、と手を叩く。強引に流れを戻した。

 

「まず、結依魔理沙はこの5人全員と対戦してもらう」

 

「え……全員同時?」

 

 結依魔理沙が4人+一体の残穢を見る。

 

 吸血鬼、英雄王、大罪司教、天彗龍、地球外生命体。

 

 全員厄介過ぎる。めんどくさい。

 

「あぁ。そして制限時間は10分。勝利条件は、結依が最後まで生き残るか、代表者五名が戦闘不能になるかだ」

 

「逆に代表者側は結依魔理沙を戦闘不能にすれば勝利となる」

 

 対等そうに見えるルール。が、5対1である。普通なら3秒でリンチにされ、骨すら残らないだろう。

 

 しかし、彼女は"結依魔理沙"。この体の主人格であり、無限に等しい数の力を携えた怪物である。

 

 負ける気は無い

 

「そして結依には特別ルールとして、事前投票でお前に力を貸したいと思った残穢(ヤツ)の能力のみ使用可能だ」

 

 突然のナーフ告知に膝から崩れる魔理沙。本日二度目である。

 

「……その事前投票の参加者、何人?」

 

 僅かな希望に望みを託す魔理沙。それに霧雨魔理沙がサッと答える。

 

「ざっと50人」

 

「少ねぇ!!!」

 

「他の残穢は基本寝てるか興味無いかの二択だからな」

 

 現実的過ぎる理由に挫折する魔理沙。ナーフ確定である。

 

「じゃ、全員等間隔に距離離して。バトルフィールドは紫が作ってくれるから」

 

霧雨魔理沙の指示に従い、全員が距離を離す。

 

その直後、紫の二重結界が結依魔理沙と5人を囲んだ。結界の範囲は推定半径3kmほどで、かなり広い。

 

「審判は私と紫、あとそこのエプロン先輩? が担当する」

 

「『実況・解説は任せな』」

 

「審判放棄したんだけどあの人」

 

 

「それじゃあ、試合開始!!」

 

 

吸血鬼、英雄王、大罪司教、天彗龍、地球外生命体、そして最強の魔法使いによる激戦が始まる。

 

 

To be continued...

 

 

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