これは、Afterglowの数年後を想像したお話
出演予定:羽沢つぐみ、青葉モカ、羽沢夫妻
目覚まし代わりのアラームが鳴る前に目が覚めた。
眠気眼をこすりながらカーテンを開けると、上り始めた朝の日が部屋に差す。
「ん、ふぅ、んっ」
体を伸ばし、枕元に置いてあるスマートフォンのアラームを切る。
時刻は午前五時五十分。
アラームの予定が午前六時だった為、そこまで早く起きた訳ではなかった無いが、この時間に起きることが習慣になってきている事を実感できた事が嬉しく感じた。
「早起きは三文の徳って、本当なんだ」
小さな幸せを実感しつつ、洗顔に向かう。洗顔をした後は、朝食の用意だ。
平日の朝でである事から比較的軽く、しかし今日一日を過ごす上で元気の出るものでは無くてはならない。
冷蔵庫の中身を見て、素早く献立を考える。ついでに、メモをする事も忘れない。夜の献立事態は後でチラシを見ながら考えるが、そのたびに冷蔵庫の中身をチェックしないようで良いように、ちょっとした手間をかける。
「しらす、木綿豆腐、みそ、チーズはあるから……」
思いついた献立が取りあえずは、ここ数日の物とは違う事を思い出しながら確認して、調理に取り掛かることにする。
まずは、木綿豆腐の水を切る。ボールを用意して、その上で木綿豆腐一丁を綺麗なふきんで包み、握るように絞る。ぷにゅう、と豆腐が崩れ、水がボールに落ちていく。十分絞ったと思ったら、溜まって水を捨てボールを簡単に水で注ぎ、崩した豆腐を入れて、しらす六十グラムと味噌を小さじ一杯を加え、均等に混ぜる。混ぜ切ったものを食パンに均等に伸ばしながら塗り、ピザ用のミックスチーズを適当にかけてオーブンに入れる。オーブンが小型の為、食パンは二枚までしか入らないため、そこで加熱を開始する。加熱中にお皿を三枚取り出し並べて置き、オーブンを確認しチーズが溶けていれば完成、和風トーストだ。オーブンを開けた瞬間に香る焼けた食パンの香ばしい匂いに、くう~と、お腹が鳴った。
「おはよう。つぐみ」
お父さんは微笑ましそうに笑いながら挨拶をした。お腹が鳴った所を見られていたのだろう。恥ずかしさから顔が熱を持った事が分かった。
私の羞恥の表情を見て、「可愛らしいよ」なんて言いながら、お父さんは私の横でコーヒーを入れ始める。
「お、おはよう! お父さん。ご飯直ぐ出来るからね!」
恥ずかしさを誤魔化す様に早口でそう告げて、和風トーストをお皿に盛り付ける。後は、小皿に海藻サラダを盛り付けて、食卓に並べる。後は、各種食器と飲み物を用意して完成だ。
今日の献立は和風トースト、海藻サラダ、リンゴジュースだ。
「お母さんは?」
お父さんのコップにリンゴジュースを注ぎ聞いたが、返答の予想はついていた。お父さんや私は朝は強いのだが、お母さんはとても朝に弱い。起床時間は早いのだが、起きてから一時間ほどボーとして動かないのだ。動いても、のんびりとしていて何時もう一度寝るか分からない程である。
「僕が起きてた時には、起きていたからそろそろ来る頃じゃないかな?」
「お~は~ょ……」
お父さんとの話ていると、にゆっくりリビングに来たのはお母さんだった。のそのそとした足で寝ぼけているのだろうか、挨拶の途中で船を漕いでいた。
「おはよう。お母さん大丈夫?」
「おはよう。ほら、何時ものコーヒー」
毎朝の事とは言え、朝のお母さんの事は心配になる。フラフラノソノソとした歩み、カクンカクンとした顔の動きは昼間のお母さんとは似てに似つかない。顔を洗ってもこの状態から変わらないのだから、驚きだ。
しかし、お母さんの起こす方法が一つあった。
それがお父さんのコーヒーだ。
「ぅん……」
ゆっくりとお父さんに渡されたコーヒーを飲んでいく。ノロノロと一口、味わうように二口、噛みしめる様に三口と飲んでコースターにカップを置いたお母さんは、目で見て分かるほど変わっていた。
「ありがとう。パパ!」
素早い動きでお父さんに抱き着くお母さん。先ほどまでと変わって素早く動きが大げさなお母さんは抱き着いたまま、頭をお父さんの胸板にこすりつけていた。
「ママ、せっかくつぐがご飯作ってくれたんだから、温かいうちに食べよう?」
困った様な笑顔を浮かべながら食事をするように促すお父さん。
「あ! ごめんなさいつぐちゃん。それじゃあ皆で」
『頂きます』
三人で手を合わせ、合唱をする。
まずは、和風トーストを手で取り齧る。サクッと、音がして食パンが切れるがとろ~りとなったチーズが伸びてしまう。食パンと口の間に残った伸びたチーズは重力に引かれ垂れていき、熱と共に上るチーズの香りが直接鼻に届いた。食パンを器用に動かし、チーズを切り取ると口の中のパンを噛みしめた。食パンが唾液と混ざり合って、甘く柔らかくなっていく。時折感じるしらすの触感がアクセントとあり、噛むことが楽しい。少しの酸味があるチーズと味噌の風味、豆腐の優しい味が混じり、重くはないが十分な満足感を感じる。
ふと、自分では満足の出来る味だったがどうだろうと、親の顔を確認したが、二人とも美味しそうに食べている事が確認できた。
「つぐ、すまないがもう一枚お願い出来るかな?」
恥ずかしそうにそう言ってきたお父さんを見て、お母さんと見つめあい笑った。
「うん! 任せてお父さん‼」
二枚目を満足そうに食べるお父さんと、全身でおいしさを表現する母を見ながら羽沢家の朝は始まりを迎えた。