ネルガルになった男   作:水玉金魚

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冥界のメリークリスマス

「では、一度状況を整理しようマスター」

 

 サンタになったアルテラの言葉にリツカは神妙な面持ちで頷いた。

 二人がいるのは冥界の底深く。

 カルデアにいる人間やサーヴァントたちを突如として襲った謎の病。それを解決するべく、二人はこの冥界に潜ったのだ。

 ここではかつてバビロニアで戦った仲間と再会することができ、それ自体はリツカにとっても嬉しいことだったし励みにもなった。

 しかし、それだけではない。

「本当に、ケツァルコアトルをあんな目に遭わせたのはエレシュキガルなのかな……」

「本人もそう言っていたからな。まず、間違いはないだろう」

 二人の脳裏に浮かぶのはここまでの道中でであった一人の女神。

 ルチャをこよなく愛する彼女が二人の前に現れた時、その姿はすでに満身創痍。本人曰く、エレシュキガルにやられたというのだ。

 エレシュキガルに負けたこと。それ自体はおかしくない。

 この冥界においてエレシュキガルは法そのもの。どんな神でも太刀打ちできない。

 しかし二人が気になっているのはそこではない。

「彼女の傷、あれは相手を倒すためでも殺すためでもない、いたぶるためだけにつけられたものだ」

 確かにエレシュキガルは厳しい女神である。しかし、すでに勝敗が決した相手を執拗になぶるような性格ではなかったはずだ。

「それに、ケツァルコアトルのあの言葉も気になるし」

 『ここにいるエレシュキガルをあの時のエレシュキガルと同じだと思っては駄目よ。けれど、彼女を拒絶しないで』

 その言葉の真意を問う前に、彼女は現界を保てなくなり、姿を消した。

「彼女の言葉がどういった意味であれ、厄介なことが起きていることは確実だろう……そして間違いなくエレシュキガルと戦うことになる」

「……うん。でも、俺達だって引く訳にはいかない」

「ああ、その通りだ。行くぞ、マスター」

 リツカの覚悟を確認し、二人は羊に乗って進んでいく。

 

 

 

 そして、彼女はいた。

「エレシュキガル……」

 まだ遠目で後ろ姿ではあるが、バビロニアで力を貸してくれた彼女を見間違えるハズもなく、リツカはその名前を呟く。

 彼女もこちらに気づいたのか振り返る。

「――!」

 その瞬間、リツカは息をのんだ。

 彼女の顔が、腐っていた。

 いや、顔だけではない。よく見れば体のあちこちが変色し、崩れ、二目と見られぬ姿に変わり果てている。

「ああ、ようやくきたのね」

 かろうじて口だとわかる場所から聞こえた声やはりエレシュキガルのものだ。

「エレシュキガル……なんだよね?」

「ええ、そうよ。私はエレシュキガルであり、エレシュキガルに切り捨てられた存在」

 腐臭が鼻につき、胃からせり上がってくるものをリツカは耐える。それでも決してエレシュキガルから目をそらすことなく彼女の言葉に耳を傾けた。

「……切り捨てられた存在?」

「エレシュキガルはあの特異点で誓約を破った為に、消滅しかけた。それを免れる為に、あの特異点にいた自分を削ぎ落としたの。それ自体は間違っていなかったわ。けれど、彼女は余計なことをした」

 本来であれば記憶だけ処理すべきところを、エレシュキガルは別のものも一緒に切り落とした。

 それがこの騒動の原因である。

「エレシュキガルは依り代の少女の影響で、己の『よくないもの』『恥ずかしいもの』を認識し、それを深層に押し込めた。けれど、エレシュキガルはそれだけでは我慢できず、ついでとばかりに切り捨てたのよ」

「なるほど、そういうことか」

 アルテラはケツァルコアトルの言葉の意味を理解した。

「つまり、お前はエレシュキガルそのものであるが、そのままの彼女というわけではなく、彼女の一部分を強調したものであるということだな」

「ええ、つまりはエレシュキガルが自分の中で醜い、汚い、いらないと判断したものを凝縮した存在。『エレシュキガルの汚点』とでも名乗ろうかしら」

「それじゃあ、エレシュキガルは別にいるの?」

「ええ、いるわよ。どこにいるのかまでは言うつもりはないけれど」

 エレシュキガル、否、『エレシュキガルの汚点』はリツカとアルテラに槍を向ける。

「エレシュキガルは私がそのまま消えるものと思ったようだったわ。事実、そうなりかけた……けれど、彼女は自分の見苦しさを侮っていたのよ」

 もしエレシュキガルが記憶のみ削ぎ落としていたらこうはならなかっただろう。『彼女』は粛々として消滅を受け入れたはずだ。

 けれど、そうはならなかった。

 外界を知り、人間と語り合った記憶を持ちながら、エレシュキガルの悪意や醜い部分を詰め込まれた『彼女』は、それを良しとしなかった。

「羨ましいわ、妬ましいわ。自由を謳歌するあなたたちが、力強く生きるあなたたちが、美しいあなたたちが、私にないものをたくさんもっているあなたたちが。耐えきれないほどに!」

「……それがカルデアに病を流行らせた理由か」

「そうよ。それに不公平じゃない。力を借りたあなたたちが無事で、力を貸した私だけが消えるなんて」

 だから道連れにするの。

 それを聞いてアルテラはリツカに耳打ちする。

「どうするマスター。説得できそうにないが」

「そんなの、決まってるよ……ここにくるまでにしてきたことを、エレシュキガルにもするだけだ」

「確かに、サンタならやることは一つだな……では、行くぞ!」

 二人は一気に『エレシュキガルの汚点』との距離を詰めた。

 しかし、それを容易に許すわけもなく、『エレシュキガルの汚点』は二人に稲妻の攻撃を仕掛ける。

 だが、アルテラはそれらを全て回避していく。

 エレシュキガルは冥界では非常に強い力を持つ神だ。しかし、実戦経験においては戦士として生きたアルテラに敵うはずもない。

「小癪な!」

 『エレシュキガルの汚点』はますます攻勢を強める。

 そのあまりの勢いにアルテラは近づくことがままならなくなってしまった。

「ここまでか……だが、問題はない」

 これ以上近づけば確実に攻撃が当たってしまう、その瀬戸際を見極め、アルテラは袋から何かの箱を取り出す。

「ふぉっふぉっふぉっ……さあ、受け取るのじゃ」

 そして一瞬の隙を突き、それを『エレシュキガルの汚点』に投げた。

「弁えなさい!」

 当然、『エレシュキガルの汚点』は箱に攻撃を仕掛ける。

 稲妻が直撃した箱はそのまま跡形もなく破壊される・・・はずだった。

「……え」

 しかし、箱が破壊されることはなかった。それどころか、無傷のまま。

 予想外の出来事に『エレシュキガルの汚点』の思考が止まる。

 そして自分に向かってくる箱の蓋が開くのを呆然と見つめた。

 エレシュキガルは冥界という場所に限り、ほぼ無敵と言っていい。いかなる神も彼女には叶わず、勝てるとすれば、それは生きた相手のみ。

 だが、唯一例外として、たった一柱だけ、それが適応されない神がいる。

 それは地上に生まれながら冥界を統べる王となった者。エレシュキガルが背負う物を分け合い、エレシュキガルが大切にするものを共に守ろうとする奇特な存在。

「エレシュキガル!」

 太陽がもたらす死や疫病を司る戦神であり、エレシュキガルの夫として冥界の王になったネルガルだ。

「あ」

 いま自分の目の前にいるのが誰なのか理解して、『エレシュキガルの汚点』は小さく震え、そして

「いやああああああああああああああああああ!!」

 絶望の声をあげた。

「いや、来ないで! 見ないで! 私を見ないでえええぇ!」

 反射的に逃げようとするも、ネルガルが掴んで離さない。

 冥界の女主人としての優位性がなくなれば、エレシュキガル自身の神格はそう高くはなく、ましてや相手は戦神だ。力ではどうあがいても勝てない。

「エレシュキガル、お願いだ、待ってくれ。逃げないでくれ」

「いや、いや、いやぁ」

 彼の視線から逃れるように『エレシュキガルの汚点』は腕や手で自分の顔を覆った。その隙間から溢れる声は泣きじゃくる少女のように震えている。

「あの人が、ネルガルさん?」

「ああ、エレシュキガルの夫と聞いているが……なるほど、冥界の王である彼ならエレシュキガルは敵わないな」

 二人のやりとりをリツカとアルテラは少し離れた場所で見守る。

「でも……ちょっと、悪いことしちゃったかな……」

「……まあ、これしか方法がなかったのも事実だしな……」

 『エレシュキガルの汚点』のあの反応。

 恐らく、最愛の夫に自分の腐った顔を見られたくなかったのだろう。女心というやつだ。

 罪悪感を刺激される二人に近づく人物……否、羊がいた。

「いやあ、ありがとうございます。おかげで助かりました」

「……ドゥムジか」

 アルテラをサンタに任命し、プレゼントを渡すように仕向けた仕掛け羊。

「エレシュキガルの権能を持つ『彼女』をどうにかできるのは同じ権能を持つネルガルだけなのですが、どうも『彼女』はネルガルの気配を察知すると逃げたり隠れたりでなかなか捕まえられなかったんです」

 だからアルテラたちを使って無理やり引き合わせる必要があったのだ。

 もう一度、二人の方を向くと、『エレシュキガルの汚点』がネルガルの腕の中に大人しく収まっていた。

 ネルガルは自分の手が汚れるのも構わず、『彼女』の顔をなでて、唇を落とす。

 その仕草があまりにも優しくて愛しげなものだから、リツカは顔が熱くなるのを感じた。

「ほ、本当に二人は仲が良いんだね」

「そうだな……」

 アルテラもその様子にどんな顔をすればいいのかわからないのか、気まずそうにしている。

「エレシュキガル、教えてほしい。エレシュキガルはどこだ?」

 ネルガルの質問に『エレシュキガルの汚点』はしばらく沈黙を貫いたが、おもむろに一つの檻を指さす。

「あれか……」

 ネルガルがその檻に向かって何かを呟く。するとその檻はゆっくりと開き、中に収まっていた魂が外に出た。

 その魂は大きくなり人の形となる。

「……ごめんなさい。私のせいで……迷惑をかけたわ」

 バツの悪そうな顔で謝罪するのは切り離されも偏ってもいない本来のエレシュキガルであった。

「エレシュキガル……」

 リツカはその名を呼びかけるも彼女は複雑な表情を浮かべるだけである。

「その……私にはあなたたちが誰なのかわからないの。そのことについても謝罪するわ」

「ううん。大丈夫だよ」

 ドゥムジがエレシュキガルに近づくと彼女はそちらに体を向ける。

「ドゥムジにも世話をかけたわね」

「いいえ、お気になさらず……こういうところを見てもあなたとイシュタルの姉妹なんだなって確信するぐらいですから」

「うっ……わ、私だって醜い所を無くせば美しくなるだなんて、自分でも浅はかだったって反省してるから……でもあの女のことは言わないでちょうだい……」

 よほどその言葉が嫌だったのだろう、苦虫を噛み潰したような顔をするエレシュキガルにドゥムジは白々しく、「それは失礼」と言った。

 エレシュキガルもそのことは構わず、独り言のように「それにしても」と呟いてネルガルの方に目を向ける。

 ネルガルはエレシュキガルのことを気にしているようだったが、自分を抱きしめる『エレシュキガルの汚点』を引き剥がすことができず、少し困ったような顔でそれでも嬉しそうにエレシュキガルを見つめていた。

「…………」

 エレシュキガルは無言のまま二人に近づく。不穏な気配を察し、リツカとアルテラとドゥムジは距離をとった。

「ちょっと! いつまでネルガルにくっついてつもりなのだわ! さっさと離れて! 私が抱きしめてもらえないじゃない!」

「嫌よ! 私だってエレシュキガルなんだから、ネルガルと一緒にいる権利はあるのだわ!」

「何言ってるのよ、あなたさっきキスまでしてもらってたじゃない! 私に代わりなさい!!」

「まだまだあれぐらいじゃ足りないのだわ! もっともっとキスして欲しい!!」

「そ、そんなの私だってー!!」

 互いに相手をネルガルから遠ざけようとするも力が拮抗していてうまくいかない。

 ネルガルの方は二人共エレシュキガルなのでどちらの味方をするわけにもいかず、両方の腰に手を回していた。相手が同一人物でなければただの優柔不断なクズ男である。

「お願いだからっ……一緒にいさせて」

 段々と口論は白熱し、やがてたまりかねたように『エレシュキガルの汚点』は絞り出すような声を出す。表情は判別できないが、心なしか苦しげにみえる。

「私はっ……私はもうすぐ消えちゃうんだから、これぐらいいいじゃない……!」

「っ!」

 その言葉にエレシュキガルは何も言えなくなる。リツカとアルテラも胸に苦いものが広がる。

 そう、『エレシュキガルの汚点』はもうすぐ消える定めなのだ。

 あれほど焦がれた地上の記憶を持ちながら、あれほど人の輝きを目に焼き付けながら、あれほど美しいものを知りながら、消えなければならない。

 だったらせめて愛しい人の腕の中で逝かせてくれと、そう『彼女』は厚かましくも切実に懇願しているのだ。

 しかし、待ったをかける人物がいた。

「待ってくれ。まだ手はある」

「ネルガル……」

「エレシュキガルが初めて地上に出て、他の人間と交流した記憶だ。それを失ってほしくない」

 『エレシュキガルの汚点』が持っているものは、ネルガルがどんなに与えたくとも与えられなかったものだ。

 そして何より……

「例え一部でも、エレシュキガルが死ぬなんて耐えられない」

「……でも、どうやって?」

「大丈夫。おい、ドゥムジ」

「はいはい、わかっていますよ」

 ドゥムジが『エレシュキガルの汚点』に近づくと、『彼女』の体が光を帯びる。

 それがなくなると『エレシュキガルの汚点』は閉じていたまぶたを恐る恐る開けた。

 まず感じたのは体の違和感。あれほど蝕んでいた痛みや鼻につくような腐臭がなくなっていたのだ。

 そして己の体を見て、その後自分の顔をペタペタと触る。ようやく自分の身に起きたことを認識して、震える声で言った。

「わ、私の、体が、もとに戻ってる!?」

「私の力で補強しました。これで取り込んでも消滅することはないでしょう」

「……どうして、ここまでしてくれるの?」

 問いかけるエレシュキガルにドゥムジは当たり前のように答える。

「それはもちろん、あなたには借りがあるからです。さ、さっさと一つに戻ってください」

 促されながらも二人のエレシュキガルは困惑の表情を浮かべたまま動かない。

「どうしたんだ?」

「……ねえ、ネルガル」

「ん?」

「私に醜いところがあっても、よくないものを抱えたままでも、それでも愛してくれる?」

「何を言っているんだ、当たり前だろう。俺はそのままのエレシュキガルが好きなのだから」

「うん……」

 ネルガルの言葉を聞いて、二人は躊躇いがちにだが互いに手を伸ばし、触れる。

 そして『エレシュキガルの汚点』はもう一人のエレシュキガルに溶けていった。

「ああ、そうだ、そうだわ……思い出した」

 一つになったエレシュキガルの目じりに涙が浮かぶ。

「ネルガル、私……」

「ああ、行っておいで」

 夫の言葉を受け、妻は初めて出来た友人に駆け寄った。

 この時、彼女たちは本当の意味で再会を果たしたのだ。

「いいんですか、ついていかなくて」

 その様子を遠くから見つめるネルガルにドゥムジがそう声を掛ける。

「そんなことするほど無粋ではないさ」

「おや、意外ですね。あなたは存外独占欲が強いところがありますから、彼女が他の者と親しくするのを嫌がるかと思いました」

「……何を根拠にそんなことを」

「だって、私が彼女と一緒にいると怖い顔して近づいてくるじゃありませんか」

「当たり前だろう。誰が好き好んでお前のように軽薄な奴を妻に近づけさせるか……それに」

 ネルガルはリツカに視線を送る。

「あの人間は……俺がエレシュキガルに与えられなかったものを与えてくれたからな」

 ネルガルは自分のできる限りでエレシュキガルを幸せにしてきたつもりだ。けれど、ついぞ自由だけは、どうしても与えることはできなかった。

「エレシュキガルがようやく外の世界と接することができるようになったんだ。俺はそれを祝福するだけだ」

「そうですか。しかしあの様子ですと、もしかしたらカルデアに喚ばれるかもしれませんよ」

「……だから何だ?」

 なんとなく嫌な予感がしてネルガルはドゥムジを睨んだ。

 しかしドゥムジはそれに怯むことなく「いえ、大したことはないんですが」と付け足してこう返した。

「もしかしたら、そこで恋の一つや二つ芽生えるんじゃないかと」

「…………ほう?」

 ネルガルの纏う雰囲気が剣呑なものになっていく。だが、ドゥムジだってそれで慌てふためくのなら最初からこんなことは言わない。

「貴様……ずいぶんとふざけたことを言う」

「いえいえ、あながち筋違いではありませんよ。あのカルデアには名だたる英雄が揃っているのですから、彼らに口説かれればエレシュキガルだってくらっとしてしまうかも」

「馬鹿なことを言うな。エレシュキガルはそんな尻の軽い女ではない」

「しかしあそこにいるサーヴァントの中には生前の妻や夫を愛しながら、新しい恋を謳歌する者もいるそうです。彼女も同じ考えを持たないとも限らないのでは?」

「…………」

 ネルガルの表情が苦々しいものになっていく。

「確かに……エレシュキガルは魅力的だ。美しく可憐で清らかで心優しく真面目でひたむきで健気で愛らしい。お前の言う通り、周囲の男たちがこぞって求愛してしまうのは自明の理」

「いえ、別にそこまでは言ってません」

「だが……エレシュキガルの夫は、俺だ」

 低く呟くようなその声はやけにはっきりとドゥムジの耳に聞こえた。

 相変わらずエレシュキガルに関することには心の狭い神だなあ、と思いながら「まあ、頑張ってください」と返す。

 仮にも自分の言葉が発端となったというのに、随分と他人事である。

 しかし、これがドゥムジなのでネルガルも気にしなかった。

 

 

 

 アルテラと共にカルデアに帰っていくリツカ。

 エレシュキガルはその姿が見えなくなるまで見送り、見えなくなってからもその場から動かなかった。

 その顔には一抹の寂しさが滲んでいる。

「エレシュキガル」

 そんな彼女を気遣うようにネルガルがその肩を抱く。

「寂しいか?」

「少しだけ。でも、悲しくはないの。これが最後ではないから」

 そういってエレシュキガルは微笑む。

 自分以外の誰かに向けられたその笑顔にネルガルは悋気を覚え、そんな自分に自嘲する。

(これでは、ドゥムジのことを責められないな)

 生まれてからさんざん抑圧されてきたエレシュキガル。そんな彼女に自分は決して何かを背負わせたり押し付けたりはしない。

 そう誓ったはずだ。

「ねえ、ネルガル」

 しかしそんな彼の思考など知らぬエレシュキガルは彼の腕にそっと手を回す。

「もし、もし一緒にカルデアに喚ばれたら、私ね、あなたといろんなことがしたいの」

「……俺と?」

「ええ、そうよ。ほら、私達ってずっと冥界にいたでしょう? だから、その……デートがしてみたくて……駄目かしら?」

 不安げな眼差しに考えるよりも先に口が動いた。

「まさか、全然。全く駄目じゃない」

「本当!?」

 こんなにも自分を愛してくれる彼女に比べ、己はなんと小さい男なのかとネルガルは自分が情けなくなった。

 時々自分は本当に彼女に相応しい男なのだろうかと不安になることもあるが、仮に自分が彼女には相応しくない存在だと言われようとも、もっと彼女に似合う偉大な神が現れようとも夫の座を明け渡す気は微塵もない。

 だからもっともっと男を磨かなければと決意する。

「きっと、エレシュキガルと一緒ならどんな景色も美しく、どんな食事だって美味しく感じるだろうな」

「私もよ、ネルガル。それに私、地上には慣れてないからいろいろ教えてほしいのだわ」

「ああ、勿論だ。エレシュキガル……」

「ネルガル……」

 いつの間にか抱きしめ合う形になっていた二人は口づけを交わす。

 

 そしてこれらを目の前でまざまざと見せつけられたドゥムジは小さく舌打ちをして「爆発しろ」と呟いた。

 




もしこのネルガルがサーヴァントになったら、

クラス・アーチャー

スキル

『太陽黒点』
NP取得+バスター威力アップ

『クタに昇る閃光』
敵全体に1ターン後にスタン付与

『14の病魔』
敵単体に強化解除+防御力ダウン+攻撃力ダウン+宝具威力ダウン+弱体耐性ダウン+毒付与

宝具・『天玉のエスメラム』
敵単体にバスター攻撃+毒付与+蝕毒付与

こんな感じになるようなならないような(適当)
ご指摘があったため、クラスを変更しました。宝具については、すいません。私の頭ではどんなに絞ってもいい案が出てこないので、これでお願いします。

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