エーリカとイチャイチャするお話です

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C95にて、サークルEJ改より刊行されましたエーリカ・ハルトマン合同誌『Schwalze Teufelchen』に寄稿させていただいたSSです。


ある年末の日のこと

例年を遥かに上回る猛暑を記録した夏を過ぎ、季節はすっかり冬になっていた。40度近い気温はどこになりを潜めたのやら。

特に今日は列島全域で冷え込みが厳しくなるらしく、雪が降る可能性もあるようだ。

年末で色々やろうとしていたことはあったが、今日は外出するのはやめとこう。

淹れたばかりの熱いコーヒーで身体を温めながら誓う。

 

「扶桑の冬も結構寒いんだなぁ」

そう言うのは、こたつに足を突っ込んで丸くなっている金髪と小さな背中。カールスラントから留学しているエーリカ・ハルトマンだ。

紆余曲折あって、彼女とは恋人同士の仲にある。

「扶桑人にはかなりきつい寒さなんだけどな。カールスラント人エーリカさんには余裕か?」

「そんなことないよ〜……あ、ホットチョコ!」

ダックスフントの絵が描かれた彼女のマグカップを差し出すと、エーリカは顔を綻ばせて恭しく受け取った。

俺はそのまま彼女の向かい側に座る形でこたつに入る。

「えへへ。ありがとう」

「どういたしまして。でも、冬休みで学校もないのにどうして朝から俺の部屋に?」

普段は遅刻常習犯で休みの日はお昼頃に来るのが当たり前のエーリカが、こんな早くに起きているなんて。

「どうしても朝から君の顔が見たかったからって言ったら……だめ?」

頰を桃色に染め、エーリカはやや潤んだ瞳で上目遣い。

彼女とか変わって日が浅い男なら間違いなく堕ちているであろう仕草。だが、俺には通用しない。

「大方こたつやら色々揃った俺の部屋に入り浸りに来たってところじゃないのか?」

「せいかーい。引っかかってくれないからつまんないな」

両手で持ったマグカップからホットチョコを飲みつつ、唇を尖らせる小悪魔エーリカさん。こういうことをするあたりが小悪魔たる所以である。

 

「そんなにこたつが気に入ったなら、エーリカの部屋にもこたつを置いたらいいじゃないか」

「……私の部屋は多分厳しいと思う。足の踏み場ないし」

「あー、あの部屋は確かに無理だよな」

「にしし。というわけで君の部屋に来たんだよ」

悪戯っぽく笑うエーリカ。そういう風に笑われると怒るに怒れないだろ。

 

「どれくらいのもんになってるかは知らんが、年末だしちゃんと大掃除しろよ?」

「あー、そっか。扶桑だとオオミソカ? にやるんだっけ」

「そう。それまでに済ませてもいいんだけど、とりあえずエーリカの部屋は今年のうちに片付けてしまおうな」

「君が手伝ってくれるなら、やる」

「なら明日か明後日だな。今日は特に寒いし、家から出たくない」

「賛成〜」

エーリカは間延びした声で同意する。

「私たち、こういうところは似た者同士なのかもしれないね」

にへっと、エーリカは照れ笑いを見せた。

 

「温かいの飲んだら、なんだか眠くなって来ちゃった」

「昼くらいまで寝てもいいぞ」

エーリカはむにゃむにゃとしながらこたつの中に潜った。何をしているのかと思ったが、その意図はすぐに明らかとなる。

「一緒に寝よ……?」

こちらに移動して来て甘えるエーリカ。人懐っこい子犬を思わせる。

温かい身体がぴったりとくっついて来て、もうエーリカは寝始めようとするところだ。

「おやすみ、エーリカ」

そんな誘惑に勝てず、俺はそのまま天使を抱きしめて横になった。

ブロンドの髪を撫でるのが心地いい。

そうしているうちに、俺はすでに眠り落ちたエーリカを追うように眠りの中に落ちていくのであった。

 

 

夜によく寝たからか、眠り自体は浅いようだ。

自分で夢だと自覚している状態で夢を見ているような状態にあって、ウトウトと心地よい微睡みの中にいるような気分。

 

「あなた……」

「……エーリカ?」

目鼻立ちが整った天使のような可憐な美貌。紛れもなくエーリカだ。

でも、俺が知っているエーリカとは違う。

髪が肩くらいの長さに伸びていて、雰囲気も今より大人びて見える。

「ふふっ。そうだよ。どうしたの? 居眠りなんて珍しいね」

母性的な笑みを浮かべて優しく撫でてくる。

その左手に何か光るものを見たような気がした。

「天使がいる……」

「えへへ……なんかそう言われるの、いくつになっても照れるね」

愛おしそうな顔で、自然な動作で唇を奪うエーリカ。

「眠かったら、もう少し寝る? あの子も今はよく寝ているから……」

「うん……」

また柔らかな艶のある唇がまた重ねられる。

「おやすみ。愛してるよ……」

 

エーリカの声が遠くなっていく。

なんだろう。この違和感がある夢は。

未来のエーリカを夢に見たということは間違いないと思うのだが……

 

 

 

俺が現実に戻されたそれからすぐのことだった。

さっき夢の中で感じた甘美な感触を、もう一度唇に感じたのである。

夢と異なるのはホットチョコの匂いがしていることだろうか。

「ん……」

目を開けると予想通り、差し込む陽をバックにエーリカの長い睫毛と、きめ細やかな白い肌が目に入った。

その唇を啄ばむようにすると、エーリカは驚いたように体を震わせて思わず身を引いた。

「お、起きてたんだ……」

てっきり寝ているものだと思っていたんだろうか。

「途中で目が覚めた。すごく柔らかい感触と、ホットチョコの甘い匂いがしたからな」

「ん、匂い嗅ぐのはだめ」

「いい匂いなのに?」

「それでも口の匂いなんて嗅がれたくないよぉ」

そうやって恥ずかしがるところを見ると、夢の中の大人なエーリカとは違う、よく知るエーリカで安心する。

そう言えば、体つきはあまり変わっていなかったような……いててててて。

「なんか、失礼なこと考えてる顔してた」

「気のせいだって」

「まあいいや。そういうことにしといてあげる」

エーリカはそう言ってまた抱きついてすりすりとやっている。

 

「なあ、エーリカ」

「なぁに?」

「冬休みにはカールスラントには戻らないんだよな?」

「うん。君と扶桑の年末年始を過ごしたいと思ったからね」

理由が可愛すぎる。天使か。

と、そうじゃなくて。

「次の春休みか夏休み、2人でカールスラントに行きたい思うんだけだ」

「えっ!? そ、それって……」

「ちゃんとエーリカのご両親にも挨拶がしたい。まだ少し、準備は必要だけど、いいかな?」

俺の言葉にエーリカの顔が華やぐ。

「……うん、うん!きっと2人とも喜んでくれる。でも、不思議だなあ」

「何が?」

「夢の中でね、未来の君と一緒に居たんだ。『天使がいる』って言ってくれて……まるで夫婦みたいだった」

照れながら言うエーリカの言葉に思わず身震いした。もし本当のことなら、俺たちはそれぞれ夢の中で未来のパートナーにあっているということになる。

 

「俺も、未来のエーリカに会った気がする。髪が少し伸びていて、雰囲気が大人っぽくなっていて、でも笑うと可愛いのは変わらなかった」

「もう、ナチュラルに口説かないでよっ」

照れ隠しするように胸元に飛び込んで、顔を見せないようにするエーリカ。

まだまだ、あの未来のエーリカには遠いかもしれない。

それでも俺は不思議なことに、エーリカと一緒ならばきっと幸せになれると、確信していた。

 

「エーリカ」

「はい」

「幸せにするからな」

「……うんっ!」

目一杯抱きついてくる華奢な身体の感触と温もりは、決して夢ではない、確かなものだった。

 

終わり


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