ロクでなし魔術講師と東方魔術剣士と禁忌教典 作:KAMITHUNI
何で、昨日は休稿にしたんだろうーーーッ( ̄◇ ̄;)
感想と評価をお願いしヤァス!
「ーーーエラい場面に遭遇しちまったな。 これは、どうするのが正解なんだ?」
頭を掻きぼやきながらも、現状の把握に努める。
顔を羞恥か将又憤怒で紅潮させたフィーベルがプルプル肩をふるわせ目頭に涙を溜めている。
更には、魔術を使ってグレン先生を吹き飛ばしたことによる罪悪感も多少なり覚えているようだった。
それを優しく喩すように背中を撫でるルミア。
如何やら、フィーベルが先生に渡す予定だったバケットを渡す前に先生がルミアに【セルフ・イリュージョン】で化けて先に食べようとしていたらしい。
あいつ、最低じゃねぇーかーーーッ!
「よしよし」
「うぅ〜……ルミアぁぁ……ッ。 グスッ」
「…………」
いや、遠巻きに覗き込んで盗み聞きしてる俺が言えた節じゃねぇーな。
俺も大概に屑な行動をしている事に気が付き、未だ顔を合わせづらいのを懸命に堪えて二人の会話に割って入ることにした。
てか、聞くだけ聞いて立ち去る事に罪悪感を覚えたから無為にする事ができないんだよなぁ〜。
かなりお節介なのは自覚しつつ、自分の根本に諦観しつつ、恥ずかしさを紛らわせるために首を掻いた。
そして、ゆっくりと二人の方へ歩みを進めんのだった。
◇
「ーーーそれで、どうしてこうなった」
「……あ、あはは」
競技会場の裏側。 先生が飛ばされたであろう方向に向けて歩く俺とルミア。 ルミアの手にはフィーベルが朝早くから起きて作った特製のサンドウィッチが入ってあるバケットがある。
どうして、俺とルミアがこうして連れ立って歩いているのか…… 簡単に言えば、フィーベルの為にルミアが動いたというのが一概の理由と言えるだろう。
先ず、俺が彼女達の会話に混じった時点で俺の一人時間は渇望する前に終わった。
ま、まぁ、それは自分から入り込んだ話であるので仕方がない。 諦めるべきだと腹を括った。
そして、ある程度遠巻きに聞いていた話を一通り聞かされた後に、ルミアがあまりのフィーベルの落ち込み様に自分が先生に渡してこようか? と言い出したのだ。
これにはフィーベルも悪いと思ったのだろう。 最初は被りを入れて拒否をしていたのだ。
だけど、なんだかんだで気の強いルミア大天使様は、一歩も退かずに攻める方向だけを変えたのだ。
「私が匿名で先生に届ける代わりにずっと私と親友以上の関係でいてね?」と言ったのだ。
まぁ、これで落ちない人間はいないだろう。 人差し指を立てて唇に添えてウィンク。
俺はその場で鼻血をブッパしかけた。
その大天使様の破壊力が伝播したのか、辺り一帯が男子のケチャップ塗れだったのは当然の摂理だ。
これにはツンツンキャラで定着しつつあるフィーベルも陥落せざるを得なかった。
ルミアにバケットを手渡し、お願いしたのだ。
当然、俺は万事解決ということで一言だけ告げてその場を去ろうとしたのだが、フィーベルが余計な気を使わせたのか、ルミア一人で行かせるのは偲びないからケンヤも付いて行ってあげて、という無茶振りを吹っかけられた。
一瞬だけ吃るが、直ぐに冷静さを取り戻し断ってから去る前にフィーベルから軽い脅迫? を受け、許諾せざるを得なくなった。
その時のフィーベルの悦気味な声色は覚えていた。
「貴方がルミアの為に男爵に怒り狂ってた事を伝えてもいいの?」
こんな事を言われてしまったら承諾しないと行けない。
大人しく観念して、『精神防御』で疲れが取れていないルミアを見守るという形で付いて行くことに成った。
ルミアに聞こえないように俺の耳元で囁いた小悪魔の一言で俺の気が直ぐに変わるのだから、人間誰しも利口なのか莫迦なのか……
いや、俺は間違いなく後者だが、フィーベルは何時からあんな悪い子に育ってしまったのやら。
「……」 「…………」
さて、そんな事を思い耽りながら静かな、僅かな談笑すら浮かばないまま徒歩をしていると先生がベンチでシロッテの枝を銜え込み、今にも餓死寸前の顔色を浮かべていた。
……この前、奢ってやった上に暫くの食事代も渡したはずなんだがなぁ。
後で、その辺の謎もセリカ師匠に尋ねるべきだな。 と軽い尋問を決意した俺は、優しく微笑みかけるルミアの後に続いて先生の元へと向かった。
◇
「うめぇー!! ほんと、生きててよかったぁあああッ!」
涙目を浮かべながら、差し出されたサンドウィッチをガツガツと頬張るグレン先生。
俺は大袈裟だなぁ〜と思いながら苦笑する。
それをルミアは楽しそうに微笑みながら見つめていた。
先生を見つけた後、先程の静寂が嘘のように楽しく談笑する機会が増え、ルミアとの間にあった多少の確実も埋まった……というか、俺が一方的に避けていたのだが気軽に話しかけることが出来ていた。
ま、今でも羞恥はあるが、グレン先生の無邪気にサンドウィッチを食べている姿を見ているとクヨクヨと迷っていた自分が馬鹿らしくなる。
そうして、楽しい時間が過ぎて……
「ご馳走さん! このサンドウィッチ、めちゃくちゃ美味かったぜ!」
「ふふふ、お粗末様です……とは言っても、私が作ったわけじゃないんですけどね」
「ん? それなら誰が作ったんだ?」
「それは本人経っての事で匿名ですが、クラスの可愛らしい女の子からとだけ言っておきますね」
「ふーん。 なぁ、ケンヤ。 お前も知ってんのか?」
「えぇ。 ま、一応…… 俺も同じ理由で話せませんけどね」
俺やルミアがはぐらかしたことに残念がる様子を見せることなく、ただ食後の快楽に浸かっているグレン先生。
その様子にお互い顔を見合わせて苦笑する俺とルミアという構図が生まれた。
少し前までなら考えられないような光景だが、ま、こう言った時間を過ごすのも悪くないと思えてしまう自分がいることに再々気がつかされた。
チリン、チリン……
「ん?」
そんな事をしていると、少し離れた位置から鈴の音が聞こえてきた。 最初は飼い猫でも迷い込んできたかと思ったが、視線を向けると体がその場で硬直する。
は? ま、待て? な、なにがどうなってる?
困惑した脳を放置したまま、その鈴の音から声が聞こえてきた。
「そこの貴方はグレン、ですよね? あの……少し、よろしいですか?」
それは透き通った女性の声。
美しく流麗な声色だった。
グレン先生は突然背後から声をかけられたことで多少の苛つきがあり、その場で足を止めて
「はいはい、全然よろしくありませーん、俺達、今、すっごく忙しーーって、ぇえええええええええええええええええええええーーッ!?」
よ、ようやく気がつきやがったか!! あの馬鹿兄弟子!!
今、お前がその口調で反応した御方にもし護衛でもいたりしたら、即刻その場で首を切り落とされてたぞッ!!
ということで、俺は既に恭しく片膝をつき平服の意志を見せた体制を取っていたのだ。
「あら? 貴方もいたのですね? ケンヤ。 お久しぶりです」
万物を癒す微笑みがあるとするなら、これしか無いと言わんばかりの慈愛なる微笑を向けられる。
だが、内心ではバクバクの心臓によって張り裂けそうだ……決して恋情でそうなっているわけではない。 ただ緊張で吐いてしまうと錯覚してしまうほどに動揺しているのだ。
「は、ハッ! 陛下もお変わりなく御壮健であられるようで、俺……じゃなかった。 僕も嬉しい限りでございますッ!」
「ふふ、そんなに畏まらないで下さい。 今の私は一市民と変わらない、只のアリシアですから、ね? それに、貴方と私の仲……とでも言えばいいのでしょうかね? この場合は…… そういうことですから、是非、頭をあげてください」
「おい、ケンヤ……てめぇ、いつの間に、女王陛下と……いや、わかった。 セリカだな……お前も苦労してんな」
や、やっちまったかもしれねぇわ…… 大体、俺がこんな言葉遣い事態出来るはずもねぇーんだよッ!!
てか、陛下こそ、もっと高貴に見下してくださって構いませんよ!? なんで、下々の俺の方が敬語下手なんだよッ!!
というより、グレン先生や平服しながらも、俺の肩に手を置いて、何かを察するの止めて。 悲しくなる……
てか、ルミアさん! 貴女も驚いてる場合じゃないでしょう……が。
そこまで思い耽って気付いた。
あ、そうか……ルミアにとって、彼女は……
突如、俺たちの前に現れたのは赤いドレスに碧い水晶石を首から下げたブロンド髪の長身女性。 見るものを魅了する程の美貌を持ち合わせ、民草から慕われる高貴な御方……アルザーノ帝国女王アリシア7世だった。
◇
今から、3年ほど前の事だ。
丁度、魔術に対しての信仰心といったものを欠如していた頃の話だ。
故郷を失っていた俺は各地を転々として拠点を決めるわけでもなく、その場で依頼を受けては金を稼ぐことで何とかして5年ほどは生きながらえていた。
その時の俺は、誰に対してもキツイ態度を取り、人間の事をあまり信用していなかった。
そんな時に、アルザーノ帝国へ訪れた際……
『ん? あッ! お前……ケンヤか?! ケンヤ=サクライーーーッ!!』
何故か、街のど真ん中で師匠と久し振りの再開を遂げた。
処が変わって、師匠と話を久し振りにする為に居酒屋へ向かうことになった。
勿論、適当なでっち上げで俺の正体を隠すつもりでいた。
こんな所に来ている理由も、村が焼失したというものではなく、ただ旅をしているだけだ、と言うつもりだったのだ。
しかし、師匠は粗方、俺の諸事情を知っていた。
曰く、村が『天の知慧研究会』に焼かれた。
曰く、天涯孤独の身となった俺が最近噂になっている【黒蒼狼】だとか。
曰く、悪童退治に熱を割いている、とか……
それを知っていた師匠に対して多少の抵抗は有りはしたが、彼女なら知っていたとしても誰かに言いふらしたりしないだろうと、其れなりの付き合いなので理解出来た。
だけど、彼女はそれを知って尚、俺に平然とも話しかけられるのかが不思議で仕方がなかった。
それを尋ねると、一瞬だけ素っ頓狂な顔を浮かべ、直ぐに腹を抱えて笑い出した。
そして、落ち着くと同時に、俺の頭をクシャクシャに撫でて言ったのだ。
『私はお前の第二の母親だぞ? そんな事で息子を軽蔑する様な親がいるわけないだろ? それが、悪事なら怒るし、一発殴る。 それは変わらない。 だが、それで縁を切れるなんて思わないことだなーーーッ!』
まあ、それで多少感涙して、旧交を温めた事は
その後、彼女の言いつけで2年後のアルザーノ帝国魔術学院への入学を嫌々ながらに半ば強引に決定事項とされ、その際に少しの間だけ彼女の伝で何故か……本当に何故か……王宮暮らしを送る事となった。
いや、どういう経緯だよ! 今思って見ても、やはり異常である。 幾ら、師匠と陛下が旧知の仲であられたとしても普通は民草を受け入れる王室があっていいのか?!
だが、俺は何故だか受け入れられ、更には陛下のお心遣いで帝国史と呼ばれる学問を教えて下さる講師を紹介していただいたり、体を鈍らせないためと言って、【英雄】とも呼ばれる最強の剣士、ゼーロスさんと稽古まで付けさせて頂いたのだ。
勿論、最初のうちは刀の形状や東方剣術に慣れないゼーロスさんに其れなりの手数で打ち込めたが、斬り会えば斬り合うほどに地力の差が出てきた。
勝率では五分五分だが、今、斬り合えば正直どうなるかわからない。
とまぁ、こんな感じで王室暮らしをしていて、勿論、陛下とも対面させていただいた訳だが、俺は平凡な田舎育ち。 高貴な話し方などは到底不可能であり、其れなりに不遜な態度を取っていた。 それと、彼女からの御厚意は有難く頂戴していたが、王室の沽券の為に実の娘を捨てたという話を内々から聞こえてきて、あまりいい気分ではなかった。
だからだろう……
俺は一度、聞いたのだ。 失礼に当たると知っていながら、相手が傷付く事を知っていながら、俺は尋ねた。 尋ねられずにはいられなかったのだ。
陛下が優しく寵愛に満ち溢れた御仁であるからこそ、俺はこの事を聞かずして御厚意に甘えるわけにはいかなかった。
『アナタは、捨てたエルミアナ王女の事をどう思ってたんだ?』
それを聞いた瞬間、彼女は直ぐに哀愁漂う表情を浮かべ、静かに窓辺に視線を向けた。
それが何を意味するのか、俺には分からない。
ただ、一滴の雫が頰を蔦っているのは分かる。
そう、それが答えだった。
確かに、親としては失格だった。
実の娘が『異能者』であり、その『異能者』に対する迫害が強く、王室の存亡が掛かっていたとしても、親が子を捨てる事が有ってはならない。
どんな理由があろうとも、それだけは親としての責任から逃れただけだ。
ただ、俺が知りたかったのはそこでは無い。
俺が理解したかったのは、『心』。
例えば、愛していなくて実の子を捨てる親なら、もう人間として終わった存在だ。 それは、只の生物に過ぎない。
希薄な生物だ。 ただ自分の欲の為だけにしか行動できない屑など、そこらに生える雑草以下である。
だが、愛していても何らかの理由で捨てざるを得ないのなら、彼女は親として失格だとしても、人間としての道理は通っている。 恐らく、エルミアナ王女が『異能者』と発覚した時、かなり上の人間は陛下にエルミアナ王女の死刑を進言したはずだ。 しかし、彼女はそれだけは決して許さなかっただろう。
だから、捨てた。
たとえ、自身の手で育て上げることが出来なくとも、彼女が一人の人間として育ってくれるなら、それだけで喜びを得られる。
陛下はエルミアナ……ルミアを捨てた冷酷な女性である。
最初は、そう認識していた。
だが、陛下の流した涙が偽物でないことぐらい、人として腐っていた俺でも分かった。
だから、俺は彼女が悪人でない事を認識し、一つだけ詫びを入れた。 そう、尊敬できる女性として……一市民として、陛下の寵愛を受けるものとして……そして、彼女が信じるモノを俺自身が信じるモノとして学院に入る事を許諾したのだ。
◇
それでも、ルミアは拒絶した。
人払の結界が大掛かりに発動されていることはわかるが、あまりの動揺具合に俺もグレン先生も頭を掻き毟る事しか出来ない。
陛下が久しく邂逅して嬉しく思う愛娘の存在。 ただし、それを許容するかはその娘自身である。
たとえ、それが一国の存亡が掛かった事でも、ルミアを捨てた事実は覆らない。 それが、当時は子供なのだから尚更だ。
それは、本人が1番理解しているからこそ、歯痒い。
ルミアは平服してから、立ち上がり、その場を駆け離れた。
「……やはり、今更、母親なんて、思ってくれませんよね。 何せ、私はあの娘を捨てたのですから」
眉を顰め、悲しげな顔を浮かべた陛下の御姿は迚も見ていられるものでは無かった。
◇
「……すみません。 俺、ルミアを探してきます」
陛下が立ち去った後、俺たちも午後の部が始まる直前ということで、グレン先生が戻ろうと促してきたが、俺は其れを拒否してルミアを探しに行くことを伝えた。
「そうか。 わかった…… ただ、お前の競技までには戻ってこいよッ! じゃないと、流石にマズイからな!」
「はい! わかってます!! それに、粗方の場所はわかってますよ」
俺は其れだけを言い残して、その場を去った。
「…………」
(いた!)
誰の目にも止まらないような木陰にあるベンチ。
そこに座る少女は見間違えるはずがない、ルミア=ティンジェルその人だった。
一人になりたい気分であろう沈んだ彼女からは、覇気という生気が感じられず、只々顔を俯ける事しかしていなかった。
(……よく考えたら、あんな後は一人になりたいよな。 ここで、俺が出て行ったところで、何の解決にもならない……戻るか)
「ーーーなんて、言えたらどれだけ俺の人生はイージーモードだった事やら」
去ろうとしていた態勢から後ろに向き直り、僅かな諦観を含んだ思考を浮かべながら、一歩、また一歩と大切に踏みしめながら、ルミアに近く。
ーー彼女は、俺の事を聞いても逃げなかった。
ーー彼女は、俺を信じてくれた。
ーー彼女は、俺の存在理由を否定しなかった。
だから、俺も彼女を信じ抜けるように、話ぐらいは聞いてやらないと、この恩義はきっと返せない。
ルミアだけじゃない恩義…… 勿論、陛下に対する恩義もある。
だから、俺はお節介だとしても突き進む。
そうだよ。 俺はそういう生き方しか知らないんだ。
結局、悪ガキぶっても、根底にあるのは誰かを救いたいという願望だけ。
偽れざる気持ちだ。
「よ! ルミア。 何、ロケットなんて眺めてんだ?」
だから、俺は笑みを向けたまま、彼女の無意識に張られていた境界線へ足を踏み入れたのだ。
長い上に、全く進んでいない。
主人公の過去話に詰め込め過ぎたァアアアアーーーッ(>_<