ロクでなし魔術講師と東方魔術剣士と禁忌教典 作:KAMITHUNI
最後の方はオリジナルです(^。^)
てか、ぶっちゃけ最後はいらなかった気がするーーッ!
でも、入れたかったから入れた! そこに後悔も懺悔もないーーッ(≧∇≦)
評価や感想をお願いしヤァス!!
「【白銀の氷狼よ・吹雪纏いて・疾駆け抜けよ】ッ!」
先生が繰り出した軍用魔術【アイス・ブリザード】が相手を凍らさんと大気を冷やしながら直線上にいる敵へ向けて突き進む。
高々C級の攻性呪文と思うかなかれ。 軍用魔術は学生が習うであろう魔術と違ってどれも殺傷性が高い魔術だ。
この【アイス・ブリザード】も同じで直撃すれば相手は嫌が応にも死を具現化するいわば凶器だ。
さらに軍用魔術は扱いが難しく、基本的に高等な技術が要求されるが……流石はグレン先生だ、それを難なくやってのけた。
「効かないーーーッ!」
「なーーーッ!?」
しかし、大剣を盾の様にして前に突き出し、敵は極冷の吹雪を突っ切った。
「ヤァアアアアーーーッ!!」
少女は大剣を上段に構えて、跳躍。 そのまま落下速の勢いをつけたままグレン先生目掛けて剣を振り降ろす!
が……
「させるかよッ!
「ムッ!?」
だが、俺が【投影】した『干将・莫耶』にてその剣を受け止める事でグレン先生やルミアに当たらない様に防ぎきる。
「グッ……!」
されど、状態の悪さは明らか。 敵は上から振り下ろした威力を上乗せした重い一撃であるにもかかわらず、俺は二刀の剣で其れを抑えきるので手一杯だった。
クロスガードと言われる双剣使い必須の防御術。
かなり高等な剣技で、相手の攻撃を殺す事に重きを置いた防御術。 これを崩す事は至難の技であるはずだった。
「私のーーー邪魔をしないで」
「はぁ!? なーーーッ!?」
少女が何かを呟いたかと思うと、途端に数倍の重さとなって剣に亀裂を入れ始めた。
ピキリ、ピキリ…… と砕け始めた『干将・莫耶』が悲鳴を挙げる。
このままでは、安易に双剣が崩される!
そう判断した俺は、双剣に魔力を注ぎ込むことで強化する。
「【
強化した双剣で全力の膂力を持って、少女を弾き返さんと血を駆け巡らせる。
「ムッ、しつこい……! いい加減に、私とグレンの邪魔をしないでッ!」
「う、るせぇええッ!! 剣の死合してるときぐらい、その敵を見ろよッ!! このガキィイイーーーッ!」
「ケンヤッ! 危ねぇッ!!」
「は!? ッーーー! クソが……ッ!」
グレン先生の声が聞こえたと同時に、少女の他にもう一人の長身男がいる事を思い出し、視線を向けたがもう遅い。
「ーーー【雷帝の閃槍よ】ッ」
静かな詠唱と共に差し出していた人差し指から雷の槍が俺たちを穿つために放たれた。
俺は内心で悪態を吐く。
(少女の肉弾戦と男の遠距離魔術砲撃……ッ! 防ぎ切れないッ!!)
俺は覚悟を決め、できるだけ後ろにいる先生やルミアに当たらないように体を盾にしようとするが……
「ギャウンッ!!」
「「「へ?」」」
雷は俺を貫く事なく、少女の後頭部に弾けるように直撃した。
そう、貫いたわけではない。 どちらかと言えば叩きつけたような音が聞こえてきた。
少女はそのままパタリと倒れ込み、静かになった。
あ、れぇ? あれあれぇ? な、何だろうか……さっき迄の剣戟が嘘のように静かに感じられるなぁ……
急なコメディー展開についていけない俺たちに、先程から陰に隠れて顔までは認識できなかった長身男性が姿を現し、グレン先生が驚きの様子を見せて、名前を呼んだ。
「な!? あ、アルベルトォォォォオッ!?」
「久しいなグレンーーー」
こうして、宮廷魔導師団の二人の強襲はグレン先生の知り合いだからという事で幕を閉じた。
てか、何の問題も解決してないよね?
そして、全く話についていけない俺とルミアは顔を突き合わせて、困った顔をする以外に何もできなかったのだ。
◇
「え、えーと……こいつらは、俺の前職の同僚だな。 コッチのちびっ子が宮廷魔導士団 特務分室 執行官No.7《戦車》のリィエル=レイフォード。 んで、コッチの目が怖い紺色髪が同じく特務分室 執行官No.17《星》のアルベルト=フレイザーだ。ま、こいつらは敵ーーーじゃないと思いたいが、その辺はどうなんだよ」
「その紹介の仕方に異議を申し立てたいが、今はいいだろう。 そうだな。 現状では貴様達と敵対する意思は無い」
アルベルトさんと呼ばれた長身男性が未だ警戒心を解かない俺やおびえた様子を見せるルミアを見て威圧感があるものの、敵対の意思がない事を表明した。
それにしたって、“現状”だと、か……もしかしたら、敵対する可能性も無きにしもあらずなのか。
この人達相手に真面にぶつかり合いたくねぇ。 てか、その場合だったら手元に愛刀ぐらい持ってきときたいわ。
「じゃあ、何で俺たちを襲ったんだ?」
グレン先生の疑問は最も。
突然の強襲は間違いなく、俺たちを軽く屠れた可能性があるほどの突撃だった。
あれ程の威力の攻撃を裏路地とはいえ、民家で平然とぶっ放すこの少女が俺たちに害意が無いと信用できるはずもない。
だが、少女は出会ってから未だ変化しない能面でさも当然のように告げた。
「ん。 それはグレンと決着を付けるため。 それ以外はどうでもよかった。 それよりグレンーーー決着を付けよう」
「このバカッ! 今はそういう時じゃないでしょうがッ!!」
「うぅ〜……痛い痛い」
グリグリとグレン先生はリィエルと呼ばれた少女に拳を押し付け、少女はブラリとぶら下がっていた。
え? 何だ、この和やかムード。
先生達仲良すぎだろ。
その心情はルミアも思っていたようでクスクスと微笑んだ。
「ふふ。 皆さん、仲がよろしいんですね」
「バカ言え。 こいつらと仲が良いなんて、死んでもゴメンだね。 だが、戦力としてはこれ以上ないぐらい頼りになる……頼む、力を貸してくれ」
と、真面目に頼み込むグレン先生を品定めするように視線を移すアルベルトさん。
次の瞬間には諦観した様子で告げた。
「……何から始める」
「! そうだな。 先ず、今の状況について一通り教えてくれ。 そこから打開策を見つける」
グレン先生の話を最後に、俺たちは持ち得る情報を開示した。
◇
「ーーー成る程。 全容が見えてきたな。 王室親衛隊の暴動か。 原因は十中八九、陛下に関係する何か……そして、それはルミアを殺す事で達せられる、というところか。 だがわからねぇ……なぜ、そこでルミアを狙う必要性がある?」
「わからんが。 この件には『天の知慧研究会』が関与している可能性が高い。 そこに、そこの王女を狙う理由があるのだろうーーー」
「あぁ、そうだろうな。 だとすれば、遡及に俺がセリカの言う通りに陛下の前に行くしか道はねぇだろ。 だが、どうやって其処まで行くかだな」
す、スゲエ…… 先生が真面目に会話してる。
どこに感心してんだって話だろうが、先生は基本気怠げに過ごすダメ人間だ。授業は真面目にやるようになったが、その基本姿勢は変わらない惰性先生だ。
だから、そのギャップが余計に際立って俺の関心が強いんだよ。
しかし、そんな先生達でさえ手詰まり状態。
うむ、どうしたものか……
そこで、手詰まった俺たちに意見を出したのは、リィエルだ。
「ん、私にいい案がある」
「ほう、言ってみろ」
「ん、先ず私が親衛隊に突っ込む。 次にアルベルトが突っ込む。 更に、この人も突っ込む。 最後にグレンが突っ込む。 それで万事解決」
おい! それじゃ意味ねぇーだろっ!
てか、俺の名前は!? 何で俺だけ指差し何だよッ!?
相手は其れなりの手練れが大勢いる王室親衛隊だ。
直線的に突っ込むのは宜しくない。
「いい加減、その脳筋思考は止めろッ!」
「痛い痛い……」
再度グリグリを繰り出す先生。
うむ、こうして見てると、和む。
やっぱり先生はロリーーーー
「ケンヤ、お前の単位落とすからな」
「ちと待って!? それは軽率ですよッ!! 俺が何したってんだよぉ〜!! 理不尽すぎんだろーーーッ!!」
「お前の考えてることはなぁ、最近セリカにも言われてるから察せれる様になって来たんだよぉーーーッ! 俺はロリコンじゃねぇッ!! コンチクショォッ!!!」
と軽い喧嘩? が起きたが、その場はルミアの天使の微笑みで霧散し、どうにかして緊張感が戻ってきた。
現状を打破するには先生やルミアを陛下の前へ連れて行くことが必須条件。
それが出来なければ、俺たちはどうしようもない。
敵が何を目的として、ルミアを付け狙うのか、更にはルミアを狙う為に陛下に何をしたのか……
考えるべき謎は一向に消えない。
だから、俺はある思い付きの作戦を告げてみることにした。
「ーーー皆さん、【セルフ・イリュージョン】は使えますか?」
◆
所変わって魔術競技祭の会場。
ここでは、グレン先生やルミア、ケンヤがいない事で悪戦苦闘する2組の姿が写し出されていた。
午前の部とは打って変わって、2組は不調に追い込まれ、現在、ケンヤの代わりにカッシュが『探知&開錠』に出ていたが、何の練習もしていない彼が勝てる道理など持ち合わせてはいなかった。
『アァトッ! ここで『探知&開錠』の競技に代打として急遽出てきたカッシュ君が脱落ーーーッ! 2組、グレン先生がいなくなってからというもの、かなり劣勢に追い込まれていきます! 午前の勢いは完全に衰えたかァアアアアーーーッ!!?』
「くそ! すまねぇーみんな!」
解説者の煽りに腐らずにやってきた2組。
しかし、カッシュの謝罪は仕方がないこととして誰一人として攻め立てるものはいない。 責められるべきは今この場にいないケンヤだが、そのケンヤも何か訳があって来れないという事は、以前のテロリスト襲撃事件で彼の行動力を確認したクラスメイトだからこそ理解できる。だから、誰も彼の事を悪く言わないし、ルミアやグレンにも同様の気持ちである。
(どうしよう……先生に頼まれたけど、どう見ても士気は下がってるーーー私じゃあ、これを盛り上げることが出来ない。 だって、私自身が先生達がいない事に動揺しているから)
泣き言を言っても仕方がないことぐらいは理解している。
けれど、あと一つ1組に負ければ、その時点で2組の優勝は不可能。 これで盛り上がっていこうと言える精神力は学生である彼女達に要求するには些か難易度が高すぎる。
そして、誰もが俯きかけたそのときだった……
「待たせてしまってすまなかった」
全員が声の方へ視線を向けた。
それは一種の喜悦だった。
先生が帰ってきた。 これで士気が戻るとクラスメイトは全員思ったはずだ。
しかし、その思惑は斜め下に外れた。 何せ、その場にいる人物は見知らぬ男と人形のような顔立ちをした幼気な少女が立っていたからだ。
これには一同困惑せざるをえない。
システィーナがクラスのリーダーとして2人の事について尋ねた。
如何やら、グレン先生の友人で、彼がこの競技祭で活躍する姿を一目見ようと来たらしいが急用のため、グレンは来れなくなった。 その為、グレンに頼まれて2組を優勝に導くように伝えられたらしい。
だが、当然、知らない男からのそんな言葉を信用するほどバカな者は誰一人としていない。 それはそうだ。 幾らグレンの友人と言っても、本人がいないのではその確証が一つもない。
更には、自分達の指揮を見知らぬ誰かに預ける事は罷り通らない。特に、次の一戦で負ければ其れで優勝は無くなるのだから余計だ。
だから当然、システィーナはその申し出を断ろうと前に出たが……
「お願い……信じて」
「え? あ、貴女は……」
突然手を少女に握られたシスティーナ。
しかし、それだけで彼女の顔色はかなり変貌した。
それは驚愕だった。 何かに気がついたように見知らぬ長身男性に視線を送る。
……確信とまでは言わない。 だが、ある程度予測が付いた。
だが、その事をクラスに伝えれば確実に軋轢を生みかねない。
だから、システィーナはある決断をした。
「みんな、この申し出を受けましょうーーーッ!」
「「「「なーーーッ!」」」」
クラスが驚きに包まれた。
仕方がないだろう。 何せ、今迄断るために前に出たはずのシスティーナが少女の手を握った瞬間に受け入れる方針に変えたのだ、疑り深くなっても致し方がない。
そう、それはシスティーナのある一言が無ければ、きっとこの話は無かったことになっていたはずだ。
「いい? 私達がグレン先生がいない間に負けたら、あの人が何て言うと思う?」
そこで、全員が逡巡した。
それはまるで同じ夢を見ている気分だろう。
しかし、それ程までにクラスが思い浮かべた光景は一緒だ。
『ゴメンねぇ〜! 急にいなくなっちゃってぇ〜! 僕がいなかったから優勝できなかったんだよねぇ〜!!』
超調子に乗ったグレン先生……誰もがその光景を見た瞬間に燃え上がった。
そして、クラス全体が湧き立ち、立ち上がることとなった。
そう、ここからが2組の逆襲撃の始まりだった。
◇
クラス全員が盛り上がる中、俺は静かに赤い外套を羽織り佇む。
「皆、頼んだぞ……」
現在、俺は魔術競技祭の会場にある観客席にいる。
前にある特等席をちゃんと見るための場所を陣取っているのだ。
特等席というのは勿論、陛下やセリカ師匠、それに学院長もいる席の事だ。
配備された親衛隊はゼーロスさんを含めて5人程ーーー
陛下を守るには乏しく感じる人数だが、先程追いかけられた者たちよりも手練れだ。
特にゼーロスさんは飛び抜けてヤバい。
今、愛刀が無い状態で真っ向から戦えば必然的に負けるであろう覇気だ。
(ちっ……刀を【投影】してもあの人に通用するモノが出来ないからな。 仕方がないけど、今回は
それで、俺の役割の一つである、特等席の動きの観察を続ける。
出来るだけ気配を消し、その辺りに敏感なゼーロスさんに気付かれないように細心の注意を払うのだった。
◇
赤い外套が丘の上で風で靡く。 無数の剣が身体中に突き刺さり其れが激戦の後であることを物語った。
白く逆立った髪。 よく鍛えられた身体。 恵まれた体躯。
誰かを助けたいと願った青年だ。
【理想】を叶えるために、凡人から這い上がった『人類の守護者』は仲間や助けた人に裏切られ、殺された。
しかし、青年は其れを憎んではいなかった。 それが人の望んだ末路なら、自分は其れを受け容れると言った。
もう、破綻している。 裏切られたのに殺されて、尚、人の為ならばという自己犠牲を望む青年の存在は俺にとって御し難い存在だ。
ただ、彼は最後の最後に人々の笑顔を見たかっただけなのだ。
誰かが死ぬのが嫌だった。 目の前に助けられる命があるのに助けられないのが嫌だった。 苦しんでいる人が存在するのに手を差し伸べられないのが嫌だった。
それで青年は
誰かにその意志を継いで欲しいと、心の隅で願った。 叶わないはずの願いとわかっていても、願った。
無限の剣が内包された世界。 彼はコレを遺して、自身の存在価値を残そうとしたのだ。
それは、叶うはずもない奇跡だった。
誰かの為に成ろうとした青年『衛宮 士郎』。その成れの果てにあった世界を心象に具現化した世界が、同じ様な魔術回路の起源を持つ存在に譲られてしまった。
そう、叶ったのだ。 『衛宮 士郎』が紡いだ物語を引き継ぐものが現れた。
それが俺……『桜井 剣夜』という一人の魔術師だった。