ロクでなし魔術講師と東方魔術剣士と禁忌教典 作:KAMITHUNI
最悪の三拍子( ̄◇ ̄;)
感想や評価をお願いしヤァスッ!!
『な、何ということだァアアアアッ! 先程まで死に体も同然だった2組が息を吹き返して来ましたァアアアッ!! 一体、何があったのでしょうかーーーッ!!』
「おいおい、実況さん。 ちと興奮しすぎだろ」
監視している間、時折聞こえてくる実況に耳を傾けて2組の様子や順位を聞いているのだが、如何やら向こうは上手くいっているようだ。
ちと絶望の淵に入りかけていたが、今では午前と同じ様に活力に漲り、全員が目標に向かって突き進んでいるようだ。
それに、最後の『決闘戦』を残して、現在は一組と同着1位。
つまり、次の『決闘戦』で総てが決まる。
気を引き締めろよ。 カッシュ、ギイブル、フィーベル……ッ!
ルミアと陛下のハッピーエンドはお前達の結果によって左右されんだからなーーーッ!
「さて、俺もそろそろ始めるか……【この体は剣で出来ているーーーーーーーーーーーーーーー」
仲間達が優勝する事を信頼して、俺は、
◆
『おっと!? これは、2人の実力が拮抗していますッ!! 互いに互いがレベルが高い魔術を繰り出しては、それを避けるッ! ハイレベルな戦いが繰り広げられてーーーおぉ!! 先に相手の動きを止めたのはギイブル選手だぁあああッ! 【アース・エレメント】を召喚し、敵を捕縛しましたッ! これには、善戦を続けていたクライス選手は身動きが取れませんッーーーあぁとッ! クライス選手、ここで棄権ですッ!! ギイブル選手、先鋒のカッシュ選手の敗戦を取り返しました!!』
「さ、サンキュ、ギイブル」
感謝を述べるカッシュを闘技場から降り立ったギイブルが眼鏡を押し上げて満足げに呟く。
「フン、僕は当然の事をしたまでだ。 それに、次の一戦に勝てなければ意味はない。 わかっているなシスティーナ。 あとは君次第だ」
「えぇ、わかってるわ。 まったく、ギイブルは相変わらず素直じゃないわね……必ず勝ってくるわ」
システィーナは覚悟を決め、最後の戦いへと足を踏み入れる。
その前に、アルベルトが前に出てある宣言をした。
それはクラス全体を盛り上げるための余興と言えばそれまでだが、これは必然的に活気を上げるに十分な魔法の言葉。
それこそ……
「2組が優勝すれば、お前達に好きなだけ飲み食いさせてやる!……グレンはそう言っていたぞ。 期待、しているぞーーー」
その言葉にクラスが湧き上がる。 軽い阿鼻叫喚が起こり、凄まじい喧騒があたりを木霊する。
さらに負けられなくなったシスティーナは上にいるアルベルトに向けて強い笑みを浮かべて答えた。
「えぇ。 期待、していてくださいーーーッ!」
やる気に満ち溢れた言葉にアルベルトは微笑みを返す事で意思表示をしたのだった。
◇
「【血潮は鉄で心は硝子・幾たびの戦場を超えて未だ不敗ーーーーーーーーーーーーー】」
身体に張り巡らされた魔術回路が
胸部が疼く。 鼓動が早くなっている事が容易に理解できた。
俺は私、私は俺……されど、本来は違う次元の存在。
干渉するのに必要な魔力は遥かに膨大。 だが、マナ欠乏症の心配は無い。 今、
憑依体験は自身の身体に過去や未来の自分、又はそれに近しい存在の霊媒を体内に宿し、その人物が得た技術や体験した事を体現するモノ。
今の俺は、『人類の守護者』となった『衛宮 士郎』を憑依させ、彼の戦闘技能、及び魔術行使を先取りしている状態。
つまり、俺は魔力を流して、詠唱を途中で破棄しない限り、この身体は『衛宮 士郎』に置き換えられているのだ。
「【たった一度の敗走もなく・たった一度の勝利もなしーーーーーーーーーーーーーーーーーーー】」
真面な刀が作れないのなら、作れるような魔術師を憑依すれば良いと、最初は興味半分で覚えた憑依体験だが、コレには大きなデメリットが付き纏う。
魔力を膨大に使うことは勿論、自身の自我を失う可能性がある事だ。
魔力は、彼の能力の一つである『世界の干渉』によってほぼ無窮の魔力を触媒にして行う事が出来る。
憑依した後は世界から魔力の供給は無いが、それでも第一のデメリットは解決できる。
只、自我を失う点はかなりヤバイ。 何せ、他人の
俺の場合は、魔術行使されたものとはいえ、精神体に魔力はない。 つまり、【
だが、加減を間違えれば只の廃人となる可能性のある危険な術式だ。
『ハインケル選手の【ファイア・ウォール】に流石のシスティーナ選手も後退したッ! これは絶体絶命かァアアアッ!』
実況が現在の様子を伝えてくる。
ふ、バカ言え。 フィーベルが絶体絶命? 彼奴がそんな児戯を乗り越えられない訳ねぇよ。
その程度の修羅場はあのテロリスト事件で克服済みだ。
そんじょそこらの箱入り娘と比べるんじゃないぜ。
だから、俺もこうして安心に『衛宮 士郎』に置き換える事が出来てんだ。
犬猿の仲だし、彼奴は気に食わない時もあるけど……誰よりも強くあろうとする彼奴がこの程度の逆境を乗り越えられないはずが無いという信頼はある。
だから……
(勝てよ、フィーベル……ッ! お前がお前である限り、この戦いは負けない筈だ)
「【担い手はここに一人・剣の丘で鉄を打つーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー】」
『こ、これはッ!? 改変呪文ッッッ!! な、何ということでしょうかーーーッ! システィーナ選手! なんと、高等技術である改変呪文を行ってハインケル選手の足を止めましたッ! 風が体に纏わりつくようにハインケル選手の身動きを自由にさせませんッ! あーっと! ハインケル選手が手間取っている間にシスティーナ選手、得意の【ゲイル・ブロウ】で決着をつけましたァアアアアアアーーッ! これで、グレン先生率いる2組が何と起死回生の優勝ダァァァァッ!!』
「ふ、やったな……じゃあ、俺も仕上げと行きますか!!」
俺は口角を吊り上げて、終盤まで差し掛かった詠唱を告げた。
「【ならば我が人生に意味はいらず・そう・この体は無限の剣で出来ていた】ッ!!」
この、『衛宮 士郎』が人類を救う為に得た能力を『桜井 剣夜』はたった一人の女の子の為に使うッ!
『衛宮 士郎』が万人を救う【正義の味方】なら、『桜井 剣夜』は望む一人を救う【守護者】でいいッ!!
俺は“決断”したんだッ! 彼女が笑っていられるような世界を作るって決めたんだッ!! その為に、俺は戦うッ!!
幾度と無く訪れる【絶望】が彼女を呑み込もうと言うのなら、俺は悉くを持って凌駕しよう……準備はいいか? 【絶望】。 惨劇のよういは十分かーーー?
◇
「ーーー今年の魔術競技祭で優勝したクラスの担任講師と代表生徒は、王女陛下から直々に勲章を受け賜る栄誉を得る……コレを待ってたぜ」
そして、優勝後の表彰で壇上に上がったアルベルトさんとリィエルに視線が移り、2人の様子を怪訝に見ていた生徒や教員、それにゼーロスさんまでもが動揺を露わにする。
「「「「なーーーーッ!?」」」」 「やっと来たか!」 「やっぱり……ルミアだったんだ」
そう、化けの皮を剥いで現れたのは変装していたグレン先生とルミアだった。
これが俺たちの最大の賭けとなる作戦だった。
先ず、アルベルトさんとリィエルには囮となってもらうためにグレン先生とルミアに変装し街中を逃げ回ってもらう。
さらに、グレン先生やルミアは2組を優勝させるため、一か八かの賭けとしてアルベルトさんとリイェルに変装し指揮を取ってもらう。 その際、王室親衛隊の動きを逐一報告する際に俺が今いる観客席で確認する。 そして、其れを魔導器で報告する役割を担った。
そして、これが上手いことハマった感じだ。
ま、何故だかフィーベルやセリカ師匠にはバレてたみたいだがな……
「貴公は逃亡中のはずだーーーッ! どうして、この場にいるのだッ!」
「なぁに、簡単な話だよ。仲間と途中で入れ替わったのさ。【セルフ・イリュージョン】でな」
「ち! この逆賊を捕らえろッ!!」
「「すっこんでろ (邪魔だ)ッ!!」」
セリカ師匠が断絶結界を、俺が観客席から無数の矢を解き放った。
それによって駆けつけた騎士は爪弾きにされ、断絶結界内部に入れないようになった。
これには全生徒や講師、更には見に来ていた観客までもが動揺を隠しきれない。
「さて、俺も行くか……【
蒼い術式が俺を包み込み、断絶結界の中へ干渉し、転移した。
その時に周りの観客がギョッとしていたが、其れを気にする必要が無いと割り切った。
「ーーー私自らの勅命です……ゼーロス、そこの娘を打ち倒しなさいッ」
(う、そだろーーーッ?)
俺が転移すると、グレン先生とルミアに対面するゼーロスさんが剣を構え、陛下の残酷無慈悲にルミアを射抜いている場面に直面した。
そらよりも信じられないのは、陛下自身が愛しているはずのルミアを打ち倒せと言ったのだ。 何がどうなっているッ!?
「おいッ! セリカッ!! どうなってやがるーーーッ!!」
グレン先生の声が荒げ、陛下の近くにいる師匠へ目をやるが、師匠は俯いて歯を食いしばったまま動こうとしない。
おかしい……幾ら何でも、俺はともかく、グレン先生まで危ない目に遭っているのだ。 師匠が息子のピンチを目の当たりにして動こうとしないのはどう考えてもおかし過ぎる。
「……」
崩れ落ちたルミアは目から正気を失わせ、地面に雫を垂らす。
絶望に直面した彼女の精神は既にズタボロで立つ事すら出来ない。
クソがッ!! 何がどうなってやがるッ!!? 考える時間ーーーッ!!? 今はそんな猶予はないッ!!
何せ、ゼーロスさんが二振りの剣を携えてグレン先生やルミアのもとに向かっているからだッ!!
この状況を打開できる方法を持つのは先生だけと師匠が言っていた。
つまり、彼が居なくなればその時点でアウト……いや、その前にルミアを殺されて終わりか。
なら、どうするか? この絶対的不利な状況で彼に対抗できる存在が必ず必要だ。 せめて、グレン先生がこの可笑しい事態を考え付くまでの時間が必ず要る。
そして、おれが転移した事は未だ気付いていないゼーロスさん達。
唾を飲み込む。 無性に喉が乾く。 鼓動が早鐘を打ち、体が火照る。 嫌な汗が服に張り付く。
相手は達人級の武人。 実戦経験も豊富。奇襲など意味を成さない可能性が高い。 幾ら『衛宮 士郎』を憑依させた所で馴染み切れていない俺では太刀打ちできるかは分からない。
そもそも『衛宮 士郎』と『桜井 剣夜』の戦闘技能は根本的に違う。 俺の抜刀術などの一刀の元で叩き潰す攻撃型とは違い、『衛宮 士郎』は双剣による手数の多さや死角からの攻撃を防ぐ事に重点を置く防御型。 それで馴染む言葉ほぼ不可能だ。 相性が悪過ぎる。
だから、この場は、見送って立て直すために煙幕を張って逃げるべきだーーーなんて、思える訳がない。
この機会を逃せば、もう二度とルミアと陛下の確執を消す事なんて出来ない。 それに、ゼーロスさんがそんな児戯な小手先が通用するはずがない。
だから、幾ら分が悪かろうと立ち向かう他に道は無い。
ルミアを護るためには此処で決着をつける!
それに、俺は“決断”したんだッ!
俺は彼奴を護ると……ルミアを助けると決めたんだよッ!!
だったら、何を使ってでもその決断を叶えろッ! それが、俺の存在意義だーーーッ!
「ーーーァアアアアアアッ!! 来やがれッ! 干将・莫耶……ッ」
「「「なーーー?!」」」
投影した干将・莫耶をゼーロスさんに向かって交互に斬りつける。
先程までとは違って、格段に速度の上がった投影と剣速。
体は今迄この動きに特化していたかのように馴染み、地を蹴る力も最小限で軽やかに動けた。
ギョッとした顔を浮かべた面々。 その中には勿論、ゼーロスさんも含まれている。
突然の奇襲にゼーロスさんは対応に手間取っている。
好機だッ!
「グッーーー?! な、めるなぁアァアアアッ!!」
「ナニィッ!? ザケんなっ! これに間に合わせるのかよッ!!」
完璧なまでに放った双剣は、対応不十分ながらに洗練された剣技で受け流された。
【英雄】の二つ名は伊達ではないぜッ! とか言ってみたいが、今ので決められないのはキツすぎるッ!
今の俺は、【投影魔術】に全神経を注いでいるためか、他の魔術での応戦はほぼ不可能。 だから、彼と戦う際は一撃必殺の奇襲でなければ勝てない。
だからと言って、『衛宮 士郎』の力なしでは魔術を使わせてもらうことも出来ない。
それ程に完成された武人は風格も覇気も桁違いに強い。
「成る程、貴公も来ていたかーーーケンヤ=サクライ殿」
「あぁ、久し振りだな、ゼーロスさん。 さすがに今の奇襲を防ぐのは反則的じゃね? 完璧に虚をついたはずだがーーー」
「あぁ、あれには一杯食わされた。 一刀の元に敵をねじ伏せる貴公の戦い方とは異なる戦法だったお陰で対応に遅れた。それに、気配も双剣で斬りつけられるまで気がつかなかった。 しかし、それ故に貴公の剣に何時もの剣気と覇気が軽薄に感じられた。 その程度の軽い剣は容易に受け止められるーーーまさか、鈍ったか?」
怪訝そうな視線で射抜くゼーロスさん。
何つー反則級の慧眼だよ。
もう呆れてモノも言えねぇ……
だけど、其れを見せてはそこから斬り崩される。
だから、大胆不敵に口角を吊り上げ、干将を突きつけた。
「は! 鈍っただ? 勘違いすんなよ。 俺は今のあんたみたいに他人によって動かされるだけの人形に本気なんざ出す必要もねぇだけだよッ! 何が、ルミアを殺すだ! それがあんたらの本当の意志じゃねぇ事ぐれぇ分かってんだ! 何をされたか知らねぇけど、今の迷いのあるあんた相手に負ける通りは無いねーーーッ!」
俺の言葉に苦虫を磨り潰したような表情を浮かべ、余りにきつく食いしばったのか、口から血が滴っていた。
やはりか…… これは、彼等の本心じゃない。 ほんとはルミアを殺す事なんて望んでいない。 だけど、そうしなければならない理由が存在する?
一瞬、視線を陛下と師匠の方へ向けた。
陛下は何処か辛そうに震える手を抑えつけていた。
何とも痛ましい。 これが先程のような冷酷な目を放った人物とは思えないほど哀愁を感じる。
だが、ルミアはその顔を見れない。
だから、彼女の本心が伝わらない。 結局は板挾みだ。
セリカ師匠は無表情だが、何かの意志が伝わるような視線をこちらに向けていた。
彼女の事だ、全部知っているはずだ。 知った上で動けない事態が起きている。 彼女の実力なら軍相手に脅迫させられた所で大した問題ではない。 だったら、彼女自身が秤にかけられた場合でないことは直ぐに分かる。
だけど、動けない。
物理的に止められているわけではない。 もっと抑止に役立つ精神的に追い込む何か……
それも、ゼーロスさんたち王室親衛隊までもを敬服させるほどの精神的支柱で無ければ意味がーーー
“よ! ロケットなんて見てどうしたんだ?”
……待て、何故今それが出てくる。 その過去は今と何の関係がある。
“……ごめんなさい、エルミアナ。 私が、わ、たしが、不甲斐ないばかりにーーー”
だから、なんでそんな過去が今出てくる!
夜に咽び泣いて、ロケットを握りしめている陛下の御姿が何で今頃ーーー
“ケンヤ、知っているか? 条件式の呪殺具は古放されたモノだが、今でも暗殺者なんかが活用していることが多いんだ。 ま、こんな術式だが使い方次第では人に有効活用できるーーー”
(……ロケット、ペンダント、呪殺具、師匠が動けない、陛下、ルミアの死…………そして、グレン先生。 これで導き出させる答えはーーー!?)
「……そう、い、うことかよ」
これは確かにどうしようもない。 俺が出来るのは精々ゼーロスさんの足止めだけだ。 この答えを先生に教えれば最悪の事態は免れない。
下手なことをいえば、その場でデットエンドだ。
そりゃあ、ゼーロスさんが血眼になってルミアを殺しにくるわけだ。
だけど、このままグレン先生が気がつかなければ其れでも終わり。
時間は限られている。
だからと言ってどうしろと? 俺が下手な事を呟けば、それは既にゲームオーバになる可能性が高いんだぞ?!
一か八かの勝負に出ることは出来ない。
俺は、警戒心を最大限に上げたままルミアに視線を移す。
「……うぅ………」
未だ抑えきれない涙が止めなく溢れていた。
当然だ。 実の母親に拒絶されれば誰だってあぁなる。
「……なぁ、ゼーロスさん。 俺は、あんた達が何を盾にされているのかは分かった。 だから、あんたの行いは正義であることは間違いないし、其れを否定する事は俺には出来ない」
「……何が言いたい? 貴公が真実に辿り着いたとて、我々にはどうする事も出来まい。 そこの元王女を打ち倒す事以外に我々に道は無い」
「あぁ、そうだ。 それがきっと正しい正義なんだよな。 あんたは間違いなく【英雄】だよ。 誰かの為に万人を救う正義の味方に、あんたは限りなく近いーーー だけど、其処にあんたの意志がない様に感じられるのは俺の気のせいじゃないはずだ」
「……」
俺の言葉に無言で耳を傾けるゼーロスさん。
様子を見計らい、言葉を続ける。
「あんたは【英雄】さ。 それは誰もが認める事実で、誰もが誇れる存在だ。 只、ゼーロスさん。 あんたは
「賭けだ、と? ケンヤ殿……わかっているのか? 今は我等と貴公等は敵同士、そんな幼稚なモノで決着をつけるなど言語両断ーーー」
「まぁまぁ、人の話は最後まで訊けよ。 賭けって言っても、ちゃんと真面な話だーーーそうだな。 俺はグレン先生
「「「「何ッ!?」」」」
「け、ケンヤ!? そ、れはダメだよっ! 自分を犠牲にしちゃダメッ!」
泣き噦った顔のままルミアは俺を止める。
しかし、俺は優しく微笑みかけて、安心させるように喩す。
「大丈夫だーーーそこの先生が何とかする。 ていうかしなけりゃ、先生が死ぬで枕元で祟ってやる」
「な!? 妙にリアルに怖いこと言うなよっ!? くそッ! とは言っても、俺は何も思いつかーーー」
「先生、俺は答えを言えません……だけど、一つヒントを……貴方が見てきたものや経験してきた事を思い返せば、必然的に答えが出てくるはずです。だから、考えてください。 懸命に考えて足掻いて這い上がってください。 これは先生の為じゃない。 ルミアを守る為の戦いなんだから、逃げ出さないでくださいね? 【
それだけ言ってから、干将・莫耶を独特の構えで持ち直し、目前の強敵に立ち向かう準備を始めた。
その目に宿る闘志は計り知れず、互いを削り合う戦いを幾千も行ってきた達人の存在たるや想像を絶する。
「良いだろう。 その賭けに乗ろう。 貴公が命を賭けるなら、此方も其れ相応のモノを賭けさせて貰おうーーーッ!」
そう言って、ゼーロスさんが差し出したのは、両手に握る大陸最高峰の鍛治師が打ち上げたという【魔剣】だった。
ゼーロスさんは【双紫電】と呼ばれる異名があり、その名の通り、最速の双剣術は雷速と同義とまで言われている。
魔力でブーストし、元からあった天賦の反射速度を活かしきった形状に仕立て上げた最速の双剣があの【魔剣】の正体。
そして、彼の命同義の剣を差し出した。賭けの代償としては十分だろう。
俺は口を緩ませた。
「あぁ、いいぜ。これで賭けの成立だーーー そんで、賭けの内容に互いに“邪魔をしない”という条約が無い以上、必然的にあんたは俺たちを殺しに来ることに変わりはないんだよな?」
ゼーロスさんは目を伏せて無言で頷く。
ま、それは予測済み。 賭けを切り出した俺自身がその内容を含まなかった時点で覆るはずもない。
ただ、俺としては今の状態でぶつかり合いたくは無かった。
それでも……
「何だろうな? 俺はゼーロスさん……あんたとまた剣を交えることが出来るのがどうしようもなく嬉しいみたいだ。 あんたとの斬り合いは理合いに適っているからか、心地が良い」
「ふ、それは此方も同じ気持ちだ。ケンヤ殿との仕合は心地良く、実に清々しいモノだ。 いつまでも浸っていたい気持ちに襲われるーーー戦績では100戦50勝50敗……そろそろ、決着を付けるときが来たようだな」
「そうか……そうだな。 最後くらい華々しく飾るとしようか……悪いが、俺の武器は生憎と部屋に置いてきてね。 足りないだろうが、この双剣で挑ませてもらう。 【双紫電】に双剣で挑む愚直は見逃してもらおう」
「ふ、今更何を……奇襲の元でねじ伏せようとした男が述べる机弁では無いな。 良いだろう、私は貴公の申し出を請けよう。 時が来るまでの間、お相手いたそうーーーッ」
互いに互い、覚悟を決め剣を構える。
この戦いが
たとえ、紅蓮の炎の様に滾った血肉が残忍に世界を黒くしようとも俺が俺である限り、ルミアを護ることに変わりわないのだから。
こうして、俺とゼーロスさんは互いに想い合うための者の為に凌ぎを削る死闘を演じる事となった。