ロクでなし魔術講師と東方魔術剣士と禁忌教典   作:KAMITHUNI

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ゴタゴタです……(; ̄ェ ̄)


行くぞ、外道。 魔術の準備は充分か?

「ふぁぁ……ねみぃ」

 

今日も今日とて、圧倒的な威圧感を誇る天空城が、蒼穹に広がる空をハイライトに不思議と浮遊していた。

そして、晴れやかな気分になる陽気な陽光が心の底を照らす最高のコンディションである。

 

 

「……それでも、嫌な予感が拭いきれねぇんだよな」

 

 

鞄を右肩にかけて、いつもは持ってこない愛刀を房に入れて持ち運ぶ。

その愛刀を眺め、実体不明の悪寒を思い出す。

起きた時に起きた突然の寒気。 悪循環が起こる前兆。

実際、幾度か背中を貫くような悪寒を感じた時は必ずと言っていいほど、臨死体験をすると錯覚するほどの状況になるのだ。

 

 

今日は、本来なら休日の日で、校舎に向かっていること自体に違和感があるが、これは致し方ないだろう。

何せ、前任のヒューイが抜けていた穴を埋めるために休日を割かなければ、講義に支障が出てしまうからだ。

流石に、普段は気怠げな俺も、単位は貰っておかなければ、師匠に半殺しで済まない、八割殺しは覚悟しなければならなくなる。

それだけは勘弁被りたい。

 

 

「ま、師匠の言いつけだし、卒業ぐらいはしてやるつもりだがな……と、早速嫌な予感は的中って訳かい」

 

 

ぼぉーとして歩いていたから気付かなかったが、如何やら、人払の結界を張られているらしい。

かなり賑わいを見せる中央通りだが、今では人はおろか、猫一匹すらいない。

あるのは、中央に置かれた噴水だけ。

 

ちっ! 面倒な……ーー!

 

悪態を吐きながら、最大限の警戒網を張り巡らせる。

“氣功”で空気の流れや、マナの動きと集約する場所を演算で導き出していく。

 

 

いた!

 

 

「……そこに隠れているのはわかってるんだ。 出てきたらどうだ? 」

 

 

出来るだけ、冷静に努める為に表情は崩さない。

相手が潜伏しているところは既に掌握しているので、特に焦る必要も無い。

 

 

「おや? 即席の人払の結界だったとはいえ、一介の学生如きに見破られるほど甘いものでは無かったと思うのですが、中々に鋭いじゃありませんか?」

 

 

喜悦の含んだ言葉が路地裏から聞こえ、影から茶髪で黒外套を羽織った男が口角を吊り上げて現れた。

其処には、僅か……ごく僅かだが、心の揺れを感じた。

成る程、本当に学生が見破れないほどの結界だったということか。

確かに第四階梯クラスなら見破られる可能性が高い即席型だが、かなりの広範囲に行き渡った結界術。

相当腕が立つ魔術師か。

相手の戦力が未確定な以上、気は抜けない。

それに、こいつ自身が相当ヤバい。 かなり場慣れした魔術師だ。

 

 

「いや何。 ちと、その術と似たモノを見たことがあってね。 そうじゃなければ、あんたの結界の存在なんざ気にしなかったさ」

 

 

そう言って、ポーカーフェイスのまま房から鞘に納刀された和刀を取り出す。 大凡、1メートル弱の長さを誇る和刀の特徴は、最速の抜刀術を可能にし、相手の攻撃を去なすのに適した形状だ。

それに、このアルザーノ帝国において刀は、先ず見かけない。

恐らく、製法も伝わっていない剣だ。

ただし……

 

 

「……ほう、珍しい剣をお持ちだ。 “刀”ですか。 どうやら、極東の生まれの人間のようだ。 よく見れば、貴方の髪や目も黒。 それに、少し小柄なのも特徴が合っていますね」

 

 

「なるほど、やっぱりこの剣のことを知ってたのか。 だとすると、かなり広範囲で活動している悪タレ小僧集団か。 例えば…… 『天の知慧研究会』、とかな」

 

 

「…………へぇ」

 

 

俺の出した答えに、僅かながら反応を見せた。

 

 

「その反応ってことは、ビンゴか。 中々どうして、外道魔術師が集まった、帝国始まって以来のテロリスト共が、ただの極東産まれの俺を狙ってくる? まさか、この帝国じゃ珍しいとかいう理由なら受け付けないぜ」

 

 

「はは! そんな訳ないでしょうーー! 狙いは貴方じゃないんですよ! そう、本当は此処を毎日通る、非常勤講師が狙いでしてね!? そこで貴方が来たので、人質にでもしようと思っただけですよ。 わかりましたか?」

 

 

「……非常勤講師?ーー! お前、まさか……!」

 

 

俺は敵の情報から、狙いを察してしまう。

非常勤講師。 ここを通る。 アルザーノ魔術学院。 補講。

次々と、パーツが脳裏で当てはまり、ある人物に辿り着く。

 

 

「ははは! その顔は、どうやら分かったようですね! そう、私の狙いはアルザーノ魔術学院の非常勤講師「グレン=レーダス」を殺し、強いては、私の同志がある御方を魔術学院でおで向かいに向かっているでしょうね!! まぁ、その際の犠牲などは知ったことではありませんがね?」

 

 

下卑た笑いが木霊する。

……こいつら。

ふつふつと沸き起こる憎悪の念が心の中を支配する。

 

 

「それでは、そういう事なので、貴方の講師が殺されるまでの間、貴方の身柄は取り押さえさせてもらいますね? あ、勿論、その三流魔術師を殺した後は、貴方も始末させていただきますが……まぁ、通りかかったのが運の尽きということで「黙れよ……!」 ……あ?」

 

 

優越に浸ったままの顔が、俺の言葉を聞いた瞬間に醜く引き攣る。

 

 

湧き上がる殺気は抑えることが出来ない。

既に、俺の怒りは沸点に達しており、其れをギリギリのところで理性が押し留めている状態だ。

 

 

「……お前ら、外道の話なんざ何も面白くもねぇーし、単に胸糞が悪りぃだけだから、その口閉じろって言ってんだよ。 このチャラ男」

 

 

「ち、チャラ男!?」

 

 

「ち! 本気で頭にきたぜ。 何が、講師を殺すだ。 何が、出迎えだ。 何が、人質だ! お前らの戯言が俺に通じると思ってんなら、勘違いもいい所だ。 いいか? 教えてやんよ。 お前らが、俺の級友や先生に手を出そうっていうなら、俺は其れを悉くを以って戯言を叩き潰そう…… 行くぞ、外道。 魔術の準備は充分か?」

 

 

俺の言葉に激昂したテロリストは、最早人質を取ることを忘れていた。

 

 

 

 

◆ーーシスティーナside

 

「ーーきゃあっ!」

 

 

「折角の上玉だぁ〜。 食っとかねぇと勿体ないからなぁ」

 

 

システィーナを卑猥な目つきで見ている黒い外套を羽織り、同色の帽子を被ったテロリストの一人が自由を奪って取り押さえている。

 

 

「ふ、ふざけないで! 私は誇り高きフィーベル家のーー!」

 

 

システィーナは絶対的劣勢において詭弁を述べるが、相手は常識が通用しない悪役外道なテロリストだ。 そんな言葉が通じるはずもない。

 

 

「それって、偉いの? ま、どうでもいいけどな! 実は、俺。 ルミアちゃんみたいな子を嬲っても面白くないんだわ。 あれは一見、気の弱そうだが、実際は芯が通っている。 ほんと、あの年では考えられないほど気が強いんだ! はっはっは! 笑えるだろう?! だが、お前は、強さを託けて、自分の弱さをに仮面をつけているお子様さぁ〜。 俺は、そういう女を堕とすのが1番楽しいんだぁ〜!」

 

 

ビリッ!

 

 

「……ぁ」

 

 

無理矢理に服を裂かれ、軽く肌が露出するが、下着の上に着ていた紺のシャツが全ての露出を防いでいた。

しかし、男はそれすらも屑の笑みを浮かべて、じっくり楽しむようにジワジワと引き上げていき、いよいよ桃色の可愛らしい下着が露わになる所で指が止まった。

そして、悦を覚えた声色を挙げる。

 

 

「うほぉ! 綺麗な肌じゃん!!」

 

 

「あ、あの……許して…… お願い…………」

 

 

掠れた声だ。

怯えて声すらまともに出ない。恐怖で埋まった思考は只の学生を墜とすには充分すぎた。

だが、そんな女を堕とすことに性的興奮を覚えたテロリスト……ジンは更に笑みを浮かべた。

 

 

「アッハハハッ!! お前、堕ちんの早過ぎ! それじゃあ、いただきマァース!」

 

「イヤァァァァァ……ッ!」

 

 

痛烈な悲鳴が、誰も来るはずのない実験室に響き渡り、システィーナは目前の男に凌辱され…………ることは無かった。

ガチャリ。

 

 

「あん?」

 

「え?」

 

 

二人の視線は、実験室の扉。

 

「あ」

 

そこに立つのは……

 

「邪魔したわ」

 

「助けなさいよ!」

 

 

この学院の非常勤講師である『グレン=レーダス』だった。

 

 

 

 

「はぁ」

 

溜息を一つ吐いて、強姦未遂を行っていた男にゆっくりと近づいていく。

ただし、ジンはお楽しみの最中に邪魔をされ、かなりの苛立ちがあり、今にでも有無を言わさずに魔術で殺したい衝動に駆られていた。

その事をいざ知らず、グレンは坦々と歩いていく。

 

 

「お前、いくら自分がモテないからって、それはだめだろ……?」

 

 

それに御説教染みた言葉を聞かされれば、ジンの沸点ははちきれる。

その事をいち早く感じ取ったのはシスティーナである。

 

 

「先生! 逃げて!」

 

 

「あ? 助けてって言ったり、逃げてって言ったり、どっちなんだよ……」

 

 

「いいから、早く! 先生じゃあ、此奴に……!」

 

 

「もう遅ぇー! 【ズドン】!」

 

 

そう、システィーナの忠告は遅かった。

後、数瞬。 数瞬だけで良かったのだ。

しかし、時は巻き戻らない。 幾ら後悔しても、後の祭りで取り返しがつくはずもない。

だから、システィーナは目を白黒させる。

 

 

ありえない現状を前に、一言も声が出ない。

それは、目の前に立つ非常勤講師も同じであった。

ただ、一緒にいた筈の男は壁に激突して気を失っている。

そこにあるのは窓を突き破った跡を示すガラスの破片。

壁を突き破った際に舞った砂埃。

そして……

 

 

「痛ぇ〜…… 流石に魔力を込めてたからって、只の拳で壁を突き破るのは無茶だったかもなぁ〜」

 

 

まるで場違い。

確かに、グレンもそれなりに場違いな発言をしていたことは認めていた。 幾ら、小者ぽい男とはいえ、テロリストはテロリスト。 警戒も固有魔術の起動も済ましていた。

だからこそ、あそこ迄マイペースになれたのだ。

だが、目前の男は違う。

なんの躊躇もなく、戸惑いもなく、弊害すらなく、容赦なく拳を奮っただけ。

 

 

(それだけ)決着(ケリ)がついた。 だけど、聞こえてきた声色は日常会話をする時のモノと同義か、それよりも穏やかなモノだった。

 

 

「お、フィーベルに、グレン先生か。 如何やら、二人共無事みたいだな? 良かった良かった…… そんで? ここに居るはずのテロリスト、は…………?」

 

 

土埃が収まって、視界に捉えたのは、見間違えるはずもない存在である。珍しい黒髪黒目。 身長は小柄で、線もそこそこ細い。 学生の中では珍しく魔術嫌いで、誰よりも面倒くさがりで、それでいて魔術に関しての知識はグレンと同等。

システィーナとは犬猿の仲である存在だ。

 

 

そして、その男は、目の前に視線を向ける。 そこにあるのは、壁際まで吹き飛び、頭を強く打ち付けた事による脳震盪で目を白くさせたテロリスト、ジンが其処に倒れ込んでいた。

 

 

「え? まさか、此奴……なの、か?」

 

 

ジンを指差し、たった一つの拳で壁を突き破ったクラスメイト『ケンヤ=サクライ』が刀を左の腰あたりに付けて佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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