ロクでなし魔術講師と東方魔術剣士と禁忌教典 作:KAMITHUNI
とりあえず、主人公のパワーバランスがイかれてる気がするけど、気にしないでね?
感想や評価をお待ちしていマァース!!
「おっす!ーーウチの大天使様を連れ帰りに来ました!!」
とりあえず、ご挨拶代わりに扉を蹴り破ったけど、今度は瞬殺じゃないよな? 一応、気配を探ってから飛ばしたから大丈夫の筈だ! うん……きっと、大丈夫……!
「……ケ、ケンヤ、君?」
「ん? おぉ、ティンジェル! 無事……ではねぇーか。ーーどういう事か説明してくれるんすよね? ヒューイ先生……」
「まさか君が出てくるとは思っていませんでしたね。 特に君は、魔術が嫌いで、人に無頓着な方と思っていましたが、級友の為ならば無茶苦茶な事を出来たのですね」
講師として嬉しく思います。 と言って微笑みかけてきたのは、前任校師のヒューイ先生だった。
今迄襲ってきたテロリストと同様に、黒い外套を羽織り、同等の威圧感を持っている。
「あぁ。 ま、なんだかんだで居心地がいい場所だしな。 それに、あんたもこんな事は望んじゃいないだろ? あと、此れは俺の“決断”だ! 温厚な生徒で有名な俺だが、あんた達テロリストが俺の【平穏】な生活を邪魔するなら……」
殺意を以って、刺し殺さんと刀を引き抜き、剣鋒を眼前に突きつけた。
ピクリと眉が動き、それでも静かに俺を見据える。
「……俺はあんた達をぶっ潰すッッ!!」
俺の決断を纏った刀身は、緋黒く煌びやかに光沢を放つ。
無数の血肉を斬り裂き、幾度と無く命の灯火を消し去った【魔剣】が俺の意志に同調するように点滅する。
本来は、桜色に光り輝く【聖剣】だったが、人を斬り歩んでいる内に緋くなっていき、遂に【魔剣】と成った。
【聖剣】としての
「とりあえず、あんたは投降してもいいぜ。 元担任講師って言うことで一発殴れば其れで終わりにしておいてやる。 どうせ、俺たちのか「僕の勝ち、ですね」 あのさ、人の話聞いてた? 状況を垣間見ろよ。 あんたの何処に勝つ根拠が見当たるっていうんだ? まさか、またゴーレムでも呼ぶのか?」
「いいえ、その程度の雑兵では、貴方の相手が務まらない事ぐらいは、さっきの魔術で理解していますから。 ですから、此方にも他の手段を忍ばせていただきました。 【サクリファイズ】、始動してください!」
「っ!?
いかん! その前に、ティンジェルだけでも【
「無駄ですよ。 【サクリファイズ】は既に起動済み。 それによって、五層の結界が貼られ、ルミアさんに魔術が掛けられないようにしていますからね。 そして、こうしている間にも発動まで残り一分です。そうすれば、学院諸共、僕も爆散します。 つまり……」
俺たちの、負け…………
「ケンヤ君! 逃げてッ! せめて、貴方だけでもーーーー!」
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………負けた?
「……いや、やっぱり俺の勝ちだね。 ヒューイ先生」
「な…………ッ!?」
「ウォォォォォォォオォォォ……ーーーーーッッ!!」
俺は、【魔剣】の剣鋒を術陣に突き立てて、魔力を全開で流し込み、詠唱を開始する!
「ーー『我は死の根源を司る者・汝は終なる原初へ回帰する者・死相の刻印を汝の胸に刻み込み・汝を煉獄へ誘わん・なれば・我は汝と共に獄焔なる魔神と生まれ変わりて・契りを交わす』!!」
浮かぶのは、死が蔓延する獄焔の丘。 死に際に立たされた青年が最後の最後で足掻く事を選択し、死神と契約した運命の場所。
破壊と殲滅を繰り返す光景が、今でも脳裏に染み付いて離れない。
だけど……
(今は、それで良い。 それで良いんだ!)
そう、それで良い。 魔力の質が変わろうと、風貌が変わろうと、人としての感情を一時的に失ったとしても、俺は俺であり続ける限り、なくなったりはしないッ!!
だから、迷うなッ! 決断しただろう!! 俺は…………ッ!!
「俺の、級友に手を出してんじゃ、ねぇぇぇえぇぇえぇぇ…………ーーーーッッッッ!!!」
ーーーー告げよ! その真名をッ! 汝の価値を我に見せつけせろ!!
ウッセェーッ!! テメェは、俺に使われときゃあいいんだよォォォォオッ!!
「焦がし尽くせッッ!! 【
◇
「……炎の…………いえ、神焔の牢獄、ですか。 よもやこれ程とは…… なんて、なんて神々しい獄焔…………」
ヒューイは目前の光景に魅入られていた。
緋く猛る神焔が、空間そのものを支配し、塔全体に熱が孕む。 ただし、熱くはない。 熱くはないが、熱を感じるという矛盾の中でも何一つとして不快感を覚えない摩訶不思議な感覚を覚えているのだ。
そして、その獄焔はルミアを取り巻く魔術陣を焼き払うようにして囲い込み、一斉に燃え盛る。
それを執りおこなうのは、ただ一人の少年……いや、既に魔神と言っても過言ではない人物だ。
『…………』
ケンヤ=サクライ。
漆黒の髪が、まるで烈火の如く緋く染まっており、その美しくも感じていた黒眼すらも血濡れた様に赤黒く変わっていた。
濁りなき眼だが、光が消えている。
其処に自我を感じない虚無なる存在と化したように、化物はただ司令された通りの事を遣り遂げる。
無言を貫き、意志を感じない姿にルミアとヒューイは畏怖し、同時に感慨深く感じる。
絶対に近付いては行けないと知りつつも、魔術師としての本能が、道への好奇心を刈り立たせる。
そこにあるのは、紛れもない人の到達地点たる存在だ。
手を伸ばせば届く距離に、それはある。
だが、ヒューイの願いは届かない。
何故なら……
パリンッ!!
「…………まさか、この状況から逆転されるとは……私は貴方という存在を侮りすぎたようですね。 ケンヤ=サクライ君」
最後の層までもが、只、神焔を操るだけで破壊され、圧倒的な実力差を知らしめられた。
そして、紅く染まった髪と眼を此方に向けて、無表情のまま呟いた。
『……これで、俺の勝ちだ』
◇
「えぇ、僕の負け、ですね」
ヒューイ先生は何処か和らげな苦笑を漏らして、そう呟いた。
俺は、魔力を霧散させ、【火之迦具土神】の起動を抑えて向かい合った。
「あぁ、そして俺の勝ちだ。 ヒューイ先生……あんたは、いい先生で、其れでいて誰よりも優しかった。 だけど、これはダメだ。 こんなモノじゃあ、俺やグレン先生は止められない」
「……えぇ、そのようですね」
「そうだ。 あんたがいくら策を練ろうとも、幾ら非道な選択をした所で、中途半端なあんたの策が俺たちに通用することなんてない。 だからーーーー!」
俺は歯を食いしばって、拳を構えて心の底から吐き出た言葉を叫び出す!
「これが互いの存在を賭けた戦いだってんなら―――最後は、
そして、俺は力一杯握りしめた右拳をヒューイ先生へ向けて、全力で振り下ろした…………。
◇
こうして、アルザーノ帝国魔術学院テロ襲撃事件は幕を降ろすこととなった。
この一件後、主に事件解決に向けて動いた、俺、グレン先生、フィーベルの三人はセリカ師匠と学院長に呼び出され、ルミア・ティンジェルの素性と経歴を聞かされ、俺以外の二人は驚愕した。
だが、それでもフィーベルはティンジェルの正体を知っても変わらずに親友以上の関係を続けており、ティンジェルは迚も嬉しそうに微笑んでいた。
さらに、一ヶ月だけの臨時であった筈のグレン先生は、そのまま正規の手続きで引き続き講師を引き受けることになり、何も変わらない日々が戻ってきたのだ。
俺は俺で、あの事件の後、【焔之迦具土神】の影響で、全身の筋肉痛と軽いマナ欠乏症で3日ほど身動きが取れずにいたが、現在では何不自由なく平穏な毎日を送る事が出来ていた。
◇
「ーーーーそれにしたって、ティンジェルが、本当にあのエルミアナ第二皇女だとは……まったく、世間は広いのか、狭いのやら」
風に吹かれるテラスで青空を見上げながら独り言を呟いた。
気持ちのいい快晴である。
「ま、それは俺も同意見だけどよ。 お前は、もう少し友達とか作った方がいいんじゃねぇーのか?」
ち、面倒くさいのが来たか……
「余計なお世話ですよ。 グレン兄弟子」
「うっせぇ。 バカ。 第一、テメェ見たいな野郎にセリカが教えているとか、普通は考えつかねぇーよ。 つーか、お前だって、セリカから情報をもらってたから俺の事に気が付いたんだろ? なら、その事はおあいこだ」
子供かッッ!!
「へいへい、そういう事にしておきますよ」
「ち、全く可愛げのねぇ、弟弟子だ。 んで? 身体の方はもう大丈夫なのか?」
途端に真面目な顔をして俺の身体を気遣う。
おぉ、グレン先生が、生徒の事を気遣ってる〜……
奇跡だな!!
「お前、今失礼なこと考えたろ……」
「さぁ? ま、身体の方は大丈夫ですよ。 流石に三日三晩休めば、マナ欠乏症は治りますし、身体の傷に至っては、【復元する世界】を使えば、即座に回復しますからね」
「……そ、そうか。 相変わらず無茶苦茶な能力だな。 その、【復元する世界】ってやつは。 対象を24時間以内なら巻き戻すことができる超回復。 それに加えて、応用として転移も可能。 ……もう、軽く魔法じゃねぇの?」
む?
「ま、そういう見方も出来ますが、俺の魔術特性である“概念の創造/回顧”から生み出したので、間違いなく魔術ですね。 あと、セリカ師匠と比べると、明らかに見劣りしますよ」
「そうだなぁ〜。 彼奴の固有魔術は狂ってるからな」
俺の言葉に同意するグレン先生は顎に手を当て、うんうんと頷く。
あ、そういえば、聞きたいことがあったことを思い出した。
「そういえば、先生は何で講師を続けることにしたんですか?」
「ん? あぁ……」
生返事後、少し考えるそぶりを見せていると……
「あ! 先生……!」
「ちょっと! さっきの講義の内容で聞きたいことがあるんですけど……!?」
声が聞こえた方へ視線を向けると、そこには天使の笑みを浮かべたティンジェルと不満が少しあるのか、顔を剥れさせたフィーベルがグレン先生を呼んでいた。
それを確認した、グレン先生は微笑んで俺の言葉に答えた。
「……見てみたくなったんだよ。 彼奴らが何をしてくれるのか……お前も含めて、な」
「…………そうですか。 なら、その期待に応えないとですね」
俺もできるだけ柔らかな笑みを心がけて、心からの言葉を伝えた。
「あぁ、ちょうど暇つぶしになるし、俺を満足させてくれよ……?」
グレン先生はそれだけ言って、テラスから降り立ち、フィーベルやティンジェルが待つクラスへ歩き出す。
「「ケンヤ (君)も早く(来なさいっ)(来てねっ)……!」」
「ん?」
青空を眺めていると、フィーベルとティンジェルが俺の事も呼んでいた。 他の連中も待ち構えており、俺は目をパチクリとさせた。
今迄は、ある程度の壁を作って他者と関わりを持とうとしなかった俺は、如何やらあのロクでなしによって変えられてしまったらしい。
「あぁ! 今行く!!」
俺はテラスから降り立ち、笑顔でクラスメイトの中心に向けて歩み寄るのだった。