ロクでなし魔術講師と東方魔術剣士と禁忌教典   作:KAMITHUNI

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最初はオリジナル話です!
主人公のちょっとした過去描写が入ります!


第2章
さぁ、やってきました☆ 魔術競技祭のお時間です!!


ーーーー汝、チカラを求めるか?

 

 

 

 

 

屍を超えた先。 死の峠と呼ばれた煉獄の丘。

血塗られた土が変色し、赧く黒い染みを作る。 斃れ伏すは、屍。 飛び散るは、肉片。

総てが赧く、それでいて蒼い世界が峠の先にある。

振り返れば緋く、前を向けば蒼い。

対照的な世界が生み出した奇跡は決して美しいものではない。

何故なら、赫い世界は人の血肉によって作られた醜く残酷な地獄だからだ。

目前の蒼穹で出来た世界は、無垢だ。 何も無い事が儚くも美しく感じる事はある。

だが、後ろの世界は、決して人の踏み入れてはいけないモノ。

修羅と化した者が訪れる灰燼境。

血の雫が、剣先からポタポタと垂れて、幾度と無く地面を濡らす。

死の丘から見下ろす光景が絶景というのなら、其奴は人として崩壊した化物だ。

こんなイカレタ空間で悦を覚える狂人を俺は知っている。

 

 

 

 

ーーーー汝、チカラを求めるか?

 

 

 

 

再度聞こえる声。

幻聴の類か、将又、閻魔様の御迎えなのか……

どちらにせよ、自分の命が此処までと理解するのに充分過ぎる出来事だ。

この緋く汚れた手は、誰の救いにもならず、自己満足の為だけに多くの人を手に掛けた。

飛び交う魔術を刀で斬り裂き、【投影】した剣で喉元を抉る。

傷ついた体は、【復元する世界】で巻き戻し、時には敵軍隊の大半を消し飛ばすために【神討つ拳狼の蒼槍】で土地ごと吹き飛ばした事もあった。

 

 

だからだろうか、誰かが呟いた一言が、俺の何時しか異名になって定着していた。

 

 

 

ーー【黒蒼狼(フェンリル)

 

 

単独で目標を必ず撃破し、その黒き外套と蒼き魔術を使う風貌から付けられた名だった。

その名が大陸に知れ渡たるのに、そう時間は掛からず、その為に、俺は裏の人間達から追われる身となった。

お陰で、命からがらである。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー汝、チカラを求めるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

三度目の声。

分かっている。 コレが、俺自身の幻聴である事は分かっている。

多くの人を屠ってきた。 そして、多くの被害を出してまで自己満足の為に刀を振り、魔術を行使した。

だから、生きる事は望んでいるが、それは叶わぬモノと分かっているから深層心理が語りかけているに過ぎない。

これは、俺のあり得るはずのない空想を具現化しているだけに過ぎないのだ。 遙かに捨てたはずの人心。 生きたいという人として当然の欲求。

しかし、俺は捨て切れなかった。

 

 

 

ーー汝、チカラを求めるか?

 

 

 

四度目の質疑に、今度こそ応答する。

僅かな可能性も無い絶望の淵。 自身で殺した相手は数知れない。 だから、何時しか自分も殺されるのだと理解しており、また、それが当然の摂理と思っていた。

それでも……ッ! それでも、俺は生き延びたいと、心の底から願った。

そして、その声に頷いたのだ。

 

 

 

 

 

ーーヨカロウ。 汝の望みを聞き届けよう。 我と契りを交わした者よ、汝に神の根源たるチカラを授けよう。 ただし、対価として、汝の【理想】を我に捧げてもらおうか……!

 

 

 

 

あぁ、好きなだけ持っていけ。 もう、その【理想】には辟易していたんだ。 幾らでも持っていけ。 誇りの欠片もない馬鹿な【理想】ぐらい安いものだ。

 

 

 

ーー契りは交わされた。 汝を我の器として受け入れよう。 汝が求めるは、チカラ。 我が求めるは、理想。 なれば、我は汝の魂となる事を誓おう! 我が名は、【焔ノ迦具土神】ッ! 総ての焔を操りし者であるッ!

 

 

 

 

そして、俺は獄焔の怪物を従えて、見たくもない焼死体を無感情で見ることとなった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウワァァァァァァアァァーーーーーッッッ!!!」

 

 

咄嗟に起き上がり、恐怖から逃れる為に叫んだ。

 

ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ!………

後ろから聞こえる電子音。 朝露のついた窓。 朝日の光。

故郷の伝統である桶花。 そして、壁に立て掛けた和刀。

 

 

 

「ゆ、め……か…………?」

 

 

ベッタリと張り付いた汗。 グッショリと濡れたシャツ。

シーツも枕までもが文字通りビチャビチャだった。

 

 

「これは、ひでぇな……」

 

 

もう、絶句せざるを得ない。

呆れて言葉が出ないとはまさにこの事を言うのだろう。

ほんと、此処に来て二年だが、此処まで酷い朝というのは初めてかもしれない。

久し振りに、嫌な感触を思い出したせいかもしれない。

 

 

「……【焔ノ迦具土神】、か」

 

 

俺は呟いてから、右手で左胸部を抑えるように添えた。

ドクンッ、ドクンッ……と、少し早鐘に鳴り続ける心音はそれ以外は正常な状態を表す。

少し早いのは、恐怖で身体が驚いているからなので、決して体調不良という訳ではない。

胸糞は超絶に悪いが…………

 

 

「ま、原因はどう考えたって、チカラの使用だよ、な? だけど、アレから何日経ってると思ってやがる。 それ以外にもトリガーがあったか? もしかしたら、他の日にも見ているけど、忘れてる?」

 

 

色んな事が考えられるが、兎に角、脳裏からあの光景が離れてくれない以上、今日1日は残念ながら気分良く終われることは無いなと、軽い諦観で学院に向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、『飛行競争』の種目に出たい人、いませんかー?」

 

 

場所は移り変わって、アルザーノ帝国魔術学院2年2組の教室になる。

本日のホームルームは毎年執り行われるという魔術競技祭の人選である。

前に出て進行するフィーベルやティンジェルの言葉には誰も反応を見せず、寧ろ難しい顔を浮かべて、俯向くものが大半で埋め尽くされていた。

勿論、俺もその内の一人である。

 

 

「……じゃあ、『変身』の種目に出たい人ー?」

 

 

やはり、無反応。教室は静まり返ったままだった。

 

 

「はぁ、困ったなぁ……来週には競技祭だっていうのに全然、決まらないなぁ……」

 

 

フィーベルは頭を掻きながら、黒板の前で書記を務める大天使様のティンジェルに綱渡しする様に目配せする。

 

 

ティンジェルは一つ頷き、穏やかながら意外によく通る声でクラスの生徒達に呼びかけた。

 

 

「ねぇ、皆。せっかくグレン先生が今回の競技祭は『お前達の好きにしろ』って言ってくれたんだし、思い切って皆で頑張ってみない? ほら、去年、競技祭に参加できなかった人には絶好の機会だよ?」

 

 

それでも、誰も何も言わない。皆、気まずそうに視線を合わせようとしない。

仕方ねぇーよ。 俺だって出たくねぇーよ。

 

 

「……無駄だよ、二人とも」

 

 

そう言って均衡状態のクラスで唯一発言したのは、比較的優秀なギイブルだ。

 

 

「皆、気後れしてるんだよ。そりゃそうさ。他のクラスは例年通り、クラスの成績上位陣が出場してくるに決まってるんだ。最初から負けるとわかっている戦いは誰だってしたくない……そうだろ?」

 

 

「……でも、せっかくの機会なんだし」

 

 

ギイブルの物言いにフィーベルはムッとした。

だけど、ギイブルは歯牙にも掛けず、言葉を紡いでいく。

 

 

「おまけに今回、僕達二年次生の魔術競技祭には、あの女王陛下が賓客として御尊来になるんだ。皆、陛下の前で無様をさらしたくないのさ」

 

 

嫌味な物言いだが、ギイブルの言はクラスに蔓延する心情を的確に突いていた。

そうなんだよなぁ〜。 何故か……というか、確実にルミアを見に陛下が御来賓なさるんだよ。 そんな大舞台に出ようと考えている奴の神経が俺にはわからん!

 

 

しかし、その言葉に募った苛立ちを表すように、フィーベルはギイブルを睨みつけた。

 

 

「ギイブル…… それは、本気で言ってるの?」

 

 

確実に怒気の孕んだ言い方に怖気付く……筈もなく、ギイブルは口角を吊り上げながら眼鏡を押し上げて。

 

 

「勿論……!」

 

 

その言葉に、いよいよ堪忍袋の尾がキレかけたフィーベルが掴みかかろうとする寸前だった。

 

 

ドタタタターーと、外の廊下から駆け足の音が迫ってきたかと思えば……次の瞬間、ばぁんっ! と、派手に音を立てて教室前方の扉が開かれた。

 

 

「話は聞いたッ! ここは俺に任せろ、このグレン=レーダス大先生様になーーッ!」

 

 

芳ばしいポーズを取って現れた我らが担任講師のグレン=レーダス先生が明らかに何かを企んだ顔をしながら登場した。

 

 

「……もう、ややこしいのがきた」

 

 

顳顬を抑えて、頭痛を抑えるようにフィーベルが溜息をつく。 きっと、彼女の心労はこのクラスの誰にも補うことなんて出来まいな、と心中で尊敬の意を唱えておいた。

南無三……!

 

 

「ここはこのクラスを率いる総監督たるこの俺が、超カリスマ魔術講師的英断力を駆使し、お前らが出場する競技種目を決めてやろう。言っておくがーー」

 

 

 野心と熱情に煌々と燃えた瞳で、グレン先生が偉そうに宣言する。

 

 

「俺が総指揮を執るからには勝ちに行くぞ? 全力でな。俺がお前らを優勝させてやる。だから、そういう編成をさせてもらう。遊びはナシだ。心しろ」

 

 

 ざわざわ。普段の低温動物ぶりからは想像もつかないこの熱血ぶりに、クラス中の生徒達がどよめきながら顔を見合わせる。

 

 

「おい、白猫。競技種目のリストをよこせ。ルミア、悪いが今から俺が言う名前と競技名を順に黒板へ書いていってくれ」

 

 

「人を猫扱いするなって言ってるのに……もう!」

 

 

「はい、わかりました、先生」

 

 

フィーベルが不満そうにリストを手渡し、ティンジェルがチョークを構えた。

 

 

「ふむ……」

 

 

あぁ、面倒な奴が、面倒な事をしようとしているのが目に見えているのに、止めようにも止めれないジレンマが俺に襲いかかってくる!!

彼奴のあの顔は、絶対にロクでもない事を企んでいるのを、短い間だが、弟弟子として知っている。

 

 

セリカ師匠も、『彼奴は、バカだけど、バカじゃないから気をつけろ!』何て言ってたし、嫌だわぁ〜!!

 

 

「……よし、大体わかった」

 

 

グレン先生が顔を上げた。とうとう参加メンバーを発表するらしい。 くそ! 案外決めんの早いな!

 

 

「心して聞けよ、お前ら。まず一番配点が高い『決闘戦』ーーこれは白猫、ギイブル、そして……カッシュ、お前ら三人が出ろ」

 

 

えっ? と。その時、クラス中の誰もが首をかしげた。

競技祭の『決闘戦』は、三対三の団体戦で実際の魔術戦を行う、最も注目を集める目玉競技であり、各クラス最強の三人を選出するのが常だ。

 

 

だが、成績順で選ぶならば、フィーベル、ギイブルの次に来るのはウェンディのはずなのだ。なぜ、ここで成績的にはウェンディに劣るカッシュが出てくるのか。

 

 

指名されたカッシュ自身も、この謎の選抜に戸惑いを隠せないようだった。

 

 

だが、グレンはクラス中に渦巻く困惑を完全に無視し、さらに続ける。

 

 

「えーと、次……『暗号早解き』。これはウェンディ一択だな。『飛行競争』……ロッドとカイが適任だろ。『精神防御』……ああ、こりゃルミア以外にありえんわ。えーと、それから『探知&開錠競争』は確定的にケンヤ。 『グランツィア』はーー」

 

 

クラス全員が目を白黒させた。

無理も無い。 だって、グレン先生はクラス全員を何らかの競技に参加させるように組んだのだ。

勝ちに行くのでは無かったのか? と首をかしげても仕方がない。

 

「——で、最後、『変身』はリンに頼むか。よし、これで出場枠が全部埋まったな」

 

 

グレン先生のメンバー発表が終わった。結局、選を漏れた生徒は一人としていない。四十人全員、最低一回は何かしらの競技に出場することになっていた。

 

 

「何か質問は?」

 

 

「私は納得いたしませんわっ!」

 

 

生徒達がざわめく中、いかにもお嬢様然としたツインテールの少女、ウェンディが早速、言葉荒々しく立ち上がる。

 

 

「どうして私が『決闘戦』の選抜から漏れているんですの!? 私の方がカッシュさんより成績がよろしくってよ!?」

 

 

「あー、それなんだがな……」

 

 

 少し言い辛そうにグレン先生が顳顬を掻いた。

 

 

「お前、確かに呪文の数も魔術知識も魔力容量もスゲェけど、ちょっと、どん臭ぇトコあるからなー。突発的な事故に弱ぇし、たまに呪文噛むし」

 

 

「なーーッ!?」

 

 

「だから、使える呪文は少ねーが、運動能力と状況判断のいいカッシュの方が『決闘戦』やるなら強ぇって判断した。気を悪くしたんなら謝る。その代わり『暗号早解き』、これはお前の独壇場だろ? お前の【リード・ランゲージ】の腕前は、このクラスの中じゃ文句なしのピカ一だしな。ここは任せた。ぜひ点数稼いでくれ」

 

 

「ま、まぁ……そういうことでしたら……言い方が癪に障りますけど……」

 

 

怒るに怒れず、反論もできず、ウェンディはすごすごと引き下がる。 おい! スゲェーな!! 先生は論戦強いと思ってたけど、やっぱりすげえー!!

 

 

他にも、どうして自分がこの種目に選ばれたのか、疑問に思った生徒達が次々と手を上げ、グレン先生に問いかける。

 

 

「そりゃ【レビテート・フライ】も【グラビティ・コントロール】も結局は同じ重力操作系の黒魔術だし、黒魔術は運動とエネルギーを操る術ということでどれも根底は同じだ。カイ、お前ならいけるはずだ」

 

 

 

「テレサ、お前、この間、錬金術実験で誰かが落としかけたフラスコを、とっさに【サイ・テレキネシス】で拾ってたろ? お前、自分で気付いてないだけで念動系の白魔術、特に遠隔操作系の術式に相性がいい」

 

 

 

「グランツィアは、個々の能力うんぬんよりチームワークだ。いつも仲良し三人組のお前らがやるのが多分、一番いいんじゃねーか? お前ら同調詠唱も上手いしな」

 

 

コレには、フィーベルやティンジェル、そして、俺も驚愕した。

何せ、先生の言ったアドバイスはどれも的確であるからだ。

普段は怠け者同然の彼だが、やはり腐っても師匠の一番弟子。 クラス全員の事をよく見てる。

じゃあ、一応俺の事も見てくれてるのか、確認してみようか……

 

 

「じゃあ、俺は何で『探知&開錠競争』なんですか?」

 

 

「あ? そんなん、お前の『眼』が有能に決まってるからだろうが。 第一、そんなもん自分でわかってるだろう?」

 

 

仰る通りで……

それに、俺は固有魔術の性質や能力の事は伝えたが、『眼』の事はフィーベルやティンジェルにしか伝えていない。 つまり、先生は俺の事を観察して、その能力を自力で知ったことになる。

うむ、やはり侮れないなグレン=レーダス。

しかし、その編成に物申すものが一人……

 

 

「……先生、ふざけるのもいい加減にしてください」

 

 

そう、ギイブルである。

ギイブルの棘のある言い方に顔を顰めることなく、グレン先生は尋ねた。

 

 

「どうしたギイブル。 これ以上の編成が出来るのなら、言ってみろ」

 

 

「……それは、本気で言っているのですか? ーー簡単じゃないですか。 クラスの成績上位者で固めるんですよ。 どこのクラスでもない同じ様な事をしていますよ」

 

 

「……え?」

 

 

あ! 此奴ッ!! そのこと知らなかっただけかぁーい!!

唖然とした顔を浮かべたあと、何故だか他の人には見えないようにガッツポーズを浮かべていたのは俺は見逃さない。

やはり、ロクでもない事を企てていたらしい。

 

 

しかし、其れを止めるものがいた……!

 

 

「何を言ってるの、ギイブル! せっかく先生が考えてくれた編成にケチつける気!? 先生は皆の特技を最大限に引き上げて、優勝に導いてくれるって言っているのよ!? なら、ここまで信用してくれている先生に私達が泥を塗って如何するのよ!? ね? 先生!」

 

 

『説教女神』ことシスティーナ=フィーベルの珍しい朗らかな笑みによってグレン先生の策略とギイブルの異論は消し飛ばされた。

 

 

まぁ、悪巧みしようとしたグレン先生が一概に悪いと思うので、この前から集られていた昼飯は、今日は奢らないと心のうちに止めておくことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




長くなったねぇ〜。
いつもこれぐらいのセリフと言葉が出て来ればいいのに……
というか、殆どが原作から参照したものだけど……
(怒られるかな?)
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