カリカリカリカリ……
「オールマイトって……AllMightって書くんですよね……。“全て、かもしれない”……? 全能って意味のAlMightyとは違うんですよね……こっちはAlで、オールマイトはAllですから……」
「あの……若那ちゃん? 若那ちゃんっ!?」
食堂。
自分が委員長に選ばれた理由がイマイチ受け取れない私は、軽く現実逃避をしつつ、メモに文字を連ねておりました。
一緒に食べてるイズクンも飯田くんも、ティーちゃんも困惑気味だ。
「ダイナマイトは“Dynamite”ですから、そもそも違いますし。ということはサインの通りAllMightで、意味は……“全てかも”……全能ではないけど、そうありたいって心の現れだったんでしょうか……」
ブツブツ言っていたら喉が渇いたので、お味噌汁を一口。……ンマイ!! ハッ!? 私はなにを!?
ランチラッシュさんの食事を前にホウケるなど、……恥と知れ!
なので食べます。ひたすらに集中して。
さてさて、無意識に注文していた食事はなんじゃら!?
豆腐。寄せ豆腐。素材の風味を生かした作り。口に入れるとふわっと広がる香りがたまらない。
納豆。THE・日本食。他の国にも発酵豆食品はあれど、納豆といえば日本! これも自分で作っているらしい。粘りが強く、よぉく混ぜてから醤油をさして、さらにまぜまぜいただきます!
白米。炊いてから少し経っている。納豆にはこれ。熱すぎるシャリでは納豆の糸が死んでしまう。逆に海苔などは熱ければ熱いほど磯の風味が広がるので良し。絶妙な熱加減!
汁物。具だくさん。まさに
海苔。焼いてぱりっぱり! ご飯を軽くつつみ、端っこにちょいと醤油をつけて、一口でパクッ!
漬物。香の物。お新香。大根、胡瓜、白菜、漬け方の違うものが三種二枚ずつ。
焼魚。外はカリッと、中はフワッと。ひとたび身を割れば、身に乗った脂と香りが湯気とともにフワリ。それだけでご飯が進む!
なんということだ……日本食はおかずが多すぎる。
一品ずつだけでもご飯一膳食べられますよ。
でも少しずつ少しずつ、味わって食べます。
もぐ、もぐ、はふっ、もぐもぐ。ズズゥ、ぱりっ、ぞぼぼっ。カリコリ。もぐ、もぐ……ズズゥ。
(ああうまい。これ、これですよ。)
いいじゃないかいいじゃないか。そう、こういうのでいいんですよこういうので。
この身に宿る日本の血が、まさにこの味を求めていたと言わんばかりに喜んでいます。
生きているって実感できる。
ああ……生きるっていうのは、体にものを入れていくってことなんだなぁ。
「み、身代祇くん?」
「あ……飯田くん。若那ちゃん、食事中にこうなると、なに言っても聞こえないから」
「そうなのか!?」
「へえええ……あ、ほんまや。目の前で手とか振っても気づいてくれない」
「わっ、麗日さんだめっ! すぐに手、引っ込めて!」
「えっ、なになになにっ!?」
「若那ちゃん、食事には集中するけど、その邪魔をされるとすごく怒るんだ……! 中学の頃なんて、かっちゃんにアームロックをして騒ぎになったほどで……!」
「爆豪くんにか!? それはすごいな……!」
「……でも、なんか顔が渋くなってない?」
「それも、なんでかそうなるんだよね。クギナさん……あ、若那ちゃんのお母さんのことだけど、クギナさんが言うには、若那ちゃんのお父さん……リフレッシャーが愛読してた本が影響してるらしいんだけどね」
「本か。影響を受けるということは、とても素晴らしい本なんだろうな」
「うーん、気になるー。私そういうのあんま見れなかったからなー」
「僕はその。読む本っていったらヒーローのものばっかりだったから」
「なるほど、緑谷くんらしいな」
なにか本がどうとか聞こえた気がする。
本? 読んでいた本なんて、父さんの愛読書の孤独のグルメくらいでしたが。
母が持つ本は日本文化とか昔の古いお話の真面目なものばかりでしたし。身代祇家に代々伝わる書物らしいです。
いえまあもちろん読みましたけどね。深いお話がてんこもりでした。
……まあ、結末が大体
そんなもの、娘に読ませないでくださいよ。
「それにしても身代祇くんもヒーロー一家なのか。ぼ……俺の家もさ。ターボヒーロー・インゲニウムを知っているかい?」
「すごい! インゲニウムって東京の事務所に65人もの
「(詳しい……!)そう、それが俺の兄さ!」
「あからさま! すごいや!」
飯田くんは鼻高々とばかりにインゲニウムのことを自慢してくれます。
でもどれもがイズクンのヒーロー講座で語られたことで、私がじとーっとイズクンを見てると、身を竦めるようにして汗をたらしてました。
どうするんですかこれ。それ全部知ってますよとツッコめとでも?
「……ところで、なんですが」
「食べ途中の若那ちゃんが喋った!?」
「人なんですから喋ります。で、なんですが。私、やっぱり委員長は辞退しようと思います」
「なっ……何故だい!? 委員長というのはそれだけで、立派な───」
「私がヒーローに求めているのは立派だとか目立つだとか、そういうものではありませんから。周囲がそうあるべきと願うものじゃなくて、私は私がなりたいものになります。だから、票を入れてくれた人にはごめんなさいですけど、私に入った票は再投票に回してもらいます」
「わあ……! なんかスゴイね! 自分がしっかりしてるっていうか! いいなあ憧れるなあそういうの!」
言いたいことを言ってみれば、ティーさんが腕を上げ下げしながらそう言ってくれた。
スゴイっていうか、偉大なる美味なるものに興奮した心を糧に、なんとか噛まずに自分の気持ちを届けられただけなんだけど。
憧れちゃだめですよこんな私!
「あ、ちなみに“これがきっかけで自分が委員長になれるかも……!”と期待してしまった人は、実に素直な人間だと思います」
「~……すまないっ……!」
「正直や!」
言ってみれば目を逸らす飯田くんは、吹き出すティーさんの言う通り正直だ。
いいじゃない、だって憧れの人が真面目で立派な兄とかなら、自分もって思うもんだよ。そして上に上がりたいって思いは大事なものです。私には必要ないってだけで。
「でも再投票か……順当にいくと八百万さんになるのかな」
「尾白くんと夜嵐くんが誰に入れるかだよね」
イズクンの言葉にティーさんも思案顔だ。
八百万さんが委員長かー……どうしてだろう、委員長感が足りない。
「ちなみに、雰囲気でこの人こそ委員長、って人を決めるなら、イズクンとティーさんは誰?」
「「飯田くん」」
「なっ……! き、君達! 大事な委員長という役職を見た目で判断するなど!」
「言葉の割に嬉しそうだよ、飯田くん……」
眼鏡の上げ下げが止まらない。肩がすっごいソワソワ動いてる。
でもなぁ、昔っから委員長やってましたって感じだから、任せたい気持ちもあるんですよね。
……なんて、食を楽しみながら思っていた時でした。
突然の警報。戦慄する生徒たち。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』
そして放送が流れた途端、生徒が一気に動き出す。当然、屋外目掛けて。
ティーさんもそれに倣おうとしたけど、イズクンと私と飯田くんがちっとも動こうとしないのを見て、あれ? と首を傾げた。
「え、え? 三人ともなんでそんな落ち着いとるん!?」
「えっ、ええっと、それは───若那ちゃん!」
「え!? 私!? えと。い、飯田くん! 大声で! 他のみんなにも聞こえるように!」
「俺がか!? いや───よし! みなさーん! 落ち着いてください!」
腹の底からの、ほぼ絶叫。でも掠れることもなく、しっかりと響く、遠くまで届くだろう声が、食堂に響き渡った。
「ここは雄英! どうか冷静な対応を! 指示があったからと、一斉に飛び出そうとしては混雑するだけ! なにより───ヒーロー志望が我先にと逃げていいのですか! パニックにならず! 冷静に状況判断を! 不安ならば既に仮免を取得しているであろう上級生に判断を仰いでください!」
「「「───」」」
近くの上級生らしき人が足を止めて、自分で自分の顔をぱんっと叩いて気合いを入れた。
「三年B組、
「えっ、い、いえ」
手をメガホンに変えた先輩が、自身への情けなさからかばつが悪そうに謝ってきた。対する飯田くん、恐縮。
そりゃそうです、声をかけられたのが私だったら、もう固まってます。
「そうだよな、ヒーロー志望がいの一番に逃げ出してどうするんだってな。職場体験まで経験しといてこれじゃ、大丈夫かよ俺達」
冗談を言うみたいに笑ったけど、次の瞬間には───すごく凛々しい顔つきになって、他の三年生と連携を組んで、すごくテキパキと動いてくれた。
頼りになるって、きっとああいう感じ。ああ、先輩なんだなぁって、すごく安心できた。
「広口! 外見ろ外! セキュリティ突破って、ありゃ報道陣だ!」
「報道陣!? 報道陣がどうやって───いや。食堂に居る全員に通達! セキュリティ3を突破したのは報道陣らしい! 繰り返す! 入ってきたのは報道陣だ! ただ、雄英のセキュリティってのは簡単に突破できるもんじゃないってのは誰でも知ってるはずだ! 記者に混じって出入口を破壊したヤツも居るかもしれない! 外に出ても近づいたりはしないこと!」
「「「……!」」」
あ……そうです。
なんだ、報道陣か、なんて安心してばかりじゃいられない。
セキュリティについては説明でもあったし、そのあたりはヒーローマニアのイズクンもよく知ってて、説明されたこともある。
つまり、あんな分厚い、扉というよりは壁のような入り口を、破壊した誰かが居るってことだ。しかも、そんな誰かが報道陣に混ざっているのかもしれない。
果たしてそれは本当に報道陣なのか、そこに混ざっている
……。
警戒も意味を為さず、騒動は少しののちに治まった。
結局、報道陣言うところの雄英バリアーを破壊した人が誰なのかはわからず終い。
扉は無残にも崩れ去っていて、さすがにこれに身代わりを使ったら私も死ぬなぁ、なんて思って……想像してみるよりも余程にゾッとした。
「あの、では、再投票の結果、委員長は飯田くん、ということで……」
「任されたからには全力で務めさせていただく! 飯田天哉、1-Aをひっぱって行けるよう頑張ります!」
「うう……再投票でも負けてしまうなんて……」
「あっはっは、ヤオヨロちゃんドンマイ!」
「……芦戸さん? その……ヤオヨロちゃんとは……私のことですか?」
「あれ? ヤオモモのほうがよかった?」
「いえ……いえ! あだ名……とてもいいと思います!」
こういうのも平和って言えるのでしょう。
あれだけの騒ぎがあったあとだから、こんな会話が妙に嬉しいです。
雄英バリアー破壊からしばらく。
今日も今日とて学校。
本日のヒーロー基礎学はレスキュー訓練。
学内ではなくバスで移動して、場所を変えての訓練だそうで───
「レス! キュー! 腕が鳴るなぁ震えるなぁ!」
「おおよ! 人命救助こそヒーローの仕事だよな!」
「「頑張るぞーっ!!」」
現在、バスに乗りながら、夜嵐くんと切嶋くんが叫んでいるところです。
梅雨ちゃん(蛙吹さんにそう呼んでと頼まれた)がイズクンの個性がオールマイトに似ている、と言い始めたことから話題は個性の話に移って、みんなでワイワイ。
ちなみに私はアワアワと硬直中である。
「俺のは“硬化”。一対一なら強ぇけど、いかんせん地味なんだよなー」
「僕はすごいかっこいいと思うよ! だって自由自在に硬化できたら、最小限の動きで攻撃も防御もできるってことじゃない!」
「おおっ……この個性でそこまで言ってくれるヤツなんて初めてだ! サンキュー緑谷! ……でも、プロの世界で通用するかっていったら難しいよな」
「地味だと目立てねぇもんな。最近のヒーローは個性だけじゃなく、人気ありきなところあるからなー。俺の電気も派手ではあるけど、使いすぎるとアレだからな……」
「派手で強ぇって言えば、やっぱ轟と爆豪だよな」
「派手で強くても人気がなきゃどうしようもないな! ていうか爆豪はエンデヴァーみたいで人間的に好かん!」
「アァ!?」
「まあ……そうだな。ヒーローの部類としたら
「ンだコラァ! 人に文句が言いてぇなら目ぇ見てハッキリ口にしやがれ……!」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」
「ブッハ言えてる! この付き合いの浅さで、既にクソを下水で煮込んだような性格って認識されるってすげぇよなぁ!」
「なに人の目見て侮辱してんだコラ殺すぞ!!」
そしてイジられるバクゴーオヴかっちゃん。
たまには凝りてください。
「あ、緑谷と身代祇は幼馴染っつったっけ? こいつ昔っからこんな性格なの?」
「ひうっ!? え、えと」
「え、えっとそれはそのー……」
「デクゥ……! 若那ぁ……! てめぇらわかってんだろうなぁ……!」
「いっ……言いたいことが、あるなら……目を見て言え、です、よね……!? えとえと、いいえ、昔からじゃありません……!」
「マジか! え!? なんかきっかけがあったりしたわけ!?」
「そっかそっかー、爆豪、お前も昔はちゃんと子供してたんだなー」
「おうコラトンガリテメェ……! オレがどうやって成長したのか知りてぇなら死んで赤子からやり直してみっかコラ……!」
「それで身代祇ちゃん。爆豪ちゃんは昔、どんな性格だったの?」
「その……三途の川の鬼に、子供の皮を被せたような……性格、でした」
「「「「「すっげぇわかりやすい例えきたぁあああーっ!!」」」」」
「んだとテメェコラ若那ァアア!!」
「え!? 今のわかりやすかったん!? いまいちピンとこんような……」
「んじゃ早速キレた爆豪に質問。子供の頃、別の子供が作ってた砂山とか破壊したことは?」
「あるからどしたコラァ!!」
「……かっちゃん。三途の川の鬼って、子供が石を積む度にそれを壊しに───」
「あー! 三途の川の鬼が子供の皮をってそーいう! そんならピンときた!」
「ちゃんとした子供してたどころか、お前どんだけ他人の成功が嫌いなんだよ……」
「るっせぇその口今すぐ閉じろや縫いつけんぞ電気野郎……! つぅかテメェもいちいち説明してんなやそんくらい知っとるわクソデクが!!」
「……もう着くぞ、いい加減にしておけよお前ら」
「「「「ハイ先生!!」」」」
友達ごっこがしたいなら、って意味が、今ならちょっとだけわかった気がした。
はい、気が緩みすぎです、私たち。
そうこう言っている内にバスは大きな建物の……ド、ドーム? なにこれでっかい!
早速中に入ってみれば、まるでUSJのようなアトラクションが盛りだくさん!
いえもちろんアトラクションではなくて、いろいろな事故の状況を想定して作られたものなんでしょうけど。
さて、そんなアトラクションみたいな場所で講師として待っていてくださったのは。
「スペッ……スペースヒーロー13号先生ぇえええええっ!!」
「うわっ!? ど、どうしたんだい身代祇くん!」
「あ、飯田くん、若那ちゃんは13号の大ファンなんだ。危ないところを助けてもらったことがあって、それ以来」
「~……! ……!」
「てゆーか人のこと見てもじもじしてるあの姿、もう恋する乙女じゃね? むしろもじもじしてる所為でぎゅうっと両腕に挟まれたおっぱいが眩しい……!」
「峰田くん。幼馴染をそういう目で見るのほんとやめて」
「なに言ってんだ! あんな立派なもの持ってて、おまけにコスチュームもパイスラな上に両腕で挟んでもじもじしてる身代祇が悪いだろ! オイラは男として当然のことをしてるだけさ! むしろ見なきゃ失礼だろぐへへへへヘヴォァアーッ!!」
……ハッとした時、かっちゃんの指がゾブシャアとグレープの目をつついていた。
グレープ、悶絶。
「か、かっちゃん!?」
「るっせぇ黙れデク」
……守ってくれたんでしょうか。
さすがに視線には気づきましたし、すぐにやめるつもりではあったんですけど。
ていうかあんな大声で語られたら誰だって気づきますし。
「というか身代祇ちゃんは好きなコとか居るの?」
「男なんてほぼみんな野蛮人です。口を開けばエロいし視線はエロいし」
「「「峰田……」」」
「オイラだけが悪いわけじゃないだろ!? 男がエロくてなにが悪いんだよ! 大体、男女でいったら女の方がエロイってのが───」
「峰田ちゃん。そういう情報に踊らされすぎるのはよくないと思うわ」
「男ならエロくあれは別に構わんけど、もっと個人を見る努力はしような……マジで」
「上鳴てめぇ! この裏切り者!」
そして騒がしいこの集団。
けど、相澤先生がはぁ……と溜め息を吐いた瞬間、全員が静かになった。
もうあれです。パブロフの犬状態です。
ともあれ救助訓練だ。
13号先生と相澤先生、その他にオールマイトが居る筈だったんだけど、授業とは別の救助に忙しくて間に合わなかったらしいです。
現在もあちらこちらで人助け中。
あの……全盛期に戻ったからって、他のヒーローの仕事、奪っちゃメーですよ?
「超人社会では個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます」
「……! ……!」
「身代祇くん……頷きすぎて首、痛くはないのか……?」
「しかし一歩間違えれば用意に人を傷つける“いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないでください」
「……! ……!」
「なんかもう13号先生の言葉ならなんでも聞きそうな勢いだな……」
「なんでも!? …………」
「峰田、よだれよだれ」
「なんだよ邪魔すんなよ……! オイラ今、どうすれば13号先生が“服を脱ぐように”って命令してくれるか考えてんだから……!」
「清々しいほどエロだなオイ」
「でも他人任せなのがヘタレっつーかなんつーか」
「上鳴も瀬呂も黙れよォ! エロでヘタレで悪いかよォ!」
「ヒーロー志望ならヘタレちゃダメだ! 熱くいこう!」
「……夜嵐はいっつも元気なー……。ま、俺も救助訓練ってきたら頑張ろうって気にはなるけど。傷口塞ぐのも、縄替わりのテープ作るのも、どっちかっつーと救助向きだろうし」
みんながヒッソォと話す中、私、清聴。
頷きまくって理解しまくって、もう拍手だってしまくりです。
そう、私たちの個性は一歩間違えれば危険なものだ。
それはもうわかりすぎているくらい。
個性:土地神が教えてくれたものの中には、当然そういったものの知識だってあったんだ。
使うべき状況を間違っちゃいけない。使用方法を間違っちゃいけない。
一般化して久しい個性も、慣れたからこそかつての恐怖心を取り戻さなくちゃいけないんだ。
個性が“異能力”であり、異能力っていうのは、名前の通り普通とは異なった力であることを。
そうしてためになるお言葉に感動していた───その時だった。
「え───」
世界っていうのは曲っていて、壊れている。
誰かが言った平等なんてものはなくて、誰かが輝く分、誰かが暗さを味わわなきゃいけない。
じゃあ暗さを味わった人が次に輝けるのかっていったらそんなことはなくて。
だから───この世界はちっとも、まったく───
「………」
平等なんかじゃ、なかったんだ。