あ、はい。普通に終わりました。
「ほーらー……ビーム頼りになるからー……」
「てかさ、青山って肉弾戦しながらビーム使えた方がめっちゃ強くね?」
「あ、それな! たとえば手四つとかで相手を押さえてからビームとかほぼ必中じゃね!?」
「う、美しくないね……☆」
「いやこの場合負ける方が無様だろ。ベルト溶かされてアッパー一発とかないわー……」
「ないわー……」
「……!!」
あ。青山くんが険しい真顔でキュッとなった。
「お、おめでとうございます、三奈ちゃん」
「にっししー♪ あんがとー♪」
さ、次です。次は───
「よっしゃ、んじゃあ行くかぁ!」
「上鳴くん、頑張って!」
「おぉよ!」
「負けないかんね!」
「麗日さんも!」
「んっ!」
次の試合───上鳴くんvsティーちゃん。
さあ、どうなりますやら……! まあ、わたしはティーちゃんしか応援しませんが。
……。
───その日。
カミナリサマが、天へと消えた。
「多分この勝負……一瞬で終わっから!」
「多分この勝負……一瞬で終わっから!」
「多分この勝負……」
「やめてぇええええええっ!!」
星になった上鳴くんは、頭を抱えて号泣していた。
スタートがかけられる前、大声で言っていた「多分この勝負……一瞬で終わっから!」がよっぽど恥ずかしかったのでしょう。
「お前らにわかるかよ! 最大放電したらあっさりジャンプと浮遊で躱されて、タッチされて蹴り上げられたらもう空の上で! くくくく雲の傍って寒いんだぞ!? 死ぬかと思ったんだぞ!? 麗日が迎えに来てくんなきゃ俺、解除されたら投身自殺だったんだからな!?」
「いや、それは自殺じゃねぇだろ」
「語呂がいいんだからそこはほっといてくれ轟!」
涙ながらに語りますが、あれはさっさとギブアップしなかった上鳴くんが悪いです。
ティーちゃん、何度もギブアップを奨めたのに。
「っと、んじゃあもう最後?」
「一回戦はそうですね。で、最後は───」
既にここには居ない、かっちゃんとイズクンだったりします。
「うわー……荒れるだろうなぁ」
「てか切島の戦いも見てやれよ……今頑張って戦ってンだから」
「それ言ったら飯田のやつだってほぼ相手の説明で終わってたろ」
「……!!」
「飯田さん、心中お察しいたしますわ……」
「ありがとう、八百万くん……!」
「八百万も常闇も、騎馬戦で上手くいってりゃ、ガチンコバトルでいいとこいけたと思うのになぁ」
「これも勝負。仕方ありませんわ」
「これも世の流れというもの。悔いはあっても飲み込むとしよう」
「てか、蛙吹はなんだって棄権したんだ?」
「私はたまたま若那ちゃんたちのチームに連れられて、たまたま勝ちを拾っただけだもの。それが見せ場だとしても、納得してリングに上がる、なんて出来ないわ」
「尾白タイプだな」
「ああ、尾白タイプだ」
「似た気持ちで棄権したからってそういうのやめてくれないかな……」
現在リングでは切島くんと普通科のえーと……鉄哲くん? が……あ、引き分けです。
熱い男の戦いでした……お見事です。
『んーじゃあ個性ダダ被り対決も終わったところで! 一回戦最終試合! 中学からちょっとした有名人! 堅気の顔じゃねぇ! ヒーロー科爆豪勝己!』
「るせぇ、中学のことは言うんじゃねぇ」
『対! 一見地味だがやる時ゃやる! ヒーロー科、緑谷出久!!』
「……よしっ」
さてさていよいよ幼馴染対決です。
どうなるか……を考えると、まあその。
「───なァデク」
「へっ? な、なに? かっちゃん」
「正直……俺を負かした若那が居たから、俺はてめぇを幼馴染として見たって感はある」
「ングッ……、……うん、だろうね。ていうかいきなりなに!?」
「なにやってもダメでなにやらせてもダメ、俺の後ろをちょこちょこくっついてくんのがテメェで、それはずっと変わらねぇもんだと思ってた」
「うん……」
「……俺ァ。俺以外のモンはクソだって思ってて、口先だけ立派なことほざいて努力もしねぇヤツはどうしようもねぇクソだと思ってる。ヒーローになる、オールマイトに憧れてるって言うだけのテメェだってもちろんそうだった」
「うん…………え?
「俺の個性を、ただ汗が爆発するだけ、なんて言ってくれたな。……あァ、その通りだ。どんだけ才能あっても体は鍛えなきゃなんねぇ。どんだけ恵まれようが早く動くためにゃあ走り込まなきゃいけねぇ。“なんでも出来るから、汗が爆発するからなんだってんだ”って思えるようになった」
「…………かっちゃん」
「感謝するぜデク……俺ァ人を羨むことなんざねぇと思ってた。誰であろうと、オールマイトだろうと。いずれ羨むのはテメェらで、羨まれるのが俺になるって本気で信じてた。けどな、欲しいのは慢心じゃねぇ、向上心だ。常にトップを目指す。努力の底なんざ知りたくもねぇ。だから───」
なにかを話しているかっちゃんが、イズクンに手を向ける。顔は冷静そのもの。妙な慢心も、相手を見下した様子もない。
「対人訓練で簡単にテメェに負けて、救助訓練では教師の足引っ張って、飛ばされた先でチンピラ倒していい気になれたわけでもねぇ。俺ならやれるって突っ走って足引っ張って、その先で自分の行動に吐き気を催したなんて初めてだった。そんな身勝手の先で戻ってきてみれば、若那はズタボロになってまで“その場に貢献してた”」
「うん」
「俺は恵まれただけの自分に自惚れるだけか? ……違ェ、そんなもんじゃ終われねぇ」
「かっちゃん、それは───」
「意気込みだけご立派に、体育祭では俺がナンバーワンになる、なんて思ってりゃなんだ? 1位どころか2位にも3位にもなれねぇ。こんだけ重なりゃ馬鹿でもわかる。俺は恵まれてただけだ。そこに慢心があったから、他の恵まれたやつらとの差がついた」
「………」
「だから……俺が変わるために、テメェを利用する。無個性だとばっかり思ってて、周囲に恵まれたヤツしか居なかったテメェを潰して、俺が上に立つ」
「う、うん。でも───僕だって負けない。周りが恵まれた人ばっかりで、頑張っても笑われるばっかりで、それでも、って目指した先に今がある。見下されたのと同じくらい、僕だって支えてくれる人に恵まれたんだと思う。だから───負けないよ、かっちゃん」
「……、……デク」
「え? な、なに? かっちゃん」
「……あの日。あの公園で。……個性持ち3人でボコったこと。その……わ、わ……わ……!!」
「? かっちゃん?」
「だぁ! 言葉の流れで察しろやボケが! 悪かったっつってんだよちぢれ緑がァ!!」
「ち、ちぢれ緑ぃ!?」
「~……全力だ。恵まれなかったから得られたモン、全部出し切って見せろや。俺も……俺の慢心全部ぶつけるつもりで行くからよ。そんで───」
「そんで……?」
「そ、の、だな……! てめぇにまだその気があんなら……!」
「……? ……、……あっ! も、もしかしてかっちゃん! まだ僕のこと友達って思っててくれてるの!?」
「人の言葉拾って勝手に思い上がってんなや潰すぞちぢれ緑がァ!!」
「さっきと言ってること違うんだけど!?」
ギャーギャー騒いでいる内に、とっくにプレゼントマイクがスタートを告げた。
でも言い合うばっかりで、全然戦おうとしません。
そんな様子を見るわたしの横で、耳郎さんが「男ってほんと……」って溜め息を吐いて、クスクス笑ってました。なんのこっちゃです。
……。
幼馴染対決は、それはもう“すごかった”の一言。
ワン・フォー・オールを使っての攻防で、あっさりいくのかなー、なんて思ってたら、かっちゃんも負けてなかった。
ワン・フォー・オールは身体能力の爆上げでしかなく、やっぱり殴るには近づかなきゃいけない。
恐ろしく速くなったイズクンを前に、けれどかっちゃんは冷静に、相手の攻撃に合わせての爆破カウンター。
一発目を直撃で貰ったイズクンはたたらを踏んで、追撃に思いっきりストレートを貰ってた。
すぐに立て直して、迫るかっちゃんを引き離すために牽制の拳を振るうんだけど、それを待っていたのか一本背負い。しかも掴んだ腕を爆破しながらだから、振るった右腕へのダメージもとんでもない。
そんな感じでぶつかってぶつかり合って、熱くなりすぎて相手の行動を読むことをしなかったイズクンが大ポカを起こす。
巨大な爆発に巻き込まれ、とうとう場外へ吹き飛び、イズクン敗北。
けれどかっちゃんも右腕に爆破を集中しすぎたために、余波で右腕がすごいことに。
リカバリーガール頼りじゃなきゃ出来ませんね、あれ。
「緑谷、大人しい顔して怖ぇえなぁ……!」
「爆豪相手にあそこまでやるかよ……いや、驚いたぜ」
「いや、けどよ。場外判定がなかったら、爆豪のほうがやばくなかったか?」
「いや。緑谷くんは途中から冷静さを欠いていたように見える。相手が爆豪くんだからなのかもしれないが、殴ることに躊躇があったようにも見えた」
「あ、それな。直後に逆に殴られて、目ェ覚ましたっぽい場面もあったけど、あの一撃結構足にキてたんじゃねぇかね」
「……? お? お、おい? おいおいおい、マジか? ちょ、お前らリング見てみろリング!」
「あ? どーしたんだよ上鳴……って、え? は? ちょっちょえっ!? えぇええええええっ!?」
「ありえねぇ!! 爆豪が緑谷に手ぇ貸してる!? 起こしてる!? マジか!?」
「いやいやいやいや男の友情とか通用するヤツじゃねぇだろ爆豪!」
「でも有り得たんならそれが現実だ! ユウジョウ!」
「おおよ葉隠! やっぱ“殴り合ったんなら”だよな!」
「あ、そういえば切島くんも殴り合ってた似た個性の人と仲良くなったんだっけ?」
「おおよ男の友情だ! 決着が腕相撲ってのはアレかもだが、俺は満足してんぜ!」
「………」
「若那ちゃん。複雑そうね」
「梅雨ちゃん……」
複雑……なんでしょうか。いえ、むしろ嬉しいです。
まさかあのかっちゃんが。もしやなにか企んでいるのでは? なんて思ってしまう方が普通なのかもですけど、それでも。
「あ。一回戦が終わったってことは、次すぐわたしですか」
「おー! 頑張れワーちゃーん!」
「頑張ります!」
「ようし! 相手が身代祇サンなら全力の全力で勝負だあ! 頑張るぞお!」
「がっ───」
ああそうでした。相手、夜嵐くんでした。
大丈夫ですかねわたし……。
……。
ガチンコバトル第二回戦第一試合。
『YEAHァアアアアアッ!! さあさやってきたぜ第二回戦! 相性の所為なのか随分地味な戦いが多かったが上に上がりゃあ嫌でも目立つ! そんじゃあ行ってみようか! もっかい言うが一回戦は地味だった! ヒーロー科、身代祇若那ァ!!』
「いつか泳がす……アメリカまで泳がす……!」
『おい……やっぱお前睨まれてるぞ。なんかぶつぶつ言ってるぞ、おい』
『お、おう。自覚あるからほっといてイレイザー。んんでっ! 対するは同じくヒーロー科! 風を操るとんでもねぇヤツ! 夜嵐イナサぁ!!』
「夜嵐イナサ! 第二回戦第一試合! 滾るッス! 頑張るぞぉおおっ!!」
いつでも元気ですね、本当に。どうしたものでしょう、身代わりでどこまでいけるか……あ、いえ、ボール投げの時に、身体能力強化は見せたんですからそこは安心して───
『レディイイイイッ!! STARTぉっ!!』
あっ、今回早い! 開始の合図早いです!
第一回戦がなかなか進まなかったからでしょうか!
「行かせてもらうッス身代祇サン!」
「!!」
風を巻き起こして、夜嵐くんが突っ込んでくる。
わたしはそこに自分から向かって走って、トップスピードになる前に肩を掴んで押し止めた。
「!?」
夜嵐くん、驚愕。けれどすぐに意識を切り替えて、肩を掴まれながらもこちらに掴みかかってくる。
───それを待ってました。
「!」
さらに驚愕する夜嵐くんは、既に逆さの状態で宙を舞っていた。直後にズダンと武舞台に───叩き付けられる前に、風を巻き起こして無理矢理停止。───逆さづりの状態で。
「すごいな身代祇サン! 相手の力をこう、ぐいって利用して投げる! いいなあ俺もやってみたいなあ!」
風が巻き起こる。上下左右から様々に。
お陰で掴まれているのに、相手の力の向きがどこにあるのかが判断し難い。
あ、まずいです。合気が通用しないタイプです、これ。
「だったら……!」
リミッターを解除して、身体能力限界を無視して行動。
風があろうが無理矢理投げて、地面に落としたらすぐさま追撃。
けれどこの追撃が風の圧を通せず、相手にまで届かない。
うわ、今さらですけど強いです風の個性。風圧がここまで壁になるだなんて知りませんでした。
けど。
「ふんっ!」
「ほぶっ!?」
外に向けて風が出ているのなら、簡単です。
極間近まで接近して、位置を交換。“外へ向けて飛び出ていた風”に乗るように拳を繰り出せば、再度夜嵐くんから風が出る前に殴れるという寸法です。
みぞおちに的確に入った貫手。こちらもとんでもなく痛い突き指状態ですが、むしろ相手の方が痛いでしょう。
反射的に私の手を取りに来た夜嵐くんの手をこちらから掴んで、また投げられると踏んだのか風を発生させる……のを利用して、吹き飛ぶように倒れ、その腕を
「んぎぃいいいいいいっ!?」
夜嵐くんの体は地面に倒れ、腕だけが天に伸びる。倒れた瞬間の激痛は相当です。
「うわ痛そう……! っとと、お仕事お仕事! 夜嵐くーん!? どう!? いける!? ギブ!?」
審判であるミッドナイト先生が夜嵐くんに訊ねますが、夜嵐くんはもちろんNO。どころか、風を巻き起こして体を浮かせると、ごろりと簡単にこちらへ向き直ってしまい……あ、えっと。これ、腕極めの意味ないですね。
なのですぐに離したところ、夜嵐くんは立ち上がるのと同時にガッとわたしの腕を掴みまして。瞬間、夜嵐くんがドゴォと地面にぶつかってました。
「!? !? ……合気……スゴイな!!」
倒れたばかりの夜嵐くんの目が、とってもきらきら輝いてます。ていうか痛くないんですか夜嵐くん!
それからも投げて投げて叩きつけて、いなして躱して倒して極めて、と幾度となくやってみても、これがまた何度も起き上がってくるわけでして。
「うわ……夜嵐血まみれじゃん……てか爆豪、あの投げいっつも喰らってんの?」
「……アホか。血まみれだからどーしたってんだ。加減されてんのわかってっから突っ込むんだろが」
「加減? ……へ? 夜嵐が加減されてんのか!?」
「切島くん。合気道っていうのは身を守ることが大前提だけど、じゃあ本気で身を守るんだったら、相手のことはどうした方がいいと思う?」
「どうってそりゃあ……理想で言うなら気絶とかか?」
「うん。いつかかっちゃんが若那ちゃんの逆鱗に触れた時があってね、すごかったよ」
「…………爆豪? ちなみにそのー……身代祇の逆鱗て?」
「あいつの親父のことだ。あいつの前であいつの親父の悪口だけはぜってー言うな。下手すりゃ死ぬ」
「しっ……!? ……緑谷。爆豪がそう言うって、てか他人に忠告するって時点で相当ヤバくねぇか?」
「あの……ね、切島くん。相手をね、こう、投げるじゃない?」
「お、おう」
「でね、こう……倒れたところにね」
「……本気でやってんなら、投げたあとに喉に足刀が落ちンだよ。あんなもん一発で気絶だ」
「「「「「
『しょしょしょ勝者身代祇若那あぁああああっ!? つか大丈夫か夜嵐!? 夜嵐ぃいいっ!!』
「「「「「てか本当にやったぁあああああっ!?」」」」」
武舞台の上。夜嵐くんが笑顔で血を吐きながら気絶しております。
……やってしまいました。
い、いえ、ほんとここまでするつもりはなかったんですよ!? だだだだって夜嵐くんが本気でやってほしいッスとかこんなもんじゃないはずッスとかなんか見当違いの期待を持ってくるから!
ももももちろんそれしきで合気の極意を忘れるわたしじゃありません。あぁあああありませんとも、ええ。
けれども“そんなんじゃリフレッシャーが泣くッスよ!”とか言い出すから! 言い出すからぁあ!!
その所為で「あ゙? おまんお父さんの望みも知らんとなんば勝手に語るっちゃ?」と心が暴走しまして……受けて、投げて、叩きつけて、足刀。
体重の乗ったソレが夜嵐くんの喉に埋まると、ぐったりと気絶なさいました。OH……。
「えーはい! 命に別状はありません! 気絶に留まってますのでそのままGO! あ、でも夜嵐くんはリカバリーガールの元へよろしくね」
『
ミッドナイト先生が、担架に乗った夜嵐くんをロボに任せて運ばせる。
ちゃんと言葉を理解して運ぶロボ……なんかいいですね、ああいうの。
そういえばここのロボって何処で作ってるんでしょうね。一体欲しいくらいです。