金になるから殺っちゃうのさ   作:拝金主義の暗器使い

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遅くなってしまい、申し訳ありません。新生活諸々で体調を崩したりと忙しかったものでして。
とりあえず最新話を書き上げてはみましたが、荒さが目立つと思われますので何卒ご容赦くださいませ









では、どうぞ





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 楚梗にとってみれば、今回の仕事は袁紹を董卓陣営に売り払った時点で終わりと言っても過言ではない。

 金に関しても、手形を書かせて血判まで押させたのだ。本当ならば、このまま真っ直ぐに公孫瓚の元へと帰っても文句を言われる筋合いはない。

 そんな彼を止めたのは、董卓軍の軍師を務める賈駆だった。

 曰く、報酬を払うためもう一働きしてくれ、というもの。その内容とは、

 

「十常侍を、殺すのか?」

「正確には、首領の張譲と趙忠だけ生かして連れてきてほしいの。後の十人は、全員殺してきて」

「…………別に構わねぇが。幾ら払うんだ?」

「一人につき、これでどう?それが十人分よ」

 

 賈駆の示したそれは、まあまあの大きさである革袋だった。

 中には、十分すぎる量が入っている事は傍目からも見ただけで分かる太りっぷり。

 楚梗としてもそれ以上の詮索はしない。公孫瓚にやとわれている事は事実だが、そんな道理は目の前にある金の前には、些末事でしかないのだから。

 受け取った時点で交渉成立。それも、前金の時点で報酬を渡すという羽振りの良さだ。

 義理も人情もへったくれも無い楚梗であっても、この依頼に賈駆がどれだけ重きを置いているのか分かるというものだろう。

 報酬を羽織の裏へとしまい、ニヒルに笑むと彼は踵を返した。

 空間に溶けるようにして消えた背を見送り、賈駆は一つため息を吐く。

 

「はぁ…………悪い奴じゃないんだろうけど……話してると、肩が凝るな」

「おっ?なんや、詠。年寄みたいに肩回しよって、歳か」

「誰がよ、霞。アンタこそ、準備してきなさい」

「はあ?」

「汜水関よ。袁術も撤退して、袁紹軍は頭が居なくなって烏合の衆。けれど、相手にはまだ曹操が居る。そろそろ、華雄が睨み合いに焦れてる頃よ。恋と一緒に、抑えてきてちょうだい」

「そら構わんけど…………ここの守りはどうするんや?ウチも恋も出払ったら、十常侍のチョッカイが増えるかもしれんやろ?」

「問題ないわよ。楚梗を雇えたの。彼に潰してもらう様に、すでに動いてもらってる」

「…………信用できるんか?あの男、忠義とかとは無縁の人種やろ」

「だからこそ、使えるの。金だけの繋がりで、一度つながれば仕事を果たしてくれる」

「保証は、あらへんやろ」

「そうかもね。けど、その不確定要素も飲み込まなきゃボクは月を守れないから」

 

 悲壮な覚悟が滲む横顔に、張遼は何も言えない。

 彼女とて、董卓を守りたいのだ。だが、如何せん政治という領域は武神すらも擂り潰して殺してしまう程の力があった。

 現に、過去現在未来に至るまで様々な英傑が政治の前に敗れ去っていくのだから。

 言葉の力と、そこから紡がれる金の力と権利の力。それは、場合によっては純粋な腕力にも勝る武器となるし。人一人どころか、何千何百もの人間を死に追いやることも出来るし、その逆で救うことも出来るだろう。

 そんな世界を、賈駆は生きている。それに加えて、軍師としての責務だ。

 周囲は敵ばかり。使える手駒は武将と一部軍師を除いて二流や三流ばかり。それでもここまで来れるのだから、彼女の才覚の高さがよくわかる。

 張遼もそれはよく分かっている。だからこそ、彼女らの元で飛龍偃月刀を振るい、武威を示してきたのだから。

 

「…………ま、そこまで気張らんどき。ウチや華雄、恋も居る。陳宮も子供やけど、立派な軍師の一人や。ウチらが勝って、大陸に正義を示そうやないか。な?」

「…………フンッ!そんな事言われなくても分かってるよ!ほら、さっさと準備していきなさい!」

 

 おお怖っ、とお道化た張遼が駆けていく様を見送り、賈駆は再び一つため息。

 楚梗の手土産で、勝ちの目が見えてきた。後は、運の要素を潰すだけだ。

 彼女の運は、とてつもなく悪い。それはもう、裏目裏目に行動の大半が出てしまう程に。故に今回も、連合が組織されるまで碌な手を打てなかった。

 だが、今この瞬間、董卓軍へと風は吹いている。

 乗れるかは、彼女の采配次第だ。

 

 

 

 

 

 

 暗殺であれ、誘拐であれ、後ろ暗い仕事というのは夜間に行うのが基本だ。

 人の情報収集に用いる五感の内、もっとも頼っているのが視覚と聴覚。とりわけ視覚は対象の色や形、距離感等を正確に測るために必須となる。

 だからこそ、楚梗は夜に好んで仕事を行っていた。

 

「後二人か。カカッ、何処も警備が緩くて助かるな」

 

 月明かりすらも細く、星明りも期待できないような夜。羽織の裾を翻して、楚梗は屋根の上を飛び回っていた。

 既に十二人の十常侍の内、十人の始末は終えた。

 呆気ないとも思われそうだが、楚梗は数万もの軍勢に誰にも気取られる事なく入り込み、大将を攫って来たチーターの様な隠密だ。高々、屋敷の一つに入り込めない事などありえない。

 況してや十常侍の面々は、政治家だが武人ではない。帯剣等もしていないし、腕利きの武人が護衛しているわけでもない。

 言っては何だが、認識が甘かったのだ。

 自分たちなら大丈夫。後は董卓を潰せば、アホの子である霊帝を祭り上げて実権を完全に掌握するだけ。懸念事項と言えば、派手好きの袁紹だが。彼女程度ならば口先三寸で丸め込むことも難しくはないというのが、十常侍の共通認識。

 だが、甘かった。

 権力も政治も通じない、“金”という欲望の化身だけを一途に求める男が存在していたことにより彼らのプランは完全に崩壊していた。

 当然次の手を打とうと考える。しかし、答えは出ない。

 この間が命とり。袁紹を売り渡した昨日の今日で、暗殺者は動きだしていたのだから。

 

「―――はい、お邪魔~」

 

 軽い調子で、屋根の上から開いている窓をすり抜けるようにして侵入を果たした楚梗。

 足音を立てず、衣擦れの音を立てず、呼吸音すらも真面に聞こえない彼の歩みは、屋敷内を警護する兵たちにすらも察知できない。

 それどころか、

 

「ッ!?」

「寝てな」

 

 廊下に伝った梁を足の裏で挟んでぶら下がり、下を通った兵士の首を掴んで捻っているのだ。その後に死体を梁の上に引き上げるまでがワンセット。

 気づけば、梁の上は死体だらけだ。それでも、落ちてこないのは太い梁のお陰か。

 そうして、着々と殺しを行いながら楚梗はやがて目当ての部屋にまでやって来ていた。

 ツンと鼻を衝く女物の香の臭い。彼が嫌いな臭いだ。

 室内の気配は一つ。堂々と正面から乗り込む。

 

「こんばんは、と」

「ッ!?あ、貴方は…………?」

「人攫いさ」

 

 部屋に居たのは、寝台に横になる青髪の女性。今日に限って屋敷に戻ってきたのが運の尽き。もっとも、ここに居なければ、楚梗は王宮にまで普通に忍び込んだことだろう。

 兎にも角にも、目的の相手。その片割れだ。

 

「私を、攫いに…………?いったい誰の――――」

「答える義理はねぇな。お前が金になる。それだけ、さ」

 

 女性、趙忠が更に問う前に楚梗の姿は彼女の目の前にあった。

 握られる右拳が、上体だけ起こしていた彼女の貧弱な上半身、鳩尾へと突き刺さる。

 一瞬だけ硬直した彼女は、それだけで伸びてしまった。

 ぐったりと脱力した趙忠を、寝台に敷かれていた布団で簀巻きにしてその上から袁紹も縛った細くも強靭な縄で縛りあげて、簡易的なミイラをその背に担いだ。

 既に、屋敷の人間は眠りについた使用人だけ。兵士は軒並み、あの世への片道切符を貰って旅立っていった。

 悠々と国の重臣の一人を攫って見せた楚梗。

 人一人背負っていようとも、その動きに陰りなど出るはずもなく、アッサリとその後の仕事も熟してしまう。

 

 結果、董卓軍は連合総大将である袁紹。十常侍筆頭の張譲、並びに趙忠の二人を手元に得たことになる。

 これが果たしてどんな結末を見せるのか。それは神すらも知らない。

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