艦隊これくしょん この世に生を授かった代償   作:岩波命自

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ドンパチから少し離れられるか……。
近々またキャラ紹介を書きます。


第一〇話 準備期間

「面会できないだと? なぜだ?」

基地の病棟に見舞いの花束を手に訪れたガングートは眉間に皺を寄せて江良に聞いていた。

「まだ意識が戻っていないんです。

主砲塔の爆発に、巨大砲弾の至近弾の破片、爆風で動脈を切る、内出血、肋骨他数か所を骨折、肺や臓器のいくつかも甚大なダメージを受け、再生治療で再生しないといけない傷だらけ。

生きていたのが奇跡ですよ。

おまけに血液型が随分珍しいタイプだから輸血も難しく……」

「血液型が?」

「ええ。

だから他の艦娘から献血して貰おうと、データバンクを血眼になって探したら、一人だけ成分が近いのがいました。

その人が拒否した時に備えて、強制献血できるよう武本提督に許可して貰ってから頼んだら、すんなり引き受けてくれたので助かりましたけど。

医者としてかなりの博打打の輸血を行ったので、拒絶反応が全く起きず、ちょっと不思議なことにはなりましたけど」

「その献血を頼んだ相手とは?」

「大和さんですよ。

結構血液を提供して貰えて助かりました」

かなり安堵した顔で江良は言った。

 

そう言えば、あいつこの間久々に随分食べていたな……と、食堂で大和が久しぶりに大食いをしていたところを見たのをガングートは思い出した。

出撃疲れかと思っていたが、確かに献血は体力的に来るところがあるから、血を作る為には食べるのが一番だった。

「そうか、分かった。

夕張や秋月型の細いのは?」

「夕張さんはもう目が覚めて、明石さんや三原さんに頼んで録画していたアニメを見るか、工学書を読んで過ごしてます。

蒼月さんは昨日目が覚めました。

少し記憶障害が出ていますが、脳波に大きな異常はないので記憶障害は数日で治るでしょう。

秋月姉妹がよく見舞いに来ていますよ。

青葉さん、深雪さんは軽傷でもう退院済みです。

青葉さん、集中治療室をこっそり覗こうとして、摘まみ出したことがありました」

「次席指揮官だからな、心配なのだろう」

「だといいんですけどねえ。

あの子はパパラッチですから」

苦笑を浮かべて言う江良にガングートもつられて笑った。

自分も青葉にあれこれ詮索されて、辟易したことがあった。

妹も妹ではあるが。

「分かった。

これは私からの贈り物だと、あいつに言ってやっておいてくれ。

見舞いと初陣祝いだ」

そう言ってガングートは江良に花束を渡した。

「分かりました、伝えておきます」

「よろしく頼む」

そう言ってガングートは病棟から出ていった。

 

江良は花束を抱えて集中治療患者病棟の個室の一つに入った。

心拍計の電子音だけが音を立てているかのような部屋で、体中が痛々しい程包帯に巻かれた愛鷹がベッドに横になっていた。

ホント、あれほどの傷を負ってよく生きていたわこの子。何者なんだか……。

江良は愛鷹の寝顔を見ながら、サイドテーブルの花瓶にガングートからの見舞いの花束を入れた。

 

 

(至近弾だけでもこれほどの大怪我を負うとは、早急な対策が必要となるな)

モニター越しに国連海軍総司令官のネイサン・デーン元帥が深刻な表情で言う。

デーンの傍らにいる参謀長の九条龍作(くじょう・りゅうさく)大将が、タブレット端末に表示しているデータを見て口を開いた。

(スプリングフィールドや青葉、それに前日交戦したユリシーズら交戦した艦娘からの詳言、レポートはすべて読ませてもらった。

巨大艦の防御力、機動性、そして超甲巡や実験巡を至近弾複数だけで撃破する大火力。

恐らく海軍始まって以来の最大の脅威だな。

大和型の火力でも倒せないとも言うようだな)

「イエッサー」

武本は普段からは考えにくい程の表情で答えた。

「しかし深海棲艦でも巨大艦の運用には手間がかかる事は分かりました。

徹底的な殲滅を図るなら、もう一隻か確認している三隻をすべて投入しても別に不思議ではない。

なのに、一隻だった理由。

奴らにとってもあの巨大艦の運用には、大きな手間がかかると言う事かと」

(その可能性については私も同じだ。

前線展開泊地棲姫と言えど、大量の防衛艦隊とあの巨艦を維持するのには相当な負担のはずだ。

そこが我々のつけ込む隙だといえる)

そう言うデーンに武本は、話の分かる司令官だ、だから長い事やっているわけだが、と智将の名を持つ総司令官を評価していた。

 

(この泊地を殲滅できれば、日本へのシーレーンの安全確保は確かなものになるだろうな。

既に民間船舶会社からは巨大艦出現の事が漏れて動揺が広がりつつあると言う情報が来ている)

タブレット端末を見ながら言う九条の顔を見て、武本はその情報を集めたのは有川であることを一発で見抜いていた。

有川は情報戦分野担当だし、民間船舶会社の反応を探るのは朝飯前と言うよりも簡単だ。

小遣い稼ぎ気分で出来る仕事だっただろう。

やる時は汚いやり方も辞さない大馬鹿野郎だからな……昔から世話が焼ける奴だ。

 

(海軍本部で協議の結果、この新型深海棲艦は新名称を『巨大艦ス級』と呼称することになった。

まだ不明な所は多いが、早急な対処は必要だろうな)

「小官としては沖ノ鳥島海域への攻撃作戦について、小官に一任してもらいたい所存です」

(許可する。

君の好きにやって構わん。

必要なら私が各方面に話を付ける。

ただし一つ条件がある)

「条件?」

(君の信念を見失わない事、それだけだ。

以上だ、健闘を祈る)

「はっ」

 

モニターからデーンと九条の姿が消えると、武本はデスクの上のボタンを押して窓の遮光シャッターを開けた。

真っ暗にしていた部屋に晴天の日差しが差し込んできた。

「さて、ここからが正念場か……」

椅子を回して窓側を向いて立ち上がると、窓辺に歩み寄った。

「巨大艦ス級、か……。

これ程の脅威が来たとは……まあ、とっくに予測済みだがな……」

窓辺から見える海を見つめて言った時、突然武本の視界が歪んだ。

「⁉」

立ち眩みがして椅子に座る。

疲れかと思った時に、突然頭の中にあの時の光景が蘇った。

 

 

(四番艦「せとづき」より入電! 

我機関部に被弾、航行不能、機関部に被弾、航行不能!)

(三番艦「あかしお」被弾! 

大破炎上、行き足止まります!)

(五番艦「ほたか」轟沈を確認、生存者確認できず!)

(敵艦、本艦左舷に展開中)

(旗艦「あまぎ」と残存艦を護れ! 

最悪本艦が盾になるぞ)

(敵発砲、砲弾多数来る!)

(CIWS、撃ち落とせるか!?)

(駄目です、的が小さすぎます!)

(くそ、当たるぞ。

衝撃に備え、衝撃に備え!)

(被弾、被弾、四分隊応急班。

ダメージコントロール状況知らせ!)

(艦体に大激動! 

第二装薬室付近、及び機関室に被弾!)

(駄目です、機関制御室壊滅!)

(第五区画浸水止まりません!)

(反対区画に注水しろ!)

(ヘリ格納庫、後部VLS発射系統にも被害!)

(排水諦めろ、退避ーッ!)

(第一、第二煙突が跡形もなくなっています!)

(防火隔壁がやられた! 

応急班第二班応答なし!)

(弾庫に引火させるな!)

(前部VLSにて火災! 前部VLSにて火災!)

(VLS注水、消火しろ!)

(後部CIWS、二二番砲沈黙!)

(こちら七番艦「ふゆかぜ」、主砲を失った! 

また敵弾を食らったら終わりだ!)

(こちら六番艦「きりしお」被弾した、被弾した! 

戦域から離脱、離脱する!)

(艦体がやられた、こちら七番艦「ふゆかぜ」。

艦を放棄、艦を放棄する!)

(さらに被弾! 

CICとの連絡が途絶! 

主砲五一番砲が大破)

(早く防水ハッチを締めろ!)

(排水ポンプ三番が停止!)

(航海長、副長と艦長が戦死。

射撃システムダウン、機関も全滅、戦闘航行不能です)

(総員離艦! 

離艦部署発令!

全員離艦だ、救命ボート、筏を展開しろ! 

今すぐ全員、艦から退艦するんだ!)

(了解ッ!)

(メーデー、メーデー、メーデー、こちら護衛艦「あきつかぜ」、全チャネルにて一方通信。

艦長代理は総員離艦を発令。

メーデー、メーデー、メーデー、「あきつかぜ」は総員離艦する!)

(総員離艦だ、急げ!)

(ギャッ⁉)

(助けてくれぇぇぇぇーッ!)

(うわぁぁぁぁーッ!)

(熱いッ、熱いよぉッ!)

(お母さーんッ!)

(嫌だ、死にたくない! 

こんなとこで死にたくねーよッ!)

(航海長ォォォォーッ!)

 

 

「あぁぁぁぁーっ!?」

奇声を上げて武本が目を覚ますと、金剛が自分の顔を膝にのせ抱えこんで涙顔で覗き込んでいた。

隣には長門や陸奥、赤城もいた。

「テートク⁉ 大丈夫デスカ⁉」

「物凄い汗ですよ!?」

「しかも酷い息遣い」

「金剛さんがのた打ち回る提督を見つけたので、慌ててきました」

「あ、あ……」

気が付くと息をすること自体が難しい程、呼吸が乱れ切っていた。

体中がまるで水に浸かっていたのかと勘違いするほど汗で濡れきっていた。

あの光景……。

 

「また見ちまった、オレは! 

忘れたはずだったってのに、チックショウ、チクショウ、クソッタレ!」

 

周りに金剛や長門らがいるにも拘らず、突然武本は普段の口調ではなく荒れた口調で喚き散らすと、急に無性に悲しくて溜まらなくなり、子供の様に大声で泣き出した。

普段の姿からのあまりの豹変ぶりに長門、陸奥、赤城は固まってしまう程驚いた。

ただ金剛だけ武本をそっと抱きしめて、「大丈夫デスよ、テートク」と呼び掛けていた。

 

暫くしてようやく落ち着いた武本は、金剛の淹れた紅茶を飲んでいた。

「また、あの時をですか……」

長門の問いにやつれきった顔を上げた武本は、「ああ……」と短く答えた。

何度目か分からない溜息を吐いて頭を抱える。

「すまない、無様なところを見せてしまって……」

「いいんですよ。

とてもつらい思いをされたのは、私たちも分かっていますから」

「すまないな、赤城くん……」

「谷田川さんには後で私からお話しておきます」

「ああ、お願いするよ陸奥くん」

 

武本が見たあの光景。

彼が少佐だった頃に乗り込んでいたミサイル護衛艦「あきつかぜ」の最期の時の光景だ。

日本艦隊第一艦隊第一護衛隊群の一隻の「あきつかぜ」は、能登半島沖での深海棲艦との戦いで、第一護衛隊群旗艦を含む僚艦七隻と共に撃沈された。

火達磨になった「あきつかぜ」から脱出(と言うよりは爆発した「あきつかぜ」から吹き飛ばされた)できたのは武本を含め三人だけ。

その三人も漂流中怪我が元で力尽き、全員撃沈された艦の仲間の後を追い、「あきつかぜ」の生存者は武本一人だけだった。

それどころか武本は八隻の艦隊唯一の生存者だった。

 

一二時間近く漂流して彼も力尽きかけたところを、捜索に出た友軍の救難ヘリに発見され救助された。

救助後、武本は三年近く極度の鬱状態や重度のPTSDに苦しめられた。

 

あれから大分経つが、今でも時々うなされる。

だがここまで酷くなったのは久しぶりだ。

武本のこの過去を知る艦娘はごく少数だ。

「ああ、そうだ。

君たちに伝えておきたい事がある」

一同が自分に視線を向けて来る。

武本は本部から沖ノ鳥島海域の前線展開泊地棲姫及び敵巨大艦ス級、敵大艦隊撃滅の実行許可を得た事を話した。

「ス級、ですか? 

いろは数えで最後の文字。強敵と言う事ですね」

「赤城くんの言う通り。

至近弾だけで夕張と青葉、深雪を纏めて無力化した。

防御力が比較的あった愛鷹は生きているのが不思議なほどの傷だ」

「愛鷹?」

聞きなれない名前に赤城が首を傾げる。

まだ直に会っていないし、大所帯の日本艦隊では新任が来た時に全員に伝わるには、最大で二週間かかることも普通だから別におかしい反応ではない。

 

愛鷹がどんな人物かを陸奥が説明すると赤城は「変わった子ですね」と謎が多い愛鷹に軽く驚いた。

聞いていた金剛も「ミステリアスなイメージの子でしたヨ」と付け加えた。

援護に来た時に、重傷を負った状態だったとはいえ金剛は見たことがある。

 

「でも何故そこまで自分を隠すのでしょう。

誕生日すら分からないなんて」

「詮索は出来ん。

誰にでも知られたくない過去もあるからな。

秘匿率の多さは確かに異常だが、そこは受け止めておくしかないだろう」

腕を組んだ状態で長門が言った。

「話を戻してもいいかな?」

武本に尋ねられた一同は頷いた。

「敵の戦力なんだが、前線展開泊地棲姫となると空母、戦艦中核部隊だけでも一〇個群は運用できる。

支援部隊の展開状況も相当なもののはずだから、敵は水上水中の総数が一〇〇隻を超えるかもしれない。

第三三戦隊が交戦した戦力が全てflagshipクラスだったことも考えると、構成艦はflagshipクラスが主力艦と見るべきだろう。

強敵中の強敵だ。

この基地の総力を挙げた攻撃作戦になるだろう」

「地方基地の艦隊戦力は?」

長門の問いに武本は「可能な限り召集だ。集められる限りの戦力が必要になる」と答えた。

「ただ敵の戦力再編前に仕掛けるべきだから、準備期間は出来るだけ早くに終わらせたい。

時間をかければかける程、敵の脅威度は上がるし防備も強固になるはずだ。

今作戦では私に一任されているから、話がついたら海外艦隊も参加してもらう」

「久々の統合作戦ですね。

それもかなりの規模の。

提督泣かせですね」

苦笑交じりに陸奥が武本を見た。

「それが私の仕事さ」と返して紅茶のカップに口を付けた。

これほどの統合作戦(ジョイントオペレーション)は武本泣かせの計画立案になる。

残業に次ぐ残業になる事は間違いないだろうし、寝不足になる事は確定だ。

とは言えこれが武本の今彼が出来る唯一の仕事だ。

艦に乗って戦う術を失った男の出来る戦い方だ。

 

「作戦詳細については、後々みんなの手を借りることになる。

その時はよろしく頼むよ」

「イエス、あ、テートク。

一つお願いがアルネ」

「なんだ?」

「悩みがあったら、いつでも私たちに相談してネ」

金剛の言葉は長門、陸奥、赤城の言葉も代弁してのものだった。

迷いはあったが、しばしの沈黙の後武本は頷いた。

 

 

その日の夜、巡洋艦寮では青葉の全快祝いが行われた。

参加したのは衣笠、古鷹、加古、熊野、鈴谷だ。

酒が苦手な青葉の事も考えて、飲み物はジュースやお茶になった。

青葉は大勢の友人が自分の被弾を心配してくれたことに感謝し、父島での生活の土産話をした。

 

「あそこでの魚料理は美味しかったよ。

蒼月さんがパクパク食べてた」

「魚料理好きなんだ。

あんま一緒に仕事したことないから分かんなかった」

「お刺身も美味しいですわね。

トロは大好きですわ」

「私もトロ好きだよ。

イクラもいいし、ネギトロも好きかなあ」

「肉料理は無いの?」

「あったよ。

ただ備蓄品には限りがあるから、いつもは出なかったけどね。

魚料理は食べ放題だったから、ガサもきっと魚料理好きになれると思うよ」

「衣笠は小骨が苦手だったな」

「加古も昔前歯に詰まって大騒ぎしてたけど、覚えてる?」

 

食の話の他に日本では雨が降った一方で、父島では快晴が続いていたことの話に衣笠が羨ましがったので、「ガサは雨女だねえ」と青葉は茶化した。

悔しい衣笠は「そう言えばこの間青葉の寝顔の写真撮ったんだけど誰か見る?」とスマートフォンを出して逆襲を仕掛けると、青葉は慌てて「わ、ガサ、やめてよぉ!」と衣笠のスマートフォンを奪おうと手を伸ばしたが、「うっそー」と衣笠はにやっと笑った。

青葉の自分が写真(特に衣笠)を撮られる事を嫌がるのは皆知っているし、同室の衣笠は青葉の寝顔などプライベート写真をこっそり撮ってばら撒いたりするので、下手に衣笠を刺激すると大概青葉は自爆する。

 

「そう言えば青葉に聞きたいことあったんだけどさ」

話題を変えようと衣笠は青葉に向き直った。

「青葉の上司の愛鷹ってどんな人なの?」

「あー、愛鷹さんのこと。

まあいつ聞かれると思ってたからなあ。

分かっていることは一応話すよ」

「分かんない事はわかんないじゃん」

鈴谷が軽く突っ込んだ。

「愛鷹さんは、んーそうだねぇ、簡単に言うなら冷静沈着、とても物静かで優しい人だよ。

射撃がとってもうまくて、命中率は百発百中。

刀の使いがとてもうまくて、天龍さん以上の腕前があるかも」

「天龍を超える腕? 

どんな感じなんだ」

そりゃ凄い話だなと、加古が身を乗り出してくる。

「砲弾弾きの速さかな。

指先だけで刀を回して機銃掃射を全部弾いて、撃ってきたタコヤキを返り討ちにしてたよ」

「機銃掃射を全部? 

それは凄い」

右目を見開いて古鷹が驚いた。

「どんないでたちなのです?」

熊野の問いに、青葉は父島への移動中に撮れた写真を出した。

「これが愛鷹さん。

すごく写真嫌いみたいで、今のところこれしか撮れてないんだ」

「背たっか、あたしらよりも頭一つチョイは上じゃない?」

「靴のヒール抜きでもそれはありそうね」

「顔、よく見えないな。

イルカを見て楽しそうなのは分かるけど、素顔が全然見えない。

顔は見たの?」

「うーん、見ての通りすごく目深に制帽被っているからよく分からない。

コートも滅多に脱がないから、体格もよく分からないけどダイエット歴ゼロだって」

その言葉に一同は「えーっ!?」と仰天した。

まあ、そう言う反応だよね。

そう思いつつ「でも愛鷹さんはその事に触れられるのが凄く嫌らしいから聞かない方がいいかも」と返す。

「え、何で何で?」

「分からないよガサ。

あと、はっきりとは分からないけど、何だか昔随分、んー、物凄く苦労したり辛い目に遭ったみたい」

「それは、まあみんな誰かしらなんか嫌な目に遭っているだろうけど」

「青葉の直感だとね、多分死にかける程苦労していると思うよ」

「私もそう思いますわ。

この笑い方で分かりますもの。

初めてこれほど自然に笑えたことはないっ、てお顔ですわ」

 

熊野の言う事は確かだ。

あの笑みは本当に楽しそうなものだったし、青葉も愛鷹にとって初めてあんなに楽しい気分になった、のだと分かった。

 

「彼女の生い立ちはきっと籠の中の鳥だったのでしょう。

いつも周りは冷たくて、でも自分を見失う事は無かったとても芯のお強い方」

「熊野の言う通り。

瑞鳳さんを爆撃から庇った時、左腕を骨折しても涼しい顔でそのまま砲戦までしたんだって」

「すげータフじゃん。

骨折ってちょー痛いし」

「分かるなあ、あたしも手首折った時、死ぬほど痛かったの覚えてるもん」

「あれは戦闘中じゃなくて、階段から転げ落ちてでしょ」

「うげ」

悪戯っぽく笑って古鷹は加古に突っ込んだ。

加古はいま一つ、姉の古鷹に頭が上がりきらない。

「あとね、結構なジャズファンみたいだよ。

聞いている所を何回か見た事あるから」

「盗み見ではなくて?」

「人聞き悪いですよ熊野」

「青葉の事だから、大体そうじゃないの」

「ガサまでえ」

「ジャズって面白い趣味してんじゃん。

あんま聞かないから、どんな曲が有名か知らないけど。

まー、さ、ゲームでもしよ」

「お、いいですねえ」

そのあと鈴谷が用意したテレビゲームで一同は盛り上がった。

 

 

様子を見に病室に入った江良は、ベッドの上で上半身を起こした格好でぼーっとしている愛鷹を見つけた。

「目が覚めたのね」

目が覚めただけでなく、体がここまで動かせるほど元気になっているのが嬉しく笑顔で言ったが、愛鷹は生気の無い視線を向けて来ただけだった。

コテンパンにやられてしまったのがとても悔しいのね、と思った江良は「良かったわね。生きて帰ることが出来て」と声をかけた。

愛鷹は自分の包帯が巻かれた手を見て、拳を握ったり指を広げたりを繰り返した。

「なぜでしょう……なぜ私は今生きているんでしょうね」

「大和さん達のお陰よ」

「大和……私の体に、あいつの血を入れましたね?」

憎々し気な口調。

さーっと背筋が冷えそうになるのを感じながら江良は「そうだけど。輸血できる血液型が大和さん意外近いものが無かったのよ」と解説する。

ぐっと拳を握り締めた愛鷹は、吐き捨てるように言った。

「誰かの血が入ること自体、凄く嫌いなのに……なんであいつの……」

「え……」

どうしてそこまで、いや……愛鷹さんは大和さんの事に好印象を全く抱いていない?

初めて聞く彼女の憎しみに満ちた話し方。

なぜだろうか。

助けてくれたことが、逆に愛鷹の自尊心を大きく損ねたのだろうか。

プライドの高そうなイメージが全く無かっただけに、江良の驚きは大きい。

 

しかし、なぜ輸血した相手が大和だと分かった? 

輸血パックを愛鷹は見ていないはずだ。

昏睡状態だったのに。

驚きの目で見られている事を無視している愛鷹は、ぎりりと鳴るほど強く拳を握りしめた。

 

そして涙を流し始めた。

「輸血されるなら人工血液が良かった……自分が自分の力で血を作り出して自分の体にいきわたるまで……人工が良かった……」

「ここにはストックが丁度なくて。

大丈夫よ、すぐにあなたの体に流れる血は、あなた自身が作り出した血で満たされるわよ」

「でも、あいつの血を取り込んでしまったことに変わりはない……私は嫌だった。

だけど私の体は頭の考えに反して受け入れてしまった。自分が自分を裏切った気分。

この苦しみをまた……私は……」

悔し涙を流す愛鷹を見れば分かった。

屈辱的な敗北を喫した人の姿だ。

 

しかし、一体どういう理由があって、ここまで打ちのめされるのだろうか。

やはり余程巨大艦に完全敗北したことが悔しくて、大和にやり場無き怒りをぶつけているだけだろうか。

だとしたら少し錯乱しているのだろうか。

江良にはそう言うようには見えなかった。

何度も心、体に傷を負った人間を見て来たから分かる。彼女は今、しっかりと正気を保っている。

聞く時が来ているのかもしれない、そう思った江良は意を決し愛鷹に声をかけた。

「……愛鷹さん」

「ええ。

気になるんですよね、私の正体が?」

見透かしていたように言う愛鷹に江良は頷いた。

「ええ、医者として凄く気になるわ。

口外はしないって約束するから、私には教えてもらえないかしら。

あなたの正体と過去を。

話してくれれば、貴方の心の重荷が少しだけ軽くなるかもしれないわ」

 

長い、長い沈黙。

複雑な事情がある事は予想できる。

だが一人抱え込んでいても人は前に進めない。

愛鷹は頷いた。

「いいでしょう。

その代わり、口外はたとえ拷問されても言わないって誓えますか?」

「ええ、誓うわ」

「メモも録音も録画も一切なしです。

他の皆さんにも極秘です」

「承知しているわ」

江良の答えに安心したか、愛鷹は深い溜息を吐くと自身の正体と過去を江良に初めて打ち明けた。

その内容に江良は言葉を失った。

 

 

またまた厄介な任務が来たものだ……そうぼやきたい気分になりながら、北米艦隊日本駐屯艦隊のガトー級潜水艦トリガーは通信アンテナをしまうと、生命維持装置の状態をチェックした。

バッテリーよし、ソナーよし、酸素よし、と指さし確認する。

「さて、じゃあ潜るか。

ダウトリム一〇、前部ツリムタンク注水、潜横舵下げ舵、ベント弁解放。深度二七、方位一-八-〇」

行くぞ、「しつこい潜水艦娘」の出番だ。

 

 

帰還後第三三戦隊は、戦力再編の為当分出撃しないことになったので深雪と瑞鳳はしばらくの間、基地防衛艦隊に編入となった。

編入期間は不明だが、愛鷹が回復次第第三三戦隊へ復帰できるはずだ。

深雪と瑞鳳は、基地防衛艦隊第一群に組み込まれた。

防衛艦隊の編成は外洋艦隊とは違い基本八隻編成だ。第一群は瑞鳳の姉妹艦祥鳳を旗艦として瑞鳳、軽巡名取、深雪と姉妹艦初雪、白雪、睦月型望月、弥生で編成されていた。

「まーた暇人になっちったの深雪」

「一番暇人やってるもっちーに言われたかねえよ」

艦隊を組んで哨戒任務に出撃すると深雪は望月に冗談を言われ、深雪もちょっとした皮肉で返した。

瑞鳳は第三三戦隊で唯一無傷のまま帰還しただけに、祥鳳から褒められて少し得意気な気分になっていた。

 

第一群は時々伊吹の航空団の模擬射撃演習相手になった。

伊吹の要望からだ。

瑞鳳は快諾し、祥鳳も練度向上に役立つと承諾した。

伊吹の航空団は、伊吹曰く「私と同じく所詮新人」と語る割には橘花改を使いこなしており、深雪は模擬対空射撃をしながら「沖ノ鳥島で戦ったタコヤキが可愛いぞ」と随分驚いた。

タコヤキ相手に健闘した瑞鳳の航空団の戦闘機隊はそこそこ互角に渡り合ったものの、祥鳳の航空団は一蹴されてしまった。

対空射撃も深雪以外はまともな至近弾が出ない。

「深雪さんは一体どういう実戦を経験されたのですか」

演習が終わると、よく白雪は深雪の戦い方に興味津々で聞いてきた。

対抗相手の伊吹は深雪と瑞鳳に目をかけている様で「いい演習相手が見つかって嬉しいです」と礼を言ってきた。

 

深雪と瑞鳳が基地防衛艦隊に配備されて数日後、青葉、衣笠、古鷹、加古の第六戦隊、曙、潮、朧、漣が配備されて第三群が編成された。

第一群と対抗戦をした伊吹は一週間後、第五特別混成艦隊に配備された。

第五特別混成艦隊には伊吹の護衛艦艇として重巡鳥海、愛宕、駆逐艦天霧、第一群から転属した白雪、初雪が編入され、来たる沖ノ鳥島海域への攻撃作戦に備えて艦隊運動や対空戦闘演習が入念に行われた。

船団護衛艦隊が通商破壊戦を仕掛けて来た深海棲艦艦隊と小規模な戦闘を行った以外、しばらく平和なひと時が訪れた。

その間に夕張と蒼月が退院したため、武本は第三三戦隊を次席旗艦の青葉に任せて再結集させた。

同じ部隊にいられた期間が短かったことに第六戦隊、特に衣笠が寂しがったが青葉に「二度と会えない訳じゃないから」と言われると気を取り直し「今度は被弾しないでね」という言葉と共に送り出された。

 

青葉を臨時旗艦とした第三三戦隊は、練度維持のために愛鷹抜きでの自主トレーニングに励んだ。

前回の戦いでは苦戦を強いられただけに、次は負けないと言う意気込みで一同は演習に精を出した。

水上戦闘演習から対空戦、対潜戦闘まで。

練巡の香取や香椎らに指導も頼んで指導評価も受けた。

 

ある日の夕方、演習を終えた一同が基地に戻った時瑞鳳が思い出したように皆に聞いた。

「ところでさ、あたしたちも沖ノ鳥島海域への攻撃作戦に投入されるのかな」

「総力戦になるから投入されるんじゃねえの? 

どういう仕事になるか分かんないけど」

「でも愛鷹さん、まだ退院できてませんね。

私は瀕死の重傷で絶対安静が必要と聞きましたけど……」

「青葉は何か聞いてないの?」

「江良さんが中々教えてくれないんですよ。

青葉も最近少し忙しかったので何とも。

今日病院に伺ってみますよ」

「今度、みんなでお見舞いに行こうぜ。

あ、そうだ青葉。

病院行ったらさ、愛鷹に好きな食べ物聞いて来てよ。

みんなで作って持って行こうぜ」

「分かりました、青葉にお任せです」

一同は装備を返却した後寮に戻り、青葉は演習レポートを書きあげると第六戦隊仲間と夕食をとった。

面会終了時間までは余裕があるうちに、と食事を終えたらその足で病院へと向かった。

 

最近は重傷を負う艦娘も少ない為、病院内は人気が少なかった。

夕食後なので外は真っ暗になっており、廊下は電灯がついている。

人気が少ない夜の病院を一人歩くのは戦場で感じるものとはまた別の怖さがあった。

青葉が以前調べたところでは、この病院は昔深海棲艦との戦いで負傷した兵士たちが大勢治療を受けた場所でもあり、手当ての甲斐なく死亡したものは数知れなく、手足を切断せざるを得なかった人もいたと言う。

その為もあってか、実は怪談騒ぎや幽霊騒ぎがよく起きたと言う。

その事をうっかり思い出してまった青葉は、足を止めて後ろを振り返った。

勿論誰もいない。

ただ何となく気になってしまうのだ。

歩いている時は自分の足音しかほとんど聞こえない所のような場所だ。

「なんでもない……なんでもない……」

ガサに見られたら笑われるなあ、でも肝試しの時一番弱いのもガサだけど。

以前六戦隊仲間でやった肝試しで、最下位だった衣笠の顔を思い出して青葉は無理に笑った。

結構前の話だ。

まだ衣笠が改二になる前で、髪型がツインテール、制服が自分と同じだった時だ。

それを思うと古鷹と加古も、まだ改二どころか改にすらなっていなかった。

そもそも当時六戦隊で改装を受けて改になったのは青葉のみだった。

改になると衣笠はキュロットからスカート、ローファーから黄色サンダルに少し衣装替えした。

改二になると衣笠は両手には黒手袋をはめて、髪は下ろし、サンダルの色は灰色にするなどまた服装を変えた。

古鷹と加古は改二になると髪型から制服が随分変わっただけなく、容姿も少し変わった。

成長が止まるのが艦娘の特徴だが、改二になると少し変わるものは実は多い。

三人とも改二になると艤装も一新したが、自分は改になってからずっと改装を受けていない。

今まで特に気にした事は無かったが、それでも唯一六戦隊では改のままである事に違和感を覚えなかったわけではない。

艦娘側からの申請で改、改二にはなれないから武本か、その上から辞令が来ない限りはずっと改のままだ。

いやもしかしたら「気にした事は無かった」ではなく、気にしない様にしていたのかもしれなかった。

妬みやコンプレックスを自然にコントロールして胸の奥底にしまい込んでいられたから、気にせずにいられたのかもしれなかった。

自然とため息が漏れた。

 

「どうした、溜息なんか吐いて」

いきなり声をかけられたので、青葉は文字取り飛び上がった。

暗く静かな病院内を一人で歩いていたから神経が過敏になっているだけに、不意に声をかけられると驚きは大きい。

声の主は駆逐艦娘の若葉だった。

横に曲がる通路に立っている。

何時ものごとく少しだらしないネクタイ締めで、片手には煙草の箱を持っていた。

銘柄は「わかば」だ。

「びっくりするじゃないですかあ、若葉さん」

「すまない」

寡黙な艦娘なので話す言葉も短い。

「なにしていたんですか?」

「喫煙所を借りていた。

初霜が嫌がるからな」

そう言って若葉は煙草の箱を見せた。

喫煙場所として病院の喫煙所までわざわざ出向いてきたらしい。

ご苦労様です、と青葉が言うと、どうもと若葉は頷いて別の通路の奥へ消えた。

 

自分とはまた違う意味で若葉は神出鬼没だ。

ふらりと現れてひょいっといなくなる。

性格も少し捉えどころがない。

若葉とは艦隊を組んだ経験が少ないので、戦闘中の活躍をあまり見たことが無いが、被弾すると「悪くない」と言う迷台詞の持ち主であることで有名だ。

青葉も青葉で「敵はまだこちらに気づいていないよ」、と敵に見つかった後で言ってしまって迷台詞キャラの一人にカウントされてしまっているが。

 

江良のオフィスに行くと、幸い仕事中でいたので愛鷹の具合を聞くと目を覚ましたと聞き、少し嬉しくなった。

面会許可をもらい病室を訪れる。

愛鷹の病室の個室のドアが半分開いており、あれ? とドアを開けたままの愛鷹に珍しさを感じそのまま病室へと入った。

「こんばんわ、愛鷹さん……あれ?」

愛鷹がいない。

松葉杖もない。

トイレにでも行ったのだろうか。

ふと、サイドテブルにいつも愛鷹が被っている制帽が置かれているのに気が付いた。

と言う事は今無帽状態と言う事だ。

制帽の下には日記らしきノートもある。

何時も見せてくれない素顔がはっきりと分かるかもしれないのでは、と思うと本能的にジャーナリスト精神が出て来た。

スマートフォンを出してカメラでも準備しようかな、とキュロットのポケットからスマートフォンを出して画面を見た時、電源を入れる前の暗い画面にぼんやりと映る自分の後ろに人影が写った。

「お、愛鷹さん? 

青葉ですぅ、お見舞いに……がぁッ!?」

青葉がそこまで言いかけた時、鳩尾に凄まじい衝撃が走り、短い呻き声を上げて青葉は崩れ落ちた。

持っていたスマートフォンが床に落ちる。

意識が遠のき、暗転する直前に包帯に巻かれ、スリッパを履いた愛鷹の足が見えた。

「ワ……ワレ、アオバ……」

 

 

司令官室に入ると武本がソファに寝っ転がり、上着をかけ物にして寝ていた。

「先輩、だらしないですよ」

徹夜続きの仕事疲れらしく、小さめのいびきをかいてぐっすり眠っている武本に谷田川は苦笑交じりに言った。

取り敢えず自分がまとめた書類をデスクに置く。

未決済の書類入れの厚さが増えている。

先輩は昔から抱え込みやすいなあ、ちょっとは頼ってくださいよ。

迷惑をかけたくないと言う武本の考えだが、それが結果的に自分の首を絞めるような形であることは誰もが知っていた。

しかし、中々そこを改めようとしないところが武本の欠点だ。

乗艦を失ってからその傾向は強くなっていた。

一応三度の食事はとっているらしい。

俺は食いながらなってるな、と思わず「腹が減ると判断力が鈍る」と言う理由で、ハンバーガーやサンドイッチを手に仕事をしている自分を思い出した。

「ま、おやすみなさい。

提督」

そう言うと谷田川は司令官室の電気を消し、部屋を出た。

「あれ、司令官はお眠りに?」

不意に下から声がし、谷田川が見ると書類の束を抱えた朝潮が立っていた。

「ああ、へとへとに疲れてソファの上にひっくり返ってるよ」

「風邪ひかれては大変です。

毛布をとって来ましょう」

「提督はそれほどやわじゃないよ。

上着かけて寝てる。

それより君も早く寝なさい、夜更かしはだめだ」

「は、はい。

あの、ではこれを預かってもらえないでしょうか」

朝潮は抱えていた書類の束を谷田川に渡した。

「提督にだな。

うん、わかった。

ご苦労さん」

「では私は失礼します。

お休みなさい、副司令官」

「おやすみ」

 

トコトコと自分よりは三〇センチほどは小さいであろう朝潮が去る背中を見てから、書類の束の厚さを図る。

見た目はチビ助のくせによくここまでやるよ、あいつ……。

「先輩……ご苦労さんですね。

オレは出世できなくて良かったかもな」

「副司令、どうかしたのか?」

また自分より下から。

磯風だ。

小脇には書類の束。

「いや、別に。

で、何だその書類の束は?」

「これか? 

一七駆からの報告書だ。

私と浦風、浜風、谷風からのもあるぞ」

「まさかそれ提督にか?」

そうだ、と言う様に磯風は頷いた。

 

 

武本が目を覚ましたのは翌朝の事で、何の夢を見たのか、と頭をもみながら考え、ふとデスクを見た。

未決済の書類入れの書類の高さを見て武本は「オレは悪夢を見ているのか?」と答える人間がいないのを無視して聞いていた。

取り敢えず書類を見てみると、本当に夢と思いたくなる量だった。

「加賀くんの航空団の演習レポートに、鳳翔さんの食堂からのに、明石からのに、朝潮くんに、磯風くん、陽炎くん、妙高くんにゴーヤくん(伊58)とイムヤくん(伊168)まで。

借金みたいに溜め込んで、それをクソ忙しい今になって一気に返済して。

決済する俺の身にもなってくれよ……」

書類の束を見て武本はぼやいた。

「管理職も楽じゃないねえ」

そう言うと、何故か自分で言ったことに苦笑が漏れた。




前回、第三三戦隊を単艦で壊滅させた強敵の不明巨大艦は以後正式に「巨大艦ス級」と呼ぶことになります。

武本は今は普通に過ごしていられても、やはり二九九名の仲間を乗艦と共に失い、一人生き残っているだけに今なお彼の心の奥には大きな傷が残っています。
中和と言うのもなんですが、今は司令官であり管理職の彼の仕事の苦労話が。

ようやく登場した若葉の吸う煙草の銘柄は実在します(コンビニとかで売っています。
喫煙は成人以上からです)。

今回青葉の視点が大きく入っています。
また、あまり気にしてはいない設定とは言え、青葉なりに六戦隊仲間で唯一の改なのには思うところがあるかもしれません。
今回そんな青葉の多少複雑な心情が見えます。
「ワレアオバ」は実際の青葉の発した信号が元の艦これ青葉のネタですが、あくまでもネタ言葉です。
なんだかんだ言っても、愛鷹には青葉と言う存在が欠かせないモノとなっています。
青葉と衣笠とは血のつながりのない「姉妹」ですが、個人的にこの小説での衣笠は強気ながら、内面はどこか青葉に頼っているところがあり、青葉も立場が逆の様で姉として衣笠を大切にしていると言う感じです。

さて今作最大の謎となる主人公愛鷹の謎が今回一部判明することとなりましたが、これはまだ彼女の秘密の一部にすぎません。
彼女がいったい何者なのか、何故大和の事を嫌うのか、彼女の生い立ちや経歴は、まだここでは教えられません。
ただ並大抵の苦労の人生ではないのは、第一話から読むと分かります。

第五特別混成艦隊は元ネタが「空母いぶき」から来ている為、所属艦娘の登場は最初から決まっていました。
因みに「空母いぶき」で戦闘で中破し途中退場している護衛艦「せとぎり」(この「せとぎり」に代わって新登場したのが「あまぎり」です)は、旧海軍にはいないのと、既にこの世界では艦娘の夕霧が戦死している為、実写映画の要素が入っています。

初登場の潜水艦娘トリガーは、エースコンバット7の主人公トリガーと実在の潜水艦トリガーから来ており(私の趣味から来たネタ最大のネタキャラ)、「しつこい潜水艦娘」の名は「終戦のローレライ」(この小説では実はトリガーは撃沈されておらず「しつこいアメリカ人」と言う呼び名で序盤のボスとして登場)が元ネタに。
エースコンバット7のトリガーは、冤罪ながら元大統領の輸送機の誤射撃墜殺害の嫌疑で数奇な人生をたどりますが、こちらの艦娘トリガーは……まだ言えません。

武本の回想シーン(悪夢)で登場した第一護衛隊群艦艇は全て架空艦名です。
ついでに言うなら旧海軍にも「あまぎ」以外の名前の艦はいません。
「ふゆかぜ」は秋月型駆逐艦の「予定艦名」にありますが。
(回想シーンにはエースコンバット7とアサルトホライゾン、コールオブデューティーゴースト、ザ・ラストシップ、はいふりの東舞校艦隊でのセリフネタが)

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