艦隊これくしょん この世に生を授かった代償   作:岩波命自

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沖ノ鳥島海域艦隊戦の第二幕のスタートとなります。


第一三話 沖ノ鳥島海域艦隊戦 中編

砲声と共に放たれた三五発の砲弾は四〇機の敵攻撃機の編隊の真ん中で炸裂した。

近接信管の起爆で四方へと撒き散らされる散弾がタコヤキを切り裂き、切り刻み、細かな破片へと分解して撃墜する。

三分の一程が火の玉になるか、黒煙を噴いて海へと落ちていくが残りは損害に構わず支援部隊に接近する。

速い、と攻撃機の接近速度を見て愛鷹は驚いた。前よりタコヤキの飛ぶ速さが速くなっている。

もしやタコヤキの改良型だとでも言うのだろうか? もしそうなら爆装も強化されている可能性もある。

容易ならざる敵だ。

接近する速度が速く、もう愛鷹、金剛、ガングート、シュペーの主砲の射撃が間に合う距離ではない。

青葉、衣笠、古鷹、加古、夕張、ユリシーズが主砲の対空射撃を開始する。

二〇・三センチ連装主砲と一四センチ単装、連装主砲、五・二五インチ連装両用砲の対空弾が撃ち上げられ、攻撃機部隊の鼻先で弾幕を展開する。

大口径砲とは違い対空弾の爆発範囲は広くない。だが戦艦の主砲に比べ速射能力の良さと取り回しの速さが巡洋艦の強みだ。

両手で構える二〇・三センチ連装主砲のトリガーを引く衣笠は、自分の放つ三式弾改二の着弾位置がイマイチ後追い気味なのが気になった。自分の主砲はどちらかと言うと水上射撃向きだ。対空射撃も出来るが両用砲並みに出来るという訳でもない。

一方、姉の青葉は自分よりは大分マシだった。右肩に担いだ第一、第二主砲(左足の第三主砲は位置の関係から対空射撃には向いていない)から放たれる三式弾改二はそれなりにタコヤキのいる空へと飛んでいき、VT信管を起動させて散弾を撒き散らしてタコヤキに損傷を与えている。

「対空射撃って、どうも苦手なのよねえ……」

「無理に当てなくてもいいから、牽制のつもりで撃って!」

あまり対空射撃が得意ではない衣笠の弱音のような言葉に青葉が発破をかける。

もっとも日本巡洋艦で命中率がいいのは青葉だけだ。古鷹も加古も衣笠よりは少しいいか同じ程度で、青葉に次いで有効弾を撃つのは夕張だ。速射性は低くてもレーダーと連動した精密射撃で確実に落としている。

一方でユリシーズの射撃は命中精度がいい。対空レーダーと連動した射撃はタコヤキの編隊に有効弾を次々に送り込んでいる。ただ小口径砲と言う事もあり一度に落とすことが出来ている敵機の数は多くない。

「主よ、どうか我が手と我が腕に空より来たりし悪魔を落とす力を与えたまえ、主は我が海の守護神、海の牙城、どうか我に友を護る力をお貸しください……」

敬虔なクリスチャンらしいユリシーズは神への祈りを呟きながら両用砲を撃ち続けた。

程なく蒼月、深雪、陽炎、不知火、黒潮、それに長一〇センチ高角砲搭載の愛鷹、シュペーの八・八センチ対空砲、夕張の一二・七センチ高角砲の対空射撃が始まった。

小さい対空弾の炸裂した爆炎が無数に青空に咲き乱れ、タコヤキがその中へと躊躇いもなく突っ込む。

長一〇センチ砲高角砲の直撃を受けたタコヤキが爆散し、一二・七センチ連装砲の対空弾の至近弾で戦闘不能なまでのダメージを受けたタコヤキが姿勢を崩し、撤退を図る。そこへ八・八センチ対空砲が逃がさぬとばかりに対空弾を周囲にばらまき、タコヤキがバラバラに砕け散る。

蒼月の高い命中精度を誇る対空射撃でタコヤキが次々に落ちるが、揃って改二になっている陽炎、不知火、黒潮の射撃の精度も高い。

「あたってーな!」

「落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ!」

「深雪と黒潮に後れを取っちゃったら陽炎型ネームシップの名が泣くわ」

「じゃあ、陽炎は撃っててください」

殆ど蒼月単独でではある物のタコヤキはこの時点で九割の攻撃機が撃墜されていた。それでも残りが尚も接近し射撃ポジションに入ろうと機動を始める。

それに対し愛鷹と金剛の二五ミリ三連装機銃、ガングートの一三・二ミリ四連装機銃、シュペーとユリシーズの二〇ミリ機関砲の機銃により弾幕が張られた。

オレンジ色の機銃弾がタコヤキの前にカーテンの様な弾幕を広げる。

そのカーテンを突破したタコヤキは一機もいなかった。

タコヤキがいなくなったのを確認した愛鷹は全員に「撃ち方止め」と命じた。

青空には黒い染みの様な対空弾の炸裂した跡、撃墜されたタコヤキが引いていった、海面に墜落したタコヤキの上げる黒煙で薄汚くなっている。海も同じような有様だ。

(スカイドッグから支援部隊旗艦愛鷹へ。ピクチャークリア。残る敵機は護衛機だけだ、残存機が撤退する。今のうちに直掩機を下ろし補給を行わせた方がいい)

「了解。瑞鳳さん、熊野さん、鈴谷さん、直掩戦闘機隊を収容、補給を急いでください。交代機の準備も」

「了解」

「伊吹さん、そちらの準備は?」

(今終わったけど、そっちの方も終わったみたいね)

「はい。ですがこちらが直掩機の収容中の穴埋めに橘花改を派遣していただきたいです」

(了解。今発艦させる。そちらには直ぐに着くよ)

直掩の戦闘機部隊が戻ってくるのを見ながら愛鷹は胸のむかつきを感じた。心臓の動悸も早くなる。

急いでタブレットを呑み込んで調子を整えた。この段階でもうこうなるのでは今日どころかこれから先乗り越えていけるのか、それが急に不安になって来た。

それでも自分の出来ることをやるしかない。

「大丈夫か?」

後ろからガングートが聞いて来る。頷いて愛鷹は答える。

「あれが、愛鷹って人の……」

「聞いてちゃいたけど、確かにやり手の艦娘っぽいな。しかし、でっけえなぁ三一センチ主砲って」

一息つく古鷹と加古は愛鷹の背中を見ながら顔を見合わせていた。

瑞鳳と熊野、鈴谷が戦闘機隊の着艦作業に入る。

「出撃機数四〇機。内未帰還機九機……」

やはり今回のタコヤキは以前より手強さが増している。早期に味方艦隊が敵機動部隊を殲滅してくれないとこちらは持ちこたえられないかもしれない。

瑞鳳の飛行甲板に烈風改が着艦した時に橘花改八機が飛来する。ジェットエンジンの轟音を立てながら編隊を組んで艦隊の上を航過していく。

さらに熊野、鈴谷が戦闘機隊の収容作業に入った時、愛鷹のソナーが何かを検知した。

「今のは?」

そう思った時、青葉が叫んだ。

「潜水艦探知! 方位二-六-八、深度二〇、距離七〇〇、数は……二隻。ヨ級です!」

敵の潜水艦、網を張っていたのか、それとも偵察情報を聞いてやってきたか。

一番近いユリシーズと不知火に対潜攻撃を指示した時、そのユリシーズが警告を発した。

「雷跡、四発、いやさらに四発を確認。計八発がこちらに向かって来る! 方位二-六-八、敵針〇-八-八、敵速四五ノット! 回避しろ!」

艦娘なら余裕で回避は出来る。しかし、その射界には「しだか」が入っている。動きの鈍い「しだか」はよけきれない。

するとユリシーズは主砲を魚雷の鼻先に向けると斉射を行った。主砲射遅延信管にセットした両用砲が砲弾を連射し、魚雷の鼻先で着弾の水柱を突き立てる。

初弾命中とは行かないが着弾位置は悪くない。撃で軌道をそらすか破壊するつもりの様だ。

その間、不知火と対潜攻撃を行う彩雲が敵潜に向かい対潜攻撃を開始する。

「沈め……」とドスの利いた声で言いながら爆雷を投射する不知火に続き、MADで探知した敵潜に彩雲も爆雷を投じる。

投射された爆雷が海中で爆発すると水柱が複数海上に林立し、その間を縫うように小柄な不知火が駆け抜ける。彩雲からの探知位置を参考に動き、爆雷攻撃を行った不知火は四回目の爆雷投射で手応えをつかんだ。

愛鷹のパッシブソナーでも敵潜ヨ級の艤装が破壊される音がソナーから聞こえ、やがて圧壊音が聞こえて一隻の撃沈を確認する。

もう一隻は爆発音越しに損傷した音が聞こえるも沈むには至らなかった。ただ深刻な被害を被っているのはノイズから明らかだった。よたよたと離脱していく。

とどめを刺すべくユリシーズと不知火は追撃をしようとしたが、愛鷹は深追いになるとして呼び戻した。

ヨ級二隻が放った八発の魚雷はユリシーズの水面射撃で破壊されるか軌道をそらされて、結局「しだか」はおろか流れ弾になって艦娘に当たる、と言う事もなかった。

航空機の収容中を狙うとは、やってくれる。

一番艦隊の動きが制限されるタイミングを狙われるとは、と愛鷹は唇を噛み、対潜哨戒機は何をしていた? と苛立ちに似た物を感じた。

潜水艦、航空攻撃の両方で仕掛ける飽和攻撃を受けたら対応しきれるかは微妙だ。

 

 

支援部隊が戦闘機隊の収容を終え、代わりの戦闘機隊を上げている時スカイドッグが第一空母打撃群の第二次攻撃隊の戦果を送って来た。

敵の戦闘機の九割を撃墜するもこちらも一三機を撃墜されてしまったらしい。約損耗率は二三パーセント。

戦闘機部隊の損耗率の多さを鑑みて、第一空母打撃群旗艦の赤城は一旦泊地への攻撃を中断する事にしたと言う。

戦闘機隊が全滅してしまうと攻撃隊の護衛機も艦隊の防空隊もなくなってしまう。

第一空母打撃群は赤城の八二機、加賀の九八機、翔鶴、瑞鶴の七六機の計三三二機。

その内烈風を赤城には四二機、加賀に四六機、翔鶴に四三機、瑞鶴に四〇機を補用機も含めて搭載している。烈風の総数は一七一機。

失われた烈風の数は二七機。

総数から見れば大した機数には見えないようにも見えても、やはり攻撃隊護衛や艦隊防空の為の機数を考えるとこれ以上の損失は後々の作戦展開上響く数字と言える。

そこで赤城から報告と助言を求められた谷田川は第一空母打撃群も敵空母艦隊への対艦攻撃に移行する事にし、他の空母打撃群も敵空母艦隊への攻撃を続行する事に作戦を切り替えた。

直ぐに第一空母打撃群は攻撃隊機に対艦兵装を装備させる作業にかかった。その間に防空支援に伊吹の橘花改一二機が直掩援護に入る。

一方、第二から第四空母打撃群は第三次攻撃隊を編成し、残存艦艇とまだ攻撃していない敵空母艦隊への攻撃準備に移った。

しかしそこへ深海棲艦空母艦載機の攻撃隊の接近をスカイドッグが捉えた。

(警告、深海棲艦の新たな攻撃隊がコンタクト。機数一〇〇、第二空母打撃群に向かう。新たなボギー探知、機数六四。第三空母打撃群に接近する。さらにコンタクト、支援部隊に機数八六機が接近。各艦隊は直ちに迎撃体制に移行せよ)

「こちらに第二波だと? くそ、敵の後方支援部隊を叩くのが戦の鉄則とは言え……厄介なことになったな」

知らせを聞いてガングートが罵声を吐いた。

「愛鷹より各員。対空戦闘用意。対潜警戒も厳に。同時攻撃を受ける訳にはいきません」

主砲に新たな三式弾改二を装填しながら愛鷹が指示した時、(対潜哨戒任務部隊旗艦千歳より通知します。哨戒機が敵潜水艦隊六隻を探知、これより迎撃行動に移ります)と連絡が入る。

来た、潜水艦隊の迎撃が始まった。もうこのあたり一帯には敵の潜水艦が展開して襲撃の機会を狙っているに違いないだろう。

「お出でなすったな」

爆雷の準備をしながら深雪が呟く。夕張が深雪の言葉に頷きながら不安そうな声を上げた。

「でも同時攻撃をされたら、対応しきれないわよ。瑞鳳ちゃんたちの戦闘機に頑張ってもらわないと」

「そうなるね」

新たな弓を構えて瑞鳳は頷いた。

一方、熊野と鈴谷は自分たちの戦闘機隊が苦戦気味なのが不安要素らしく、表情がやや曇っている。他のメンバーも潜水艦と言う新たな脅威に緊張気味だ。

その緊張を和らげようとシュペーが一同に声をかける。

「やれることをやるだけよ。何としてでも、ね。『しだか』を護りましょう」

「そうですね」

蒼月が相槌を打つ。

第二波は迎撃のために瑞鳳、熊野、鈴谷から再び迎撃機が上がる。機数は第一波と同じだが橘花改八機がこれに加わっている。

さらに増援として橘花改四機が送ったと伊吹から連絡が入る。

(支援部隊戦闘機部隊、ターゲットマージ。攻撃開始)

支援部隊から離れたところで戦闘機隊と深海棲艦攻撃隊が交戦を開始する。

烈風のエンジンが立てる唸り声と機銃の射撃音に交じり、橘花改の甲高いエンジン音と大口径機関砲の砲声が混じり、そこへタコヤキが撃墜される爆発音が入り混じる。

橘花改がタコヤキの戦闘機隊を攻撃し、烈風と烈風改が攻撃機を迎撃する。

そこへ伊吹が送った増援の橘花改も参陣し、数の差を機体性能の差で埋めていく。

橘花改の機関砲が射撃をすればタコヤキが火を噴くか、バラバラにされて果てていく。格闘戦ではタコヤキには及ばないから二機編隊のエレメントを組んだまま一撃離脱攻撃を繰り返す。速度で追いつけないタコヤキは橘花改には数で対抗を図る。

烈風、烈風改に被弾・撃墜機が出始めるが橘花改に損害は出ない。圧倒的速度と火力を生かして一機、また一機とタコヤキを屠っていく。

それでもすべてを迎撃する事は出来ない。タコヤキも性能がよく一二機の橘花改のみでは戦況をひっくり返しきれない。烈風、烈風改も圧倒できる相手ではない。

先ほどより少し多い数のタコヤキが戦闘機隊の迎撃をかいくぐって、支援部隊へと迫る。

主砲長距離対空戦闘を愛鷹は発令し、スカイドッグから射撃諸元参考データを送ってもらうと金剛、ガングート、シュペーにも伝え、「撃ちー方始め、てぇーっ!」の号令と共に三式弾改二の斉射を行った。

前回の例を考えての射撃諸元だったこともあり、タコヤキの編隊内で炸裂した三式弾改二の着弾位置は前より向上していた。

すぐに次弾装填を行った愛鷹は「確個自由に対空射撃」と命じると第二斉射を放った。

再装填が速い愛鷹の主砲とシュペーの主砲が対空砲弾を撃ち、敵編隊の中で近接信管を起爆させて炸裂すると複数のタコヤキが爆散する。

愛鷹とシュペーの射撃で三分の一のタコヤキが空から消え去る。

なおも迫るタコヤキへ青葉、衣笠、古鷹、加古、夕張、ユリシーズの対空射撃が行われる。

ユリシーズの射撃は命中率が高く、青葉と夕張がその次だ。衣笠、古鷹、加古は牽制射撃に切り替えてとにかく弾幕を展開する。

更に距離を詰められると支援部隊の対空射撃が出来る艦娘全員が対空砲火を撃ち上げ始める。

主砲、高角砲、対空砲、機銃の射撃がタコヤキの編隊へと砲火を送り込み容易に射撃ポジションを取らせない。

蒼月、愛鷹、ユリシーズの奮闘もあって投弾は許す事はあっても支援部隊の艦娘、「しだか」に直撃弾は出ない。

これなら行ける、と皆が思っていた時スカイドッグが悪態交じりに警告を出した。

(警告、瑞鳳の対潜哨戒機イーグレット1、クレーン3から敵潜探知の報告あり。数は八、支援部隊へと接近中。支援部隊は雷撃に注意せよ)

「この忙しい時に潜水艦だってぇ!? ヤバいよヤバいよ」

潜水艦と聞いて加古が顔を青くする。古鷹が「落ち着いて」と宥める。

その時タコヤキの戦闘機一機が強引に対空砲火を突破した。

一番近くにいた不知火に機銃掃射を行い、迎撃が間に合わなかった不知火が直撃で姿勢を崩した隙に輪形陣の中へと飛び込んでくる。

その時、手動操作設定にした「しだか」の二〇ミリCIWSが巨大な電動鋸の様な音を立てて二〇ミリ弾の弾幕を張った。

タコヤキには当たらなかったものの怯ませる程度の牽制にはなった。そして怯んだところへ怒り狂った不知火の砲撃が直撃する。

そのあとにさらに数機が対空砲火を突破し、支援部隊艦娘へ攻撃を始めた。

「かわせーッ!」

自身もタコヤキからの爆弾を回避しながら深雪が叫んだ。

爆弾と機銃掃射の水柱が立ち上がり、破片が艦娘に降りかかる。幸い防護機能のお陰で全員無事だった。

支援部隊の先頭を行く愛鷹は刀で直撃弾を切り裂いて凌いだ時、高速で海中を進む音がソナーから聞こえてぎょっとした。

魚雷攻撃。潜水艦かと思うもタコヤキの投下したものだった。

魚雷の射線は嫌らしい事に愛鷹を三方から囲い込むように投下されている。

三方向からの雷撃と回避する方向が限られてしまっており、自分が配置を大きく外れれば支援部隊の仲間にどんな影響が出るか分からない。

ならばと刀を下に向けて構えると一発の魚雷にあえて針路を向けた。雷撃の交差するところから移動して魚雷を待ち構える。

今だ、と思った瞬間に刀を海面に突き立てる。刀の刃によって真っ二つに切り裂かれた魚雷が爆発することなく愛鷹の足の下を航過し沈んでいった。

よし、と思った時「愛鷹さん、後ろ!」と青葉が叫ぶ声が聞こえた。

振り返るとタコヤキ戦闘機が一機機銃の発射口を開けて突っ込んで来る。

咄嗟に第三主砲を左手で構えた時機銃掃射が愛鷹に浴びせられ、第三主砲がトタン板を激しく殴打するかのような金属音を立てた。

しかし数発が第三主砲を逸れて体に当たる。防護機能が防いだが何故か右足の機能が一瞬消えた。

そこへ銃弾がかすめた。熱い鉄板を押しあてたような痛みが走るが歯を食い縛って耐える。

銃撃が一瞬止んだ隙に護りを解くと刀を構え直し、前へ出て縦に振る。タコヤキが縦に切り裂かれそのまま海に落ちた。

そこへさらに二機のタコヤキが飛来して愛鷹へ機銃掃射を行う。

回避行動で躱しにかかるが右足の痛みが動きを鈍くしており、何発かが当たる。防護機能で今度はダメージを負う事は無かった。

タコヤキ数機が尚も突っ込んで来るが、そこへ青葉と衣笠からの援護射撃が飛んできた。

二人の愛鷹への防空援護射撃はタコヤキをそれぞれ一機ずつ撃墜したが、衣笠が撃墜したタコヤキはまだ原形をとどめており、そのまま動きが鈍っている愛鷹の背中側の艤装に激突した。

後ろから突かれた様に愛鷹がつんのめる。そこへ爆弾を抱えた三機が爆撃コースに乗った。

旗艦への集中攻撃に青葉は、深海棲艦が新手の艦娘が旗艦だと見抜いたと推測し、もしそうだとしたらこの先愛鷹を護らないと支援部隊が総崩れになる、と焦りの冷や汗を額に浮かべた。指揮系統を混乱させられたらその分敵への対応力が後手に回る。

しかし、そこへガングートが主砲斉射による対空射撃を行ってタコヤキ三機を纏めて殲滅した。

「大丈夫か、艦隊旗艦」

「愛鷹さん?」

「大丈夫、痛くない? ごめん、撃墜したのに残骸が」

「いえ、大丈夫です」

立ち直りながら愛鷹は答えた。艤装は艦橋の装甲部分にタコヤキの残骸が激突していた。衝突時の衝撃で装甲がへこんだものの大きな被害は無かった。

ただし対水上レーダーの電路が故障してしまい妖精さんが修復作業にかかった。

それで敵の第二波攻撃はやんだ。

「全員、怪我はありませんか?」

「こちら不知火。被弾しましたが小破以下です。戦闘継続に問題なし」

「加古が爆弾の至近弾を受けましたが問題ないみたいです」

被弾は不知火と愛鷹のみ。いずれも小破ないし以下。加古は古鷹の言う通り至近弾の破片に見舞われたが防護機能で防ぎきれており被害は無かった。

瑞鳳、熊野、鈴谷も無傷だ。

ホッと溜息を吐いて右足のかすり傷を見る。

ソックスが切り裂かれて露わになっている足から横に傷が刻まれて血が出ていたが、鎮痛作用付き絆創膏を貼って応急手当てを施す。

不知火は陽炎、黒潮の様子見に「問題なし」と言ってはね付けている。

全員に大した怪我が無かったことに安堵しながら、なぜ一瞬だけ自分の防護機能が部分的に消失したのかが気になった。

出撃前の点検では異常はなかったし、これまで機能が消失したことは一度も無いから理由が自分でも分からない。

ただエンジニアの夕張なら何かわかるかもしれないと思った愛鷹は「夕張さん、ちょっとよろしいですか?」と呼びよせる。

「どうかしたの?」

寄って来た夕張に先ほどの防護機能の部分消失を話す。

「防護機能の部分消失? ……初めて聞く話ね。ちょっと艤装見てもいい?」

「はい」

許可すると夕張は愛鷹の艤装のアクセスハッチを開けて中を手早く調べ出した。七つ道具と語るハンド工作具も使って点検し、原因を突き止めた。

「送電不良みたいね。一時的に艤装内部で送電不良が起きて、それで防護機能への電力供給が一時的に落ちた、それが原因かもしれないわ」

「送電不良? この間防護機能への回路なら整備で交換したばかりなのに……」

「稀にだけど使い込んでいる艤装で起きた事はあるわ。確かに愛鷹さんみたいな新品で起こるのはかなり、と言うか初めて見るケースだけど」

「送電不良などの故障なら、私の艤装なんぞか大分旧式化しているから、『稀』ではなく『時々』だが?」

話が聞こえていたらしいガングートが言う。

顔には出さないがガングートの話に愛鷹は不愉快な気分になった。別にガングートの言う事が気に喰わないのではなく、故障が起きる原因に思い当たる節があったので自己嫌悪を感じたからだった。

それよりは先ほどの援護射撃の礼を言うべきだった。

「ガングートさん、先ほどの援護射撃はありがとうございます」

「礼はいらんさ。当然のことをしただけだ。仲間を護る事に理由も何はいらん」

口元を緩め、当然の行為と先輩の貫禄を見せてガングートは言った。

長く生きていれば、ああいった余裕も本当に当たり前の形で出すことが出来る訳か……まだ新人の部類に入るであろう自分にはない強さだ。

その時に急に愛鷹は背丈では自分より一〇センチ程の下の筈のガングートが大きく見えた。

同時に初めて他人と言うよりは先輩への「憧れ」を感じた気がした。

爆撃で乱れた陣形を立て直している時、スカイドッグから友軍空母打撃群の状況が入って来た。

爆撃で大鳳、笠置、榛名、筑摩、那智、白露が被弾。白露は中破し戦闘不能になり、負傷もして時雨護衛の下「しだか」へと撤退中だと言う。

笠置は航空艤装大破、発着艦不能で同じく初春と子日の護衛の元「しだか」へと撤退。こちらも負傷してしまっていると言う。

大鳳は重装甲区画への直撃だったため無傷、榛名は機銃二基が大破使用不能、筑摩と那智は主砲塔がそれぞれ一基全壊だと言う。また那智は切り傷複数が出たものの戦闘継続は可能におさまった。

流石に無傷の戦いにはいかないにしても、笠置の戦線離脱は痛い損害だ。中型空母とは言え搭載機数は六九機もある。笠置所属の艦載機は移動可能な機体は他の姉妹艦に移動して補充機体となった。

第三空母打撃群は笠置戦線離脱と言う痛手を被りながらも、航空部隊を再編して敵空母艦隊への第三次攻撃隊の準備にかかった。

一方、第一、第四空母打撃群は攻撃隊編成を終えると敵空母艦隊への攻撃に出撃させた。

支援部隊が関わる事の出来ない海域で航空戦が繰り広げられている。

こちらとしては早めに空母艦隊を叩いて欲しい所である。何しろ艦隊防空と対潜哨戒のみの航空団編成だから艦隊攻撃は出来ない。当然ながら対艦兵装も積まれていない。

しかし、敵は空母だけではない。そう思い知らされる展開が起きた。

対潜哨戒任務部隊が敵潜水艦隊多数を発見したのだ。千歳、千代田からは対潜哨戒機が次々に発艦し、探知した敵潜への攻撃に出る。

その知らせを聞いた谷田川からは対潜警戒をさらに厳となせ、の指示が入る。

瑞鳳のイーグレット1、クレーン3の他にオストリッチ2、3も敵潜を探知し四機も対潜攻撃を開始し、さらに対潜哨戒機の増援が上げられる。

完全に敵の勢力圏内、空と海中から敵はいつでも撃ってくる。飽和攻撃を受けたら持つかどうか。

冷や汗を愛鷹は額にじませる。

しばらくして目のいい蒼月が撤退してくる白露、時雨、笠置、初春、子日を視認した。愛鷹も見てみると白露は右肩の制服が大きく破けて血の滲んだ大きな応急手当の絆創膏を貼っている他、体の随所に切り傷を負っている。

初春と子日に支えられている笠置はもっと深刻で巻物型航空艤装は無くなり、機関部のある艤装にも被害を受けている。体も応急手当の絆創膏だらけになっている。

ただ二人とも意識はあり、航行も可能なのが幸いと言えた。

「しだか」のウェルドックハッチが開口し、五人が収容される。艦内では医療班がストレッチャーを用意して待機している。

「結構手酷くやられてしまっていましたね」

顔を蒼くしている蒼月に言われた夕張が宥めるように「まだ生きているだけいいじゃない。意識もちゃんとあるようだしね」と返した。

そこへ深雪が蒼月に「長一〇センチの砲身、大丈夫か? 摩耗しきる前に交換しといた方がいいぜ」と聞いて来る。長一〇センチ砲は性能がいい反面砲身の摩耗が速い。摩耗してしまうと蒼月の射撃も当たらなくなってしまう。

確認すると大分摩耗してきていた。まだ一戦交えるには問題ないかもしれないが、念の為夕張に手伝って貰いながら砲身を交換した。

第三次攻撃隊が敵空母艦隊と交戦を開始し、さらに千歳、千代田の哨戒機が六隻の潜水艦を撃沈、不確実二隻、とスカイドッグが休みなく状況を伝えて来る。

第四空母打撃群も攻撃隊を発艦させた、とスカイドッグからの知らせを愛鷹が聞いた時、鈴谷の対潜哨戒機が五隻の敵潜を探知したと知らせて来た。

さらに三機の哨戒機から七隻の潜水艦の探知報告が入る。

敵の潜水艦隊の展開が早い、そう艦娘達は緊張感を強めた。

第三次攻撃隊が敵艦隊への攻撃を完了し、複数隻の空母を含む主力艦を無力化したと言う知らせが支援部隊に入った。

肩に担いでいる主砲のグリップから手を放して手汗をぬぐっていた青葉は、その知らせを聞いていた時ソナーから複数の高速推進音を聞きとった。

ぎょっとして音のする方を聴音した時、魚雷の航走音がはっきりと聞こえた。数は……一六発、一六発!?

「け、警戒、魚雷です! 数一六発、方位一-四-八、敵針三-〇-八、敵速四五ノット!」

「見えた、うお⁉ こちら深雪。敵潜だ! 八隻もいる。魚雷が来る方向にいるぞ!」

「避けろ!」

咄嗟にガングートが叫ぶが愛鷹は何も言わない。何をしている、とガングートが見た時、彼女の目に真っ青な顔をし、体を小刻みに揺らしながらタブレットケースを握りしめている愛鷹が映った。

何があったかは知らんが、なんてタイミングの時に雷撃を。そう苛立ちにも似た物を覚えた時に魚雷が二発、発作が起きてしまい動きの鈍くなってしまっていた愛鷹の前後近距離で近接信管を起爆させて大きな水柱を突き上げた。

「おおい、愛鷹⁉」

裏返った声を深雪が上げて愛鷹の元へと駆け寄る。

「クソッ、シュペー右に回避だ!」

「了解、かわして見せる!」

「ズイホー、コーション!」

「古鷹、左!」

「おわわわっ、ガサ、生きてる?」

「どういう理屈でそうなるのよ?」

各艦娘達は回避行動を取り辛うじて躱すが、ユリシーズが後部で爆発した魚雷で前へと倒される。

一方、深雪が愛鷹の元によると咽込む声と膝をつく姿が見えた。

「しっかりしろよ、まだ終わりじゃないぞ」と声をかけながら近寄る。右手を口元に充てて膝をついていたが生きている。

助け起こすと唇から血を垂らして、右手にも赤い染みがついているのが分かった。

吐血を伴う発作を今起こしちまったのか、と見て分かった深雪はなんでこんな時にと愛鷹の抱えているらしい持病を呪った。

その時、爆発音と共に鈴谷が悲鳴を上げた。

旗艦が一時的に動けないのに代わって青葉が状況を確認した。

「鈴谷、大丈夫?」

魚雷が前方近距離で爆発したらしい鈴谷は大きな負傷はしていないようだが、かといって無傷でもない。破片で裂かれた制服越しに痛々しく出血している傷が見える。

「あー、もぉー、痛ったいしぃ……。生きてるよ。でも……だめだあ、航空艤装が壊れちゃった!」

「鈴谷!」

「大丈夫だよ、熊野。少なくとも生きてるよ」

心配顔で相棒の熊野に助け起こされる鈴谷だが、クロスボウ型カタパルトの弦が切れ、クロスボウ型カタパルト自体も折れ曲がっているので発艦不能だ。

その他の艤装と体自体には大きな傷は見られない。

「カタパルトと体の傷ちょっと治してくるよ。すぐ戻るよ」

そこへ震え声で愛鷹が言った。

「すぐでなくていいです……鈴谷さんは……しばらく待機していて……下さい」

その言葉に鈴谷は「いや、愛鷹さんが一番やべえじゃん。ヤバいみたいだから一緒に戻る?」と返した。

「私は大丈夫。あなたは戻ってください……」

「でも……」

言いすがろうとする鈴谷だが、熊野が肩を掴んだ。眼で「従いましょう」と鈴谷に言う。

しょうがないなあ、と心配顔を浮かべながら鈴谷は「しだか」に戻った。

深呼吸する愛鷹にガングートが「その調子では拙いぞ、一旦引いてはどうだ?」と勧めるが愛鷹は「いえ、もう大丈夫です。問題はありません」と拒んだ。

「だが……」

「もし私が動けなくなったらガングートさん、あなたに次席指揮をお願いします」

「もしもの話には流石に乗れんぞ」

「お願いします」

反論に愛鷹が言葉を押しかぶせると、「……次は無いぞ。不調が出たらすぐに『しだか』に戻るんだ。いいな?」と言ってガングートは配置に戻った。

「あんな調子で、大丈夫なんか?」

黒潮が不安を滲ませながら愛鷹を見ると、不知火が顔色一つ変えずに返した。

「自分の選んだ選択です。尊重するべき。生きるも死ぬも自己責任ですよ」

「相変わらずあんたはシャープね」

少し引き気味に陽炎が不知火に言った。

態勢を立て直している支援部隊の面々だが、警戒を維持していた蒼月の目にさらに一六発の雷跡が見えた。

「また、魚雷が来ます! 先ほどとほぼ同じ方向から!」

その言葉に調子を取り戻した愛鷹が回避を命じた。

「全員回避してください、急いで。夕張さん、深雪さん、蒼月さんは敵潜を攻撃。瑞鳳さん、熊野さんの対潜哨戒機は他に敵潜がいないか捜索を続行」

「はい」

「了解、やられっぱなしでいられないわよ!」

「後に続くぜ」

「私も」

爆雷を構えた夕張が敵潜の方向へと前進し、深雪と蒼月がそれに続いた。

三人の後方からパッシブソナーで愛鷹が位置を調べて三人に知らせる。

「敵潜探知、数は八隻。そちらの右手四〇〇メートル前方、深度一五メートル。魚雷発射準備中の模様」

「了解」

三人が爆雷の起爆深度を設定し始めた時、後ろで爆発音が起きたかと思うと瑞鳳が悲鳴を上げ愛鷹も「瑞鳳さん!」と大声を上げたので三人は仰天してそちらを振り返った。

直撃ではないものの外観に似合わず動きが鈍いのを突かれて魚雷の至近弾の爆発をもろに喰らってしまったらしい。

咄嗟に盾代わりに使った飛行甲板は原型をほぼ失っており、弓も真っ二つになってしまっている。右足は踝まで沈みこんでしまっており、履いているぽっくりと主機がどうなっているかは分からないが、浮力が失われているのは確かだ。

近くにいた金剛が助けに入っている。

「ちっくしょう、やりやがったな!」

逆上した深雪が、キャッチすれば野球ミットが火を噴きそうなほどの投擲速度で爆雷を投げ込んだ。深雪に続いて夕張と蒼月も爆雷を投じる。

すると三人の対潜攻撃にもかかわらず狙われていないと分かったらしい敵潜からさらに魚雷が発射される。数は八発だ。

二回に渡る魚雷攻撃で混乱している支援部隊には回避している余裕がない。

しかし愛鷹の指示でシュペーが前へ出て、後詰めに古鷹と加古が続く。

シュペーが二八センチ主砲を構えて海面を撃つと、八発の魚雷の鼻先に六発の主砲弾を撃ち込んだ。

海中内にて遅延信管で爆発した砲弾が爆圧で魚雷の機動をそらすが三発が軌道を変えることなく迫り、その三発は古鷹と加古が対応した。

古鷹の右腕の主砲二基、加古の左腕の主砲二基が発砲し八発の砲弾が海面に飛び込む。この砲撃で三発の魚雷は破壊された。

魚雷を全弾迎撃する一方、夕張と深雪、蒼月は爆雷を敵潜に放り込み続ける。

海中内で爆雷が何発も爆発し、海中を爆雷の爆圧の嵐が吹き荒れる。敵潜がジャブを延々と食らう様に翻弄されて一隻、また一隻と艤装が破壊されて撃沈される。

だが爆雷の投射で海中内の聴音が難しくなる。

「爆雷、攻撃止め! 撃ち方止め! 聴音が出来なくなります!」

「けど、全部撃沈したのか分かりません」

爆雷を投じる構えをしていた蒼月が返すと愛鷹は「これ以上投射されたらソナーが効かなくなってしまい同じです」とやや強めの口調で応えた。

一方ソナーで聴音を続けると敵潜五隻分の破壊音は確実に聞こえる。深刻なダメージを受けて耐久力を失った敵潜、恐らくヨ級の艤装が爆発音にも似た圧壊音を立てている。

三隻のうち二隻は撃沈までは行かないものの深刻なダメージを被ってよたよたと離脱していく。もう一隻ははっきりとは分からないが戦闘不能の様だ。

ひとまず潜水艦隊の攻撃は凌いだようだった。ホッとする暇は無い。

「金剛さん、瑞鳳さん、状況を」

「やら……れた……でも、生きている……よ……」

喘ぎ喘ぎではあるが瑞鳳が応答する。

「愛鷹、ズイホーはもう無理ネ。『しだか』に返さないと危ナイよ」

金剛の言う通り瑞鳳の傷は致命的でないものの深手ではある。ただ傷は後遺症が残るほど深刻ではない。

「……金剛さん、瑞鳳さんを『しだか』へ連れて行ってください。その間、残る艦で任務を続行します」

「ラジャー」

「了解」

これで支援部隊は軽空母二隻を戦列から失った。当然ながら防空能力は三分の二も落ちているし、残る熊野だけでは今上がっている艦載機は収容しきれない。

その為収容しきれない機体は「しだか」へと収容された。妖精さんの乗るサイズの航空機の内、戦闘機なら「しだか」の飛行甲板でも発着艦は可能だ。

「『しだか』FIC、こちら愛鷹。我軽空母二隻が被弾、戦列を離れる。各隊へ通知願う」

(了解。現在のところ状況をまとめた所では敵空母艦隊のおおよそ半分を無力化した。ただし敵泊地の防衛戦力の敵艦隊及び防衛体制の損害は不明だ)

FICにいる谷田川から返事が返る。不明と言っても実質無傷でしょう、と内心でツッコミを入れた。

支援部隊が敵潜水艦とかかりきになっている間、敵空母艦隊の半数を無力化した空母打撃群だが敵艦隊からの攻撃隊が波状攻撃を仕掛けており、今も各部隊は交戦中らしい。

優位性を保ち続けられるか、と思っているとスカイドッグが悪いニュースを無線に上げた。

(なんてこった、ワシントンとアトランタが被弾した! 二人とも大破、戦闘航行不能。被害が大きすぎる。インディアナポリス、シンプソンはワシントンを『しだか』へ後送。クソ、神通、阿賀野、大潮も被弾! 損害は不明)

(神通、阿賀野、大潮、状況知らせろ!)

血相を変えてマイクをひっつかんでいるのが分かる声で谷田川が聞くが応答がない。

(私だ、三人とも応答しろ。単にしゃべるだけでいい!)

(こちら……神通……です。やられてしまい……ました)

(こちら利根。神通中破、これでは戦闘は無理じゃ。撤退許可を求む)

(許可する、神通には村雨を付けて急いで戻れ)

(高雄です、阿賀野さん、大潮さんは怪我の方は致命的ではありませんが艤装大破につき戦闘不能。後送許可を)

(許可だ、被弾艦は今すぐ戻れ!)

空母や戦艦と言った艦娘には大きな損害は出ていない。

しかしこれは拙い状況ですね、と青葉は見ていた。おそらく旗艦の愛鷹も同じことを考えているはずだ。

主力艦の艦娘を護る護衛艦艇を削り取られるのは外堀を埋められることに等しい。

神通、阿賀野、大潮は対潜攻撃が可能なだけに各艦隊の対潜能力はかなり落ちるし、後送する際に護衛を付けるから尚更各艦隊の戦闘力が落ちてしまう。

それでも残る空母打撃群は第四次攻撃隊を編成して残る空母艦隊と水上打撃部隊攻撃に出撃した。

この時点で艦隊の航空戦力の総損失率は二六パーセント近くにも上っていた。

戦力の三割の損失は戦力的に大損害になるから航空部隊の損害は実質大損害レベル、この分だと敵泊地への空爆は難しい……青葉たちの仕事が増えることになる訳か……。

左腕で顎をつまんで考えている姉の真剣な顔に衣笠は驚いた。いつもの青葉とは全然違う。あまり見られない本気になっている時の顔だ。

この顔の青葉を見ると昔、ソロモン戦線で加古が「本気の青葉についていけば生き残れる」と言ったのを思い出した。

もしかしたら青葉は第三三戦隊にいるときは本気顔なのかもしれない。そうだとしたら本気顔になれる第三三戦隊と一緒にいれば生き残れるかもしれない。

第四次攻撃隊が出撃している間に被弾したワシントン、アトランタ、神通、阿賀野、大潮が「しだか」へと後送されて来た。

ワシントンはダメージコントロールの結果航行能力を復旧させていたものの、アトランタは被弾したタコヤキが道連れにしてやると思ったのか体当たり攻撃したため重傷を負っておりインディアナポリスとシンプソンに支えられて(実質担がれている)戻って来た。

しゃべるのが途切れ途切れだった神通も痛々しい傷を体中に負い、利根が付き添う形で「しだか」へと戻って来た。

どうにか阿賀野と大潮は比較的まだマシな損害で涙目にはなってはいたものの二本の足で立ち、自力航行も出来ていた。

「アトランタ……生きるんだぞ……」

親交があるアトランタの痛々しい姿にユリシーズは呟きながら、同胞を傷つけた深海棲艦への憎しみと敵意を強めた。

 

 

やがて第四次攻撃隊が攻撃を終えて帰投して来た。

戦果は敵艦隊空母の航空戦力事実上全て無力化された。空母はまだヲ級とヌ級を合わせて五隻ほどは残っているがもう脅威にはならなくなっていた。

水上打撃部隊も戦艦一、重巡二隻、軽巡二隻、駆逐艦一隻を失い、泊地へと撤退していると言う。

ただしこちらの航空戦力も、これ以上攻撃隊を送り出すのは控えた方がいいほどの損害を受けていた。

(こちらの外堀が埋まる前に、向こうの外堀は埋まった。でも敵泊地の戦力は実質手つかず……航空戦力の投入もよくて次が限界。次で決まるとは思えない、だとしたらやはり水上部隊による敵泊地への夜間突入。これしかない……)

腕を組む愛鷹は頭の中で結局は水上部隊での敵泊地突入が最終手段しかない、と今後の作戦展開を読んだ。

谷田川はどう行くだろうか。第五次攻撃隊を損害覚悟で出すのか。後の事も考えて温存するのか。

損害覚悟で出せば後で突入する水上部隊の損害が少しは減るだろう。

後者だと水上部隊の損害は上がるかもしれないが、この作戦後の航空戦力維持の面では重要になる。

艦娘を犠牲にするか、航空戦力を犠牲にするか。

しばし谷田川が検討した結果、「第五次攻撃隊を全空母打撃群の攻撃隊として送り込める稼働機全てを動員して最終航空攻撃を行い、その後水上部隊を編成して敵前線展開泊地棲姫及び防衛戦力の撃滅する」という作戦方針へ変更された。

やがて第五次攻撃隊が空母打撃群の空母全艦から発艦した。

どの程度までやりあえるだろうか、と愛鷹が思っていた時、スカイドッグが敵泊地からの大規模編隊発進を知らせて来た。

総数は三〇〇機以上だと言う。

「さ、三〇〇機⁉ 迎撃しきれるのか?」

「流石にこれ以上相手にするのは私も厳しいです」

頓狂な声を上げて驚く深雪と弱音を吐く蒼月だったが、支援部隊に攻撃隊は来なかった。

代わって四個空母打撃群に敵攻撃機が殺到していく。上げられる戦闘機の全てが各空母艦娘からスクランブルし、各空母打撃群は要撃戦に入った。

一方攻撃隊は敵泊地へと飛行を続けたが、突如それまで誰も気に留めない程起きていなかった羅針盤障害が発生した。

(なんてこった、羅針盤障害発生。本機の広域レーダーはロスト。羅針盤障害が晴れるまで本機からの支援が出来ない)

「今になって羅針盤障害?」

何で今になって、と夕張が首を傾げる。

羅針盤障害の発生で第五次攻撃隊は針路がややずれたが、泊地へは辿り着いた。

しかしレーダーなどが効かなかったことが状況を悪くしていた。

攻撃隊機が泊地にたどり着いた時、スカイドッグの広域レーダー探知が出来ないせいで発見が遅れたタコヤキ迎撃機多数が攻撃隊に奇襲を仕掛けて来たのだ。

敵襲を知らせるバンクを振った烈風が銃撃を受けて爆散し、続いて彗星や流星、ヘルダイバーやアヴェンジャーなどが次々に火を噴き、爆散する。

初っ端から一〇機以上の攻撃機を撃墜されると言う後手には回ったものの護衛戦闘機隊が迎撃を開始する。

戦闘機隊が奮戦している間に攻撃隊が泊地へと進撃するが、更に迎撃のタコヤキが襲い掛かって来る。

(回避しろ!)

(だめだ、逃げられない!)

(戦闘機は何やってるんだ!?)

(羅針盤障害で敵探知が上手く出来ないんだ。更なる伏撃(待ち伏せ)に備えろ)

攻撃隊は損害を出しながらも敵泊地上空にたどり着くが、今度は猛烈な対空砲火が撃ち上げられてくる。

攻撃機複数が対空砲火で機体を損傷して高度を落としていく。兵装に直撃を受けた機体は大爆発を起こして木っ端微塵に砕け散り、金属片だけの存在へと果てる。

空一杯に咲き乱れる対空砲火の爆発煙が攻撃隊機を揺さぶり、安定した爆撃態勢を取らせない。進路を維持しようとした機体の一部は対空砲火で撃墜されてしまっている。

戦闘機隊もタコヤキを相手にするだけで手一杯となっていた。

(こっちは手一杯だ、ノーマッド隊、助けに入れるか?)

(無理だ、こっちも手一杯だ)

(ジャッカル2、タコヤキだ、後ろ!)

(拙い、やられ……)

(損害に構わず爆弾を落とせ!)

(だめだ、翼をかすっただけなのに!)

(一機やられた、いや、二機!)

(よし、爆弾投下! 離脱する)

(プリンス隊、爆撃を完了。作戦空域から離脱する)

(爆撃完了した機体はすぐに下がれ)

(ブルドック3がやられた)

(着弾確認、飛行場の滑走路一本にデカい穴を確認した)

次第に泊地上空に黒煙が何本も上がり始めた。前線展開泊地棲姫を含む設備は次々に爆発炎上していき、敵艦隊の内停泊中のモノにも爆撃が行われるが効果は充分とは言い難い。

彗星が爆弾を港湾設備、敵艦へと急降下して爆弾を投じ、流星が水平飛行から爆弾を投下する。

ヘルダイバーが緩降下爆撃を行い停泊するヲ級の艤装に爆弾を直撃させ、アヴェンジャーが魚雷を停泊する戦艦へ発射した。

爆撃を完了した攻撃機が離脱を行うが、何機かが背中から撃たれて撃墜される。

ここにいる敵艦以外にも離脱していく艦がいるかもしれなかったが、羅針盤障害の影響で探知しづらくなっていることもあり、はっきりとしたことが分からない有様だ。

それでも最大の脅威であるス級に対してはありったけの爆弾が投下され、はじめは何事もなかったように佇んでいたス級も直撃弾を何十発も喰って激しく炎上し始めた。

地上施設だけでなく、対空砲火を撃ち上げる対空砲や警戒設備も破壊され、炎の塊と化していく。

ス級二隻がとても動けるとは思えないほどの爆撃の最後の一発を被弾した時、空爆が止んだ。

攻撃隊隊長機の妖精さんが無線でスカイドッグに戦果を報告した。

炎上は激しいものの敵設備の破壊率は四割程度。敵艦隊は三割程度しか削れていない。

一方こちらは三割の機体が確実に撃墜され、損傷機の数は数知れない。羅針盤障害の影響で母艦へちゃんとたどり着けるかが心配の種になっていた。

 

 

 

攻撃効果不十分、損害は多し。

その情報を聞くと愛鷹にはやはりそうなるか、という感想しか湧かなかった。予想できる結果だったからでもある。

第五次攻撃隊が攻撃を完了し、航空攻撃終了が宣言された。時刻はもうじき午後三時。

各空母打撃群は攻撃隊の収容作業準備に入っており、収容完了後「しだか」に撤退して「しだか」の防衛に当たることになった。

代わって支援部隊と第一混成打撃部隊の大和、武蔵、矢矧、涼月、冬月、花月、後に合流する第四空母打撃群からはアラバマ、スプリングフィールドが編入されて敵泊地強襲部隊を編成する。谷田川の作戦調整で金剛の妹比叡も編入が決まった。

これまでの戦闘結果を愛鷹が頭の中でまとめてみると、敵艦隊は壊滅、泊地及び防衛艦隊は攻撃不十分と言える。

最大の脅威はス級一隻が見当たらない事と、強力な羅針盤障害が発生したことだ。

つまりレーダーによる広域捜索は難しい状態になっている。奇襲を受けやすいと言う事と同義だ。

拙いことになっていると眉間に冷や汗を浮かべる。

周りでは支援部隊の面々がレーションを手に一息付けていた。自分はすでに完食しており警戒に当たっている。

昼間は航空戦と対潜水艦戦で、これからは夜間水上戦闘だ。雲が出るとの事なので夜間の見通しは落ちるだろう。

「警戒ご苦労さん」

後ろから一息ついたらしい衣笠が声をかけて来る。

「衣笠さん、休息は?」

「大丈夫。もういつでもやれるわ。青葉には負けてられないから」

「休める時に休んでおかないと、体がもちませんからね。今夜はかなり厳しい戦いになりそうですから……」

「大丈夫だって、知ってる? 『本気の青葉について行けば生き残れる』って言葉」

ニコニコ笑みを浮かべて言う衣笠の言葉に愛鷹は初耳ながらもその通りかもしれない、と頷ける気はした。

後ろで古鷹と加古と談笑しながら休んでいる姿からは想像しにくいかもしれないが、青葉は激戦地ソロモン戦線で武功を上げ、「ソロモンの狼」と言う二つ名も持つ切れ者でもある。

「『本気の青葉について行けば生き残れる』ですか……そうかもしれませんね……」

「ああやって振舞っているのは素もだけど、わざとな一面もあるの。一緒に戦ってきたし青葉が旗艦をよく務めていたから……」

激戦地ソロモン戦線で過酷な戦いを強いられた艦娘でも青葉の様に活躍した者は、その分激戦を何度も経験している。

目を覆いたくなるような激戦地だったと聞く。過酷な気候、いつだれが死ぬか分からない戦況、慣れない風土からの病気、何度も何度も繰り返される出撃。

特に自身が旗艦を務めると言うプレッシャーの大きさが青葉を他の艦娘以上に追い詰めていたことは想像がつくし、一番心理的ショックが大きかったのはやはり古鷹が左目を失う事になった海戦だろう。

明るい性格は素に加えた反動なのかもしれない。

「青葉はああやって明るく振舞っていないと自分を保てないかもしれないの。六戦隊じゃ自分だけ何時まで経っても改のままだし。気にしてないって言ってもきっと心の底では悔しいって思っているんだって。だから私がもっとしっかりしないといけないんだって思っているんだけど、どうしても青葉には甘えちゃうのよね」

弱気な衣笠の表情からくみ取れる気持ちは愛鷹には痛すぎるほどわかった。自分もそれに似たコンプレックスを抱えているから青葉の気持ちはよく分かった。

「でも、衣笠さんが気に病めば病むほど青葉さんもプレッシャーを強く感じるかもしれませんね」

そう呟いた愛鷹の言葉に衣笠が顔を向けて来る。愛鷹はそのまま続けた。

「貴方は貴方です。気負い過ぎずに自分にできる事をするだけで青葉さんは気が楽になれますよ。あなたが無理に頑張れば頑張るほど、青葉さんはプレッシャーを強く感じてしまうかもしれない。

人は花です。どんな世界にも一つしか咲くことが出来ない一輪の花。複製することは出来ませんし、してはいけない……。人の命は一つだけです」

「愛鷹さんって、なんだか艦娘から詩人か牧師さんに転職できそうな気がしますね」

「そうですか?」

「うん。そう言えば愛鷹さんってどんなお花が好きなの?」

衣笠に聞かれた愛鷹は少し迷ってから答えた。

「……アオタンポポです」

アオタンポポ……確か何年も前に遺伝子改良で作り出された名前の通り青いタンポポだ。

花言葉もあり「苦難、逆境、克服」などが込めらていると言う。発表されたときはかなり科学的に注目されたが、結局流行らなかった花だ。

「聞いたことあるなあ。前に絵本で知ったから。花言葉は苦難、逆境、克服だったかな」

「そうですね。もう三つありますけど、あまり知られてはいないでしょう」

もう三つ? なんだろう?

「もう三つは何を意味しているの?」

衣笠の問いに愛鷹は寂しげな表情で応えた。

「裏切り、絶望、短命なる魂、ですよ。私はプラスの意味合いのある三つが好きでこの花が気に入っていますが」

そう言われてみるとアオタンポポの末路通りの三つだな、と衣笠は教えられた花言葉を反芻してそれでもやっぱプラスの言葉がいいと思った。

やがて攻撃隊が収容され、展開中の各艦隊が集結した。

空母航空団総数の三二パーセントを喪失という報告に愛鷹は唇を噛んだ。

大損害である。戦力の立て直しにはしばらく時間がかかるだろう。

一方集結した艦隊は第一混成打撃部隊と支援部隊、アラバマ、スプリングフィールド、比叡を編入した水上突入部隊を編成した。

大和を旗艦として武蔵、金剛、比叡、アラバマ、ガングート、愛鷹、シュペー、青葉、衣笠、古鷹、加古、スプリングフィールド、ユリシーズ、夕張、矢矧、涼月、冬月、花月、蒼月、陽炎、不知火、黒潮、深雪の二四人の水上部隊が編成された。

戦艦六隻、装甲艦一隻、大型巡洋艦一隻、重巡五隻、軽巡三隻、駆逐艦八隻。

負ける気がしないと艦隊のメンバーは意気込みを見せていたが、羅針盤障害が酷いままでス級一隻がどこにいるのか分からないまま、夜目がやや利きにくい夜間突入になる事に愛鷹は不安を拭い切れなかった。

日が暮れ始めた頃に水上突入部隊は沖ノ鳥島海域の戦いの総仕上げを行うべく、敵前線展開泊地棲姫攻撃に出撃した。

 

 

「水上突入部隊との通信状況、悪くなりました。羅針盤障害の影響です」

通信機器のダイヤルと格闘しながら仁淀が谷田川に告げる。

「当面、無線封鎖も同然状態になる訳か……。皆、生きて帰れよ……」

大佐の仰る通りです、と仁淀は頷いた。射撃の腕が低い自分にできるのはFICからただ作戦展開を見守るだけだ。

自身も艦娘でありながら不甲斐ない物を感じていると、大淀が「なにかしらこれ」とヘッドセットに手を当てた。

「どうした?」

「微弱な通信波が入っています。ただ周波帯が弱すぎて……通信波が来る方向へのパッシブ能力を上げてみます」

「了解」

そう返しながら谷田川は自分のヘッドセットを被って大淀のヘッドセットの情報と自分のをリンクさせた。

キーボードを叩いて微弱な通信波を拾い上げた大淀のコンソールディスプレイに識別コードと通信文の表示が出た。

「SS237 Trigger Emergency call PAN PAN PAN code Z」

「トリガーはこの海域で偵察任務に出ていた北米艦隊所属の潜水艦娘だ。何があったんだ?」

「エマージェンシーコールにパン三回、それにcode Zですから相当拙いことになっているのかもしれませんね」

仁淀がそう言った時、谷田川が愕然とした表情になった。

「まさか……トリガーの元に急行できる艦娘はいるか⁉」

出し抜けの怒声にも近い大声に大淀と仁淀を含めたFICにいる全員が飛びあがった。

飛び上がりはしたものの大淀と仁淀はすぐに駆逐艦朝雲、山雲が急行可能と答えると谷田川は「すぐに向かわせろ。すぐには無理とか言ったら営倉にぶち込むと脅せ!」と物凄い剣幕で言ってきた。普段は見られない谷田川の粗野な口調に二人は仰天しながらも言う通りにした。

朝雲、山雲が言う通りすぐに向かってから仁淀は気が付いた。

トリガーはス級の居場所を知っているのではないか?

その考えは当たっていたが仁淀の予想の一つ上を行く情報をトリガーは握っていた。

朝雲の通信システム経由でトリガーは泊地に潜入した時のことをすべて報告して来た。猛烈な爆雷攻撃に遭って長距離通信が出来ず、応急処置で作ったアンテナでようやく交信出来た事も。

しかし、何より重要で大破寸前のトリガーが合流の為に必死に航行して伝えようとしていた情報がFICの空気を凍り付かせた。

「ス級が四隻もいる……だと?」

血の気が引くのを谷田川ははっきりと感じた。

二隻は無力化して一隻が所在不明だが、もう一隻行方が分からないス級がいる。

水上突入部隊が危険だ。

「おい、水上突入部隊に最重要緊急警報だ。不明のス級は一隻にあらず、二隻いるとな」

「ダメです、応答がありません」

「応答するまで呼びかけろ、クソッタレ! なんとしてでも伝えるんだ、水上突入部隊が向かっているのは処刑場も同然だ、急げ!」

だがFICには伝える術が無かった。

羅針盤障害で水上突入部隊とは完全に交信不能になっていたからだった。

 

 

 

 




今回は対空戦闘と対潜戦闘のみとなりましたが、次回は夜の海での死闘となります。

今回の話で瑞鳳大破を持って第三三戦隊は配属からの無傷経験が一人もいなくなってしまいました……。雪風のようにはいかないという訳です。

「青葉について行けば生き残れる」はエースコンバット7の「トリガーについて行けば生き残れる」(トリガーは7の主人公)が由来で、激戦地で武功を上げ、二つ名も持つ青葉の指示に従えば、どんな戦場でも生き残れるという意味合いです。
同時にそれが青葉に無言のプレッシャーにもなっている訳でもあり、姉を慕う衣笠もそこを一番心配しています。

愛鷹の好みの花「アオタンポポ」は架空の植物で、花言葉は愛鷹のイメージに合わせて考えました。どの程度愛鷹のイメージにかぶさっているかはご想像にお任せします。

初出撃前のはしゃぐ姿も含めて暗い過去はあれど愛鷹も人間であり、ガングートへのあこがれを抱く所等、見た目とは裏腹に彼女もはっきり表には出さずとも感情の豊かな一人の女性です。

因みに挿絵の通りかなり愛鷹は背丈が大きいです。
個人設定では愛鷹190センチ前後、青葉、夕張170センチほど、蒼月160センチ以上、深雪160センチ未満、瑞鳳が150センチほどです。
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