艦隊これくしょん この世に生を授かった代償   作:岩波命自

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今回は戦艦同士の砲撃戦がメインとなります。

本編をどうぞ。

注:「トラック沖海戦」から改題しました。


第三三話 巨艦の昂り

「拙いな、敵戦艦部隊の速度が速い。このままだと追い付かれる」

警戒監視に出していた瑞雲からの報告に日向が渋面を浮かべた。

こちらを追撃して来るタ級二隻の戦艦部隊発見、の方が入ったからだ。

「余裕はまだあるが、いずれ追い付かれるな」

「追い付かれたら、最悪五航戦のみんなの盾になって逃がすしかないね」

厳しい表情の伊勢の言葉に日向はそうだな、と溜息を吐いた。

「まあ、一七駆もいるから圧倒的に不利って訳でもないがな」

そう言いながら日向は続行する浦風、磯風、浜風、谷風に振り返る。

四人からサポートは任せて下さいと言う眼差しが返され、日向は微笑を浮かべた。

それにトラック基地からフリゲート二隻が盾艦として割り込んで来る事になったから、しばらくは自分達が殿軍を務める必要は無い。

万が一砲戦になったとしても、タ級とは充分渡り合える火力だって持っている。

ただ戦場では想定外の事態が起きるのは当たり前だから、留意しておく必要はあるだろう。

敵からの航空攻撃と対潜哨戒に備えるため、艦載する航空機は紫電改二とオ号観測機改だけだから、自前の航空戦力での攻撃は出来ない。

そこに多少の歯痒さはあった。

とは言え、改二化改装を受けてから暫く戦艦同士の殴り合いは経験していないので、万が一のタ級との殴り合いは望むところでもある。

 

まあ、逃げるが勝ちとも言うがな。

 

胸中で呟いていると、トラック基地から通信が入った。

盾艦のフリゲート「ゴスフォード」と「ウロゴン」が交戦を開始した、と言う報告だった。

無線操縦の無人艦二隻で時間稼ぎだ。

(かたじけない……)

二隻のフリゲートは恐らくスクラップにされるだろう。その二隻の最後の奉公に感謝だった。

 

 

オーストラリア海軍の最新鋭ミサイルフリゲートだったハンター級「ゴスフォード」と「ウロゴン」の二隻は、タ級二隻率いる六隻の艦隊に対しまずMk45 mod4 五インチ単装砲の砲撃を開始した。

対艦ミサイルは深海棲艦相手には誘導システムが機能しなくなる謎現象でどの道外れるから発射機には一発も装填されてない。

三秒ごとに五インチ砲がタ級二隻とロ級四隻に砲弾を撃ち放ち、周囲に着弾の水柱を突き立てる。

タ級とロ級は「ゴスフォード」「ウロゴン」からの砲撃をやすやすと躱し切りながら二隻に迫る。

程なく二隻の左舷側のCIWSが水上射撃モードで迎撃を始める。

毎分四五〇〇発の連射速度を誇るMk15ファランクスCIWSの射撃は、六隻には多少脅威にはなった。

しかし、二隻を必中射程内に収めたタ級が主砲砲撃を開始した。

一番脅威と見たらしいCIWSを狙ったもので、「ウロゴン」のCIWSが直撃を受けて爆砕される。

白いレドームやガトリング砲の砲身、光学照準装置がバラバラになって舞い上がり、艦上、海上に破片を撒き散らす。

さらに「ウロゴン」の艦体各所にタ級の砲撃が次々に命中し始める。

五インチ砲で尚も応戦する「ウロゴン」に「ゴスフォード」が援護に入るが、ロ級からの砲撃に邪魔される。

魚雷を使うまでも無くロ級からの激しい集中砲火を浴びる「ゴスフォード」だが、流石に深海棲艦の駆逐艦程度ではすぐにはやられない。

五インチ砲で応戦し、CIWSで弾幕を張る。

しかし。その間に「ウロゴン」はタ級二隻からの砲撃に一方的に撃たれ続けた。

反撃する五インチ砲はタ級を捉えられず、虚しく水柱を突き立てるだけだ。

放たれるタ級の砲撃が「ウロゴン」を撃ち据え、ボロボロになっていく。

やがて機関部にまでダメージを被った「ウロゴン」は黒煙を上げて動きを止めた。動力を失い電路も破断されたMk45が沈黙する。

被弾による火災と浸水で「ウロゴン」が左舷に傾き始めると、タ級は「ゴスフォード」に主砲を向けた。

駆逐艦相手にしていた「ゴスフォード」は既に被弾で艦体へのダメージが限界を迎えており、タ級からの主砲斉射を浴びるや艦上構造物が吹き飛び、激しい火災が甲板上に吹き荒れた。

艦首の五インチ砲は照準システムがダウンして動きを止めており、その主砲のターレット付近にタ級の砲撃が当たる。

轟音と共に五インチ砲の主砲弾薬庫が誘爆を起こし、主砲があったところを境に「ゴスフォード」の艦首が千切れた。

二隻が波間に没するのは時間の問題だろう。

タ級二隻とロ級四隻は隊列を組みなおし、前進を再開した。

黒煙を上げ、沈みゆく二隻のフリゲートから青空に立ち上る黒煙が二隻の墓標となった。

 

 

「『ゴスフォード』『ウロゴン』両艦のシグナルロスト。撃沈されました」

オペレーターの報告と、モニターに「LOST」と表示される二隻のマーカーを見て立石は「時間は稼げたな」とだけ呟いた。

「大体一〇分程度は稼げたでしょう。向こうも弾薬を消耗したはず」

隣のカーペンターの言葉にそうだな、と頷きながらもう一方の盾艦となるアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦五隻を表示するモニターを見る。

五隻が相手するのはル級四隻を含む強力な一二隻の深海棲艦艦隊だ。

航空攻撃再開可能まで持ちこたえられるかは、正直分からない。

しかし、時間稼ぎは出来るだろう。ハンター級よりもアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦は艦体が大きく、打たれ強さは多少あるはずだ。

ハンター級にはないMk38 mod2 二五ミリ機関砲を備えているので主砲、CIWS、Mk38の三種類の砲熕兵装で対応できる。

実はMk38が割と深海棲艦相手にするときには有効策だった唯一の艦載武装でもあった。

五隻のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦は艦橋の左右後部に一基ずつこれを設置している。

向こうとしては邪魔立てするだけの駆逐艦五隻相手にそれほど手間をかけないかもしれないが、少しでも時間を稼ぐことが出来れば問題はない。

どの道老朽艦だ。退役間近だったから沈んでも惜しい艦でもない。

立石は司令官席から立ちあがると、カーペンターに向き直る。

「少し席を外す。指揮を貴官に預ける」

「了解、頂きました」

カーペンターに指揮所の指揮を任せると、立石は艤装整備工廠へと向かった。

 

 

予備艤装保管庫から引っ張り出された大和改の艤装の再稼働が作業員と工廠妖精の手で行われるのを、愛鷹はチェックリストを手に見ていた。

久しぶりに動かすので不具合が無いか確認しておく必要がある。

それに弾薬庫に四六センチ砲弾を積み込まなければならない。

「本当に久しぶりに使うことになるな」

作業員の一人が言うと他に三名いる作業員が頷く。

「中佐が適応能力持ちとは思いませんでしたよ」

「超甲巡なのに大和型の艤装が使えるなんて、自分初耳ですよ」

「まあ、基本設計とかいろいろ超甲巡には、共通点があるし、共有可能な部品もあるからな。

計画流れになった実際の超甲型巡洋艦も大和型の設計がベースだったとも言うし」

 

それはそうでしょう。私は大和のクローンなんだから。

胸中で呟きながら作業員がチェックした項目を一つ一つ確認していく。

保管状態は良かったお陰でチェック項目は問題なくクリアできている。

後は弾薬だ。工廠妖精の一人に愛鷹は尋ねてみた。

「弾薬はどうです?」

「使用可能状態と判断されたものをあるだけ搔き集めてます。

弾は一応管理しているとは言え使用期限ってものがありますから、暴発、不発を起こしかねない弾薬があるかを調べないといけないので」

暴発だけは勘弁してほしいモノである。艤装が壊れるだけならまだしも暴発で怪我をする恐れは充分あるからだ。

「徹甲弾だけでいいですから少しでも多く確保を」

「了解」

敬礼して仲間の元へ走る工廠妖精を見送ったところへ、立石が作業の行なわれている作業室に入って来た。

「司令官」

「調子はどうだ?」

「チェック項目の八割を消化し、今のところ問題なしです。現在使用可能な弾薬を確認中です」

「そうか。しかし、貴様何故巡洋艦なのに大和型戦艦の艤装が使えるのだ?

駆逐艦や巡洋艦の同型艦娘が他の艦娘から艤装を借用する話は聞いたことはあるが、艦種が全く違う艦娘に艤装の適正ありなど初めて聞いたが」

多少訝しむような顔で聞いて来る立石に、軽く愛鷹は溜息を吐いた。

「申し訳ありませんが、説明は出来ません……」

「何故だ?」

「軍事機密なので。司令官でも武本提督からの許可なしには教えてはいけない事になっています」

「なら、この場では聞かない事にしておこう。私は聞かなかった、という事にしておく」

「ありがとうございます」

踵を合わせて一礼する。

そこへ誰かが走って来る靴音が聞こえたかと思うと、夕張が作業室に飛び込んできた。

「艤装整備と聞いてお手伝いに来ました!」

走って来たのでぜえぜえと息を切らしてはいるものの、夕張の顔には技術者肌の人間が見せる笑みが浮かんでいる。

「手伝いと言っても、大丈夫ですよ。チェック項目は八、いや九割終わりましたから。あとは燃料弾薬の積載です」

「あー、そうですか……」

少し肩を落とす夕張だが、ふと何かに気が付いたように愛鷹に聞いた。

「愛鷹さん、そう言えば主機は?」

それを言われて愛鷹は自分の靴を見た。

傷だらけのボロボロ、ヒール型の舵の修理もしていない。

「私としたことが、失念していましたね……」

「じゃあ、私に任せて下さい。内装型主機の応急修理なら直ぐに出来ますよ」

「時間的にはどれくらいで?」

愛鷹の問いに夕張は愛鷹の主機を見て、顎をさすった。

「見た感じからして、『戦闘航行に支障なしのレベル』なら二〇分ですね。

全面修理となると一時間は超えますが」

「修理を諦めるとなると、どういうところに?」

その問いに夕張は二つ上げた。

「バウソナーの修理と、主機自体の傷ですね。ソナーの修理には時間がかかりますし、主機自体傷だらけなので航行時のノイズや静粛性、水切り音は最悪レベルになると思います」

「ではソナーと主機の傷以外の修理をお願いします」

そう言って愛鷹は靴を両方脱いで夕張に預けた。

作業室から夕張が出て行った後、立石が少し不思議そうに聞いてきた。

「内装型主機の修理は聞いていたほど時間がかからないのか?」

「夕張さんは艦娘の艤装修理にはよく立ち会っていますし、今すぐ修理する必要のない所は省ける箇所を省いていますから。

靴底の裏側に主機機能込みの舵を付ける、特型駆逐艦のような足首回りにユニット装備する等の外装型と違って、内装型の主機は浜辺などへの直の上陸がしやすい反面、靴と主機が常に合体状態なので整備性に少々難がありまして」

「内装型に外装型を応急的に外付けする事は出来んのか?」

「艤装からの動力伝達面で互換性が無いし、そもそも外装型を装着できる接合部がないので。

仮に強引に接続したとしても、全速発揮は難しいかもしれません。最悪外装型が過負荷で破損しかねない」

「貴様らも結構戦闘以外の面で苦労が絶えんなあ」

初めて聞く分野なだけに立石は珍しく驚いた様な表情になっていた。

 

気苦労で済むだけでも案外マシですよ……。この体が駄目になる時の辛さはもっと酷いんですからね?

 

胸中で愛鷹は立石に言った。

 

「ところで話は変わるが、出撃に際し誰を連れて行くんだ?」

「衣笠さんは艤装の補給と整備、小休止が必要でしょうから、夕張さん、蒼月さんの二人を連れて行きます。

定数割れしているので、深海棲艦に何かしらの形で察知されるかもしれませんが、防衛戦程度ですから大丈夫でしょう。

やる事としては大和の支援程度ですね。ル級四隻を一度に相手するのは少々荷が重いです」

「まあ、そんなところだろうな。ただ私として別の所で少し不安はある」

そう言ってやや表情を暗くする立石に愛鷹は軽く首をかしげる。

「その不安とは?」

「ス級が展開している可能性についてだ。トラック基地はかなりの規模だ。

深海棲艦が今出している戦力では完全に無力化するのは難しいだろう。

だがス級の艦砲射撃なら、ここを耕して石器時代に戻すのは容易いことのはずだ」

「ス級発見の報がない以上は杞憂で終わって欲しいですね」

一回単独でほぼ無傷で勝利したとはいえ、また単独で挑むにはさすがに相手として少々分が悪すぎる。

またズタボロにされるのは御免だ。

 

その時、基地に空襲警報が鳴った。

(警告、警告、深海棲艦の重攻撃機含む大編隊が当基地に接近中!

戦闘機隊はスクランブル急げ)

「重攻撃機か……私は指揮所に戻る」

「了解です」

指揮所に戻る立石に愛鷹は敬礼で見送った。

 

 

「警戒、雷跡視認! 方位〇-一-〇、雷数四!」

突然冬月からの警告が瑞鶴の耳に入った。

「くそ、潜水艦か!? 翔鶴、狙われてるぞ!」

「ぴゃっ⁉ 回避、回避!」

朝霜と酒匂の警告も飛び、瑞鶴が翔鶴の方を向いた時、翔鶴は既に回避運動に入っていた。

左手から四本の魚雷の航跡が翔鶴へと伸びて行く。

「翔鶴姉!」

思わず瑞鶴が叫んだ時、翔鶴が至近距離で爆発した一発の水柱の中に消えた。

「聴音探知、潜水艦がいやがる! 瑞鶴、沈めに行ってもいいよな?」

ソナーで潜水艦を探知した朝霜の言葉に瑞鶴は頷いた。

「冬月は朝霜をバックアップして」

「はい」

二人に指示を出した瑞鶴は酒匂、涼月が救護に入った翔鶴の元へ急いだ。

直撃ではなかったものの、翔鶴は片膝をついて苦悶の表情を浮かべている。

「瑞鶴、翔鶴の右舷の主機が損傷してる」

流石に真面目顔になっている酒匂の言う通り、翔鶴の右舷主機が酷く破損し、右足に切り傷がいくつも刻まれて血が出ていた。

出血部や傷の応急処置を涼月が行う。

「ごめんなさい、主機の破損が酷いわ。航行可能だけど、全速発揮が……」

「謝る事じゃないよ翔鶴姉。でもちょっと拙い事にはなってるかもね」

少し離れたところで朝霜と冬月が爆雷を海中へと投げ込んで、大きな爆発音と水柱が海上に突き上がっていた。

その様子を見ながら、少し遅れて続航している四航戦の伊勢と日向にも一報を入れた。

(流石にそれは拙いなことになったわね)

渋い表情をしているであろう伊勢の声がヘッドセット越しに返って来る。

フリゲート二隻が稼いだ時間内に基地へ帰りつけられれば良かったが、全速発揮できない翔鶴の状況から追い付かれてしまう。

(やむを得ん、私と伊勢でタ級を迎え撃とう。これでも戦艦だ)

(航空戦艦、でしょ?)

(まあ、そうなるな)

「ごめん、しばらく遅滞戦闘をお願い」

二人に瑞鶴は頼むと、翔鶴の左肩を担いだ。

「行こう翔鶴姉、酒匂、涼月は援護して」

二人に指示を出した時、朝霜から「潜水艦撃沈!」の報告が上がった。

よし、と思うが気は抜けない。まだほかにも潜水艦がいないとも限らない。

仲間に対潜警戒を厳にするよう指示を出した瑞鶴は、姉を担ぎながらトラック基地へ針路をとった。

 

 

指揮所に上げられてきた重攻撃機の爆撃の報告一つ一つを、立石は表情を暗くして聞いていた。

またしても航空基地が狙われた。

防空任務に上がった戦闘機隊は奮戦したが、重攻撃機の護衛につくタコヤキの数が多くなっていた為殆ど手が出せなかった。

損害を受けた分以上の被害をタコヤキに与えたが、結局爆撃を許してしまった。

復旧中の滑走路はさらに被害を受けてしまい、応急的な修復だけでもさらに時間がかかる見通しになっていた。

航空優勢がこのままでは無くなってしまう。

滑走路が被害を受けた為、防空任務に出た戦闘機は開けた場所に着陸し、航空基地へと移送中だ。

悪いニュースはさらに続くもので、五航戦の翔鶴が敵潜水艦の魚雷攻撃で中破、全速発揮が出来なくなってしまった。

追っ手のタ級を食止めるべく盾になった「ゴスフォード」「ウロゴン」が稼いだ時間が無駄になってしまった。

その埋め合わせに四航戦の伊勢と日向が反転迎撃に向かっている。

一方でル級四隻を中核とした艦隊と、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦五隻の盾艦隊はもうじき会敵するはずだ。

もっとも会敵したところで五隻に出来るのは時間稼ぎ位だ。運よく深海を一隻、二隻仕留められればいい程度だ。

相手をすることになる大和以下六隻には厳しい戦いを強いることになる。

対潜戦闘を終えた第五特別混成艦隊を大和たちへの航空支援に回し、更に大和改の艤装を装備した愛鷹以下三隻で迎撃するしかない。

ここで戦力を損耗しきらなければいいが、と多少不安にもなって来る。

重攻撃機の拠点となっているであろう空母棲姫含む機動部隊は、AWACSマジックの探知範囲外にいる為か捕捉できていない。

「厄介だな」

いくら大和が強力な戦艦とはいっても、数で圧倒されかねない。

支援に入る愛鷹もどういう事かはともかく、大和改の艤装を使いこなせられるか。

不慣れな艤装で手間取りは起きないか。

溜息を吐きながら見守るしかない自分の惨めさを実感する。

そこへ盾艦隊とル級会敵の報告が上がって来た。

モニターを見つめながら立石には何とか持ちこたえさせろ、と願うばかりだった。

 

 

五隻のアーレイ・バーク級が主砲、Mk38、CIWSで攻撃を開始し、ル級四隻を含む深海棲艦艦隊が撃ち返す。

Mk45 mod4五インチ単装砲の力強い砲声とMk38の連射音、CIWSの唸るような射撃音が海上に響き渡る。

ル級四隻とリ級二隻が前に出て、五隻のアーレイ・バーク級へ砲弾を撃ち返す。

先手を打ったのは盾艦隊だったが、命中を先に出したのは深海棲艦側だった。

「デイビット・マンロー」の艦橋にル級の砲撃が命中し、艦橋上部が吹き飛んだ。

遅れて「エリオット・タルナート」が艦中央部に被弾する。

盾艦隊の砲撃は深海棲艦の傍に水柱を突き上げるが、命中弾は出ない。

無人艦の射撃システムは深海棲艦を捉えてはいるが、そこへ有効弾を撃ち込む正確さを発揮できていない。

五インチ砲が三秒に一発の間隔で砲弾を撃ち出し、Mk38とCIWSが薬莢をばら撒きながら連射音を上げ続ける。

当たらない砲撃を繰り返す五隻に対し、ル級とリ級の砲撃は次々に命中していく。

結局、盾艦隊のアーレイ・バーク級に出来るのはその程度だった。

もし熟練の乗員が乗り込んでいたら、少しだけまともな戦闘が出来たかもしれないが、それが出来る乗員は国連海軍には僅かしか残っていない。

ル級とリ級の機動力に五隻の射撃は追い付けない状況が続くが、「エドワード・バンス」がリ級一隻に至近弾をようやく出した。

もっともその頃には既に全艦が被弾していた。

イージスシステムの要となるSPY1レーダーはどの艦も穴だらけで、艦体は多数被弾によってハチの巣状態だ。

多数被弾していた「リチャード・レイヒ」のMk38の二五ミリ弾がル級の艤装に命中したが、大した被害を与える事が出来ず、逆にル級の砲撃を受けて「リチャード・レイヒ」が右舷側に傾き始める。

五隻の内最後尾を進んでいた「エドワード・バンス」が機関室付近に被弾し、速力が低下し始めた時には深海棲艦の勝ちがもう決まっていた。

最初に被害を受けた「デイビット・マンロー」が艦首を下に炎上しながら沈み始め、「リチャード・レイヒ」が右舷側を下に転覆する。

上部構造物が瓦礫の山になっていた「ニコラス・バロー」が主砲弾薬庫に直撃を受け、轟音と共に艦首が吹き飛び火達磨になった。

自動ダメージコントロールシステムによる応急処置で何とか持ちこたえる「エリオット・タルナート」「エドワード・バンス」の砲撃は、ル級、リ級をとらえきれず、虚しい水柱を突き立て続けるばかりだ。

一方、ル級とリ級の砲撃は二隻に吸い込まれるように命中し続ける。

ハンター級の「ゴスフォード」「ウロゴン」よりはある程度マシだったとはいえ、被害らしい被害を与える事が出来ないまま盾艦隊の五隻の駆逐艦が完全に沈黙するまでそう時間はかからなかった。

沈没していく残骸と化した五隻の駆逐艦の脇を、隊列を組みなおした深海棲艦艦隊が抜けていった。

 

 

五隻のアーレイ・バーク級からなる盾艦隊が全滅した、と言う報告に大和は胸中で一言、ありがとう、とだけ呟いていた。

後ろを振り返ると、通信を聞いていた矢矧、初霜、時雨、雪風、深雪が既に腹を決めた顔を返してきた。

数で圧倒されてしまうのは目に見えているが、退路は無い。

経験とチームプレーで乗り切るしかなかった。

四隻は厳しいわね、と唇を噛んでいるとヘッドセットから立石の連絡が入った。

(大和、聞こえるか。今増援三隻をそっちに送る。少しはマシな戦いが出来るはずだ)

「増援三人ですか? いったい誰が」

すると立石は思わぬ返事を返した。

(保管中のお前の改の艤装を装備した愛鷹と夕張、蒼月だ)

「愛鷹……」

(どういう理屈であいつが使えるのかはこの際どうでもいい。そっちが多少楽になれる戦力は確保した。

戦力差はあるが、絶望的ではない。片付けて帰って来い)

「了解」

ヘッドセットに当てていた手を離すと、続航する矢矧が尋ねて来た。

「どんな通信が来たのです?」

「増援三隻が来るとの事です。多少は戦力差を埋められるでしょう」

「三人? 夕張と蒼月は確定として、あと誰がいるって言うんだ……?」

怪訝な表情を浮かべる深雪に、雪風が「哨戒艦隊じゃないの?」と返す。

「でも、補給と整備に少し時間がかかるからすぐには出せないはずだよ」

「多分腹八分で切り上げた衣笠さんでは?」

首をかしげる時雨に初霜が答える。

初霜の言う通り恐らく衣笠だろう、と矢矧が思った時、大和が増援に来る三人の名前を告げた。

「愛鷹さん、夕張さん、深雪さんです」

その言葉に一同は驚きの声を上げた。

当然の反応だ、と大和は思ったが特にそれ以上は言わなかった。

一方で矢矧は何故艤装大破で出撃不能の筈の愛鷹が出撃して来たのか、理解できなかった。

愛鷹の艤装の修理が出来たとでも言うのだろうか? しかし何とか修理できたと言う都合のいい話があるとは思いにくい。

武装系の修理は不能と判断されたのは聞いているから……機関部だけ修理したのだろうか?

確か剣で敵艦の艤装破壊戦法をよくやると聞いているから……いや、だとしたら寧ろ危険すぎる。

近接戦闘は乱戦下でよくある事だが、相手に四隻の戦艦がいると言う中、刀だけを武装に挑むのは危険を越して無謀ではないか?

だが大和は特に何も言わない辺り、何かしらの対策を立ててはいるのかもしれない。

これ以上考えても始まらない、と考え直し、今は目の前に迫りつつある敵艦隊への対応に注力する事だけを考えよう。

 

 

応急修理が完了した主機はやっつけな面はあるにせよ、機動性は取り戻せていた。

ヒール型の舵はしっかり機能するし、速力も充分元通りになっていた。

艤装の取り回しは今のところ問題なく、仮の姿とは言え戦艦になった自分に愛鷹は多少満足感を感じていた。

ともかく夕張には感謝しかなかった。

当の夕張と蒼月は若干不安を感じている様だが、心配ないと言い聞かせた。

弾薬も使用可能なモノをありったけ装填しているから、無駄撃ちしなければ問題はない。

ソナーが使えないので自力での聴音による魚雷察知は無理だが、そこは致し方ない。

やる事はシンプルだ。弾を撃ち、敵を沈める。

ただそれだけだ。

 

 

「来たな」

日向の目にタ級の艦影が入った。

「伊勢、準備は?」

「とっくに出来てるよ。航空戦艦として、殴り合いなら望むところよ」

自信のある笑みを浮かべて返す伊勢に日向も口元を緩めた。

単従陣を組んで接近するタ級とロ級に対し、反航戦を挑む形で伊勢と日向、第一七駆逐隊の浦風、浜風、磯風、谷風の単従陣が進んでいった。

主砲の射程内にもうじき入るが、伊勢も日向もまだ撃つつもりはない。

射程内に入ったら絶対当たるとは限らない。必中を狙える距離から撃つつもりだし、恐らく向こうもその気で来るはずだ。

火力では向こうが多少上かもしれないが、火力だけで決まると言う訳でもない。

程なく、伊勢が号令をかけた。

「対水上戦闘、主砲左砲戦用意。一七駆は駆逐艦の相手をお願いね」

その指示に四人から「了解」と返事が返される。

伊勢と日向の四一センチ三連装主砲が仰角を取り、砲口をタ級へ向けた。

「日向は二番艦のタ級をお願い、私は先頭のタ級を叩く」

「了解だ、任せろ」

「うちらはロ級をやるよ。邪魔立てはさせんからね」

浦風の言葉に伊勢は頷いた。

ロ級が増速をかけ、タ級の前に出ると浦風以下の一七駆も前に出た。

「邪魔はさせんわ! 主砲撃ちー方始めー! 発砲!

てぇーっ!」

浦風の一二・七センチ連装主砲が砲撃を開始すると後続の浜風、磯風、谷風も砲撃を開始した。

ほぼ同じに伊勢と日向も砲撃を開始した。

「主砲、撃ちー方始めー、発砲! てぇーっ!」

二人の四一センチ三連装主砲が殷々と響き渡る砲声を海上に立て、徹甲弾をタ級に向かって撃ち出した。

タ級も主砲を構えて砲撃を開始した。

双方初弾は外れる。互いの周囲に外れた砲弾が海上に高々と水柱を突き立てる。

砲身に弾着修正をかけながら次弾装填し、再び二人は砲撃を行う。

オレンジ色に光る砲弾が山なりの弾道を描いてタ級の周囲に着弾する。

外れ弾の水柱が海上に立ち上がる。

連射性能ではこっちが上だ。向こうが有効弾を出す前に、こちらが連射性能を生かして先に有効弾を出す。

大口径主砲の発砲音を響かせながら二隻のタ級も砲撃を行い、伊勢と日向の近くに水柱を立てた。

精度は良い。降りかかる着弾の水しぶきを掻い潜るように前進する二人は徹甲弾の装填が完了した主砲を放つ。

するとタ級が回避運動を取り始めた。回避運動を取るという事は、命中する事を察知していたのかもしれない。

射撃認証のやり直しが必要になった事に伊勢は軽く溜息を吐くが、相手だってそう簡単にやられる気が無いだろう。

反航戦でもあるから距離が詰まれば、いずれどちらかが先に直撃弾を出すはずだ。

回避運動を取ったタ級が主砲を撃ち、砲弾を伊勢と日向に殺意を込めた砲弾を浴びせる。

轟音と共にタ級の放った砲弾が着弾し、大きな水柱を海上に付きたてる。

着弾位置はやはり良い。

至近弾とまではいかないが精度は向こうが上かもしれない。

「焦るな伊勢。落ち着いて撃てば大丈夫だ」

「日向もね」

互いに声を掛け合いながら砲撃を続ける。

タ級は回避運動を取らず、反撃の砲火を主砲の砲口に瞬かせる。

距離が詰まったせいか、さらに着弾位置が近くなっていた。

一方自分たちの砲弾はまだ納得のいく位置には送り込めていない。

次で挟叉くらいは、と思いながら伊勢が主砲を発射した時、ロ級の相手をしていた一七駆がロ級一隻を仕留めた。

磯風と谷風の砲撃を受けたロ級が被弾炎上すると砲撃が止まり、そこへ二人からさらに砲弾が撃ち込まれる。

「抜け駆けは狡いで」

「まあまあ」

思わずイキりかける浦風を浜風が宥めた。

その時、四人の耳に大口径砲弾が直撃した時の轟音が入った。

 

「ありゃりゃ……」

大穴が空いた飛行甲板を見て伊勢は渋い表情を浮かべた。

まさかの直撃弾を食らってしまい、航空機運用能力を失ってしまった。

こちらが直撃弾を出す前に、持ち前の航空戦力を削がれる被害を受けてしまった。

しかしまだまだ充分戦える状態だ。

伊勢と日向が砲火を放つと、タ級の一隻の艤装に直撃の閃光が走った。艤装から何かのパーツが吹き飛んでいく。

その光景に日向が口元を緩めた。当然だ、自分が狙っていたタ級なのだから。

一方、伊勢の砲撃も挟叉を得ているから次は当たる。

もっともタ級から更に直撃を食らう可能性も上がって来てはいる。

次に主砲撃ったら取り舵を取ってタ級の前を横切る丁字戦と行くか、再装填を行う間に伊勢はそう判断すると日向に伝達した。

「次撃ったら、取り舵を取るよ」

「丁字戦だな、了解した」

主砲の再装填が完了した二人は砲撃を行うと、着弾確認することなく左へと舵を切った。

すると見越していたようにタ級も舵を右に切り、同航戦になる針路をとった。

同航戦になっちゃったか……まあ、しょうがないか。

割り切りながら舵を切って針路を変えている間に再装填を終えた主砲弾を撃つと、タ級に直撃の爆炎が噴き出した。

「命中!」

すると日向が狙っていたタ級にも直撃の爆発炎が起きる。

被弾したタ級が苦悶の表情を浮かべて、態勢を崩した。

行けるかもしれない、二人がそう思った時、タ級は既に立て直しており主砲を撃った。

距離的に言うと躱し様がなかった。

伊勢の第一主砲に直撃の閃光が走り、轟音と共にタ級の砲弾が弾き飛ばされた。

第一主砲の装甲はタ級の砲弾を弾き飛ばし、被害は出なかったが弾き飛ばした際の耳鳴りで伊勢が少し態勢を崩した。

一方日向はとっさに盾にした飛行甲板を打ち砕かれてしまった。甲板の部品が爆炎と共に吹き飛ぶ。

「うぅ、これではただの戦艦だな……」

火災が発生して黒煙を上げる飛行甲板を見て、日向が残念そうな顔になる。

防護機能を展開していたとはいえ、装甲空母の様な堅牢さはない。

「腐っても戦艦だよ」

そう言いながら立て直した伊勢は主砲を放つと、タ級もほぼ同時に撃ち返してきた。

これは拙い、と防護機能を展開した時、再び第一主砲に直撃を食らい、さらにもう一発が右舷側の艤装に大穴をあけて火災が発生する。

「流石にこれは拙いかな……」

破片で切った頬の傷から出る血を見て伊勢が呻く。

おまけに艤装CCSは第一主砲旋回システムにエラー発生を告げていた。

ダメージコントロールで第一主砲旋回システム復旧を始めた時、日向の悲鳴が上がった。

慌てて伊勢は日向を見ると背中の艤装に直撃を受けていた。

「日向、大丈夫?」

「大丈夫だ、生きている。だが電探がやられた」

苦い表情を浮かべて返す日向は伊勢に向けていた視線をタ級に向けなおし、主砲から徹甲弾を叩き出す。

電探をやられたせいか精度が落ちていたが、距離が比較的近いだけに直撃弾は得る事が出来ていた。

タ級の艤装に直撃の閃光が瞬き、タ級が速力を落とし始めた。

第一主砲が一時使えなくなったが、第二主砲で、と伊勢が第二主砲でタ級を撃つとこちらも直撃を得る事が出来た。

砲撃を受けた時の損傷が酷いのか、激しい火災が発生している。

チャンスだ、と二人は顔を見合わせて頷くとそれぞれ狙うタ級に再装填が終わった徹甲弾を撃ち込んだ。

二人の四一センチ三連装主砲が砲炎と衝撃波を周囲に広げながら、徹甲弾を空中へと放つ。

被弾直前にタ級は砲撃をしていたが、予測済みの二人はぎりぎりのところで砲撃を躱した。

二人からの砲撃を再び被弾したタ級はさらに深刻なダメージを負ったらしく、悲鳴を上げて爆発炎上しはじめた。

確実に大破と言える損傷だ。

(こちら浦風。こっちで相手してた敵さんは片付けたよ。

二人とも大丈夫?)

ロ級の相手をしていた浦風からの報告がヘッドセットから入る。

「こっちも仕上げに入るよ」

そう返した伊勢は大破したタ級二隻に日向と共に最後の一撃を撃ち込んだ。

 

 

 

(橘花改が爆撃を行って、駆逐艦三隻と軽巡一隻は撃沈。だがそれ以外は仕留めきれなかった。

再度の航空支援は時間的に難しい、申し訳ない大和)

「いえ、取り巻きが四隻減っただけでもこちらは助かります。後はお任せください」

満足な航空攻撃が出来なかったことを詫びる伊吹に大和は感謝すると、ヘッドセットの通話ボタンから手を離した。

六対八……半分は戦艦だ。

取り巻きが減ったとはいえ、脅威度はそれほど変わらないだろう。

しかしまだ勝機はある。

巡航速度で航行していると、ル級四隻を含む艦隊と会敵する前にトラックから進発した愛鷹、夕張、蒼月が追い付いた。

合流して来た三人に自分以外の全員が驚いた。

「その艤装は大和さんが前使っていたものですよね?」

目を丸くしている初霜の問いに愛鷹は「ええ」とだけ答えた。

「愛鷹さんは巡洋艦じゃなくて本当は戦艦だった?」

さっぱり分からないと言う顔で言う雪風に時雨もそうだよねと相槌を打つ。

驚く三人を見ていた矢矧は、深雪だけ特に驚いた様子を見せないのに気が付いた。

愛鷹率いる第三三戦隊のメンバーだから、理由を知っているのだろうか?

矢矧の頭の中で疑念が渦巻く一方で、大和改艤装を装備している愛鷹の存在は頼もしい限りだ。

四対一の戦艦部隊としての戦力差が二対一に縮まったのだ。

希望が見えてきた気がした。

 

大和が無言で愛鷹を見ると、愛鷹は特にいう事は無いと言う目で見返してきた。

慣れない艤装かもしれないが、相互フォローすれば大丈夫だろう。

「愛鷹さん、夕張さん、蒼月さんは前衛をお願いします」

「了解」

短く返す愛鷹は夕張、蒼月と共に大和以下の艦隊の前に出た。

自分を追い越して前へ出る愛鷹の顔を見た時、一瞬だがその胸中で昂る何かを感じている気がした。

元々は自分より強力な戦艦になるはずだったのに、中途半端気味の超甲巡に落とされたのだ。

一時的にせよ本来の戦艦となれたこと、戦艦として初めて戦えると言う高揚感が本人も知らずと胸の内で昂っているのかもしれない。

九人は単従陣を組んで、ル級四隻を含む艦隊へ向かった。

(マジックより大和。ル級四隻を含む敵艦隊はおおよそ三〇秒後に視認距離に入る。

現時点で他に展開する敵艦隊はなし)

「了解です」

三〇秒後には目で見える距離に深海棲艦艦隊が入って来る。

自分の五一センチ連装主砲は既に徹甲弾を装填して準備完了済みだ。

準備は出来た、後は生きて帰るだけだ。

 

追い付くまでに大和改艤装のクセなどを把握できたから、後は深海棲艦相手に弾を撃って、沈め、帰還するだけだ。

砲の動きが自分の三一センチよりやや鈍いのは流石に仕方が無い。

一発必中で戦うまでだ。

閉じたり開いたりする右手を見つめていると、多少の胸のむかつきが来た。

タブレットを一錠呑み込んで抑える。こんな時に発作が起きて貰っては困る。

 

ポンコツめ、しっかりしなさいよ私

 

自分に喝を入れていると逆探がル級含む敵艦隊からのレーダー波を探知した。

こちらも電探を稼働させているから、向こうも察知済みだろう。

「愛鷹より全艦へ。逆探に反応あり、敵艦隊を捕捉」

そう告げた愛鷹は胸の内で「来るなら来い、ル級」と呟いていた。

この間のカシを一〇倍にして返してやる。

深海棲艦艦隊は逆探で探知してから一〇秒ほどで視認する事が出来た。

向こうも単従陣を組んでいる。

「旗艦大和より全艦、対水上戦闘用意! 左砲戦、雷撃戦準備。

面舵に転舵、新針路二-九-〇へ」

前衛の愛鷹を先頭に九人は面舵に切り、反航戦の構えをとる。

相手は針路速度を変えず、前進して来る。

「敵艦隊より重巡二隻、軽巡一隻、駆逐艦一隻が分離します」

「矢矧さん、お相手をお願いします」

「はい。各艦、我に続け」

矢矧を先頭に初霜、時雨、雪風、深雪が分離して来た重巡二隻、軽巡一隻、駆逐艦一隻に向かう。

「夕張さんと蒼月さんは私と愛鷹さんの援護を」

「了解」

「了解です」

二人の返事が返って来ると、無言で愛鷹が大和の前に出て単従陣を組む。

暗黙の了解と言える動きだ。

「気分は?」

「そうね、少し心が躍るわ」

敵を見据えている愛鷹に大和が聞くと、普段の口調に言葉通りの感情を滲ませて返して来た。

どこか安心するものを感じた大和は、主砲三基をル級へ指向する。

一方、最大戦速をかけた矢矧以下五人は「主砲、撃ちー方始めー、発砲! てぇーっ!」と矢矧の号令と共に交戦を開始した。

ル級は重巡以下の僚艦を援護する素振りも無く、大和と愛鷹に向かってきた。

「愛鷹さんは二番艦のル級をお願いします」

「了解」

素直に指示に従う愛鷹の反応に微笑を浮かべた大和は、すぐに真顔になると戦闘のル級を見据えて砲撃を開始した。

「目標指標一番のル級、主砲撃ちー方始めー、発砲! てぇーっ!」

五一センチ連装主砲三基が轟々たる砲声と衝撃波を周囲に押し広げながら発砲し、六発の主砲弾をル級に放った。

遅れて愛鷹の四六センチ三連装主砲三基も射撃を開始した。

先手を打たれたル級四隻だったが、大和と愛鷹の砲撃を確認するや四隻一斉に主砲を撃ち出した。

オレンジ色に光る双方の徹甲弾は互いに外れ、狙った場所とは違うところに着弾の水柱を作り出す。

次弾装填中にル級四隻は一斉に転舵し、大和と愛鷹の距離を詰め始めた。

「的が近い程、不確定要素は減る」

再装填を終えた主砲の照準を付けた愛鷹は四六センチ主砲の斉射を再び放った。

後ろから五一センチ主砲の砲声が轟く。

二人が撃つとル級四隻も主砲の砲口から砲炎を吐き出し、砲弾を撃ち出す。

双方の第二射も外れ、海上に外れた砲弾を撃ち込むにとどまった。

「……ずれてる?」

狙った場所より若干右にずれている気がした愛鷹は、補正した射撃認証にもう少し補正をかけて四六センチ主砲の射撃を行った。

ル級はタ級と比べて火力と装甲に優れているから、一発二発で倒れたりはしないだろう。

大和の五一センチ連装主砲なら「当たれば」かなりのダメージを被るはず。

ル級から砲撃が行われ、二人の周囲に密度の高い着弾の水柱を立てた。

一方、愛鷹と大和の砲弾は狙った目標の近くに落ちる。

「またずれてる」

舌打ち交じりに補正をかける。流石に使い慣れた艤装ではないから思ったような結果は出にくいのかもしれないが、外れると焦らしに来るものはある。

再装填が終わると今度こそは、と主砲から四六センチ徹甲弾を撃ち放つ。

ル級は数の差を生かした投射量で二人の周囲に水柱を上げる。

水柱を潜り抜ける間、次第に精度が上がって来ている事に二人は緊張感を高めた。

しかし、二人が六斉射目を放つと着弾位置はかなり狙っているル級の傍に落ちていた。

行けるかもしれない、と二人が思った時、ル級の一斉射撃が飛来する。

飛んできた砲弾の飛翔音と見えた軌跡に愛鷹の頭の中で警鐘が鳴った。

刀を引き抜き、条件反射で振るうと三発の砲弾が切り裂き、弾かれた。

外れた砲弾は愛鷹の周囲に集中していた。

 

愛鷹を集中的に狙ってきている! 

 

本能的な危機感が大和の胸の内に湧き出す。

急に不安になる大和とは違い、愛鷹は自覚こそしていたが被弾する前にやるだけだ、と捉えて主砲を撃った。

四六センチ主砲弾二発がル級に突き刺さり、爆発した。

よし、と思った時、大和が狙っていたル級にも直撃の爆発炎が走る。

五一センチもあると流石に打たれ強いル級もたまったものではない。

直撃を受けた艤装から破片が飛び散り、火災が発生した。

先頭と二隻目のル級が中破と言える被害を受けるが、三隻目四隻目のル級は無傷だ。

被弾したル級の前に出て愛鷹と大和に主砲弾を撃ちこむ。

大和は回避運動を取り、愛鷹は刀と回避運動でどうにかかわす。

回避し終えた二人は主砲を構えると中破したル級ではなく、無傷のル級に目標を変えて砲撃を開始した。

距離が詰まって来ている事もあり、ル級の至近距離に砲弾が落ちる。

その分ル級の砲撃も二人のすぐそばに落ちる。

 

次撃たれたら躱しきれるか……。

 

同じことを考えながら二人は斉射を放つ。

すると中破していたル級二隻が立て直して、無傷の二隻と共に斉射を放ち、砲弾の雨を二人に浴びせた。

咄嗟に左腕で防護機能を展開した大和に直撃の閃光が走る。

じんと左腕がしびれるが、防護機能で致命的なダメージは免れた。

愛鷹は防護機能と刀で再び全弾防ぐが至近距離に着弾する砲弾の衝撃は体に来る。

応急修理しかしていない主機とヒール型舵が故障しないかと言う不安が一瞬脳裏に浮かぶ。

その時、轟音と共に大和に五一センチを撃ち込まれていた三隻目のル級が爆発炎上して動きを止めた。

当たり所が悪かったのか、崩れ落ちる様に海上に倒れ込む。

他の三隻はそれを尻目に主砲の射撃を行う。

直撃する砲弾だけを切り落とし、他は回避運動で躱す愛鷹は自分の四六センチ弾でも簡単に沈まず、なおも応射するル級を睨みつけた。

「タフですね……羨ましいわ」

そう呟きながら主砲を撃ち、徹甲弾をル級に打ち込む。

狙っていた四隻目のル級が再び被弾し、動きが鈍る。他の二隻に対して大和が牽制込みの砲撃を撃ち込む。

一隻目の艤装と本体に再び直撃の閃光が走るや、ル級は大爆発を起こし、そのまま波間に沈んでいく。

残る二隻目と四隻目は被害を受けながら、なお愛鷹に集中砲火を浴びせる。

流石に今度ばかりは躱し様がなく、愛鷹が被弾した。

艤装の一部と第一主砲に直撃を受けるが、分厚い装甲が弾き飛ばした。自分の艤装だったら大損害モノだが、大和型の艤装の装甲は耐えた。

カウンターパンチだ、と愛鷹は被弾の衝撃から来た眩暈を何とか堪え、砲弾を砲口から砲炎と共に撃ち放つ。

四隻目のル級に直撃の炎が複数炸裂し、動きが止まった。

「あと……一隻……!」

二隻目に照準を付けた愛鷹の目は普段にはない凄味が浮かんでいた。

自身の砲撃で手負いの一隻目に止めを刺した大和に続き、二隻目に四六センチを撃ち込んだ時、二隻目が着弾直前に愛鷹に砲弾を放っていた。

直撃する弾を刀で切り裂いたが、一発を思いがけずに弾く角度を間違えてしまった。

艤装の非装甲区画に直撃を受け、爆発した。

左腕に焼け火箸を当てられたような痛みが走り、愛鷹は苦悶の呻き声を上げた。

それでもル級に向けていた目はル級が完全沈黙する様を見ていた。

ル級四隻を確実に撃沈する事に成功したのを確認すると大和は被弾した愛鷹に寄った。

 

痛みから来る荒い息を吐き、左腕の傷に応急処置をする。

苦いモノが込み上げて来たが、手で口を押える程度は出来た。

吐き出された血はそれほど多くは無かったが、流石に適正はあれど使い慣れた艤装でやった訳では無いだけに、無理が体にかかっていた気持ちはある。

左腕の傷は防護機能が働いていなかったら、いや超甲巡の防護機能だったら吹き飛ばしていたであろう被害を辛うじて防いでくれていた。

そこそこ深い裂傷は出来ていたが、鎮痛剤を打ち、止血処置をして絆創膏を貼ればなんとかなった。

タブレットを数錠出して飲み込んでいると、大和が寄って来た。

「愛鷹、大丈夫?」

「ええ、痛いわよ。やっぱり慣れないと使いにくいわね」

相変わらず自分への素っ気ない返事を寄こすが、愛鷹の表情には微かに高揚感が浮かんでいた。

援護と言うよりは蚊帳の外状態だった夕張と蒼月がそこへ合流して来る。

まだ矢矧たちは交戦中だが、決着はほぼ付いているようだ。

深く溜息を吐きながら愛鷹は応急処置を終えると、刀を鞘に収めた。

戦艦部隊は排除した。基地への艦砲射撃はこれで問題はない。

後は空母棲姫を含む艦隊を排除するだけだが、深海棲艦艦隊は投入戦力をかなり失っているはずだ。

もしかしたら撤退している可能性もある。

ただ妙に胸騒ぎがする。動物的本能、直感が、深海棲艦がまだ切っていない手札を隠している予感がした。

「こっちはフラッシュを出したけど……深海棲艦がフルハウス出すかもしれないわね……」

何気なくポーカーハンドを呟いていると夕張がクスッと笑った。

「なら、私達がフォー・オブ・ア・カインドを出すんですよ」

「それは、深海棲艦が動いた時に出る確率次第ですね」

そう返しながら愛鷹も軽く口元を緩めた。

程なくル級四隻の随伴部隊を沈めた矢矧たちも合流し、一同はトラック基地へと針路をとった。

 

一同がトラック基地へ戻るところを海上から突き出るヨ級の潜望鏡が見ていたが、九人は気が付かなかった。

ヨ級自身も何の反応もしないでただ見送った。

もし愛鷹のバウソナーが復旧していたら、彼女は気が付いたかもしれない。

しかし、ヨ級は息を殺しているかのように殆ど音を立てなかったので、矢矧や夕張を含む駆逐艦勢も気が付かなかった。

 

 

「敵戦艦部隊は全艦撃沈を確認しました」

「よし、一時的な脅威は去ったかもしれん。だが向こうが何か隠している可能性もある。

空母棲姫を含む艦隊を見つけ、撃沈したらこっちの勝ちだろうが……」

軽く溜息を吐きながら立石はモニターを見つめた。

航空基地の復旧はあと少しと言うところだ。三〇分以内に全滑走路がまた使えるようになるだろう。

基地への損害は無視できるレベルではないが、まだやれる。

その時、索敵機のタッカー0-4から緊急入電が入った

空母棲姫を含む艦隊を発見した、と言う内容だった。

モニターに位置が表示される。

「針路は基地から離れていくコースだな」

「まだ体勢を立て直してくる可能性も」

そう言うカーペンターの言葉に立石は同感だと頷く。

「だろうな。だが叩く目標が見つかったことに変わりはない」

「仰る通りで」

「航空攻撃で一つ一つ潰していくぞ」

「艦娘はどうするんです?」

「補給と整備の後、負傷した者以外で艦隊を再編する。ケリは今日中に付けるぞ」

タッカー0-4に続き、タッカー0-5、0-3から空母棲姫を含む艦隊を発見の報が入る。

しかし、いずれもトラック基地から距離を開ける針路をとっていた。

補給のために後退しているのか? もしそうであるなら後を追えば補給部隊も同時に潰せるはずだ。

「見失うなよ」

そう呟いた時、タッカー0-1から緊急入電が入った。

まだ別の敵艦隊がいたか、と思った立石の予想は確かにあっていた。中身はその斜め一つ上だったが。

 

「タッカー0-1より緊急入電。我ス級一隻を発見せり、なお発見せしス級は通常にあらず。

外観からelite級と見られる」

 

 

久しぶりにリラックス出来る、と青葉は昇任試験の最終テストを受けていた小会議室のドアの外で伸びをした。

昇任試験の課題は全て終わり、甲改二艤装の慣熟も大分消化した。

元々飲み込みが早いタイプなだけに、試験勉強や実技をクリアするのは青葉にはそれほど苦ではなかった。

試験に合格すれば、自分は階級章が少佐に代わる。

艦娘達には階級はあまり意識しない存在だが、階級次第では海軍生活で受けられる恩恵も多少は異なる。

そもそも艦娘も国連海軍の軍人だ。階級無しのフリーランスではない。

「さて、ご飯でも食べようかな」

丁度昼食時だったので食堂に行く事にした。

トラック基地のみんなは元気かな……と言う心配が一瞬頭を過ったが、今の青葉に出来るのはここで自分のバージョンアップに注力する事だ。

小会議室のある建物の二階から食堂のある建物の二階へと通じる渡り廊下を歩いていると、窓の外に誰かがいるのが見えた。

大淀だ。

妹の仁淀が重傷を負って以来、かなり落ち込んで一日中塞ぎ込み気味になっているらしいが、青葉の目には少なくとも今見える大淀はそうとは思えない姿だ。

本能的に青葉は渡り廊下を渡って、階段を降り、大淀を見たところへ行く。

何か怪しい、と直感が青葉の好奇心を掻き立てていた。

足音を立てない様に気を使いながら大淀の後を追う。何かスクープネタがありそうな気がした。

尾行されている事に気が付いた様子はない大淀を追っていると、人気のない倉庫に大淀が向かって行くのが分かった。

何でこんなところに大淀さんが?

好奇心が疑念に代わる。

あまり使われていない倉庫がいくつか立ち並ぶ場所だ。普段から人気は少ない。

怪しいと後を付けていると、倉庫の一つに大淀は入った。

 

この倉庫は……特に何かに使っているものじゃないなあ。

 

そっと大淀が入った倉庫によると、中から話し声が聞こえて来た。

「?」

聞きなれない男性と大淀が話しているのが聞こえた。

倉庫内には一応コンテナなどが置かれているのですべてクリアに聞こえる訳ではないが、何かを確認している様だった。

何だろう? 何の話だろう?

耳を澄ませた時、はっきりと青葉は聞いた。

 

「奴が死ぬ頃には、仁淀は回復してる。だからお前もしくじるなよ」

「愛鷹の殺害はその線で大丈夫なんですね? 何事もすべて順調にいくとは限りませんよ」

「プランBが必要な時は、追って知らせる。重ねて言うが、しくじるなよ」

 

拙い事を聞いてしまった、と言う緊張感が青葉の背筋を冷やした。

誰かにいや、誰に知らせるべきだろう?

一瞬だが青葉の警戒心が薄れた。

ここは武本司令官しかいない、と決めた時、背後に人の気配を感じた。

(しまった!)

そう思った時、「お前の様な勘のいい艦娘はつくづく厄介だな」と言う声と共に何かで頭を強く殴られる衝撃が走った。

呻き声を上げた青葉はそのまま地面に倒れ込んだ。

遠のく意識の中で、愛鷹の命を狙う誰かがいる、と言う事実を青葉は知った。

 

 

「青葉の奴、聞いていた以上に何かよからぬことへの察知能力があるな」

字面に倒れ伏す青葉を二人の海軍の制服を着た男と大淀が囲む。

「全くだ。で、どうする?」

「殺すわけにはいくまい。こいつを使おう」

一人がポケットから錠剤を出した。

それを大淀は眉間にしわを寄せて見つめる。

「何ですかそれ?」

「三〇分程度だが脳からその時間分の記憶を消すことが出来る。ここでかかった時間分だけだから、青葉の記憶全体を消すほどの奴じゃない」

「不都合な所だけをトリミングする薬さ」

男の一人は倒れる青葉の頭を掴むと口を開け、錠剤を口に入れた。

「呑み込ませられるんですか?」

「口の中で溶ける錠剤だ。呑み込ませる必要はない」

尋ねる大淀に男は軽く説明すると掴んでいた青葉の頭を離した。

「『ソロモンの狼』の鼻はよく効くようだな。注意すべきだった」

「尾行されてたことに気が付けず申し訳ありません」

「次からは気をつけろよ。よし、撤退だ」

 

 

病院の喫煙室までもう使用できないなら、ここしかないな。

息抜きに一服したいと言うのに、やれやれと若葉は溜息を吐きながらここは大丈夫だろうと思った倉庫群に入った。

ここならだれも文句言うまいとポケットから復刻版の「わかば」を出し、口に咥えた時倒れている誰かの足が視界に端に映った。

なんだ? と見に行くと青葉が倒れていた。

こんなところで何をやっているんだ? 私怨の制裁でも喰らって伸びたか?

近寄ると若葉は何か違うな、と首を傾げた。

私怨制裁の相手なら青葉は事欠かないが、ローファーが片方脱げ、ポーテイルの髪留めが外れ欠けている。

倒れ方からして誰かに後ろから襲われたような状態だ。

「青葉?」

ゆすって名前を呼び掛けるが反応がない。一応首筋を探ると脈はある。

気絶しているだけだ。

何度か呼びかけながらゆするとようやく青葉は反応した。

「大丈夫か?」

「わ……かば、さん……」

「そうだ、若葉だ」

「あれ、何で青葉ここに……?」

「それは私が知りたいのだが? 私的制裁でも喰らったか?」

頭をさする青葉は上半身を起こしながらうーん、と呻るが何故ここにいるのか全く分からない。

確か昼食を食べに行こうとして……その後どうなった?

記憶がない。立ち上がって髪留めを留めなおし、脱げていたローファーを履き直しながら首を捻って思い出そうとするが、思い出せない。

何だろう、記憶のパズルのピースがかけたような気分だ。

腕時計を見ると、試験が終わってから一時間立っている。

その一時間以内の記憶がない。

 

「どういう事だろ……」

何が何だか分からない、妙な気持ちの状態の青葉を尻目に若葉はタバコを吸い始めた。

「飯がまだなら食べてきた方がいいぞ」

「……はい。あの、ありがとうございました」

「深入りしすぎるなよ、でないと命がいくつあっても足りないぞ」

 

そのまま喫煙をして一息入れる若葉と別れた青葉は、何が起きたんだろうと自分に問い続けた。

しかし、記憶が全くない。まるで切り取られた様に。

自分に一体何が起きたのかまるで訳が分からないまま、青葉は食堂へと足を向けた。

 

 

「ス級が一隻……ですか」

ドックで艤装の補給と整備を行っている間、休憩室で休んでいた艦娘達もとにやって来た立石の言葉に全員が絶句する中、愛鷹だけ大して驚いた様な様子も無く呟いていた。

「そうだ。随伴に駆逐艦ロ級三隻と軽巡ツ級二隻がいる。だが重要なのはス級の形態だ」

全員の顔を一旦見てから立石はス級の形態を告げた。

「新型のelite級のス級だ」

その言葉に愛鷹はぞっとした。

思えばこれまで対決したス級は特にelite級またはflagship級らしい特徴が見当たらなかった。つまり強化形態が現れたという事だ。

elite級となれば脅威度はどの深海棲艦でも厄介なモノになる。

ス級もその例外ではなかった訳だ。

その強敵が一隻、駆逐艦ロ級と軽巡ツ級を伴って現れた。

 

 

対峙した時の事を思い出した愛鷹はざわりと肌が粟立つのを感じた。

 




なぜ、深海棲艦に現代兵器で対抗するのが無理なのか。

割と艦これ界で話題になる「なぜ艦娘でしか対抗できないのか」と言うモノへの自分なりの回答を含め、今回架空艦ではある物の実在する、あるいは計画中の現用艦艇を出しました。

今回伊勢型の二人と、大和、疑似的に戦艦になった愛鷹達と、深海棲艦の戦艦との砲撃戦を書くに至りました。
迫力ある戦闘シーンが書けているか、正直不安ですが、感想などで「もうちょいボリュームを」と一声頂けたら幸いです。

超大和型となる為に「作り出され」ながら超甲巡の身になった愛鷹は、今回大和改の艤装で本来の姿では無いモノの、戦艦として戦う事が出来たので、実ははしゃぎたいくらい喜んでいます。
ただ感情表現が不器用気味である為、加賀の「流石に気分が高揚します」に似たリアクションとなっています。

終盤の大淀と男二人が話す愛鷹殺害が今後どのようにして実行されるのか。
ス級elite級にトラック基地の面々がどう対応していくのか。
書き手として楽しみでもあります。

では次回第三四話「スポッター作戦」(仮題)でまたお会いしましょう。
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