艦隊これくしょん この世に生を授かった代償   作:岩波命自

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大遅筆となりました。
本編をどうぞ。


第三八話 真相究明

憲兵の銃撃を受けた右腕の治療を受けた後、放り込まれた狭い部屋のベッドの上に座る愛鷹は見るからに活気を失っていた。

面会は許可が下りなかったが、監視カメラでどうしているかを見る事だけは許された青葉は、何とかしたい気持ちばかりが先走っていた。

幸い、昨晩愛鷹の刀で斬られ重傷を負った木曽と皐月は一命をとりとめ、既に回復に向かっていた。

一方で愛鷹には傷害罪と傷害致死未遂の嫌疑がかけられ、査問会はどうしても免れない状況だ。

展開次第ではそのまま軍法会議に送られて有罪判決もあり得る。

故意かそれとも何らかの理由があってかは、残念ながら青葉には分からない。

何かの間違いであって欲しいが、どの道二人の艦娘に重傷を負わせ、一人を殺害しかけた行為は現実として存在している。

自分の上官である以上は、青葉にも何らかの事情聴取が取られるかもしれない。

 

 

初めて第三三戦隊が集まったミーティングルームに青葉が戻ると、衣笠、夕張、瑞鳳、深雪、蒼月、それに大和が集まっていた。

部屋に入って来た青葉に気が付いた六人からの視線から来る問いかけに、青葉は軽く溜息を吐いてから答えた。

「査問会は免れないそうです。軍法会議も多分視野に入っているかもしれませんね。

傷害罪と傷害致死未遂の二つで裁かれるでしょう」

「……理由が分からないわ。なぜ愛鷹さんが天龍と木曽と皐月を襲ったのか」

腕を組む夕張の言葉は部屋にいる全員が思う事だった。

先に狙撃された時の犯人があの三人であるか、については完全な白だ。三人ともその時は寮にいたアリバイが存在する。

「もし、愛鷹がこのまま軍法会議に送られたら、アイツはどうなっちまうんだ? 

最悪、有罪になった時艦娘がどういう処分を受けるか、前例がないから不安しかないぞ……」

頭を抱える深雪に、蒼月が恐る恐る受ける末路を言う。

「艦娘って、軍法会議にかけられて有罪判決を受けたら『解体』されるってどこかで聞いた気がします。

『解体』の内容は知らないんですが、多分艦娘としての全記録削除、艤装の廃棄エトセトラの上でなかった事にした後」

「塀の中暮らしか絞首台か、そこで言うと普通の犯罪者への裁判と同じね」

代わる様に末路を締めくくった夕張の口は重い。

やっと施設暮らしから解放され、艦娘として再出発したばかりの愛鷹がこんな結末を迎え入れるなど本人は勿論、青葉たちにとっても認められないモノだ。

 

 

「青葉が愛鷹さんの身に何が起きたのか、調べてみます」

腕を組んで瞑想するように目を閉じていた青葉が瞼を開けて、六人に告げた。

その提案に深雪が神妙な表情で見返す。

「やるしかないのは分かるけど、これは深雪様のおつむでも分かるぞ。

裏で誰かが手を引いてて、下手に探れば艦娘だろうと殺しにかかるって」

「私もそう思う。下手に探りを入れるのは拙いよ青葉。いつものパパラッチノリで出来る事じゃないわ」

「座して愛鷹さんの終わりを見届ける何て、青葉には出来ません。

ただの探り入れじゃないのは承知の上です。でも、青葉はじっとしていられません」

覚悟と強い決意を浮かべる青葉の顔を六人は何も言わずに見返す。

六人とも何も言わないが、青葉には探りを入れるのは止めておけと言ってもやめる気が無いのは分かっていた。

割と頑固な面を見せる事もある青葉の目を見れば、それは一目瞭然の事だった。

何も言わない六人からの視線に踵を返した青葉はミーティングルームを出て行った。

 

 

「面会禁止だと? どういう事だ?」

静かに、しかし微かな苛立ちのこもった声で武本はMPの少尉に尋ねた。

「自分は存じません。ですが愛鷹中佐とは誰も面会を許さないと言う申しつけが」

「誰が言ったのだ?」

「中隊長がです。自分も艦隊司令官である提督にすら面会は許さん、という指示に驚いてますよ」

どうやら憲兵少尉ですら理由不明のまま愛鷹の監視を行っているようだ。

「愛鷹くんはどうしているか分かるか? 健康に異常は?」

「三度の食事はちゃんと食べてます。カメラ越しではありますが、健康状態にも異常はないかと。

殆どベッドの上に座り込んで動きませんが」

「日本艦隊の艦娘を預かる身として、面会を許さんと言う話は納得できない。中隊長を呼んでくれ、私が直接話す」

「分かりました、少々お待ちを」

憲兵少尉がMP詰め所に入ろうとした時、武本の背中から「必要は無い」と声がかけられた。

武本が振り返ると、久しぶりに画面越しではなく、直に会う友人の有川がいた。

「有川じゃないか、何故ここに」

「査問会議の参加者としてだ。ちょっと話があるから来い」

 

有川に誘われて武本が連れて来られたのは監視カメラもない倉庫だった。

段ボールを積んだ棚だらけの狭い部屋に入った有川は、武本に向き直った。

「ここならまあ、大丈夫なはずだ」

「監視カメラを置いてない場所だな、何でここに俺を連れて来たんだ」

「監視カメラを見ている奴に知られたくないからだ」

そう答える有川に武本の表情が変わった。

「この基地に怪しい奴が入り込んでいると?」

「その可能性は否定できない。だが俺が伝えたい話は他にもある。

詳しい事は今調査中だが、666基地の再稼働を示唆する情報が出た」

そう語る有川に武本は眉間にしわを寄せた。

「666だと? あの基地は閉鎖したはずだ。もう……用済みだからな……」

「愛鷹も二度と戻らないと決めた『故郷』だが、資材や人員が666基地へ流れる情報を見つけた」

「……まさか、禁忌の行為を再開する気か? だが誰が」

 

思い当たるモノがない。

666基地、正式名称は「第666海軍基地」という名の国連海軍の先進兵器開発基地の一つだ。

昔の自分とは切りようの無い縁がある。何故なら武本が提唱したCFGプランを実行した基地だからだ。

そこでクローン艦娘の研究開発が行われ、愛鷹が生まれた。いわば第666海軍基地は愛鷹の生まれ故郷だ。

CFGプランの中止と共に施設の大部分は閉鎖されたが、一部施設は稼働を続けていた。

愛鷹と言う不完全クローン艦娘の収容所、檻として。

 

「この事は大淀経由で愛鷹にぼかした形でリークした。それとな、その愛鷹何だが問題が起きた。

 

アイツを排除する勢力の兆候が見られる」

「暗殺……という訳か?」

「ああ。こっちもまだ調査中だが……まあ、情報を掴むために動いている奴なら検討はついてるがな。

そいつの力をちょいと借りる」

「……青葉くんだな」

仲が非常に良いだけでなく、愛鷹が大和のクローンだと言う秘密を知る数少ない人間の青葉。

そして真実探求心と好奇心に富む情報戦に強いタイプだ。

情報戦に強いだけに、第三三戦隊に課せられた任務への適性はありと言えたし、豊富な実戦経験も生かせる。

それとムードメーカー的な役も果たせる明るい性格。

その出自から対人能力には難があると言われていた愛鷹の人柄を、今の状態にまで柔らかく出来たのは青葉と言う存在も大きい。

勿論他にも命の尊さを良く知る熱き心の持ち主の深雪という存在が、長生きできない体質から来る生への強い執着心を持つ愛鷹と馬が合うのもある。

第三三戦隊はその任務の性質上、本来は専門課程を受けた艦娘が配属されるべきなのだが、結成時からそれに対応できているのは愛鷹のみだ。

今まで大きな問題も無くやれて来たのは、ひとえに各メンバーの個々のスキル、練度の高さで補えていたからに過ぎない。

本来であれば専門課程訓練を受けた艦娘に早く交代させるのが、艦隊運用上妥当である。

にも拘らず武本がそれをしなかったのには、ちゃんとした理由がある。

 

それは、武本の命を弄ぶ発想から生み出され、悲惨な五年を過ごした愛鷹に「青葉、衣笠、夕張、深雪、蒼月、瑞鳳の五人を基に日本艦隊、更には世界にいる艦娘達と友情を育みながら残された時間を送って欲しい」と言う、自分なりの愛鷹の人生の幸せ願っての事だった。

 

部隊運用上、適性のある艦娘を編入すれば、愛鷹は五人と別れなければいけない。

永遠の別れになる訳ではないとはいえ、生まれてこっち籠の中の鳥だった愛鷹には、いつも一緒にいる仲間の存在が必要だと武本は思っていた。

だから日本艦隊司令官と言う国連海軍内でも相応の発言力、そして愛鷹を作り出す計画に関わった一人としての人脈、それらを駆使し、可能な限りの手を打って、番号で呼ばれていた彼女に「愛鷹」と言う名を与えて、艦娘として正式に配属させた。

出来る事なら本来の戦艦として配属させたかったが、失敗作とみなし、早期の処分を主張する一派がまだいるだけに、愛鷹をその一派の目から隠すには艦種を変更せざるを得なかった。

 

 

巡洋艦を圧倒出来る過剰火力ながら、戦艦を相手にするには不足気味の火力と言う中途半端さを抱えた超甲型巡洋艦。

しかしデチューンされた艤装とは言え、その拡張性そのものは手付かずに残していた。

実はクローンの量産計画の中止、大和型改二への技術フィードバック等で必要性が薄れて幻に終わってしまった超大和型艦娘の艤装は、その更に上となる存在も考慮しての艤装設計であった。

つまり超大和型改、さらにその先の超大和型改二の存在を見越しているのが、今愛鷹が使っている艤装だ。

夕張は元より艤装整備専門家の工作艦である明石、そして使い手の愛鷹ですら気が付けない様オミットされた性能をすべて解除すれば、恐らくス級すら容易く撃破できる強力な火力を有する戦艦へと改装できるだろう。

とは言え、それが出来るなら今すぐにでもやるべきなのかもしれないが、計画が途中で中止になった影響で対応した火器の開発が図面の段階で終わってしまっているのだ。

つまり、今すぐやるとしたらスタッフを再招集して、開発をゼロから再開しなければいけない。

しかし、愛鷹と言う存在を排除する一派に遂に見つかった以上、それも難しい、いや不可能だろう。

 

それに国連海軍では戦艦ではなく航空戦力の拡充を優先する動きが強まっていた。

戦艦の火力と空母の航空戦力、この二つを両立させた艦娘の艦隊運用計画。

航空戦力強化という事では、既に赤城が改二化改装でその計画の第一段階を終えており、加賀にも間もなく改二化改装が実施予定だ。

更には大和型三番艦たる信濃の戦艦と空母のコンバート改装による艦娘の艦種変更運用システムの実装まで目指されている。

既に航空巡洋艦と攻撃型軽空母と言う形で、このシステムのテストベッド的な形で鈴谷と熊野が改装対応を受けられるようになった。

艦娘の艤装技術の発展は著しい。

そして艦娘が強くなるほど深海棲艦も比例するように強化されていく。

当然、最前線で戦う艦娘達には死の脅威の度合いが高まる事を意味していた。

明日訪れるやもしれぬ死と隣り合わせの日々。

 

 

そこへ有川の携帯電話が着信音を立てた。

ポケットから携帯電話を出し、受話ボタンを押す。

「私だ……ふむ、分かった。すぐ行く」

「急用か?」

電話を切りポケットに戻す有川に武本が問うと、有川は顔を向けて頷く。

「別の仕事だ、すぐに行かねばならん」

「気をつけてな、情報部って消される可能性あるんだろ?」

「その前に防ぐ。愛鷹だが、査問会議が開かれるまで警備は厳重にしとけ。

信用できるMPを何人か付けておくんだ」

「分かった」

頷く武本に見送られて、有川は部屋を出て行った。

 

 

No444倉庫の床にはまだ昨晩の騒動の後が遺されていた。

既に黒い跡となった床の血痕の生々しさに生唾を呑み込みながら、青葉は一人現場を観察していた。

砕け散った天龍の刀の破片や、銃撃で取り落とした愛鷹の刀はそっくりそのまま残っている。

一方的な戦いだったことは、何となく想像できた。

しかしなぜにそこまで愛鷹が本気で襲ったのかが分からない。

特に不仲だった訳でもないのに、明確な殺意を持って天龍を追い詰めた原因。

何か手掛かりが欲しい。が、青葉の求める情報は見当たらない。

「天龍さんにも少し話を聞くか」

そう呟きながら破壊されたままの扉を抜けた時、ふと足元に葉巻が一本落ちていた。

銘柄は以前見た覚えがある。愛鷹が吸っているモノだ。

ハンカチで拾って見つめる。不思議とあまり短くない。

吸い始めて直ぐに捨てた様な状態だ。

何度か喫煙している所は見かけているから、青葉にはわかる。こんな勿体ない吸い方を愛鷹はしないし、路上にポイ捨てすることもない。

きちんとシガーレットケースに入れて愛鷹はいつも回収している。

これが何か手掛かりかも知れない。

持って来ていたジプロック袋に葉巻を入れると、青葉は倉庫から離れ、少し考えてから試しに工廠へと赴いた。

 

実は心当たりがある話を思い出していた。

ずいぶん昔に読んだ小説で、タバコに仕込んだ薬物で吸った相手を軽い洗脳状態にすると言う描写だ。

うろ覚えながら煙草を吸ったキャラは、そのタバコを渡した相手の言う事に一時的に順応になる、という展開だった。

もしや葉巻に何か仕掛けが施されていたのかもしれない。

葉巻に含まれている成分などを分析できれば、と青葉は考えたのだ。

「……薬物系なら明石さんよりは、江良さんに頼んでみるか」

機械には滅法詳しい明石よりは、医療系では専門家になる江良に分析を依頼するのが寧ろ好都合だろう。

もっとも江良は医師であり、警察の鑑識の様な芸当が出来るか、不安はあったが江良を伝にして調べる事も出来るだろう。

青葉が立てた仮説では葉巻に何かしらの薬物が混入されていて、息抜きに吸った愛鷹は一時的にかなりの興奮状態になったのではないか?

クローン故に遺伝子を随分弄っているから、少し常人とずれた感覚を持っている愛鷹だ。

特に痛みにはかなりタフだと言えた。

クローン達の遺伝子に先天的に痛覚を常人より鈍くさせる処置が施されていた可能性はある。

実際、先天的な痛覚の障害の話をどこかで聞いた覚えがあった。

その面で見るとオリジナルになる大和を含め一般的な人間より体力、知力で一歩程は上回っていると言える愛鷹は大和のクローンであると同時に、受精卵の段階で遺伝子操作を行われたデザインベイビーの要素もある。

成長速度の促進でクローン艦娘の大量確保、痛覚の鈍化によって負傷による経戦能力の低下阻止、少ない食事で高い体力を維持できるエネルギー効率性の良さ、脳の思考力上昇による迅速な状況判断力、高い動体視力に体力、五感の強化もおそらく行われているだろう。

以前ラバウルで私服姿を見た時、ボディマス指数通り痩せてはいる方ではあったとは言え大和より少し筋肉が太かった覚えがある。

正直な話、愛鷹の様なクローンは寿命問題とロシニョール病への耐性さえあれば、既存艦娘を置き換える事も可能だ。

その範囲は恐らく全艦種に。クローン艦娘艦隊の出来上がりだ。

戦闘でクローン艦娘が死亡した時は、予備のクローンで補充すれば戦力維持は容易に行える。

最悪、捨て駒前提の作戦立案、艦隊運用も可能な筈だ。

自我を弱めれば、クローンは極めて上官の命令に従順になるし、個としての存在への拘りや生への思いも消す事だって可能な筈。

その点で言うと強い自我を持ち、時には生への執着を見せる愛鷹は量産に向いていると言い難い。

 

青葉の考え付くクローン艦娘の姿は、傍目にはロボットの様にも見えるが、ロボットより思考能力の柔軟さや電子機器ではない分の動作不良も無い。

考えていくだけで、その人間が求めるクローン艦娘の姿にゾッとするモノを感じてしまう。

作戦立案から実際の作戦実行までクローン艦娘の生命の配慮は必要なく、クローン艦娘自身も死への抵抗心が無ければ、例え腕や足の一本無くなっても、言われるがままに戦闘を継続する。

 

昔見たSF映画でクローンの兵士を大量生産して軍隊を作り、大規模な星間戦争に勝利する、と言う展開を見た覚えがあった。

SF映画なだけに、クローンが抱える諸問題は大体解決されていたが、複製の繰り返しで次第に遺伝子に異常が起き、本来弱められているはずのクローン兵の自我が強くなって命令を受け付けない、という描写も見た。

あれは何という映画だったかなぁ……。

 

クローン艦娘の事を考えると、作戦進行上の制約が大きい人間艦娘より戦術、戦略の向上が簡単になる事に気が付き、青葉にもかなり理にかなっているようにも思えて来た。

そして納得できそうな自分に悪寒すら覚えた。

自分は遺伝的に何か落ち度があって、クローンのオリジナルの選別から除外されたのだろう。

だがもし、青葉がクローンのオリジナルに選ばれた時、青葉と瓜二つのクローンが大量に生産され、使い倒されていく。

「狂ってる……狂ってるよ、こんなの」

 

しかし、人間が犠牲にならない戦争遂行となると、必要とも言えなくもない。

犠牲を厭わない作戦で深海棲艦を滅し、海の安全と平和を取り戻す。

そもそも艦娘の存在意義は深海棲艦の完全排除だ。しかし艦娘が人間であるという事から実行できずに終わっている所も多い。

それをすべて解決できるのがクローン艦娘……。

戦争の早期終結にも結び付けられる可能性だってある。人間艦娘の犠牲も無くなる。

では、戦争が終わったらクローンはどうするのか?

考えられる帰結は、少なくとも青葉には一つしかなかった。

 

 

病院の江良のオフィスで彼女と顔を合わせられた青葉は、回収して来た葉巻の鑑定を依頼した。

木曽と皐月の治療を行う際に、事の顛末を聞いていた江良は青葉の依頼に驚きはしたものの、拒否はしなかった。

青葉が見せる袋の中の葉巻を見て、腕を組んだ江良は少し考えてから青葉の頼みを受け入れた。

「口の堅い知り合いをいくつか頼ってみるわ。任せて」

「よろしくお願いします」

真顔で頼む青葉に江良は深く頷いた。

ついでに木曽と皐月の容態を尋ねる。

「頭が少し混乱状態なのを除けば、ぴんぴんしてるわ」

「それは良かったです」

ほっと胸をなでおろす青葉に、江良が軽く微笑んだ時、オフィスのドアがノックされた。

江良が入室許可する前にドアが開き、海軍の制服を着た男性士官二人がオフィスに入って来た。

腕章を見た青葉は拙い、と顔をしかめた。海軍憲兵隊の腕章、それにバッジを付けている。

「江良少佐、青葉少佐、私達は日本艦隊憲兵隊の者です。青葉少佐の回収した葉巻についてはこちらでお預かりさせていただきます」

有無を言わせない大尉の階級章を付けている憲兵の言葉に、江良が戸惑いを見せる一方、青葉が静かに江良の前に出る。

 

跡を付けられていた覚えはない……網を張られていたか? 強引に自分から奪うよりは先回りして押収?

こうやって原因究明に使えそうなものを自分が拾い集めて行った後、ハイエナの如く奪っていくやり方なのだろうか?

卑怯なやり方だ。だが、自分の行動を先読みし続けていたとは。

いや、同じことを考え付いていたから青葉の行動をトレースしていれば、自動的に手に入ると踏んでいたか?

 

対人格闘戦はあまり得意じゃないけど……力づくで奪うなら……。

 

そっと足をわずかに動かし青葉が両手に拳を作ると、大尉がもう一人に目配せした。

 

もう一人が携帯電話を出して、誰かに電話をかけると「俺だ、始めてくれ」とだけ相手に伝えると切った。

その様子を見ていた大尉が数秒おいてから、江良と青葉を見て告げた。

 

「監視カメラはこちらが今、制御を抑えさせていただきました。

葉巻の鑑定については海軍統合作戦本部情報部が引き受けます」

「お二人は憲兵では無いのですか?」

不信な顔を浮かべて江良の前に立った青葉に、憲兵大尉は静かに頷く。

「有川中将の指示を受けて、愛鷹中佐の傷害事件調査を行っています。

現在、査問会議の為憲兵隊が動いていますが、有川中将は情報部での独自調査を内密に進めております」

「何故です? 差し支えなければ私達にも教えて頂きたい」

珍しく軍人口調になる青葉に、大尉は腕時計を見てから答えた。

「中佐の暗殺を目論む一派が憲兵を掌握している恐れが出たからです。つまり、葉巻の証拠がもみ消される可能性がある。

憲兵隊の調査を操り、中佐に不利な形で軍法会議にかけられれば、こちらには成す術がない」

「お二方の事を信頼できる証拠は? そもそもなぜ情報部が憲兵隊に代わって調査を?」

鋭い視線で問う青葉に大尉は衝撃的な事実を告げた。

 

「はっきりとした確証はありませんが、艦娘内に愛鷹暗殺勢力への協力者が出ている可能性が浮上しました。

現在、味方が誰であるのか見極めるのがかなり難しい状況です。

ですが有川中将は愛鷹中佐の傷害事件の裏側を明し、助ける事を我々に厳命されました。

ここの監視カメラも最悪乗っ取りを受けている可能性すらある。時間をかけては、中佐の罪状軽減が難しくなる可能性があります」

 

信頼していいのだろうか? そうやってこちらを懐柔して引き渡させると? そうは簡単に問屋が卸すか。

 

疑念を浮かべた目で青葉が二人を見ると、江良が青葉にそっと耳打ちした。

「ここは彼らに賭けてみましょう」

「でも、この二人こそが愛鷹さん暗殺勢力の手下の可能性もありますよ?」

「でも、私の知人の手を借りるより早く結果が出せるかもしれない。

愛鷹さんの今の騒動の解明は青葉さんの手だけじゃ無理よ。ここは彼らに賭けてみましょう」

「でも……」

すぐに信頼しろと言われて信頼できるか、と言いたげな青葉に江良は静かに言った。

「暗殺勢力って言う輩だったら、有無を言わさずに私達の元から葉巻を奪うわ。それを敢えてしないで待ってくれている。

相手は一種の冤罪を愛鷹さんにかけるなら、艦娘を利用するような人達よ。

二人にはその強引さがない。それに二人の腰には拳銃も警棒もない」

その言葉に青葉ははっとして大尉ともう一人の腰を見た。

憲兵隊は常時P320拳銃と警棒を携帯しているが、二人は付けていない。憲兵隊のバッジと腕章こそあれど、常帯を命じられる装備を付けていない。

信用していいのかと言う疑問は残り続ける。が、この二人に渡せば事態が好転するのだとしたら、賭けてみる要素は大きい。

自分の前からどいた青葉に軽く頷くと江良は情報部の大尉に袋を渡した。

「頂きました。全容解明に尽くします。

調査結果はおってこちらのヘッドセットからこの周波数でお知らせします」

そう言って大尉は上着のポケットから小型のヘッドセットと周波数が書かれた小さな用紙をだし、青葉と江良に渡した。

小さい、髪で隠すことが出来る位のサイズのヘッドセットを見て青葉は慎重に聞く。

「こちらから問いかけは出来ない、一方通信ですか」

「こちらが動いている事を憲兵や憲兵を掌握している連中に気付かれる訳には行かないので、こんな形で信用しろと言われても出来るか、と思うのはもっともかとおもいますが。

ですが、結果が出次第、すぐに連絡を入れます。

バッテリーはONにしたままの状態でも七二時間持ちます。それまでには」

 

嘘を言っている目ではない、可能性があると言うなら賭けてみるか。

時間との勝負になりかねない。今の青葉には憲兵大尉の階級章を付けた情報部の部員を信じるしかなかった。

 

 

長い聴取が終わった後、味はまあまあな昼食を摂る。

施設時代を思い出しかける素っ気ないメニューを黙々と食べる愛鷹は、長い聴取と自身の置かれた状況から来る強い精神的な疲労を感じていた。

自分でも何故ああなったのか、全く分からない。ただ本能に従って動いていたような気がする。

そう、脳に植え付けられた何かに従うがままにと言う感じだ。

正直、天龍、木曽、皐月を襲った時の記憶があやふや気味で、自分でもよく思い出せない。

このまま査問会議を受けて、その後に来るであろう軍法会議の事を考えると、気が重くなった。

確実に自分は裁きを受ける身になり、艦娘人生は強制終了だろう。

そして、死ぬまで塀の内側だ。

 

惨めだ。

 

結局、艦娘として過ごせたのは一夜の夢の様なものでしかなかったのか。

五年前に生まれ、四年ほどの飼い殺しの様な日々を耐えて耐え忍んで、やっとつかんだ自由だった筈なのに。

泣きたい気分だったが、涙は出なかった。

もう、自分への酷な扱いなど慣れっこになってしまった気分だ。自分にはどうせこんな人生しかなかったのだと、半分自暴自棄も起こしかけていた。

ベッドの上に座ったまま何もしない時間だけが過ぎていく。

面会に来る人が一人もいないのが寂しい。青葉たちなら面会を求めてくると思ったのに来ない。

多分来ないのではなく、面会謝絶状態にされているのだろう。自分の意思に反して。

正直、話し相手が欲しかった。憲兵隊の取り調べは話し相手と言えるわけがない。

誘導尋問じみたところもあったが、そんなものに簡単に流される自分でもない。

当時の記憶こそ、何故か曖昧気味になっていたとはいえ、否定できるところは否定した。

ふと自分の部屋を寝床にしてしまったハイタカが気になった。

中々戻らない自分の事をどう思っているのだろうか。人とは違って鳥だし仲良くしようと思った事は無かったから、あまり気にかけていなかったが……今ではあのハイタカとすら会えない事が寂しかった。

 

独りぼっちは慣れているはずだが……こみ上げて来る寂しさが愛鷹の気持ちを滅入らせた。

 

 

査問会議は谷田川と三笠、それに派遣されてくる検察官などで行われる予定になっていた。

艦娘への査問会議は過去に何回か行われていたが、今回はこれまでとはかなり違う。

軍法会議も視野に入れたものだ。

査問会議はある意味、一般的な裁判での第一審の様なものである。

ここで決着がつくこともあれば、軍法会議で裁判が行われて判決が下される。

有罪であれば当然厳しい処罰が下される。

まさか、自分が査問会議と軍法会議の議長になるとは、と溜息を吐きながら武本は方々から取った調書に目を通していた。

天龍への事情聴取は既に終わっていた。

調書の文面では「明確な殺意と狂気が愛鷹を動かしている様だった」と天龍は語っている。

あの時はパニックを起こしたとはいえ、天龍は落ち着いてあの時起こったことを振り返り、詳細に記録していた。

「あいつは悪くない。ちゃんと帯刀艦娘の軽いテストみたいな事を指示して来た命令書の出所を確かめなかった自分に責任がある」

ラストを締めくくる天龍の言葉は、全面的に愛鷹を庇いたい一心が込められていた。

どんな処罰を受けても自分は文句を言わない、とも添えられていた。

今回の一件は確かに天龍にも一定の落ち度があるので、何かしらの処罰は下す予定だ。

調書を読みながら武本は愛鷹の行動に強い既視感を覚えていた。

 

そう、第666海軍基地でクローン達に行わされたバトルロワイヤル時を想い起させる。

偶然にしては出来過ぎている。どうにも、何らかの方法で愛鷹にバトルロワイヤルが行われた時と同じレベルまで、精神を追い込まないとできない行動力だ。

しかし、愛鷹がそう簡単に辛い施設時代を思い出すことが出来るだろうか? 

忘れはしないが、心の奥底にしまい込み、封印する術を心得ている様な彼女が天龍たちの挑発程度で暴走するだろうか。

クローン達にはブロークンワードを使う事で、その行動を封じられる様に予め遺伝操作が行われている。

しかし、闘志を焚き付ける様な特殊な工夫はしていない。強いて言えば恐怖程度だ。

一体何が起きたのだろうか……?

一つ確かなのはどう転んでも、木曽と皐月への傷害行為だけは何らかの形で処分を下さなければいけないという事だった。

 

 

あの時の事を根掘り葉掘り尋ねて来る青葉に、天龍はありのまま、自分が見た事全てを打ち明けた。

メモ帳に天龍の証言を書き取る青葉の顔と目が鋭い。単なる探求心所以とはとても言えない。

真実を明らかにすると言う使命感そのものだ。

下手なパパラッチ癖で接して来た時とは訳が違い過ぎる。自分の上官の不可解過ぎる暴走の裏に何かあると見抜いている様子だ。

天龍自身、あの時の事には自分なりに責任があると思っていた。それだけに営倉に入れられたまま面会も許されない愛鷹が可哀想で仕方が無い。

倉庫に現れ、突然の暴走、憲兵隊の突入まで事の顛末をすべて話した。

ペンをくるくると片手で回しながら唸る青葉に、天龍は愛鷹にかけられている罪状について聞いてみた。

「傷害罪は残念ながら免れませんね。余程のことがない限り懲役刑ないし執行猶予付きの刑罰が下るでしょう」

「俺のせいだってのに……」

首を垂れる天龍に何かしらの同情が湧いてくる。

青葉は発端らしきものの調査は情報部が解析しているから絶望はしていなかった。

もっとも手掛かりになり得る葉巻を情報部に渡す事には、一種の賭けをした気分ではある。

メモ帳に書き込んだ天龍の証言を見つめていると、いくつか気になる所があった。

あくまでも天龍が見た感じ、とは言え愛鷹には「殺意と狂気、そしてそれを自身の中で増長させるような恐怖に頭が支配されていた様にも見えた」と言うモノだ。

普段は温厚かつ物静かな愛鷹が、突然バーサーカーの様に暴れ出すには、やはり何かきっかけがいる。

メモ帳の文面を更に追っていくと、一つ興味深いモノがあった。

命乞いをした時、一瞬愛鷹の構えが止まった、と言うところだ。

その時だけ、感情が元に戻りかけたのか? 

いや、そうではないだろう。

青葉は以前愛鷹から身の内を明かされた時、同じクローン同士の殺し合いの話を聞いていた。

一人しか生き残れないクローン選抜のバトルロワイヤル。

 

命乞いをした天龍の姿が、バトルロワイヤルの際に殺害したクローンの命乞いが、本能的にフラッシュバックし、動きを鈍らせた。

そう考えるとしっくりくるものがある。

葉巻に仕込まれた薬物で異常な興奮状態になったのではなく、パンドラの坪に封印していたのであろうバトルロワイヤルをした時の狂気が、葉巻の薬物で蓋が外れ引き出されてしまっていた?

かなり納得は行くが、原因が葉巻だったと断定するのは早計だ。

そもそも愛鷹の買う葉巻はPX(酒保)でも普通に購入できるものだ。つまり愛鷹以外の人間が買ったら同様の状況は起こり得るのだ。

だが愛鷹の様な暴走を起こした者はいない。

次の手掛かりはPXだ。

辺りを付けた青葉は天龍に礼を言うと、メモ帳を仕舞ってPXへと向かった。

 

 

憲兵の長く、面倒臭さすら感じる聴取が終わり、憲兵隊員二人が部屋を出て行くと、蒼月は初めて不機嫌そうに頬を膨らませ、眉間にしわを寄せていた。

聴取内容は上官である愛鷹に関するモノだったが、どうにも愛鷹の過去の行動に問題は無かったのかと誘導するように聞いて来るのが気に食わなかった。

応えられるものは全て模範的か、戦闘時で出来る最善を尽くしたに終える事が出来るモノばかりだ。

どうにも憲兵隊には愛鷹を犯罪者として仕立てたい様な節が伺えた。

傷害致死行為はどうにもならないとはいえ、憲兵隊には愛鷹が意図的に天龍、木曽、皐月を襲ったような調書を作ろうとしているようにも見える。

それに流される程、蒼月も馬鹿でも情弱でもない。

 

自分でも驚く程最近肝が据わった感じがあった。

第三三戦隊の一員として従軍している間に、精神的に随分鍛えられたのかもしれない。

実戦が兵士の最後の訓練課程と何かで聞いたが、その通りだったのか。

それとも、この人と一緒にいれば大丈夫、と思える存在がいつもいたからか。

一緒にいれば大丈夫、と言える人物と言えば蒼月には愛鷹しか思い浮かばない。

勿論、第三三戦隊の仲間もそうだ。何かと世話を焼いてくれる深雪も頼もしい。

 

今頃別の場所で第三三戦隊仲間たちは憲兵隊の聴取を受けているのだろう。

後で……どう言う流れだったか、聞いてみよう。そう決めた蒼月は部屋を出て食堂に少し遅めの昼食を食べに行った。

 

 

空にジェットエンジンの轟音をやかましく響かせる二機の航空機に、熊野は不快な表情を浮かべて空を見上げた。

全翼無尾翼機である無人攻撃機MQ170の編隊だ。

海兵隊から航空戦力強化として種子島基地防衛勢力に組み込まれた無人の攻撃機。

種子島基地上空高度三万五〇〇〇メートルと言う、深海棲艦の高高度迎撃機ですら攻撃が出来ない高高度を漂う無人通信飛行船とマイクロウェーブを介したデータリンクシステムで繋がれた、人が乗っていない空の殺し屋。

対艦攻撃にはミサイルが使えないので、サーモバリック弾頭ロケット弾や対艦クラスター爆弾等を装備している。

飛び去る二機の無人機に「煩いですわね」と熊野は愚痴る様に呟いた。

相棒の鈴谷と共に種子島基地に派遣されてこっち、哨戒艦隊のメンバーとして出撃を繰り返す日々。

哨戒任務出撃など艦娘として毎度毎度の仕事であるが、空をいつも無人機が飛ぶと言う事には正直疎ましさがあった。

無人機は戦闘時には有人コントロールで戦闘を行うが、普段は自律AIのプログラムにのっとって飛ぶ。

人間は基地のコントロールルームで非常時に備えてモニターするだけ。

撃墜されても人的被害はない無人機。深海棲艦が存在するだけで起きる電子機器異常の対策を施された最新のデータリンクシステムで飼い繋がれた番犬。

データリンクシステムに異常、又は途絶したらすぐさまAI判断に移行し、自律機動攻撃を行えると言う優れモノ、と解説された。

しかし、熊野と鈴谷はあまり無人機を信頼していなかった。幾度とない死線を掻い潜って来た自分達からすれば無人機と言う「空飛ぶ計算機」には、想定外の状況に柔軟に対応できるとは思えなかった。

しかし、種子島基地の司令部はこのMQ170による艦娘への航空支援に、かなり頼り込んでいる印象が強かった。

 

無人機とは別に、基地の前線司令官の鍋島(なべしま)少将も正直好人物とは言い難い。

南部方面隊種子島基地防衛特別混成隊の指揮を執る鍋島は、艦娘の運用方法は心得ているのだが、自分達に放つ言動に反発したくなるものが多い。

「貴官らは前線に出れば一人の人間の命等ではない。戦場で敵を殺す一個たる戦力に過ぎん」

着任時にそう言い放った鍋島の態度はどうにも艦娘を「人ではなく、人をやめた人の姿をした兵器」と見ている節がある。

恐らく作戦遂行の為なら部下の犠牲も最悪止むを得ない。そんな考えを持つタイプの司令官だ。

余り上官にはしたくないと嘆息する熊野だったが、自分も軍人である以上は司令官の命令には従わなければならない。

 

そんな種子島基地には艦娘の運用施設がない為、支援艦「あきもと」を基地近くの港に派遣して艦娘達の前線基地にしていた。

防衛艦隊の航空戦力はトラック基地を巡る戦闘にも参加していた五航戦の翔鶴、瑞鶴のみ。

各艦娘のローテーションや配備先を考慮すれば、これが精一杯だ。

一方で長門と陸奥と言う戦艦戦力、古鷹と加古と言う重巡戦力もある。

軽巡神通率いる駆逐艦戦力も揃っているので、少なくとも水上部隊戦力は充実している方だ。それに熊野と鈴谷も加わっている。

それに仮設の基地航空隊戦力にMQ170があるから、航空戦力不足ではないはずだ。

それでも熊野を含む艦娘達には多少なりとも艦隊防空能力に不安を拭えていないのだが。

 

 

「熊野ー、どうかしたー?」

相棒の言葉に我に返った熊野は、何でもないと言う形で首を横に振った。

「楽な哨戒航海と言っても、気を抜いたら足飛ばされるかもしれないから、気をつけてよ」

そう言って海上監視をする鈴谷の言葉に、熊野は頷いた。

二人にとって、いや熊野にとって鈴谷の言葉は過去の教訓を忘れるな、と言う戒めだった。

昔、佐世保へ入港する際に深海棲艦の敷設した対艦娘機雷に接触して、右足を吹き飛ばされた苦い経験がある。

再生治療のお陰で助かり、足も元通りとは言え、ちょっとした気の緩みから一度死にかけた記憶は忘れがたい。

二人は第一〇駆逐隊の秋雲、夕雲、巻雲、風雲と組んで航空巡洋艦艤装で哨戒中だった。

搭載する瑞雲も駆使して対潜警戒も行っている。

同じ航空巡洋艦へと改装された青葉の甲改二艤装より搭載数に優れているが、水上戦闘能力を左右する火力の面では青葉が上で、魚雷発射管を常備できないが。

二人の改二艤装の一番の強みはやはりコンバート改装システムによって攻撃型軽空母になれることだ。

ただ艤装を航空巡洋艦から攻撃型軽空母にする際は、艤装の一部を換装する必要があり、しかも割と複雑な作業である為換装にかかる手間が大きく、艤装セッティングは状況に応じてよりは、状況を想定してが多い。

また攻撃型軽空母の際になると艤装燃費も悪い。

強くなれるのが良いが、艤装整備員泣かせな面があるので少しばかり申し訳ない気分にもなる。

帰ったら艤装整備員にサンドイッチでも奢ろう、と帰投予定時刻を勘定しながら熊野は水上警戒に戻った。

 

敵は、深海棲艦は必ず来る。SSTO打ち上げの時か、その直前に。

「お望み通り……海に沈めてあげますわよ」

真っ暗な海底に、再び。

 

 

ダメもとで再び愛鷹との面会に行った青葉は、憲兵隊の顔ぶれが全員入れ替わっているのに気が付いた。

面会許可を申告すると、意外な事に憲兵は通してくれた。

メンバーが入れ替わったのはローテーションからか、それとも……。

手錠を両手に繋がれた愛鷹は見るからに生気を失っていた。

目が死んでいる。動きも緩慢で普段見ていたきびきびとした動きが全くない。

強化ガラス越しの対面を果たせた青葉に、愛鷹が最初に言った言葉は「皆さんの調子は?」だった。

「皆元気ですよ。愛鷹さんの事、みんな心配してます」

「そうですか……元気で何よりです」

僅かながら嬉しそうな感情がこもった声だが、目には活力が出ない。

軽く溜息を吐きながら、青葉は愛鷹に問いかけた。

「愛鷹さん、『あの時』の前に葉巻買いましたよね?」

「ええ、切らしていたのでPXに行ってみたら、在庫が一つだけ入荷していたと」

「確かに一個だけの入荷だったんですね?」

確認する青葉の言葉に愛鷹は静かに頷いた。

狭い独房に閉じ込められる愛鷹は精神的な疲労が溜まっているのか、口調にはかなり投げやり気味になっていた。

恐らく、辛い施設時代を彷彿させられる独房に閉じ込められた結果、過去がいつもフラッシュバックしてしまっているのかもしれない。

少し目元にくまが浮かんでいる辺り、あまり眠れていないのも分かる。

「ご飯はちゃんと食べてます? あと睡眠は?」

「三回の食事は食べていますよ。睡眠は……お察しの状態ですが」

「青葉にも『あの時』の事話してもらえませんか?」

その頼みに愛鷹は首を横に振った。

「ごめんなさい、良く思い出せないんです。ただ何かに必死になっていたような記憶がぼんやりと残っているんですが……」

「そうですか……あの、青葉、こんな事を言うのは酷だと分かっていますが、敢えて言うとやっぱり査問会議は開かれるそうです」

「当然の話ですから、酷ではないですよ。当然の帰結です」

声から愛鷹は自暴自棄を起こしかけているのが伺えた。

査問会議、軍法会議。この二つでどうせ自分は有罪になって、僅かな余命を塀の中で暮らすのだと完全に諦観している節がある。

「青葉は……愛鷹さんのせいではない、って思っているんです」

虚ろな視線が返されると、青葉は続けた。

「確かに愛鷹さんは木曽さんと皐月ちゃんを傷付けてしまいましたし、天龍さんを危うく殺しかけた。

でも、それは愛鷹さんの自分の意思ではなく、誰かに仕組まれた展開だったのではないか? 青葉はそう思ってます」

「失脚させる為に、私に何か知らない間にマインドコントロールを施した、と?」

「まだ断定できませんけど、殺し屋が愛鷹さんを狙っているのは現実ですから」

すると鼻を鳴らして愛鷹は口元を少し緩めた。

「死んで欲しい……と言うのならもう死ぬ時なのかもしれませんね。先に逝った六四人の元に行く時が来ちゃったのかもしれません」

「まだあきらめるには早いですよ! 処罰は出ると思いますけど、軽くする事は出来る筈です」

「そう言っていただけるだけでも、私は青葉さん達と触れ合えて良かったと思いますよ。

冷たい独りぼっちの部屋で毎日毎日悲鳴を上げる体と戦う日々……それと比べたら、三カ月程度だったとしても私にはとても有意義な日々だったと言えます」

投げやりな声で返す愛鷹に、青葉は両拳を強く握りしめ、珍しく声を荒げた。

「愛鷹さんがいなくなっちゃったら、第三三戦隊は誰が指揮するんですか!? 青葉は嫌ですよ、青葉は愛鷹さんのサポート役です。

愛鷹さんの代わりに旗艦を勤めろなんて頼みは承服できません!」

「そんなことをすれば、抗命罪、上官不服従罪にかけられて降格処分と追加処分が付きますよ?」

「無茶苦茶な命令には逆らう権利があります」

真顔でじっと見つめる青葉に愛鷹は深々と溜息を吐いた。

「どの道、もうじき死ぬ運命の体です。その時が少し早くなっただけ。

青葉さんを含む皆さんから慕って貰えたその事実。それだけでも私はとても嬉しかった。

軍籍を抹消されても、私が存在した事は巡り合えた艦娘達の心の中で事実として残る。

ラバウルで言ったはずです。

 

刻みたい、この世に、この時に、私が生きていたことを遺したい、って」

 

「記憶違いでなければ、その後愛鷹さん自身が言ってたはずです。『それは死に物狂いな程困難な事だけど、やり遂げてみせる』と」

出来るのなら胸ぐら掴んででも喝を入れたい気分だったが、青葉にはガラス越しに叱咤する事しか出来ない。

気が付くと面会時間が終わりかけていた。

結局、元気を出すことも、前向きな姿勢にする事もかなわないまま今回の面会は終わりそうだ。

悔しさを噛み締めていると、愛鷹がふと思い出したように尋ねて来た。

「私の部屋に居候しているハイタカ、どうしました?」

「ハイタカ?」

思わず聞き返してから、部屋の窓のプランターにいるのを見つけられると、何故か愛鷹の傍にいる事を望んでくるハイタカの話を思い出した。

そう言えば最近見かけない。自分の寝床に戻れず野良状態でどこかを彷徨っているのかもしれない。

「寮に戻ったら私の部屋の窓を開けておいてください。餌くらいは自分で調達して来るでしょう」

「……分かりました」

軽く一礼した青葉は面会室を振り返る事なく出て行き、それを生気のない目で愛鷹が見送った。

 

 

司令官室で負傷治療を受けている艦娘のリストに目を通していた武本のパソコンの元に、谷田川から「国連海軍艤装設計局」からの指令書が上げられてきた。

「改二化指令書?」

誰に行うんだ? と首をかしげる武本は谷田川から送られて来た指令書を開いた。

改二化対象艦は二隻。驚いたことに指令書に書かれている名前は夕張と深雪だった。

あの二人の改二化指示とは、と軽い驚きを覚える一方で当然か、と頷けるものもある。

夕張も深雪もその功績と戦いぶりは称賛に値するが、深海棲艦に対抗するには不相応に改装が遅れている。

深雪の場合、踏んできた場数は同じ吹雪型の中でもかなりの数になる。

「第三三戦隊での働きぶりが高く評価された、という事か」

納得いく物を感じながら二人の装備を見る。

夕張はコンバートによる三形態への改装と言う改二改装だ。

改装内容は、主に対空戦闘能力向上の改二、対水上及び対地攻撃力向上の改二特、対潜及び対地攻撃両立の改二丁である。

コンバート改装は手間がかかる代物だが、夕張のはかなり改良されている。艤装の装備をユニット交換することで比較的短時間内に三種類の改二艤装形態を可能にしている。

ユニット式の装備交換は夕張が自分の手で自分の艤装に施しているが、改二化すると交換可能な装備自体が高性能化される。

改二特の場合、対艦及び対地能力を強化した反面艤装重量が重くなるため速力が低下してしまう問題点を持っているが、夕張の主機を内装型にすれば速力の低下を抑えられ、かつ旋回性能が多少向上する。

「内装型ってことはハイヒール型になるって事だから……トップヘビー気味になるんじゃないか?」

大丈夫か、と不安にはなるが夕張自身で何とかするだろう。

別ファイルに入っている深雪の改二化改装案を開いてみる。

主砲は一二・七センチ連装砲A型改三を両手持ち二基、六一センチ三連装酸素魚雷後期型を左右の両太腿に一基ずつの計二基。

外装型主機のソナーや電探も高性能化されている。簡単に言えば長女の吹雪に並ぶ汎用性の高い改二化か。

「連装主砲を両手持ちか、皐月くんの前例があるがあっちは単装砲だしな。一一駆から除籍されてからこっちよく頑張っているからな。

愛鷹の事もよく分かってくれるのは有難い」

夕張と深雪の改二化指令書にタッチペンで許可サインした。

改二化を喜ぶ一方で、二人の上官である愛鷹の査問会議の備えも進めなければならない。

艦娘への査問会議は数える程度しかないが、海軍軍人であることには変わりないので行われる展開そのものは普通の軍人に行われるそれと大差はない。

重罰など課したくない。友人の有川たちが真相解明に動いているからそれに託すしかない。

見守るしかできることの無い自分に不甲斐なさが込み上げて来た。

 

 

第三三戦隊のメンバーが思った以上に憲兵からの調書に耐え、さらに天龍や木曽、皐月も愛鷹に非はない、と調書に答えるのが大淀を苛立たせていた。

有罪判決の後、失脚させれば後は適当に「消す」ことが出来る筈なのだが、この分だと有罪にはなるが刑罰はかなり軽減されてしまう。

かなり不利な状況だ。

愛鷹自身は相当精神的に追い詰められているとは言え、それだけでは意味がない。

何より大淀を苛立たせていたのが、仁淀の治療の進行具合だ。

計画を始めてから全く音沙汰無いのである。ロシニョール病の治療は本当に行われているのか。

対面も出来ず、治療経過などの知らせが全く来ない。妹の為に手を血に染める覚悟を決めたのに、このままでは本当に自分の行いは報われるのだろうか。

その疑問と苛立ちが大淀の精神を不安定にしていた。

周囲からは仁淀の容態が芳しくない事で苛立っていると見えている様だったので、少なくとも今の所自身の行いがばれた様子はない。

天龍達が行った帯刀艦娘の訓練云々は、愛鷹排除派が作った計画書を基に自分が仕立てたモノ。

艦娘三人の命を引き換えに仕掛ける、と言う排除の為なら巻き込みの犠牲もいとわないやり方だが、大淀は指示されるがままに指令書を作成した。

そして愛鷹は一応、予定通り傷害致死罪などの嫌疑で拘束させられたが、どうにもここから先が上手く進まない。

妨害でも入っているのだろうか。

苛立ちが募る大淀だったが、あまり苛立つ自分を周囲に見せると逆に関心を引かれてしまうので、旨い具合に内心に押し込める事は出来ていた。

「いつになったら、終わるの……」

呟く様に苛立ちを吐く。

自室の外から汽笛が聞こえた。哨戒艦隊が帰投して来たようだ。

確か今出ていたのは鈴谷と熊野、第一〇駆逐隊だったか、と思っていると部屋のドアがノックされた。

「大淀、業務時間よ? どうかしたの」

陸奥だ。業務時間と聞いて大淀は時計を見た。五分前行動を心がけているのに、陸奥との仕事の交代時間まであと三分しかない。

いつも時間通りに仕事に来る自分が来ない事に不審に思った陸奥が、様子を見に来てくれたのだろう。

「はい、只今行きます!」

慌てて腰掛けていたベッドから立ち上がるとドアへと駆けよった。

不思議そうに自分を見る陸奥に一礼して自分の仕事場へと、大淀は走った。

 

何かおかしい、と陸奥は大淀の最近の動きに僅かな違和感を覚えていた。

日本艦隊基地で愛鷹が起こした騒動は陸奥も聞いていた。

それとどうも時期が合う様な大淀の情緒の不安定さの悪化。

大切な妹の容態が芳しくないと聞くから、それが気になって仕方が無い、と言うのなら納得いくが、それだけで終わらせられるものなのか。

何かおかしい。愛鷹、大淀だけでなく今の艦隊の状況そのものが、陸奥に何かおかしいと警鐘じみたモノを知らせていた。

 

 

木曽と皐月から話を聞き取った青葉はメモ帳をキュロットのポケットにしまって、病棟を出た。

腕を組んだまま惨事発生時の状況を整理すると、やはり愛鷹はあの時普段とは状況、いや状態がおかしかった。

二人の傷は動けなくはなってしまうものの、致死性はそれほど高くはない、ただ斬られて動けなくなる傷では無かった。

理性があの時の愛鷹に会ったのかどうかは定かではないにせよ、すぐに殺害する意思があったかと言う点においては恐らく否定できるだろう。

また木曽と皐月があの時、刀を持っていなかったという興味深い話が聞けた。

持っていなかったと言うよりは、外していたのだが、肌身離さず持っている天龍と違ってあの時は事実上丸腰だったという事が分かった。

帯刀艦娘と言っても天龍や愛鷹の様に肌身離さずの者もいれば、外している者もいる。

天龍があの時刀を持っていたから、愛鷹の混乱状態の頭は「脅威」認識していた?

もしそうだとすれば、納得出来るモノがある。

状況を後で整理しよう。葉巻の鑑定結果がいつ来るかは分からないが、耳に付けているヘッドセットから朗報が入るのを待つ時間はそれほど長くかからないはずだ。

 

 

便器の中が真っ赤に染まるを見ながら、もう一回愛鷹は激しく吐血した。

体が悲鳴を上げていた。服用しているテロメアがすり減るのを遅らせる抑制剤であるタブレットは知らぬ間に使い果たしてしまっていた。

この部屋でかかる心理的、体力的苦痛がかなり響いたのか。

タブレットの効果切れの禁断症状から来る苦しみと吐血は酷く、体が上げる悲鳴で頭が割れそうだった。

荒い息をしていると憲兵が飛び込んできたが、何を言っているのか分からない。

片手で胸を掻きむしる愛鷹に何か声をかけて来ているが、その憲兵の姿が施設時代の自分を監視していた監視員の姿に無意識に被せてしまう。

延ばされる手に激しい恐怖を覚えた愛鷹は憲兵の手を振り払い、「来ないで……!」と震えながら独房の隅に下がり、両手で頭を抱え込んで子供の様に懇願した。

その間にも耐えがたい体の悲鳴は愛鷹を痛めつけていた。

 

息苦しさが更に激しくなって来た時、口に何かを入れられ、強制的に呑み下らせられた。

何を呑ませた⁉ と思った時、急に体が落ち着き始めた。

 

「愛鷹さん聞こえますか? 江良です。

抑制剤をそろそろ切らすんじゃないかと思って、友人の伝を借りて予備を調合しておきました」

自分を呼びかけ、新たに作った抑制剤のタブレットを呑ませてくれた江良の顔を見返し、礼を言おうとしたが口が動かない。

落ち着くまで深呼吸を繰り返す自分の手に、江良が新しいタブレットが詰まったケースを握らせてくれた。

 

「劇薬ですね。友人がこんな劇薬調合は初めてだと言ってましたよ」

 

落ち着き始めた愛鷹から真っ赤になったトイレの中を見て、これが、愛鷹さんのこの世に生を授かった代償の結果か、と惨さすらを感じた。

そっとレバーを捻って血を流し、憲兵と一緒に起こしてベッドに横にさせる。

横になるや右腕で目元を覆った愛鷹が深々と息を吐くのを見て、何とか落ち着いたわね、と安堵する。

目で憲兵に合図をして江良は共に独房から出た。

独房の外で駆け付けた武本と大和を前にして、江良は静かに告げた。

「子供の様に眠りに落ちましたよ。もう大丈夫です」

安心したように軽く息を吐く武本と、深い溜息を吐く大和を見ながら、江良はドアを閉める間際に微かに聞こえた愛鷹のすすり泣く声の事は言わなかった。

愛鷹が吐く血と流す涙の元凶に、あまりにも無残な姿をこれ以上見せたくなかった。

 

苦しみながらも、愛鷹は足掻き続けている。死への悪足掻きを懸命に続けている。

これが人間の業の深さの答えなのか?

 

 

夕食後に行われた青葉への憲兵隊の調書は付き合いと、副官的立場故か、無駄にも思えるほど長く行われた。

これは誘導尋問級だ、と胸の内で汗をかきながら答えられるものにはすべて答え、否定出来るモノは全て否定した。

憲兵隊は愛鷹に不利な証言を引き出そうとしている様だが、ところがどっこい自分をそう簡単に舐めて貰っては困る。

こう言う状況には割とタフな方でもある青葉の調書は消灯時間直前まで行われた。

ようやく終わった後、シャワーを浴びて自室に戻ると、寝間着に着替えた衣笠が待っていてくれた。

「お帰り、青葉」

「ただいま、ガサ」

そう返しながら溜息を深々と吐いてベッドに直行する。

寝床に横になる自分を気遣う様に「大丈夫?」と衣笠が聞いて来る。

直ぐには答えず、少し目を閉じて軽く頭の中の整理を付けてから「休めば大丈夫かな」と青葉は答えた。

消灯時間が近づいてきた巡洋艦寮では、既に寝起きする艦娘達は当直以外部屋に入って寝床についているはずだ。

寝間着に着替えた青葉も二段ベッドの下段に横になり、毛布を被るだけだ。

部屋の電気を消した衣笠が自分の上のベッドに上がって横になる。

旗艦が拘束されている今、第三三戦隊のメンバーはただ何もしないまま待機する時間が続いていた。

じれったい気持ちを抱えたまま横になっていると、上段ベッド越に衣笠が「ねえ青葉」と呼び掛けて来た。

「気持ちいいベッドで寝られるのって、贅沢よね」

上段から問う様に聞く衣笠に青葉はその通りだと思った。

「安心して、ゆっくり寝られるベッド程、気分を落ち着かせられる物はないよ」

「……愛鷹さんは、どんなベッドで寝ているのかな」

不安げな声で言う妹の言葉に青葉は今日見た愛鷹の顔を思い出した。

目の下に浮かぶくま。寝心地自体はともかく、精神的に落ち着いている様ではないから、寝心地の良いベッドだったとしてもあまり眠れてはいないだろう。

「すぐに愛鷹さんは戻って来るよ、ガサ。信じて」

「青葉は……不安にならないの?」

「不安で一杯だよ。でも、青葉は信じてるから」

 

下から確かな意思で返す青葉の言葉に、私には信じる力がまだ足りないのか、と不安な気持ちで一杯でしかない今の気持ちの自分に、衣笠は軽く溜息を吐いた。

 

暗い部屋でお互いにおやすみ、と告げて青葉と衣笠は眠りに入った。

まだヘッドセットから音沙汰は無かったが、青葉は受信器をONにしたまま眠りについた。

バッテリーは七二時間持つ。それまでに答えが出ると信じながら。

 




今回のお話は大体が青葉の視点で進むことになりました。
クローン艦娘艦隊設立と言うモノへの青葉の考察シーンで、彼女が思い浮かべた映画は「スターウォーズ」であり、クローントルーパーの事です。

夕張と深雪の改二化ですが、夕張は概ね原作ゲームと同じです。
深雪に関しては弊小説の完全オリジナル発展形態となり、制服も長女吹雪と同じものになる予定です。

鈴谷と熊野のコンバート改装ですが、ゲームでは改装設計図が改装の度に消費される(軽空母から航巡に戻す時は必要なしですが)難点があり、鈴谷と熊野の航空巡洋艦形態と攻撃型軽空母形態の二隻持ち推奨の要因になっていますが、本作では設計図要素の代わりに、改装には複雑な作業と手間がかかる為、高い頻度での改装は整備員泣かせになる、と言う形で再現しました。

本作では史実では空母として完成した信濃が台詞で言及されている段階ではありますが、戦艦として登場しております。
信濃のゲームでの実装は現状いつかは不明ですが、コンバート改装で戦艦と空母の両方になれるより取り見取りな案は「今作オリジナル案」であり、鈴谷と熊野のコンバートはそれを見越したテストベッドと言う位置づけにさせていただいています。

愛鷹を巡った軍内での内部抗争の兆し、愛鷹の今後の処遇、そして隠されていた愛鷹の艤装の秘密。
一難去ってまた一難続きの愛鷹が顔を上げてまた歩き出せるか、次回以降にご期待下さい。


ではまた次回のお話でお会いしましょう。
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