破軍の動かない大図書館   作:無休

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きゅぅ.......(×ω×)





第6話

『LET'S GO AHEAD!』

 

 

 さて、盛大な茶番を始めましょうか。まずは自分の身を固める。向こうはこちらの出方を伺っているのか、まだ動かないでくれているのはありがたい。

 

「スペル────水符『ジェリーフィッシュプリンセス』」

 

 大量の魔力を込めた泡で身を包む。皇女様の発する炎の流れ弾くらいは防げる筈だ。同時に接近されてもいいように地面にも魔力を流し、いつでも月符『サイレントセレナ』を放てるようにしておく。

 

「準備は良いのかしら?」

 

「あら?待っていてくれたの?」

 

「言ったはずよ。アタシはアンタの全力が見たいの。その上でそれを上回る。それがAランク、ステラ・ヴァーミリオンなのよ」

 

 随分な自信だ。まぁ、その魔力量ならばそう思うのが普通か。

 

「じゃあもう一つ待ってくれると嬉しいわね。スペル────火水木金土符『賢者の石』」

 

 私の周囲に魔力が集まり、五つの色となって宙に飛び出た。それらはそれぞれの属性に変換した魔力の結晶。それに単純な魔法命令を二つ込めたもの。それを《念動力》によって操っている。

 

 本来のパチュリーとはおそらく比べ物にならないだろう劣化魔法。『賢者の石』というより『愚者の石』と表す方がいいのかもしれない。

 

「では皇女様、弾幕ごっこ(絨毯爆撃)といきましょうか」

 

 私は五つの魔力結晶を操り、同時に込めた魔法を発動させる。その瞬間から放射状に属性弾が連続で放たれる。こういうのをファンネルとか言うのだったかしら。

 

 赤い魔力結晶からは炎弾。青い魔力結晶からは水弾。緑の魔力結晶からは真空弾。黄色い魔力結晶からは金属の鏃。茶色い魔力結晶からは石の礫。それぞれがちゃんと殺傷力を持っているのが、弾幕ごっことの大きな差だろうか。

 

 威力も対皇女様用にいつもより上げている。その分魔力を消費しているのだが、そうしなければ彼女の纏う魔力を突破出来ないのだ。

 

 五つの魔力結晶がリングを中心とした惑星のように移動しながら、魔法をばら撒く。皇女様は.......まるで大道芸ね。巧みに回避しているわ。相性を考え水弾からは距離をとり、炎弾は自身の炎で無効化し、金属の鏃と岩の礫は霊装で防ぐ。ただ、不可視の真空弾だけは多少被弾しているみたいね。

 

 

 

『おおっと!コレは去年の七星剣武祭でも見せた『賢者の石』!リング上が色彩に溢れております!実況を忘れて見とれてしまいそうです!コレを見せるということはやはり今日は本気なのかノーレッジ選手!』

 

『なんか、たーまやーって言いたくなるねぇ』

 

『西京先生、感想じゃなくて解説をお願いします!』

 

 

 

 皇女は現在頭上から降ってくる弾幕に意識をとられている。私は別に『賢者の石』の操作に必死という訳では無い。魔力結晶を動かすのは私の手動だが、弾幕発射自体はオートだ。だから、別の魔法を使っても、脳のキャパオーバーにならない。

 

「頭上注意とはよく聞くけれど、前方不注意というのは珍しいわね。スペル────水符『ベリーインレイク』」

 

 右手を回避に集中している皇女に向ける。その付近が淡い青色に輝き、そこから超高圧水流が彼女に向けて直線に伸びていく。その数五本。超高圧水流の為、見た目は細いが金属くらいなら軽く貫通する。

 

「────ッ?!《妃竜の羽衣(エンプレスドレス)》!」

 

 皇女様は足を止め、全身から炎を噴射する。膨大な魔力と炎の壁に弾幕は意味をなさず、超高圧水流も水蒸気へと状態を変えた。ただ.......

 

「弾幕ごっこで足を止めるのはあまり得策とは言えないわね」

 

 『賢者の石』に仕込まれたもう一つの魔法命令を発動する。先程までの弾幕をばら撒くとは違い、込めた魔力全てを用いた属性レーザーの照射。前方から超高圧水流、頭上からの五属性レーザー。それが皇女に叩き込まれる。水蒸気と砂埃がその付近を包み隠した。

 

「まぁ.......文字通り焼石に水でしょうけど」

 

 

 

 

 

『なんという怒涛の攻撃でしょうか!あのステラ選手が防戦一方!これが魔力制御全国トップクラスの本気の魔法戦!やる気さえあれば七星剣王さえ狙えるのではないでしょうか?!ステラ選手はここで初の黒星となってしまうのか?!』

 

『ハハッすげぇな。魔法戦に限ってはプロでも通用するんじゃねぇ?ただねぇ.......ステラちゃんはAランクなんだわ』

 

 

 

 

 

 それなりの魔力を込めた『賢者の石』が砕け散る。全ての魔力を使い果たし、役割を終えた。うん、このスペルも私の考え通りに施行出来た。何も問題は無い。

 

 煙が薄くなってくるが、未だにリング上の視界は晴れない。ただ結果はわかりきっている。答えは解説の西京先生が言った通り。目の前の皇女は魔力量が平均の30倍のAランク(化け物)なのだ。

 

 煙がすっかり晴れてそこに立っていたのは、いくらかのかすり傷程度しか負っていない皇女の姿。おそらく先程の《妃竜の羽衣(エンプレスドレス)》の魔力の薄い所は貫通したのだろう。ただ私が費やした魔力量と比較すれば全くもって割に合わない。

 

「わかっていた事とはいえ.......現実に見せられると心にくるわね」

 

 むしろこの皇女相手に血を流させただけでも予想以上の成果だわ。仮に彼女が自身の持つポテンシャルをフルで使えるようになれば、今の攻撃でも血の一滴も流さないのでしょうね。

 

.......それにしてもどうしてこうも謙虚な魔力の使い方をしているのかしら。貴女、そんなキャラでもないでしょうに。

 

「アンタの魔法はコレで終わり?なら次はコッチから行くわよ!」

 

 

 

 目の前から圧倒的な暴力が迫ってくる。月符『サイレントセレナ』は設置してあるけど.......まぁ、気休めよね。ただ、近づかれてはどのみち打つ手無いし。

 

「スペル────土金符『エメラルドメガリス』」

 

 私と皇女との間に宝石の柱を並べ壁を作る。このスペルは攻撃も出来るし、このように防御にも使えるし、汎用性が高いのよね。

 

「邪魔よ!!」

 

 その声とともに翠玉の壁は砕け散った。足を止めることもなく、振るわれた皇女の一撃によって。

 

 うん、そうよね。ここまでされるとおかしくなってくるわ。

 

 思考を切り替えましょう。この皇女様を満足させる事にシフト。それだけでも約束は守った事になるでしょう。見せかけの足掻き。どこで終わらせましょうか。

 

 

 皇女様との距離がさらに縮まる。ついに仕掛けていた。月符『サイレントセレナ』の範囲に踏み込む。下からの被弾と同時に何かしら追撃しようかしら。

 

「────ッ!やっぱりね!」

 

 彼女が『サイレントセレナ』を踏み抜いた瞬間、地面から光の矢が放たれる。同時に彼女は自身の魔力を身体の前方に噴射し、強制的に後方へ少し吹っ飛んだ。それによって光の矢は標的には当たらず、その先の天井を貫くに終わる。

 

.......馬鹿げてるわ。一度見せているとはいえ、あんな魔力の使い方で無理やり回避するなんて。

 

「なんて野蛮な.......」

 

「柔軟な発想と言ってちょうだい」

 

「ものは言いようね」

 

 これ以上無駄にスペルは撃ちたくないわね。私の中での価値観が崩れそうだわ。皇女(コレ)は例外中の例外よ。もう『ジェリーフィッシュプリンセス』も解除しましょう。

 

「ねぇ、皇女様」

 

「何かしら?」

 

「正直言ってもうコッチは打つ手無し。このくらいでお開きにしない?」

 

「.......アンタまだ何かあるでしょ」

 

「無いわよ。だいたい貴女の暴力を超えるなんて普通の伐刀者(ブレイザー)には不可能よ」

 

「《分身》でなければ使えない魔法.......だったかしら?それが最大火力なんでしょう?」

 

「あ.......」

 

 確かに言った気がする。あの時は皇女を納得させる為に言ったが、実際には使いたくないスペル。今の私が出せる、理論上最大火力ではあるのだが。アレは使いたくない。あんな酷い出来のスペル。

 

「今までのも確かに凄い魔法だったけど、《分身》を使うようなものでも無い」

 

「.......使えと?」

 

「そういう約束で認めていたのだけど」

 

「誰も幸せにならないわよ」

 

.......特に私が。

 

「へぇ、それはますます気になるわね」

 

 あの目絶対にもう曲げてくれないわね。この一度だけ我慢すれば私の書庫に静寂が訪れると思えば。本当に割に合わないわ。.......今日は久しぶりにワインでも飲もうかしら。

 

「あぁ.......もうほんと.......どうとでもなればいいわ」

 

 私は右手を実況席に向ける。私の今の技術では小さく軽いものしか動かせない《念動力》。先程の『賢者の石』にも使われたそれを実況席のマイクに使う。

 

 

『えっ?!ちょっと!私のマイクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ.............』

 

 

 宙をフヨフヨ漂い私の右の手のひらに収まったマイク。一度喉の調子を確認し口元に近づける。

 

 

『えー.......警告します。皇女様たっての願いにより、大変遺憾ですが私の最大火力の魔法を使う事になりました。この魔法の範囲は、おそらくこの訓練場全域。.......どんな被害が出ても責任はとりません。文句があるなら皇女様にどうぞ』

 

 

 私の警告に観客席がざわつき始めた。私はマイクを投げ捨て、右手の人差し指を天に向ける。その指先の一点に残っている魔力を徐々に集めていく。

 

「先に言っておくけど、嫌ならいつでも私を切り捨ててくれて良いわよ。むしろその方が私も嬉しいのだけれど」

 

「挑発のつもりかしら?当然受けて立つに決まっているでしょ!」

 

 皇女も大剣の霊装(デバイス)を天に掲げて魔力を纏わせ始めた。彼女の伐刀絶技(ノウブルアーツ)天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)》だろう。多大な魔力が目を焼くほどに輝く光剣へと変化していく。

 

 私に残るほぼ全ての魔力を頭上で球状に圧縮していく。それを熱と炎と光に変換しつつ、私の脳が持つぎりぎりのキャパシティを圧縮に費やす。拡散しようとする力を無理やり閉じ込める。それは限界まで圧縮しつつも徐々に徐々に大きくなっていく。

 

 

 訓練場は目を開けるのも辛いほどの眩い光に包まれた。

 

 

『お前ら!!巻き込まれたくなければココから避難しな!!』

 

 

 西京先生のマイクを通した避難命令が響く前に、多くの生徒は動き出した。全員が訓練場の出入口へと殺到する。

 

 

 訓練場に生み出されたのは、天井を貫く光の柱と目をつんざくほどの輝きを放つバランスボール大の光球。そのリング上に何故か西京先生は登った。

 

 

「いやぁ〜凄い。良いもんが見れそうだ」

 

「ネネ先生?!」

 

「あら、西京先生。貴女は逃げないのですか?」

 

「決着を決める監督役は必要だろう?」

 

 この人はまぁ大丈夫だろう。去年のオリンピック日本代表であり、KOKという伐刀者の格闘競技で東洋太平洋圏最強とされる《夜叉姫》。目の前の皇女と同じ、Aランクの魔導騎士。

 

 

「知りませんよ」

 

 

 そう、後のことなど私は知りようもない。なぜならこのスペルは解放と同時に、光球に詰められた魔力の制御を手放し暴走させる。私の支配下に置けないスペルなのだ。だからこそ私は使いたくない。こんな及第点にも到達していないスペルは。

 

 スペルを制御しきれないので、当然身の安全など考えられてなどいない。だからこそこれは最悪使うにしても《分身》を通す必要のある……要は盛大な自爆魔法なのである。

 

 

 

「私の鬱憤と共にはじけ飛ぶがいいわ!

 

未完成スペル────日符『ロイヤルフレア』!」

 

 

「《天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)》!!」




爆発オチなんてサイテー

正直このパチュリーはっちゃけさせ過ぎ.......?投げやり気味って事で。
原作より愛読している二次創作のパチュリーに引き摺られているのはしょうがない。

東方なら苦労人ポジションが好き。1番好きなのは萃香(支離滅裂な思考・発言)
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