ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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戦兎「ロキとの戦いが終わり、また平穏を味わっていた俺達……まぁ今回はエンドロールってやつですよ」
龍誠「メタいな!」
匙「しかしなんだか最近お前ら平和の合間に事件って言うより事件の合間に平和を少し味わうって感じだな」
戦兎「それ俺も最近少し気にしてるんだけど……」
ヴァーリ「つうわけでそんなつかの間の平穏な57話スタートです」
戦兎「俺の台詞を!」



修復

ロキとの決着から数日後。戦兎達は暫く戦いの興奮が続いたままだったものの、ようやくのんびりとした生活に戻れつつあった。

 

今回の戦いはそれくらいヤバイ戦いだった。今振り返っても、背筋が冷たくなる。

 

それでも全員無事と言うのは出来すぎなくらい出来た結果だ。しかも、匙は遂にスクラッシュドライバーを克服。更には謎の強化と言うオマケ付きだ。まあこの強化は、アザゼル曰くヴリトラのが関係してるだろうとのこと。

 

ただ問題もあった。一つは戦いの決着の直後、ヴァーリチームの皆が姿を消した。いや正確にはヴァーリチームと、フェンリルの姿がなかった。これもアザゼルの言葉だが、恐らくヴァーリ達はこのフェンリルを手にいれるのが目的だったと思われるらしい。何か良い感じに使われた気もしなくもないが……

 

因みにスコルとハティは、現在何重にも封印処置が施された後、一時的に冥界が預かり、その後北欧に送り返されるとのこと。

 

そしてもう一つ。それは戦いのすぐ後にバラキエルが倒れ、生死の境をさ迷う事態に発展。すぐさまアーシアの回復と小猫の仙術治療が行われ、そのまま冥界側が裏で管理する、悪魔や妖怪などの人外専用の病院に緊急搬送。

 

その甲斐あってか、何とか無事生還して意識が戻ってからは、味は良いが病院食は量が少ないとぼやいていた。

 

とは言えそんなことがあったものの、現在は暫く戦闘行為は禁止だが普通に歩けるし、元気一杯といった感じだ。

 

そして今日。バラキエルは堕天使の本拠地に帰る。幹部であり、今回の戦いに参加した彼には山のような書類が待っている。

 

「ふぅ……」

 

思わずため息が漏れた。やっと怪我も良くなったのに、これでは別の意味で倒れそうだ。

 

とは言え文句をいっていられる場合でもない。何せ堕天使の陣営はそもそも変人が多く、ちゃんと書類仕事ができるやつが少ない。バラキエルは基本的に真面目な性格なので、数少ないちゃんと書類仕事が出来る。つまりこんな病み上がりの奴でも、居ない日が続くと組織が回らないのだ。

 

なので、気は重いがとっとと行こう。そう思いバラキエルは先日まで入院していた病院を出る。すると、

 

「あ、朱乃?」

 

そう。バラキエルが言うように、病院から出るとそこには朱乃がいた。手に荷物を持ち、視線を逸らしているが確かに朱乃だった。

 

元々彼女が病院に足を運んでいたのは聞いていた。だが結局最後まで病室に来ることはなく、心のどこかであり得ないと思いつつも見舞いに来てくれるのでは?と期待してなかったと言ったら嘘になる。

 

そんな彼女が目の前にいる。それに対してバラキエルは喜びよりも驚きや困惑の色が強かった。そんな彼に朱乃は、

 

「これ」

「む?」

 

短くそう言ってバラキエルの胸に巾着袋を押し付ける。

 

「それじゃ」

「え?あ、朱乃!」

 

何ですか?と朱乃は振り替える。呼び止めたのは良いものの、バラキエルも何を言うのか悩む。悩んだ結果、

 

「い、いや……風邪に気を付けるんだぞ?」

「はい」

 

朱乃はそう言い、そのまま去ってしまう。バラキエルは一息吐き、近くのベンチの座ると巾着袋を開けてみる。そこにあったのは弁当箱と、一枚の手紙だった。それを見てみると、

 

《拝啓・バラキエル殿。この手紙を貴方が見ていると言うことは、無事私が作ったお弁当を渡せたと言うことでしょうか?それは何よりです。アザゼル先生に聞きました。怪我が快方に向かったばかりだと言うのに、もう仕事に戻らなくてはならないとか。せっかくとりとめた命だと言うのに、それではまた倒れてしまいます。なのでせめて栄養を着けて欲しいと思い、お弁当を同封させていただきます。これを食べて、職務にお励みください。追伸・弁当箱はきちんと洗ってから返しに来てくださいね……》

 

お父様。と締められた手紙だ。その手紙を見ながら、バラキエルはボロボロ泣いていた。何年ぶりだろう。父と呼ばれるのは……こんなにも嬉しいものだったのか。

 

すっかり忘れかけていた感情だ。それに弁当箱を返しにと言うことはまた会いに行っても良いのだろうか?

 

自惚れではないよな?とバラキエルは思いながら朱乃のお弁当をいただきますと言ってから早速食べる。

 

妻の……朱璃と同じだ。彼女の味は、きっちり娘に受け継がれていたらしい。

 

「御馳走様でした」

 

食べ終えたバラキエルは手を合わせ、それから立ち上がる。すっかり元気が出た。今なら幾らでも書類を片付けられそうな気分で、バラキエルは帰路に向かう。

 

一方その頃、大仕事を終えたような表情で朱乃はすっかり今ではもう一つの自宅になった龍誠達と住んでいる屋敷に帰ってくると、

 

「うぇえええええん!あのくそじじいいいいいいいいい!」

 

と、リビングで大泣きする声が聞こえる。泣いているのはロスヴァイセで、何でもあの戦いの事後処理やらなんやらでバタバタと彼女が働いている間に、なんとオーディンは一人で帰ってしまったらしい。と言うか、多分と言うかほぼ間違いなく忘れられたとのこと。あれだけ口喧しく言われていた彼女を忘れるというのは、無意識に記憶の彼方に追いやったんじゃなかろうか……

 

「今さら帰っても先輩達にオーディンだけ帰して何今になって帰ってきたんだって言われる……折角やっと安定した職につけたと思ったら部署が縮小されて窓際部署になってるし給料は少ないしサービス残業当たり前だし社保何て当然無いしなのに仕事だけはキツいしお局多いし出会い皆無だから彼氏も出来ないしいいいいいいい!」

 

と、ギャンギャン泣きながらロスヴァイセは大騒ぎ。最初は笑う余裕もあったロスヴァイセの不運劇場だが、最早周りで見ていた戦兎達も同情してきた。と言うかヴァルキリーってブラック企業なんだと思うと、色々夢や希望がなくなってくる。

 

だが何時だったかオーディンが言っていたが、元々ヴァルキリーは勇者を見出だし、それを導く者。だが昨今勇者はすっかりいなくなり、その過程で子を為していくヴァルキリーは必然的に出会いは激減し、仕事も雑用や書類仕事が主になってしまったらしい。

 

そんな不運な彼女の元に、リアスはスススっと近づくと、

 

「なら貴女にいい話があるのだけど?」

「ふぁい?」

 

鼻水と涙で美人が台無しな彼女(多分彼氏が出来ないのは出会いがないだけじゃくてこう言う色々残念な所も理由だと思われる) が顔を上げると、リアスは多数の書類を見せる。

 

それはリアスが戦兎と龍誠に初めて会って、見せてくれた待遇などが書かれた書類で、

 

「えぇ!こ、こんなに待遇が!?それに保険も!?」

 

戦兎たちにとっては普通だが、ブラック企業で働くロスヴァイセにとってはかなり驚きの待遇らしい。これではどっちが悪魔かわからないなと思っている間に、リアスは持ち前のセールストークでどんどんロスヴァイセを口説き始めた。

 

「更にここはこうで……」

「えぇ!そんなことも!?」

 

成程これが悪魔の誘いって奴かと戦兎は感心する。まぁ何れ自分も上級悪魔になれば、眷属を集めなければならないので参考になるが。

 

「と言うわけで、どうかしら?うちの眷属になれば将来の安定も約束するわよ?」

「なります!ならせていただきます!」

 

そして十分もしないうちに、見てて気持ちがいいほどあっさりロスヴァイセは陥落した。

 

いやまぁ、うちのチームは若干近接よりが多いので、ロキ戦でも見たあの魔術による遠距離攻撃は心強い。

 

何て思っている間に、ルークの駒でロスヴァイセは転生。さっきまでの低い天使ジョンはどこへ行ったのかと思うほどのハイテンションである。

 

「あ、朱乃さんおかえりなさい」

 

そこに龍誠が朱乃の帰宅に気付き駆け寄ってきた。

 

「渡せましたか?」

「えぇ」

 

バラキエルお弁当を私に行くと龍誠には伝えていたので、朱乃は頷きながら笑みを浮かべる。

 

「お腹はすいた?」

「えぇ、もうペコペコですよ」

 

じゃあすぐに作るわね。と朱乃は準備に取りかかる……前に、

 

「龍誠」

「はい?」

 

朱乃に声を掛けられ、龍誠は振り替えると、

 

「ちゅっ……」

『あぁ!』

 

いきなりのキスに龍誠は固まり、周りの女性陣が悲鳴をあげる。

「待っててね。腕に寄りをかけて作るから」

 

と朱乃が言うが、正直その前に部屋の凍りついた空気と、リアスとアーシアとゼノヴィアが怖い。なので龍誠はソッと戦兎を見るものの、

 

「面倒見きれるか」

 

そう言って戦兎はギャスパーを連れて部屋を出ていってしまい、小猫もその後ろを着いていく。

 

そして祐斗は優雅にお茶を飲みながら、困惑しているロスヴァイセを見て、

 

「何時ものことですから大丈夫ですよ」

 

といった次の瞬間女性陣達の龍誠の取り合いが勃発。あっちこっちに引っ張られ揉みくちゃにされ、龍誠は思う。

 

(ハーレムは男の夢って言うけど全然そんなことねぇ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……と。これでフェンリルは言うことを聞く筈ですよ。ヴァーリ」

「そうか」

 

某所にて、アーサーの所持するエクスカリバーの力である支配の力により、従順になったフェンリルをヴァーリは見る。

 

「だけど良いのかぁ?その犬っころあの匙とか言うやつに負けてたじゃねぇか」

「なに、あれはアイツの能力とフェンリルの相性は悪かったのもあるし、なにより一発で逆転が狙える牙と爪があるなら十分すぎる」

 

この牙ならあの男にも……そんなヴァーリの呟きに美猴は、

 

「なぁヴァーリ。そろそろ禍の団(カオス・ブリゲード)抜けちまってもいいんじゃね?お前の探してる男は居ないみたいだぜ?」

「そうだな」

 

そう頷きながらヴァーリは立ち上がる。未だ見つけられない……影すら見つからない。だが必ず見つけてみせる。そう心に新たに誓い。ヴァーリは仲間達と共に闇に消えていく。

 

一方その頃駒王町には、

 

「……」

 

大型のバイクを駆り、一度止まると大柄の男が地図を広げる。それから、

 

「ここが駒王町……」

 

渋い声音の老年と思われる男は、地図を畳みながらバイクをまた走らせる。そして静かに……だが確固たる意思を持って声を発した。

 

「ショッカー最後の負の遺産……必ず見つけて処分しなくては」

 

彼を誰も知らない。一人で戦い続け、歴史に記されることなく生きた英雄の名前を。

 

だが彼を都市伝説で呼ぶ者はいた。悪を許さず、人々の平和のために戦う正義のヒーロー。

 

【仮面ライダー】……そう呼ばれる存在を。




次回は第8章……本来原作で言うと短編集なのですが、これでは特別編を書きます。今回の最後で分かった方もいるかもしれませんが、下記にPVっぽい次回予告的なのもあるので、楽しんでいただければ……

でも実はその前に7.5章と銘打って蘇らない不死鳥編書きますけどね?

【次回予告】

ロキとの戦いを終え、近々くる修学旅行に胸を踊らせる戦兎達。だがそこに突然謎の怪物達が現れる。そしてそこに現れたのは、伝説の仮面ライダー!?

戦兎「ショッカー?」
???「そうだ。昔暗躍した悪の秘密結社。その最後にして最悪の遺産がこの地に眠っている」

男から語られるショッカーと言う名。そして現れる最凶にして最悪の敵を前に、仮面ライダービルドこと桐生 戦兎と、原点にして最強の仮面ライダーが手を組む!

第8章・始まりのファースト編、その内更新。

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