バカとテストと召喚獣 ~僕はこの歪んだ運命に抗い続ける~ 作:天沙龍月
ちょっと今回の話は悩みまして時間がかかってしまいました。
後、UA5,500以上、お気に入り45件ありがとうございます! 感想も書いて頂いて……!
感想にも書かれていたのですが自分はこの作品の前に一度バカテスのSSを書いているのですが、そちらは最後まで書けず断念してしまいましたが今回は最後まで書きたいと思いますので応援よろしくお願いいたします!
では本編をどうぞ!
明久 side
other side
ナレーション変わって週末。カップ麺職人の朝は早い。
other side out
パンッ!
僕はカップラーメンの麺を半分に切った。
「こっちが夕食で~こっち……はっ! 最初は半分に切って片方を食べ、次は残りの半分を切って片方を食べる……その次も切って片方を食べるって繰り返せば一つのカップ麺を永遠に食べ続けられるじゃないか……。僕って天才かも……?」
other side
色んな意味で満喫していた。
other side out
僕は自宅でもバカの演技をしていた。あまりオンオフを切り替えると自宅で演技をしなければならない時に演技が出来なくなるからだ。ただオンオフは自分で切り替える事は出来るので関係性はあまりないけどね。
さて、今日は姫路さんたちとのお出かけか。だけど、これはデートとかではない。そう自分に言い聞かせながら昨日はあまりよく眠れなかったがそこまで眠気があるためでもないので大丈夫だろう。
僕はあまり目立たない服で、それでいてそこまでダサくない服を選んで待ち合わせの噴水前に向かっていた。そこまで目立ちたくもないし、姫路さんたちとの用事の際に他の学園の生徒に見つかる事は避けたいのでこの服装にした。
さて、そろそろ始めるか。
「そうは言っても無駄遣いはできないよな~……。」
僕は財布の中を見ながらそう言った。
「待てよ? よく考えたら、女の子と映画に行ったりクレープ食べたりするのって……デートなんじゃないか? そうだよ! これはデートだよ! 罰ゲームなんかじゃない、それならちょっとやそっとの出費平気じゃないかぁ~!」
僕は小躍りをしながら歩く。まぁ、内心ではデートじゃないと訴えているけどね。そうじゃないとたぶんアレが来ちゃう。アレとは精神的な頭痛の事だ。今日はあまりあの痛みは感じたくないものだ。
「あ、姫路さん……! あっ! あれは……、」
前を見ると少し奥の噴水に姫路さんがいた。綺麗な服装だなぁ、女の子っていつもおしゃれだよね。そして姫路さんの手には手紙があった。あの手紙は前書いていたものか? 何で今日持ってきたんだろうか? 女の子はよく分からないなぁ。一応、演技はしておくか。
僕は地面に膝付き、項垂れる。
「やっぱり……罰ゲームじゃないか……。」
「何やってるの? アキ。」
「うん?」
後ろから声をかけられ振り向くと島田さんがいた。それもこっちもおしゃれな服を着ていた。僕ももう少しおしゃれな服を着て来るべきだったかな? まぁ、いいけど。島田さんも暴力を振るわなければ普通に可愛い子だと思うんだけどなぁ~。
「人生の不条理に打ちのめされてたんだよ……。」
「あ、吉井くん……!」
「おはよー、瑞希。その服可愛いねぇ~」
僕の声に気づいた姫路さんがこちらを見る。僕と島田さんはとりあえず姫路さんの近くの噴水まで歩いていく。
「ありがとうございます……! だけど服を選んでいたらうっかり遅刻しちゃうところでした……」
「ウチもさっきまで何着て来るか迷ってたんだけどね~。去年のブラウスがまだ着れてラッキー♪」
やっぱり女の子って服とかに時間をかけるんだなぁ。男とはやっぱり違うなぁ~。
「それはつまり去年から全然……膝の間接があらぬ方向に曲がろうとして……え!? 何々~!?」
「言いたいことは分かってるから、いいの~!!」
「ロープ! ロープ!」
わざと島田さんを挑発して間接技をかけられる。まぁ、ここでちゃんと演技しておかないとおかしいと思われるかもしれないからね。島田さんに元祖サソリをかけられながらも僕は演技を続ける。すると、
「見え……見え~」
「何でムッツリーニがここに!?」
「自主トレ」
ムッツリーニがカメラを構えてどこからともなく現れる。やっぱり居たのか。僕がここで演技をした事でムッツリーニが出てくる。これが大事なんだ。ムッツリーニがここにいるという事は僕の状況を撮ろうとする事だ。まぁ、それによって僕や茜さんに負担がかかるとも言えるが。これによって茜さんはムッツリーニに気づく。
すると、僕の情報の操作も強いものになる。ムッツリーニは情報に手が届きにくくなる。だから守られる。
少しして僕は間接技を完全に決められた後、解放され映画館へと向かった。
「吉井くんは何を見たいですか?」
「今日はアキが撰んでいいよ。」
「僕が!? 値段はどれも同じなんだよな~それじゃあ長い方が良いかな?」
「雄二、何見たい?」
突然僕らの声ではない声が聞こえて後ろを振り向く。すると可愛く服を着こなした霧島さんと木製の手枷をかけられた雄二がいた。霧島さんたちも今日来てたんだ。
「俺の希望は叶えられるのか?」
「じゃあ、戦争と平和。」
おぉ、霧島さんいいチョイスだなぁ。雄二の言ったことが映画のテーマになってる良い映画だ。ただひとつ問題があるんだよな~あの映画。
「おい! それ7時間4分あるだろ!」
「二回見る」
「14時間8分も座ってられるか~!」
雄二がもの凄く反対している。そう、あの映画とても長いのだ。いい映画なんだけどその分、尺が長いのだ。まぁ、時間の使いかたは人の自由だから僕は何も言わないが……。
「退屈なら……隣で寝てて良い。」
「それって! あぎゃあぎゃ!!」
「大丈夫、一緒にいるのは一緒だから。」
「の、ノーモア!!」
霧島さんが雄二に前と同じスタンガンを当てる。あれって結構電圧高いはずだけど……大丈夫だろうか? 雄二が完全に落とした後、霧島さんは受付に行く。
「学生2枚、二回分。」
「はい! 学生1枚、また気を失った学生1枚、無駄に二回分ですね?」
そして受付の人が前の人と同じで全然物怖じせずに注文を繰り返していた。あの人本当にすごいなぁ。
「はっきり気持ちを伝えられる人って羨ましいです……!」
「憧れるよね~……!」
「短いのにしよ……映画。」
姫路さんと島田さんは霧島さんに感動している。だけど、姫路さんたちにはあんな風になってほしくないなぁ~。あんな風にして良いのはまだ霧島さんが純粋でアプローチに仕方が間違っていると自覚していないからだ。
そして、僕らは短い映画を見て、その後ラ・ぺリスという喫茶店に来ていた。
「アキは本当に食べないの?」
「美味しいですよ?」
「い、いや! 実は僕、食べ物にうるさくてね……クレープはちょっと口に合わないんだよ……。」
クレープを姫路さんと島田さんが食べている。島田さんたちは僕がクレープを食べないのかと聴いてきたが僕は演技のため遠慮していた。まぁ、クレープ自体あまり好きではないのは事実であるが。
そういえば、映画を見ている時は頭痛はしたが倒れるほどではなかった。もしそうなっていたら僕はそのまま倒れていた事だろう。それはかなりまずいので倒れることにがなくて良かった。
「ウチのバナナクレープ多いからどうぞって食べて貰いたかったのに」
「え!?」
「私のストロベリークレープも一口食べてみてほしかったのですが……」
「えぇ~!?」
自分ながら良い演技だ。端から見れば僕はただの男子だろうな。本当はひどい頭痛に襲われているのだが……これは本当にマズイかもしれない。もう少しで倒れそうだ……。こんな話し方じゃ全然伝わらないと思うが普通の人ならすぐに倒れてしまいそうなぐらいの頭痛なのだ。島田さんたちは意識してやっているのか分からないがこんなこと即刻やめて倒れてしまいたい。
「口に合わないんじゃ仕方ないわね」
「そうですね……」
痛い、イタイ痛い!! やめろ、やめてくれ! そう言いたいのを抑え、悔しそうな演技をする。自分でも意識していないのに演技ができるのは今までの成果だろう。それが今は役に立っている。島田さんたちがどんな表情をしているか目が滲んで分からない。
「ちょっとだけ食べてみない?」
「え? しょ、しょうがないなぁ~」
「よ、吉井くん! 私のも食べてください!」
「え!? こっちが先よ!」
「先とか後の問題ではないと思います!」
な、なんだ? 一体なにが……? 島田さんたちは僕にもしかしてあーんをしようとしているのか!? もう頭痛がひどくて視界がぼやけて……なにも見えない……。
「「はい、あ~ん!!」」
「あ~……「いけませんお姉さま!!」」
それでも僕の身体は演技を続けようとほぼ自動的に動く。しかし、そこに誰かの声が聞こえて何かが起こった。この声は確か……
「ひどいです! お姉さまの甘い甘いクレープをフォークごと薄汚い家畜に与えるなんて……美春ゆるせません! これ以上豚が図に乗って狼藉を働かないよう!「豚~?」 ここで成敗します!」
Dクラスの清水 美春さんだ! 彼女は確か……島田さんに想いを寄せている子だっけ? 頭が回らない……。だけどこれは助かった! 清水さんが僕に襲いかかって来る以外は。
「僕!?」
よく頭の回らない身体でなんとか清水さんが投げてくるフォークを避ける。清水さんのおかげで少しははっきり見えるようになったので避けるのは楽勝だ。そのまま僕は急いでクレープの代金を出しながら、お店の出口に走る。清水さんは僕を追ってきた。
「待ちなさい豚野郎!」
「ひぇ~~!!」
お店を出てからも清水さんはフォークを投げてくる。どこにあんなにフォークを持っているのだろうか? 軽く十何本は投げて来ているんだけど。
他の人に当てないようなるべく人のいない場所でわざと隙を作り清水さんに投げさせ、それを避ける。僕に当たるか清水さんのフォークがなくなるかの勝負だ。
しかし、僕もまだ完全には頭が回りきらず何度か隙を作る間に集中力が切れてしまう。
その時に、誤って人のいる所にフォークを投げさせてしまう。まずい!
「!」
しかし、フォークが刺さったのは人ではなく咄嗟にその人が盾代わりにした参考書だった。危ない。あの状態の清水さんは見境がないから人に近づけてはいけないな。そんなことを思っていると走っている身体を止めようとブレーキをかけようとするが思ったように身体が動かない。このままだとぶつかる!
「うわぁ~! どいてどいてどいて!」
ドッ!!
鈍い音と共に人とぶつかってしまう。その時に持っていたクレープをその人の顔面にぶつけてしまった。これは後で謝らないと。だが今はとにかく逃げないと。
「あ、クレープが! 30秒以内……う、うわぁ~!!」
「待ちなさい豚野郎!」
「待ちなさい美春~!」
「待ってください皆さん!」
僕の後ろから清水さんが、その清水さんの後ろから島田さんが、そして最後に何がなんだか分からないが追ってきた姫路さんが走るという変な構図ができた。何とか清水さんを鎮めないと。
その後、なんとか清水さんを振り切り島田さんたちと近くの公園で合流できた。
「どうして僕がこんな目に~!?」
「あの子は特別だから~!」
「特別~?」
島田さんにとって清水さんは特別? どうしてだろうか? もしかして島田さんって清水さんと……? そんなことを考えながら走っていると見知った顔と出くわした。
「おぉ~、明久。何をしておるのじゃ?」
「秀吉! こっちに!」
その時、ちょうど後ろから清水さんが走ってきていたのですぐ近くの草むらに秀吉を抱え、飛び込んだ。
「豚野郎~! どこへ行ったのです!? お姉さまに家畜の臭いをつけようものなら火炙りにしてやります!!」
僕たちが隠れている近くでそう叫ぶ清水さんの気迫がこっちまで溢れてきている。
「ひぃ~~!!」
「なんでウチを避けるのよ!」
その声で反射的に島田さんから離れてしまう。あんな殺気に満ちた声で言われたら誰でもそうなるだろう。島田さんは困ったような表情をしている。
「いや、火炙りって言うから……」
「よく分からんが……お主たちは追っ手から逃げておるのか?」
「そうなんだ。何か逃げ切る良い方法はないかな? せめて僕の召喚獣が使えればいいんだけど……」
秀吉が大体状況を理解してくれたようで良かった。ただ秀吉は一緒に逃げなくてもいい気がするが。しかし、今の清水さんは何をするか分からないので逃げた方が安心か。
そして、召喚獣が使えれば姫路さんが圧倒的点数をとっているため、清水さんはほとんど確実に補習室に行くことになるだろう。この事に僕以外の誰かが気づけば……
「学園を離れると、召喚システムが使えないんですよね……」
「う~ん……」
「そうじゃ、ちょうど今演劇の衣装を持っておる。これを着て変装するのはどうじゃ?」
「え? 変装?」
それは良いアイディアかもしれない。ただその衣装が男性用の物ならだが……たぶんそうじゃないんだろうなぁ……。僕は諦めながら秀吉が持っている衣装に袖を通した。
結果から言うと秀吉の持っていた衣装というのはメイド服だった。やっぱりそうか……だと思ったんだよ……。
「って……男物じゃないの……?」
「部員がワシ用じゃと渡しておったのでてっきり男物じゃと思ったのじゃが……」
「秀吉用じゃ男物の訳ないじゃん!」
秀吉が似合っているのは良いんだけど、僕も地味に似合っているのが悔しい……!
「なんだかすごくかわいいですぅ……けど」
「なに? この敗北感……」
「困っちゃうんだけど~!」
「「うぅ~~!!」」
島田さんたちが僕を見て唸っている。女の子にそんな目で見られるとなんというか変な感じだな。ていうか絶対この声で清水さんにバレてるよね、これ……。
「見つけました! はぁ~!! 大人しく……、なんですかその格好……?」
そんなことを言っている間に清水さんが声を聞き分けてこっちに向かってきた。しかし、僕の格好を見た瞬間引いた目で見始めた。
「見ないでよ! 答えにくいから!」
「不潔です! 不純です! 女の格好をすれば好きになってくれると思ったら大間違いです!」
「いや、君が大間違い……」
僕は別に島田さんの事そんな風に思った事ないし、なりたいとも思っていない。なので素の声で答えてしまった。
「ウチは普通に男の子が好きだから……」
「神聖な美春たちの仲を冒涜する豚め……! 決して許しません……!」
島田さんが少し呆れながら答えるが、清水さんは耳に入っていないようでこちらにまたフォークを構える。あのフォーク、本当にどこから出しているんだろうか? 清水さんは特殊な訓練でも受けているのだろうか?
「何で、そうなるの~!!」
「逆効果じゃったか……。」
清水さんがまた僕の元に走り始め、僕は一目散に走り出す。島田さんたちも僕の後を追って始める。秀吉だけがそこに置いてきぼりになってしまったが、清水さんは秀吉に目もくれないで僕に向かってきたので良かったのかもしれない。
あとで僕の服を取りに来ないと。……密かに追って来ていたムッツリーニの写真も処分しないと。
また町中に戻り、少しずつ学園の方に向かう道に清水さんを誘導しながら逃げている。
「どうしよう!? まだ追ってくるよ~!?」
「仕方ないわ、三方に分かれて逃げましょ!?」
「それって僕だけ標的になるってことじゃ!?」
島田さんが恐ろしいことを言ってくる。だけど、考え方を変えれば島田さんの方に行くかもしれない。もしかして島田さんは自分を犠牲にして守ろうとしてくれてるのか?
「そうだ! 良い考えがあります! 文月学園へ逃げましょう!」
「「学園へ!?」」
そう、そうだよ。姫路さんがようやく気づいてくれた。学園に行けば召喚獣が使えるし先生もいる。どうにでもできるのだ。僕たちは学園へ急いで逃げた。
そして、学園内に入り先生を探す。廊下を探していると竹内先生がいた!
「いた!」
「竹内先生は現国よ! ウチ、全然戦力にならないんだけど……!」
「今は贅沢を言ってる場合じゃない!」
竹内先生に追い付き、そこで息を整える。島田さんの懸念はわかるが姫路さんの召喚獣の攻撃を一撃でも受ければDクラスレベルなら勝てるだろうから僕たちは清水さんの攻撃を避けるだけで良いはずだ。それにDクラスはまだ試召戦争をしていないからあまり召喚獣の扱いに慣れていないはず。
「竹内先生、模擬試召戦争をやりたいんですけど……!」
「え? あ、はい♪ 承認します!」
竹内先生の一声で召喚フィールドが発生する。
「よしっ! 試獣召喚!」
「試験召喚獣! 試獣召喚!」
「試験召喚獣……! 試獣召喚!」
僕たちの召喚獣が無事に召喚される。そこに清水さんが追い付いて召喚フィールドに足を踏み入れた。
「あぁ……! ひどい……! 私の愛を邪魔する気ですか? 試獣召喚!」
清水さんの召喚獣も現れた。よし、これでどちらかが負けるまでこのフィールドは出られない。僕たちは召喚獣にフォーメーションを取らせながら清水さんの召喚獣に迫る。
「姫路さんの召喚獣がいれば怖いものなしだ! この勝負、勝てる!」
「清水さん、ごめんなさい!」
姫路さんの召喚獣が清水さんの召喚獣に攻撃しようとした時、
「そうはいきません!」
清水さんの召喚獣は大きくジャンプをし、姫路さんの召喚獣を飛び越え向かったのは……
「ウチに!?」
島田さんの召喚獣だった。島田さんは一瞬のことで硬直してしまい、まともに清水さんの召喚獣の攻撃をうけてしまう。点数が全然なかった島田さんの召喚獣は一撃入れられただけで0点になってしまった。
しかし、そこで安心してしまった清水さんの召喚獣は後ろから迫っていた姫路さんの攻撃を受けて0点になってしまう。
「0点になった生徒は補習ぅ~~!!」
そして、どこからともなく現れた西村先生に島田さんたちが補習室に連行される。島田さんたちは肩に抱えれ逃げられないように拘束される。
「えぇ~~!! 今日はお休みなのにぃ~!!」
「美春はお姉さまとなら鬼の補習も天国です♪」
島田さんは必死に暴れるが西村先生の力に負けて全然効果がない。清水さんは全然嬉しいそうだけど。
ふと、西村先生が足を止める。
「……吉井。お前、目覚めたのか?」
聞かれるかもと思っていたが女装のことだろう。これには複雑な理由があるため、ひとえには言えないので後で弁明しておこう……。
「ん? ん? 誤解です!!」
西村先生は何も言わず、そのまま行ってしまった。
「吉井くん、ちょっと屋上にいきませんか?」
「ん? うん、いいよ。」
姫路さん、屋上に何か用があるんだろうか? 僕と姫路さんは屋上へと向かった。
屋上に行くともう夕方になっていた。清水さんとまさかあんなに走り回るとはなぁ~。僕はなんだかホッとした。いや、してしまったのだ。
痛みは忘れたときにやってくる、とはよく言ったもので喫茶店での頭痛がまた始まる。頭に細い針を何十本、何百本も突き刺されるような痛みが広がり何も考えられなくなる。
安心したから、してしまったからまた始まったとでも言うのだろうか。目もまた滲んであまり見えなくなり、今度は耳にも影響が出始めた。疲れからか、症状がひどくなっている。
「……ぁ~、つか……。」
「で……ね。みな…………ぶじで……ょうか?」
姫路さんの声も自分の声すら断片的にしか聞こえない。これは本当にまずい……!
「……さ……はよ……で……も……。」
「よし……く……、き……はす…………ごめん…………。」
ごめん? 一体姫路さんは何を……? 目も滲んでいるので表情も分からない。
「ご……してし……で……、す……たのし……です。」
「ぼ……もた…………か……よ、ひめじさん。」
うん? 僕は何で姫路さんの名前を……?
「や…………よしいくん……やさ…………で……よ。小学生の頃から。」
「え?」
小学生の時から何なんだ? 大事なところが上手く聞こえない。
「ふりわけ…………も、わた……が……ちゅ…………。」
「でも…………ほん…………たい……かん…………。」
やばい。意識が薄れてきて、声が……。
気がつくと僕は帰り道を歩いていた。メイド服ではなく家から出る時に着ていた服を着て。一体どういうことだ? 僕は回らない頭で何とか思考をしようとするが全然考えが纏まらない。
とにかくマンションに帰ろう。そう思い、歩く。幸いマンションまでもうすぐだったので数分で自分の部屋に着いた。
ドンッ!
しかし、部屋の扉を閉じて一歩部屋に足を踏み入れると同時に僕は倒れ込んだ。
「……あれ? おか、しいな……」
あの頭痛に加え、町中を何時間も全力で走ればこうなるか。精神的にも肉体的にも限界だったのかもしれない。
ただこのまま倒れてはいつ回復するかも分からない。せめて、誰かに連絡をしよう。
そう思いスマホを起動させ、連絡できそうな人を探す。すると、ようやく見つけた。早速電話をしてみる。
『もしもし? どうしたの?』
「……茜さん。……ちょっと、無理しちゃって……」
電話した相手は茜さんだった。茜さんは一応僕の護衛だし、昔からの知り合いだから信頼できると思ったからだ。
『分かった。またあの頭痛でしょ? ただ私、今ちょっと動けないから他の人を送るから。ちゃんとじっとしててよ?』
「うん、分かった……」
『ちょっと? あきくん?』
僕は安心したのかそのまま通話終了のボタンも押さずに気を失ってしまった。
はい、お疲れさまでした。
今回結構気になることがあると思いますが、それは質問していただければお答えいたしますので気軽にご質問ください!
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それではまた次回、お楽しみに!