バカとテストと召喚獣 ~僕はこの歪んだ運命に抗い続ける~ 作:天沙龍月
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檮原さんも誤字報告ありがとうございます!
では、本編をどうぞ!
茜side
私は活動拠点の一つであるホテル一室で、昨日のイギリスの特殊工作員の件の後処理をしていた。まぁ、侵入経路や特殊工作員の素性は割れていたりしていたのであまり処理も少なかったけど。
私は一息入れるため、コーヒーを自分で淹れて飲む。ここには私以外いないため、頼むことも出来ないし自分で淹れたい派なので別に良いけど。そんな時だった。
ブーッ ブーッ
私のスマホに着信があった。かけてきた相手の番号を見て通話ボタンを押した。
「もしもし? どうしたの?」
『……茜さん。……ちょっと、無理しちゃって……』
かけてきたのはやっぱりあきくんだった。しかし、何か様子がおかしい……? もしかして……またあの頭痛かな?
「分かった。またあの頭痛でしょ? ただ私、今ちょっと動けないから他の人を送るから。ちゃんとじっとしててよ?」
『うん、分かった……』
「ちょっと? あきくん? あきくん、大丈夫!?」
まさか気を失った? 電話してきた時から様子がおかしかったし、気を失うほどのショックがあったっていうのは確か。だけど問題はその理由……、今日もあきくんには護衛が付いていたはずなんだけど連絡がないって事は外見には全然症状を出していなかった?
だとすると、考えられる事は二つ。まず一つ目にあきくんが自分で症状を出さないようにしていた。もしくは家に帰ってから突然症状が現れたかの二つだけど……、一つ目の可能性が高いかな。
あきくんは学園でも演技を1年間してバレていないし、プロの私から見てもすごい演技力だと思うしね。まぁ、そのせいでこっち側の人もあまりあきくんの素顔を分かっていないんだけど。それなら、変化に気づけなくても当然だと言えるかな。
「だけどチャンスでもある、か。」
この状況においてのみ試せる事もあるから。もし、これが失敗すればあきくんの記憶が戻す手はないかもしれないけどね。
私はある番号に電話をかけた。
茜side out
明久side
目を開けると目の前は真っ暗だった。いや、本当に僕が目を開けているかは分からないがそういう感覚はあった。
足もちゃんと地面に着いている感覚もあり、少し歩いてみる。視界がゼロであるため、危険であるとも言えなくもないがそんなことも頭がまらなくなっていた僕はそのまま歩いていた。
「……」
少し前に進んだいくとだんだん周りの景色が見えてきた。
この前の夢の時のような夕方の通学路に僕はいた。ふと、右手に温もりを感じて右隣を見るとまた茶髪の少女がいた。それが僕には嬉しかったようで表情筋が緩んでくる。その少女も嬉しかったようでこちらに笑顔を向けてくれる。僕はまたそれが嬉しくてもっとにやけて来ているようだ。
しかし、急に少女は暗い表情になる。
「……あきくんはあたしとずっと一緒にいてくれる?」
「もちろんだよっ。 ーーーちゃんとずっと一緒にいるよ。」
「ありがとう、あきくんっ!」
僕はその少女に悲しい顔をしてほしくなくて、ずっと一緒にいるということの意味も知らずにその答えを言う。
少女はその言葉が本当に嬉しかった様で目尻に涙を浮かべながら、僕に抱きついてきた。
「あたしもあきくんとずっと一緒だよっ!」
その少女の満点の笑みが妙に僕の頭に刻まれていた。
「……ん……。」
ふとまぶたを開く。急に明暗が切り替わり、順応のために一瞬視界が真っ白になるが、順応を終えて視界がはっきりと見えるようになった。
そこには心配そうにこちらを見る木下さんがいた。
「きの、したさん?」
「吉井君っ! 良かった……」
えっと、何で木下さんがいるんだ? 確か……僕は訳も分からないまま部屋に戻って、茜さんに助けを求めて……そのまま倒れたんだっけ。
僕はソファから起き上がろうとして、視界がぐらつき倒れそうになる。それを木下さんが受け止めてくれた。
「まだ立たない方が良いと思うわ。茜さんに言われた薬をさっき飲ませたばかりだから副作用がまだあるかも。」
「分かった、ありがとう。」
茜さんに言われたって事は処方薬かな? あれは結構強い薬だから眠気やだるさが出るんだっけ。
僕はソファに座り直す。木下さんはキッチンの方に向かった。
「はいこれ。気付けに。」
「あぁ、ありがとう。」
木下さんは僕のためにキッチンから栄養ドリンクを持ってきてくれた。それを僕は一気に飲み干した。
さてと、
僕はなんとか立ち上がり、テーブルの方に行き椅子に座った。その行動の意図に気づいた木下さんは僕の向かい側の椅子に座った。
「木下さんはどうしてここに?」
「あたしは茜さんに呼ばれて来たの。吉井くんが倒れたから介抱してやって欲しいって言われて。」
やっぱりそうか。
そういえば、今って何時なんだ? どのくらい気を失ってたんだろう? そう思い、時計を見ると針は9時を指していた。ていうことは約3時間ぐらいかな。そうだ。
「そういえば、木下さんは夕食は食べたのかい?」
「あたし? あたしはまだ食べてないけど……」
木下さんは不思議そうに首をかしげていた。それだったら好都合かな?
「もし良かったらで良いんだけど、ご飯一緒にどうかな? お礼も兼ねて僕が作るからさ。」
「え? う、うん。大丈夫だけど……」
木下さんはちょっと驚いた顔をしたがすぐに了承してくれた。さて、了承も得た所で何作ろうかな?
「その前に木下さん、時間大丈夫? 家の人に連絡はした?」
「あぁ、それは大丈夫。ちゃんと来るときに遅くなるかもって言っておいたから。それより、何か手伝いましょうか?」
「大丈夫。木下さんはゆっくりしてて。」
だったら少し凝ったものでも作ろうかな。だるさも取れてきた所でキッチンに向かい、作る料理を考え始めた。
優子side
吉井君が起きてくれて良かったわ。あのまま起きなかったらどうしようと思っていたぐらい。
吉井君は今キッチンで夕食を作っている。また倒れたりしないか心配だけど大人しく待ってましょうか。
まぁ、夕方に茜さんから連絡が来たときはどうしたものかと思ったけどね。
3時間前
あたしは家のリビングでくつろいでいた。
今日は何も予定もなかったから早い時間から勉強してた。今日のノルマが早めに終わったので休日くらいリラックスしないと、と思ってそのまま趣味の本を読んだりしながら時間を過ごしていたのだ。
今日も秀吉は演劇部の活動に行っていて、家にはあたしとお母さんしか居なかった。お父さんも居たのだが1週間の仕事の疲れからか午前中はずっと寝たままで午後は趣味のドライブに行ってしまった。
あたしやお母さんも誘われたのだが、あたしは休みたかったし丁重にお断りした。お母さんもやる事があったらしく断っていた。お父さんは少し寂しそうだったからあたしも付いていけば良かったかもしれないが、今日はついていかなくて正解だった。
「優子~、もうちょっとしたらご飯食べちゃう? 何か秀吉も今日は演劇の練習で遅くなるし、お父さんも会社のお友達と会ったから一緒にご飯食べてくるらしいの。」
「う~ん、あたしまだお腹減ってないからまだ良い~」
「分かったわ。だけど、あんまりお菓子食べてるとまた太るわよ~」
「うぐっ! 分かってるって……」
さすがお母さん……あたしがお菓子食べたからお腹減ってないって分かっていたらしい。太るのは嫌だけど、ついつい食べちゃうのよね。お菓子って何であんなに美味しいのかしら?
そんな事を考えていた時だった。
♪~ ♪~
あたしの携帯の着信音が鳴った。携帯が突然鳴ったものだから少しビックリしちゃったけど、近くに置いていた携帯を手に取る。
「一体誰よ……って茜さんから? もしもし茜さん? どうかしたの?」
『ちょっとね。今って時間大丈夫?』
電話は茜さんからだった。時間ってもう夕方なんだけど……。茜さんからは滅多に連絡が来ないという訳ではないのだが、こんな時間に連絡が来ることはあまりない。夜なんかには結構来るけど。
「今からですか? 一体何の用なの?」
『実はあきく……吉井君が倒れたらしいの。それで優子ちゃんに介抱をお願いしたいから連絡したの。』
「え? 吉井君が!? どうして……?」
吉井君が倒れた……!? そう聞いた瞬間、自分の顔が真っ青になっていくのが分かった。なんだろう、思考が纏まらない。
お母さんもあたしの大声に何事か、とリビングに来た。
「優子? どうしたの?」
「よ、吉井君が倒れたって……。茜さんが……」
お母さんもあたしの異変に気づいたみたいで心配そうにこちらを見る。あたしはお母さんに吉井君の事を口にした瞬間、頭がグルグルと回るような感覚に襲われる。それを見たお母さんの表情が変わる。
「優子、ちょっと貸して。」
「う、うん。」
「もしもし、茜ちゃん? 一体どういう事? うん、うん、そう。分かったわ……それで何をすれば良いの? うん、分かった。だったら、すぐ行かせるわ。」
あたしはお母さんの様子を呆然と見ていた。普段のお母さんと違い、テキパキと話している。表情も鋭く見える。
その後、お母さんはそのまま電話を切ってしまった。そして、こっちを見る。
「優子、あなた着替えて吉井君の家に行きなさい。」
「え?」
「早く。吉井君は別に重い病気とかではないみたいなんだけど、今吉井君の家も他の家族が居ないみたいなの。吉井君の事情をある程度知っている優子にしか頼めない事だって茜ちゃんが。」
「わ、分かったわ。」
お母さんの物凄い剣幕にあたしは指示に従うように、自分の部屋に行き着替えた。そして、そのままリビングへ。リビングではお母さんがあたしの携帯を操作していた。
「着替えたわ。お母さん、何してるの?」
「あぁ、優子は吉井君の家知らないと思ってナビをね。この通りに行けば大丈夫だから。」
そうだ。あたし、吉井君の家知らないんだ。そして、お母さんはそれをちゃんと分かっていたんだ。お母さんから携帯を受け取る。
「ありがとう、お母さん。」
「ううん。吉井君の家に着いたら茜ちゃんに電話して。処置について教えてくれるわ。」
「うん、分かったわ。」
「遅くなっても大丈夫だからね? もし、本当に遅い時間になるようだったら吉井君の家に泊まっても来ても良いわよ♪」
「えぇ~っ!? と、泊まるなんてしないわよっ! 遅くなるようだったら電話するから……。」
もうっ! お母さんったら!! だけど、おかげで少し冷静さが戻ってきた。そして、いつの間にかお母さんの表情も優しい表情に戻っていた。
「じゃあ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい♪」
あたしはリビングから玄関に行き、靴を履く。お母さんは笑顔で送り出してくれた。
あたしは吉井君の元へと急いだ。
ナビに従い道順に行き、何とか吉井君の住んでいるマンションに着いた。部屋番号はナビに入力されていたので問題なかった。エレベーターで上に登り、吉井君の住んでいるはずの扉の前に立つとちょっと緊張する。
ドアノブに手をかけ、回すと扉が開いた。
部屋の中を見渡す限り、吉井君は居なかった。だけど、下を見るとすぐ近くに吉井君が倒れていた。
「吉井君っ!? 大丈夫っ!? ねぇ!!」
あたしは吉井君を揺さぶり起こそうとするが、全然起きない。あたしはパニックになりそうだったが、お母さんの言葉を思いだし茜さんに電話をかけた。少しして茜さんが出てくれた。
「もしもし、茜さん? 吉井くんが玄関前で倒れているんですが、どうすれば……」
『そう、分かった。だったら一度そこから吉井君をリビングの方に移動させて。話はそれからだよ。』
「は、はい、分かりました。」
あたしは吉井君を持ち上げようとするが、吉井くんは体の割に重くて全身を持ち上げる事は出来ず足を引きずる形になってしまった。何とかリビングに行き、吉井君をソファに寝かす。
「ふぅ……で、次は?」
『たぶん吉井君がお医者さんから処方されている薬があるはずだから探してみて。』
「分かりました。探してみます。」
あたしはリビングのタンスの一番上を開けてみる。すると、案の定それらしき薬があった。病院の名前も書いてあるし、抗精神薬とも書かれている。これだろう。
「ありました。」
『オッケー。じゃあ、それを吉井君に飲ませて。1錠ね、それ以上飲ませると薬が強すぎて逆に不味いから。』
「はい。」
薬の袋から錠剤を言われた通り、1錠取ってキッチンからコップに水を入れて持ってくる。そして、吉井君の口を少し開け、水とともに飲ませる。喉に詰まったり、気管に入ったりせずにちゃんと飲んでくれたようだ。
「飲ませました。」
『それじゃあ……あの薬、副作用で体がだるくなったりするから気付け用に栄養ドリンクを買って来てくれる? 冷蔵庫の中にあるかもしれないから、一応見てね。』
「あ、はい。冷蔵庫に……ありますね。」
冷蔵庫を確認すると栄養ドリンクがあった。これでよし。
『それだったら良かった。あとは吉井君が起きるまでそばにいてあげて?』
「はい、わかり……え?」
『吉井君は今一人暮らしだから病人を一人きりにする訳にはいかないでしょ?』
「それは……そうですけど……」
何か茜さんの声のトーンが変わってきた? もしかしてからかってる? だけど、茜さんの言う事も一理ある。それにこんな状態の吉井君を一人にしたくないと思ってしまっているあたしもいた。
「分かりました……しょうがないですもんね。」
『そう、しょうがないしょうがない♪ それじゃあ、ねぇ~♪』
「あ、ちょっ!! 切れてる……。」
最後は完全に楽しんでる声だった……。まぁ、すぐ起きるでしょ。あたしは言われた通り吉井君のそばにいてあげた。
一時間後
全然起きない……。あれから一時間かしら? まぁ、このぐらいはまだ待てるわ。
また一時間後
まだ起きない……。このままあたし帰っちゃ駄目よね? そんな事を思っている時だった。
「うぅ……」
「吉井君っ!?」
吉井君が起きたと思ったのだがそうではなく、吉井君が苦しみ出した。一体何が? どうしたというの? そして、吉井君が右手を空にさまよわせ始めた。
「……どこ? どこにいるの?」
そんな事まで言い始めた。だけど、あたしはどうしてかその右手を包み込んであげないと、と思った。
どうしてなのだろうか。そう思った時にはもう行動に移していた。吉井君の右手をあたしの両手で優しく、優しく包み込む。安心させるように。ただただ優しく。
「大丈夫。あなたは一人じゃない。」
「……。ゆうこ、ちゃん……」
「え……? 今なんて?」
吉井君の顔が安心したような顔になる。何で吉井君がその呼び方を……。あたしは驚きが隠せなかった。
その呼び方をしてくれたのは男の子だと一人しかいない。だけど、彼はどこに行ったかも分からない。でも、やっぱり吉井君がそうなの……?
あたしの中で確信のようなものが生まれた。
ーやっと、会えたね。
そう思うと自然に笑みが出てしまう。だけどその笑みは長くは続かなかった。
「……ん……。」
ふと吉井くんのまぶたを開く。それに驚いて右手から手を離してしまう。
気づかれてないよね……?
「きの、したさん?」
「吉井君っ! 良かった……」
まだ完全には目を覚ましてなかったようで気付いてないみたい。よかった……。
「まだ立たない方が良いと思うわ。茜さんに言われた薬をさっき飲ませたばかりから副作用がまだあるかも。」
「分かった、ありがとう。」
何とか動揺を隠すように飲ませた薬の事を説明する。あと冷蔵庫にあるドリンクあげなきゃ。
「はいこれ。気付けに。」
「あぁ、ありがとう。」
何かここまでやるとあたし、お母さんみたい……なんてね。吉井君の笑顔が見れただけで何か疲れが吹っ飛んだ気がするわ。
吉井くんはテーブルの椅子に座った。もしかして、状況が知りたいのかな?
「木下さんはどうしてここに?」
「あたしは茜さんに呼ばれて来たの。吉井くんが倒れたから介抱してやって欲しいって言われて。」
ここはちゃんと説明した方が良いわよね。だが、それだけで吉井君は大体を理解したらしい。
本当にすごいなぁ、吉井君も本気を出したらAクラスも余裕で入れそうよね。
「そういえば、木下さんは夕食は食べたのかい?」
「あたし? あたしはまだ食べてないけど……」
そういえばご飯食べる前に出てきちゃったのよね。だけど、何でそんな事聞くんだろう?
「もし良かったらで良いんだけど、ご飯一緒にどうかな? お礼も兼ねて僕が作るからさ。」
「え? う、うん。大丈夫だけど……」
え? 吉井君が? 起きてからすぐで大丈夫かしら?
「その前に木下さん、時間大丈夫? 家の人に連絡はした?」
「あぁ、それは大丈夫。ちゃんと来るときに遅くなるかもって言っておいたから。それより、何か手伝いましょうか?」
「大丈夫。木下さんはゆっくりしてて。」
そういえばお母さんに連絡した方が良いのかしら。
はい、お疲れさまでした。
……こんなはずではなかったのに! 明久×優子ママになっちゃうよ! まぁ、そんな事はさておき今回は優子がメインのお話でした。どうでしたでしょうか?
あと、優子が明久があきくんである事を確信しました。しかし、すぐには動かそうとは思ってません。
動くとしても、もう少ししてからになるでしょうね。
……あとですね、一応この作品1章はアニメの話は全部入れようと思ってるのですが……このペースで進むと90話は絶対行くんですよね~……あはは(血の涙) ……死にそうです、はい。
まぁ、愚痴はこのぐらいにして。今度の話では一応この続きをやろうと思っていますので悪しからず。
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では、次回もお楽しみに!